迷宮都市にて咲く菖蒲 作:にがりって…美味しいよね。
この13話は修正版です。
50票で締め切り云々と言っておきながら待てずに書いてしまいました。大変申し訳ございません。
しかし、まだマシなものにはできたと思います。
邪悪胎動編は、次回でクライマックスの予定です。
今後とも、『迷宮都市で咲く菖蒲』をよろしくお願いします。
「ぐっ…!Lv.6の加算があっても押し負けるのか…これが、Lv.7…!」
「
覇者の一振りが凄まじい風を引き起こす。
その圧倒的な暴威に耐えきれず、壁に叩きつけられた。
「俺を殺す気がないのが手に取るようにわかる。舐めているのか?己より格上だと知っていながら、己の手札を出し惜しむなど…」
(…その手札を切る余裕がないんだが?!)
【
先程は並行詠唱を試みたものの、
このことから、完全に不意を突かねば遅滞戦闘もままならず一方的にはめ殺されるだけで終わってしまう可能性が高い。
(ままならないな、まったく…)
再度、大剣を構える。
本命を誤解させるには、混じり気なしの殺意で立ち向かわなければいけない。相手は歴戦の戦士。機が熟すまでは、本気で殺しに行かねばこちらが命を獲られる。
「そして、糞ガキ。お前の質問の答えだが…」
「ぐぅううう!」
【猛者】が吹き飛ばされた。
「俺が何故ここにいるか、だと?」
眼前のLv.7。ーーザルドと呼ばれた男は兜に手を掛け、外した。
その容貌に【猛者】共々息を呑んだ。
臙脂色の髪、鉛色の瞳。何より、瞼から双眼に走る爪痕のような傷。
「
「
「亡霊に見えるか?足はついているぞ?それとも…悪夢に喰い散らかされるのが所望か?
ーーなら剣を構えろ。一口で頭を齧るのも味気ない。精々咀嚼して俺の血肉にしてやる。」
「………わからん。」
「何がだ?」
「俺には学がない。しかし、それを差し引いてもわからない。」
【猛者】の悠長な問い。それを見て静観することにした。どのような形であれ、Lv.7を拘束出来れば御の字だ。
「かつては隆盛を極め、都市を守ってきた
「俺はもう剣を構えているぞ?にもかかわらず、敵の動機を知らなければ戦えないか?ーー何たる惰弱、何たる脆弱。」
その言葉に【猛者】が大きく動揺した。
ザルドは剣を地に向け、失望の眼差しをぶつけた。
「派閥は違えど、お前の『泥臭さ』を評価していたが…見込み違いだったか。」
その言葉に、【猛者】の動揺が強まる。
しかし、都市最強の動揺。平時なら有り得ず、相手が格上である証左。揺らいだ心は敗北を生み、その余波は、都市の冒険者全体に波及する。
「【猛者】…アレは、元【ゼウス・ファミリア】所属、【暴喰】のザルドで相違ないですね?」
「あ、あぁ…」
「相手はLv.7。されど、奴は敵です。貴方にわかりやすい様に言うなら“女神フレイヤの命を脅かす者”です。そのような存在を、貴方は自分の後ろに通せますか?」
「いや…ありえん、
ーーそのような事は断じて許さん!」
「その意気です。過去の栄光に、目に物見せてやりましょう。ーーお待たせしました。やりましょうか。」
「いや、構わない。惰弱な糞ガキを叩き直したのは素直に評価できる。……故に、ついでだ。少し語ってやろう。俺の『矛盾』とは先程の糞ガキに向けたような…」
「『失望』…だと?」
【猛者】も混乱しているらしい。
嘘偽りを言っているような声の響きではない。
ならば何に?かつて一千年の隆盛を誇った派閥、その最後の眷属は一体何に失望する?
「
ーー神時代は、俺達の手で終わらせる。」
敵は、ザルドは、地に向けた大剣を再び構えた。
「故に果てろ。『冒険者』。」
放たれる圧倒的な威圧感に、一歩下がりたくなる。
だが、ここで下がることは、即ち自分の掲げる様々な物を裏切る行為に他ならない。
そうして、一歩前に出た瞬間だった。
少し離れた場所から轟音が聞こえた。
それに軽い戦慄を覚える。
(向こうにいるのは
「アルフィアが始めた。俺達も
「アルフィア…【ヘラ・ファミリア】まで…!」
【ヘラ・ファミリア】。“静寂のアルフィア”。
こちらが苦手な魔導士タイプ、その最高峰か…
確か異名は『才禍の怪物』だったか…ここまで追い詰められると笑えないが…恐らく、まだ何かある。
ここまでくると根拠も理論もないが…まだ、閉幕には程遠い。
もう一つ
が、今は…
(目の前の相手に全力をぶつけるしか、ない。でなければ先の事など取らぬ狸の皮算用だ。)
「お前もつくづく運がないな。フレイヤの所の糞ガキ。こうしてまた、
隣を見る。【猛者】は義憤に駆られつつも、恐怖を湛えた顔をしていた。
だから、言ってやる。
「御免被りますよ。まだ、死ねないんだ。」
私は、大剣を振りかぶって、吶喊した。
「ハハハ!いいぞ!猛り、その血肉を俺に喰わせろ!」
近づいた瞬間、剣閃が暴風を生み出し、吹き荒れる。
剣を地に刺して耐え、
「【
足に
暴風の壁を越えた先にあったのは、黒塊。
ザルドの大剣だった。
今まさに振り下ろされるソレを、
私は避けなかった。
Take6 Restart
即座に身体が蘇生、復元され、遂にザルドの腕を掴んだ。
「【
Lv.7の基礎アビリティが加算される。
湧き上がる莫大な力。本職ですらない魔力もかなりの数値を示している。これが、
「まるで吃驚箱だな。己に限った蘇生か。凄まじいスキルを有している。」
「そりゃどうも!」
全ての基礎アビリティはこちらが上回っている。
それに、
「ぉおおおおおおおおおお!!!」
こちらは二人。二対一だ。
オッタルの斬撃に対応するザルド。
そこに【断罪】を
顔を顰めて受け流したザルドに返す刃で致命傷を狙いに行く。
必然、こちらの斬撃に対応せざるを得ず、【猛者】の攻撃が通るかに見えたが、【猛者】の攻撃をザルドは
更にオッタルの腹を蹴り飛ばした。
こちらはその隙に腕を掴み、足を払う。
そのままザルドを地面に叩きつけた。
「【断罪】!!」
雷撃がザルドの体躯を伝い、這い回る。
「ぐぉおおおおお!」
「うっそぉ…」
私は空中で斬り飛ばされ、蘇生後、ギリギリで着地した。
ザルドがやったのは至ってシンプルな行為。
ということだった。咄嗟に反応出来ず、拘束を振りほどかれた上で大剣の一撃を食らった。
勿論、残基も数個持っていかれた。
ザルドの逸話に誤りがなければ、耐異常のステータスが高いのだろうことは推測できたはずだが…完全に失念していた。
奇襲は失敗した。今から仕掛けても技量と純粋な力のせめぎ合いになり千日手だ。
そして、力を振るうのに時間制限のある私の方が不利なのは明白。これで、
覚悟を決めよう。もう
「【猛者】。一ついいですか?」
ザルドの斬撃を受け止める。鍔迫り合いの間は喋る余裕もある。
「……何だ。」
「死ぬ気で10秒稼いで下さい。“奥の手”を使います。」
言い切る前にザルドを吹き飛ばす。今の余力を正真正銘、全てつぎ込んだ一撃だ。吹き飛ぶぐらいはしてもらわなきゃ困る。
「……いいだろう。認めざるを得ん。今の俺ではザルドには勝てん。だから、勝て。」
「仰せの通りに。都市最強。」
この場の唯一の勝ち筋。それを、私は自らの力に求めた。
《スキル》【
アストレア様が私に隠した下界の眷属の有するモノの中で最悪のスキル。
能力は【
分かりやすく言えば
カルマ…罪業を溜め込むことで大幅な
己の奥底にのみ罪と闇を溜め込み力とするスキル。
モンスターを殺せばそこそこのカルマが。
人種を殺せば膨大なカルマが溜まる。
自分で言うのもアレだが、とても正義の女神の眷属が持つようなスキルではない。
が、殺さずにカルマを得る方法が私にはある。
私の纏う鎧“クエリティス”。この中には664の気高き聖女の魂が呪いとなってこびりついている…というのが実情だ。
しかし、クエムが私という存在から派生した
このエネルギーはどこから来たのか。それを先程まで調べていたクエムが出した結論。
『この世界にて死した数多の人々の悪感情を汲み出して無理矢理664の形に区分し、圧縮し、原型を留めぬ“呪い”とした物。』
神時代が始まって1000年。古代から数えれば更に多くの人々が様々な思いを抱えて、輝かしい英雄譚の裏で死んだ。それが
それを高々600程度に纏めたのだ。
一つ一つが馬鹿げたエネルギーを内包している。
これが“残基”の正体。
死んで輪廻に組み込まれた魂すら引き摺り出し、身体を復元して蘇生する。
神の定めた
ならば、それを
「『
3つだけ解放した。3つだけだ。しかし、莫大な悪感情が流れ込む。これの類似物を“子守唄”などと表現した男*1が如何に規格外だったかがよくわかる。
己のカタチが、歪んだ。
…まるで闇に染まっていく感覚で。
ーーーーーーーそれでも一歩を。
…身体が泥に溶けていくようで。
ーーーーーーそれでも進め。
…この暗いモノに溺れていく。
ーーーーーーそれでも足掻け!
目を、見開いた。
都市に蔓延る全ての悪が、光を取りこぼした正義が、民衆が、神が、一斉にその方向を見た。
「正しく、イレギュラーね。」
と。
全てを嗤っていた邪神は呆れた表情で苦笑いする。
「そこで踏ん張れてしまうか。」
と。
「お待たせしました。都市最強。そして、悪に堕ちた英雄よ。」
鎧は黒が混ざり、銀は澱んだ。
剣は槍となった。盾は四本もの触手となった。
正義のような高潔さは無い。
「第2ラウンドです。」
邪悪が胎動し、正義が崩れる舞台において、正義でも悪でもない者が、動く。
修正前も記述しましたが、文中の『Take6』。
これは誤字ではありません。
・斬撃の余波で即死
・斬撃の本体で圧死
という現象が起きており、即ち“蘇生した瞬間にまた殺された”形になります。これを無限に繰り返される“はめ殺し”をルリスは警戒していたわけです。
そして、【
しかし頂いた感想を元に改めて精査した結果、『主人公の負け続ける物語がおもしれーわけねーじゃん』という思考に行き着き、改めて己の浅慮を恥じた次第です。
という訳で次回は鬱憤晴らしの無双回になる予定です。
それでは最後に、
どうだったでしょうか?
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(万葉集)