迷宮都市にて咲く菖蒲 作:にがりって…美味しいよね。
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「ふふふっ…ははははは!【
闇の使徒は己の悪すら踏み潰す威圧に自らが道化となったことを悟った。
それは暗く、闇に属するモノだが、僅かに光を湛えている。
闇で以て、悪を制する。
ソレは、隣に倒れる男に向けて謝意を示した。
「ありがとう…ございました…【猛者】。1
そう言って、“ソレ”は槍を構えた。酷く不格好。武の心得などないような構えをとる。
この状態になった時点で、ソレが行使した
はっきり言って弱体化と同義だった。
「それが、貴様の全力か。小娘。」
ザルドはそう言って剣を構えた。
「さぁ?どちらにしろ…これからわかることです。」
赤い槍に歪んだモノを構える。
そして、
「うぉおおおおお!!」
「はぁああああああ!!」
両者が、ぶつかった。
最初はあまりの貧弱さにソレが吹き飛ぶ。
が、触手を地に突き刺して停止、再度踊りかかる。
「ぐっ…!」
その攻防が続くこと数回、徐々にザルドが力負けし始めた。
カラクリは至ってシンプル。大量のカルマを解放したが、力が肉体に馴染むまで少しかかったのだ。その恩恵が齎す
更に、砕かれた67ものカルマの残滓を取り込んだ事で、膂力だけであれば、ザルドを凌駕した。
しかし、
「甘い。」
大剣の一振に切り裂かれた。
直後、蘇生し周囲に突き刺した触手で自らを引っ張ることで離れまいとした。
追撃を槍で受け止める。
不思議そうにソレは首を傾げた。
「膂力が増したのは結構だが技の精細を欠いているな。まぁ、それほどの闇に触れて僅かながらでも正気が残っているのは、賞賛に値するが。」
3個ですら相当な負荷だったにも関わらず、消費後の残滓とはいえ60を超えるカルマを身に受けた。
ザルドの言う通り、敵を見定める知能が残っていることが奇跡だった。
だが、
「なるほど。確かに、コレはイレギュラーだ。」
ザルドの頬に傷が入った。
呆れた表情で改めてソレの得物を見た。明らかに先程とはリーチの違う赤い大槍。その一部が霧散して元の形状に戻る。
だがリーチが変わる武器程度ならゼウスとヘラの時代にも確認例があった。問題は、そのような小手先の技を扱った目の前の赤黒い異形。
ザルドは気づいた。数多の死者の怨嗟に晒されて、躯体を闇に染められてそれでもなお己の自我を取り戻しつつあるソレに。
ソレしか知らない要素を含めれば
負担をクエムと折半している。
ソレ自身が何度も死を経験している。
しかし、それ以上に…
「表面…肉体的だけではない。精神的な“異形”と言うべきか。加えて血肉も稀有…喰らい甲斐がある!」
ソレを構成する人格もまた狂人の部類に他ならない。
振り回す槍は鋭さを増す。
それは【
小手先の児戯と圧倒的な暴力が合わさっただけのハリボテだ。
しかし、闇に堕ちたるかつての英雄が、それを抑えきることができない。必然、鎧に、身体に、傷が増えていく。
しかし、かつての英雄も無力ではない。
ソレに…異形に刃を突き立て、斬り、叩き潰すこと都合十七回。
奪った残基は41にもなる。
それでもなお、
ザルドはそれを見ていた。しかし、何もしていなかった訳では無い。
「【貪れ、煉獄の舌。喰らえ、灼熱の牙】!ーー【レーア・アムブロシア】!!!」
彼に許された唯一の詠唱。
大剣が不死を、不滅を象徴する炎を纏う。
戦いに於いて定命と不滅が相対するなら、不滅が掲げる炎が敵に死を齎すのは必然の
Lv.7が死力を尽くした一撃。
大剣の横薙ぎに対して異形もまた全霊を以て返礼した。
ただ、
「『
刈り取ったカルマコアの数は27。
その莫大なカルマを己の力とし、余剰分を
『
大剣と見紛うほどの幅を持った雷が、不滅の炎に迫る。
瞬間的、都市を轟音が揺るがす。
爆煙が立ち込め、数秒。何者かが崩れ落ちた。
立っていたのは、ーーーーー異形の方だった。
ソレが、槍を手にザルドへ近づく。
「さようなら、堕ちた英雄。」
そう言って異形は今一度槍をザルドに向けた。
狙うは心臓。切断に向いた武器ではないが故の次善の刺突。
異形は、敵を殺そうとして…
「【
破滅の音を身に受けた。
轟音の続く中、オラリオの一角、二柱の神は街の惨状を見ていた。
「ーー誰だ。」
独白を零すのは、
「一体、誰だ?この『
ヘルメスはかねてからの疑念を確信に変えた。
即ち、この『脚本』を描ききった神の存在を。
「
戦慄と嫌悪、それらが綯い交ぜになった声で断言した。
その言葉は
「時機、
「ええ、そして
女神アストレアが、隣で頷いた。
彼女もまた直感と言う名の神智で更なる惨劇を予感する。
「おぞましい邪悪の胎動…まだ何かが待っている!」
その言葉に邪神が微笑んだ。
場に、凛然とした女性の声が響いた。
「派手にやられたな。ザルド。そこの小娘
「あぁ。しかし、言わずともわかっただろう。
灰と碧のオッドアイ。灰髪の魔導士。
『才禍の怪物』アルフィア。
異形へと堕ちる前のソレが警戒したもう一人の
瞬間、第二撃が迫る。
「【
触手は千切れ、槍も砕ける。
鎧もひび割れたが、まるで生き物かのように再生する。
「やはりな。
「流石だな。俺は撃ち込むまで分からなかった。」
別にソレの耐久力が上がっていない訳では無い。
要因は2つ。
耐久の上がり幅が他より少ないこと。
そして、【
見えざる音の暴力は、異形に対しても有効だった。
「ぐッ…がァッ…」
「まだ動くか。【
更に一撃。しかし、異形は倒れない。
闇と炎の空間を音が駆け抜ける。
しかし、そこにはひび割れた地面とまるで何事も無かったかのように立ち上がる異形が在るばかり。
「酷く醜悪な音色…不愉快だ。しかし、時間か。」
アルフィアが残念そうに声を漏らした。
瞬間、都市が震えた。
『ひとーつ』
莫大な『
正義に絶望を、邪悪に歓喜を齎す。
その現象の名は…
“神の送還”
都市が、更なる絶望へ堕ちる。
神は再び嗤って数えた。
『ふたーつ』
今まさに襲いかからんとした異形さえ、足を止めた。
更なる轟音。
その光の柱は、
『みーっつ』
絶望は留まるところを知らず、都市は深く深く、絶望に堕ちる。
しかし、邪神はそれでは終わらない。
『よーっつ』
神によって与えられた“恩恵”は刻んだ主神が送還された瞬間に封印される。あくまでも
都市全域で阿鼻叫喚が巻き起こる。
それは元々あった物だが…更なる火種を以て、地獄の釜を開いた。
即ち、“殺戮”。
どれだけ優秀な防具を持っていても、最強の武器を持っていても、只人では、それを扱えない。只人に落ちてしまっては。
数多の猛者が、己の手に馴染むと言ったモノに振り回されて、命を散らしていく。
戦線の崩壊は、確定的だった。
だが、終わらない。
崩壊も、絶望も、
“送還”も。
『いつーっつ』
【
これこそが望んでいたもの。殺戮だと。喜色に顔を歪めて嗤う。
『むーっつ』
「ベレヌス・ファミリア、主神、送還!」
「ゼーロス・ファミリア、全滅!」
ギルド本部にて、受付嬢達が悲鳴を上げながら報告する。いや、泣き喚かねば僅かばかりの平常心を保つことも、できない。
組織の長たるロイマンは全てを察し、驚愕し、恐怖した。
「止まりません、止まらない!【ファミリア】の殺戮が!」
「ばかな…馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!?」
『ななーぁつ』
【
もう止まらない。偉大なる英雄すら悪に与する。
故に、悪は止まらず。己の望む限りを行うと。
続く。止まらない。
何もかも。全てが転げ落ちていく。
『やーっつ。』
一人が叫んだ。「オラリオの崩壊が始まる。」と。
そして、演目の締め
『
青ざめる者たち。もう終わりである事を誰しもが祈り、間もなく裏切られる。
『生贄』の終わりに充足したその
「頃合いだ。さぁ…行こう。」
南西区画。
異形は倒れ伏し、立ち上がれぬ事に怒り狂った。
手足を折られ、投げ出された。
怒りのままに舌を嚙み切る。
少しして、全快して立ち上がった異形は、あの堕ちたる英雄らを追いかけようとして、
それは始まった。
「聞け、オラリオ。」
「聞け、
「“約定”は待たず。“誓い”は果たされず。この大地が結びし神時代の契約は、我が一存で握り潰す。」
告げられるは邪悪なる神意。
悪逆と非道の道を悠々と歩く者。
絶望の言葉を授け、惑わし、全てを嘲笑う者。
その言葉は続く。
「全ては神さえも見通せぬ最高の未知ーー純然たる混沌を導くため。」
「傲慢?ーー結構。」
「暴悪?ーー結構。」
「諸君らの憎悪と怨嗟、大いに結構。」
「それこそ邪悪にとっての至福。大いに怒り、大いに泣き、大いに我が惨禍を受け入れろ。」
その
「我が名はエレボスーー原初の幽冥にして、地下世界の神なり!」
朗々と言の葉は続く。
もう底がないと、信じる心を砕くように、丁寧に。
覇者を引き連れ、凱旋の如く。
「冒険者は蹂躙された!より強大な力によって!」
黒塊の剣が炎に照らされる。
その威容こそが絶望を。
「神々は多くが還った!耳障りな雑音となって!」
灰髪が炎纏いし風に揺れる。
その美貌こそが恐怖を。
「貴様等が【
共に煽って、邪神は締めた。
「告げてやろう。今の貴様等に相応しい言葉を。脆き者。汝の名は…」
言の葉は終わり、確定した未来を示す、宣言となる。
「滅べ、オラリオ。我等こそが【絶対悪】!!」
まず、最初に。
大変申し訳ありませんでした。
“不定期更新”のタグを免罪符に投稿をサボっておりました。
ただ今テスト期間のため、次回の更新もかなり期間が空く事が予想されます。
申し訳ありません。
…そして、無双回とか言ったのに、最終的に転がされてるルリスェ…これは、予想の範囲内の展開だったのですが、途中を無双系の戦闘にできませんでした。
私の文章構成力不足です。
すみませんでした。
さて、謝罪はここまでに。
14話、“邪悪胎動”編最終話、どうだったでしょうか?
ルリスがどうなったか、オラリオが今後どうなるか。
少しづつ明かして行けたらと思います。
そして、次からの“正義失墜”編。
ルリスの一人称視点は殆どありません。周囲の人からの三人称視点が主です。
ご注意下さい。
では、最後に。
どうだったでしょうか?
よろしければ評価、感想よろしくお願いします。
(解体新書)