迷宮都市にて咲く菖蒲   作:にがりって…美味しいよね。

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あ、あ、…お気に入り…200件…ありがとうございます!
。 °(°´ᯅ`°)° 。(滂沱の涙)


しかも評価も20件頂けました!
改めて、本作をご覧頂きありがとうございます!



損得勘定(ギャンビット)

 

 

 

 

「さぁ ーー 炊き出しよ!!」

 

 

 

今日も晴天だ。ここのところ曇りが多かったらしいので昨日と合わせて連続なのは稀なんだそうだ。そして、団長(アリーゼ)の言う通り一般民衆向けの炊き出しの日でもある。

 

 

 

「いや、なんでお前がすげぇふんぞり返って偉そうなんだよ。」

 

 

 

「決まってるわ!ギルド主催かつ冒険者による炊き出しだからよ!農産系大派閥(デメテル・ファミリア)協力の元、美味しいご飯が猛威を振るうわ!」

 

 

 

「意味が分かりそうで分かりませんねぇ。」

 

 

 

この派閥(アストレア・ファミリア)に入った時から半ば予想していたが、この団長、快活過ぎて眩しい。完全に陽の者だ。

 

 

 

「今日は笑顔が溢れる日ってことよ!さぁ皆、散った散った!私たちも料理から配給まで、何でも協力するわよ!」

 

 

 

「アタシこういう慈善活動(いいこと)苦手なんだよな…」

 

 

 

「わたくしも人見知りなので調理の方をさせて頂きます。」

 

 

 

と輝夜とライラが真っ先に離れていく。

そのまま二人を見送ると私はネーゼと回ることになった。

リオン、団長ペアとは逆方向だ。

 

 

暫く歩くと、ネーゼが物珍しそうに聞いてきた。

 

 

 

「何してるの?」

 

 

 

「ジャグリングですね。」

 

 

 

手品のアレだ。

かなり昔(死ぬ前)に練習していたのだが、中々どうして勘を取り戻すのに時間がかかった。

 

 

 

「いや、それは分かるけど…凄いやり方してるね…」

 

 

 

ネーゼは私の背中を見てそう言っている。

まぁ、それもそのはずだ。私は今【神罰(パニッシュメント)】の雷で簡易的な手を背から生やし、棒ーークラブに見立てた物ーーを掴んで見ずにジャグリングをしている。

 

 

空中に保持している棒は2本だが、結構難しい。視認できないというのはかなりのハンデなのだ。

 

 

 

雷に何故棒が掴めるのかと私も思ったが、必要以上に精神力(マインド)を込めると質量を持ってしまったのだ。

理屈は分からないが、訓練に丁度いいため今もやっている。

 

 

流石に歩きながらは色々問題があるためできないのだが、調理しながらなら問題ないだろう。

ガスコンロからあら大変。という現象はこちらでは無いのだから。

 

 

 

恐らく、ながらスマホみたいな物だ。まぁ私はながらスマホをした事がないのだが。

 

 

 

「まぁ、非常識なのは理解してます。しかしそれはそれとして…」

 

 

 

「あ、スルーされた。」

 

 

 

「明けない夜はないですが、夜がやってこない日もないと、私は思います。美味しい食べ物には()()()飛びついて来るでしょうし。」

 

 

 

「…!」

 

 

 

ネーゼも察してくれたようでよかった。破壊と人殺しが大好きな闇派閥(イヴィルス)にとって今日ほど美味い餌が辺りにぶら下がってる日もない。

 

 

 

付与魔法(エンチャント)を既に使っているのは、そういう理由もある。

そして、昨日黄昏の館(ロキ・ファミリア)で僅かに動きがあった。外から見ただけだが、いつもより僅かに張り詰めた空気を感じた。

しっかし…あのトンチキ【勇者(ブレイバー)】なら案外普通に都市住民を餌にしそうだ。

 

 

まぁ、あの男の頭脳には及ばない私は思惑にそっくりそのまま乗っかる事が最善であろう。

ギルドで見た報告書。あれを見た後でフィン・ディムナより良い作戦立案ができますなどとは口が裂けても言えない。

 

 

…そうだ。別に杞憂ならいい。

「警戒のし過ぎだったね。」で終わる話だ。

 

 

だが、もし多くの被害を出したら…私は…

 

 

 

……考えないようにしよう。

 

 

 

なんて、現実逃避をする間に、“その時”は来てしまった。

 

 

遠くから悲鳴と爆音が聞こえる。

この距離…あの二人(団長とリオン)の方か!

 

 

 

「ネーゼ。ちょっと()()()()。あと、ここにいる皆さんをよろしくお願いします。」

 

 

 

「な、ちょっ!!」

 

 

白骸(アルバスセイント)】と唱える。するとLv.3のネーゼの基礎アビリティが私に加算される。

リオンと同じく“俊敏”の成長率が大きいステイタスが私の身体を軽くする。

 

 

そのまま、屋根の上を疾走する。

近づくと悲鳴と爆音に剣戟の音が混じった。

 

 

誰かが接敵したようだ。

 

 駆ける

 

恐らく、団長とリオン。

 

 更に駆ける

 

捉えた。

 

 

殺帝(アラクニア)】か!

周囲には数多くの闇派閥がいる。魔法やら魔剣を乱射して…!

 

 

屋根の端を掴み、ぶら下がる。

瞬間、【殺帝】が【重傑(エルガルム)*1の握り拳の餌食になったが…やはりピンピンしてるな。これがLv.5か…

 

 

 

「【神罰(パニッシュメント)】」

 

 

 

手を離し、壁面を蹴って突撃を仕掛ける。既に大剣は召喚済みだ。周囲の闇派閥達に雷撃を食らわせ、更に、身を起こした瞬間の【殺帝】を狙っての一撃。

 

 

 

「危っねぇな糞が!あぁ?見ねぇ顔だな。」

 

 

 

回避された。が、まぁそれはいい。

 

 

 

「【白骸(アルバスセイント)】。」

 

 

 

今加算されたのはL()v()5()のもの。

つまり【殺帝】の基礎アビリティだ。

これこそが、付与魔法(エンチャント)【ストラテジー・ドラグマ】。【白骸】の真骨頂。基礎アビリティの比較で絶対に勝利する対冒険者戦最強の切り札(ジョーカー)

 

 

 

「じゃあ今覚えてくれよ。“クソ”ぐらいしか語彙がない頭でも、それくらいできるだろ?」

 

 

 

「く…ガキが!」

 

 

 

言い直す余裕がある辺り、流石だが…

 

 

 

「ぐっ!」

 

 

 

剣が乱れたな。感情を御しきれてない。そもそも今の()の基礎アビリティはLv.6中位相当。

Lv.5じゃあなぁ!!

 

 

 

「おいおい、押されてんな!そんなに弱い者イジメが楽しかったでちゅか〜?」

 

 

 

「糞がァ!」

 

 

 

とはいえマズイな…()()()()を狙われている。

流石に第一級冒険者並のステイタスと技量だ。中途半端なのは悪手だったか…?

だとしても、斬撃を全て最低限の負傷で凌がれるとは…

 

 

長剣と大剣のリーチ差を上手いこと使われている。

瞬間、こちらの体勢が崩れた。足払いか!

 

 

 

「バァカ!」

 

 

 

「バカは…」

 

 

 

“狙い通り”頭に向けて振るわれた長剣をクエリティスを召喚してそのままガード。そのまま腹部を蹴り飛ばす。

 

 

 

「オメェだ!」

 

 

 

「ヴァレッタ様!」

 

 

 

このままボロ雑巾にでも…と思った瞬間、【白骸】の効力が消えた。というより、消さざるを得なかった。

魔法に使用している精神力(マインド)が安全マージンの分まで食いつくそうとしていたからだ。これ以上はマズい。

 

 

視界がグラつく。口の端からは血の味がする。

身体は痛みでどうにかなってしまいそうだ。

 

 

今度はこちらが腹部を蹴り飛ばされた。更に鎧の隙間に長剣が刺さる。

 

 

 

「相当無理してたみてぇだなぁ!が、こちらもフィンの野郎に本筋潰されてんだ。痛み分けで終わらせてやる。おい、テメェら、足止めしろ、私は帰る。」

 

 

 

「ヴァレッタ様?!何を?!」

 

 

 

「逃がすと…思って…」

 

 

 

「陽動が暴れて、他がパァじゃ意味ねぇんだよ。おい、クソガキ。次は最高のショーでオメェを殺してやるよ。」

 

 

 

「ま…て…」

 

 

 

「じゃあな。」

 

 

 

「ふざ…けるな…【神…罰(パニッシュメント)】ッ!!」

 

 

 

手応えがない…躱した…か…ヤバい…これ…精神疲労(マインドダウン)だ…

 

 

()の意識はここで暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵は全員潰した!ラウル!二大治療派閥(ディアンケヒトとミアハ)に応援を頼め!大至急じゃ!」

 

 

 

「はいっす!!」

 

 

 

ラウルが急いで駆けるのを見届け、周囲を見回し、一点に気づいて駆け寄る。

 

 

 

「この娘っ子がいなければ…この倍は被害が出てたやもしれん。」

 

 

 

自分の攻撃に追撃するよう【殺帝】に攻撃を加えた少女は、鎧の隙間からかなりの量の血を流していた。

鎧を外すよう試みながら、先程の戦いを思い返す。

 

 

雷撃を纏って【殺帝】と戦う中で、数多の闇派閥を痺れさせ持っていた魔剣を破壊し、痺れで魔法を封殺した。

これだけの事を一体一の最中にやり遂げるとは…

 

 

 

「ルリス!!」

 

 

 

そこに駆け寄ったのは赤髪の只人族(ヒューマン)。アストレア・ファミリア団長アリーゼ・ローヴェル。

 

 

 

「馬鹿娘!この娘っ子はお主らの派閥か?!」

 

 

 

「ええ!そうです!ありがとうおじ様!」

 

 

 

「かなりの出血量じゃぞ!大丈夫なのか?!」

 

 

 

「…!鎧を脱がせられないから治癒魔法を掛けるしかないけど…!」

 

 

 

「ディアンケヒトもミアハも今暫く時間がかかる!何故鎧を外せない!」

 

 

 

「《スキル》で固定されてしまっていて取れないの!」

 

 

 

打つ手がないのか…?

 

 

だが、その瞬間鎧と武器が光になって霧散し、中から血に塗れた身体が出てくる。

 

 

 

「解除された…?」

 

 

 

呆ける馬鹿娘に発破を掛ける。

 

 

 

「出血箇所を押さえるんじゃ、死なせてはならん!」

 

 

 

「ッ!はい!」

 

 

少しして、ディアンケヒトの者が先にやってきて、治癒を行った。娘っ子は血を多く失ったため、1日は目覚めないだろうとの事だった。

 

 

 

 

 

夕刻、一人のエルフが近寄ってきた。

確か、馬鹿娘(アリーゼ)と共にいた…

 

 

 

「【重傑(エルガルム)】、ありがとうございました。」

 

 

 

「気にせんでいい。エルフの娘。」

 

 

 

「ありがとう…ございます。」

 

 

 

「あの娘についてはまた、明日の定例会議で聞くことにする。今は休ませてやれ。」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

反応に覇気がない。どこか遠くを見ているようじゃが…

 

 

 

「何があったのか、深くは聞かん。だが…折れる前に、吐き出しておけ。」

 

 

 

「…!わかりました。」

 

 

 

頭を下げるエルフの娘に頭を上げるよう言ってから、わしは立ち上がって報告を聞きに行った。

 

 

 

 

 

今日もまた、命は掌から零れゆく。

死人は嘆きも悲しみも、怒りもまた、もう口にできない。

 

*1
ロキ・ファミリア所属のLv.5。種族はドワーフで少し前までリオン達と会話しておりそのため合流が早かった。(と思われる。筆者の考察)





昼のリカバリーもできず一日完全に空いた事を深くお詫び申し上げます。

ルリスのジャグリングという謎特技。
まぁ、入院する前に身につけた手品の一つなので…

(ちなみに、鎧が外れたのはルリスの意思では)ないです。

そして、今回ルリスの活躍で被害が半減しました。
理由としては、
・【殺帝】と周囲の闇派閥をルリス一人で相手取った事で周りの冒険者の手が空いた。
・魔剣の使い手に率先して突っ込み機能させなかった。(文中の独白“中途半端”はここから。)


まぁ、邪悪胎動編の最終的な被害規模は変わらないですが。


そして、ここまでやって想定しているフルルドリス姉様のスペックにはまだまだ及ばない…流石主人公の暴走をワンパンで沈めるお方ですな。


それでは最後に、

どうだったでしょうか?

よろしければ評価・感想よろしくお願いします。
(古事記)
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