迷宮都市にて咲く菖蒲   作:にがりって…美味しいよね。

7 / 16


…書き上げた瞬間、調子に乗って投稿してしまいました。
大変、申し訳ありませんでした。


予兆(インビテイション)

 

 

 

 

 

異形が襲い来る。それを、腰に差した三本の()()()()で迎え撃つ。雷撃は異形を切り裂き、剣閃は跡形も残さず異形を消し去る。

 

 

 

何も知らずにこの異形達が数刻前までただの人だったと言われて信じる者はいないだろう。

だが、彼女達には分かる。()()()()()()()

 

 

コレらが自分達の守りたかった無辜の民だと、思い知らされる。

だが、止まれない。斬って、斬り続ける。

“彼女”なら何を思って刀を振るったのか、私には分からない。

けれど、私はこの先の結末を知ってなお、剣を振るった。

 

 

その切っ先は寸分も過たず敵の首魁にしてかつての主君。……その“偽物”を斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…っ……っ!」

 

 

 

目が、覚めた。

夢を見ていたらしい。

 

 

場面としては儀式魔法“凶導の葬列(ドラグマカブル)”から“烙印断罪”のカードイラスト…烙印の侵食を氷水(ひすい)のエネルギーで抑え、後天的な相剣師になったフルルドリス、テオ*1、アディン*2異形(デスピアン)となった国民を斬った先でドラグマの国家元首だった教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)改めデスピアの 大導劇神 (ドラマトゥルギア)と対峙し、ドラマトゥルギアをフルルドリスが一閃した場面だろう。

 

 

殺帝(アラクニア)】との戦いで一時的に口調が戻って気づいたが、私…という人格そのものがフルルドリスという存在の侵食を受けているらしい。いや、正しくは始まりの聖女“クエム”のものか…

 

 

白聖女(アルバスセイント)】とは奴の別名だ。

恐らく、使えば使うほど精神を乱される。

 

 

が、まぁ…()()()()()()。インチキに代償は付き物なのだから。

原作主人公(ベル・クラネル)ですら憧憬一途(公式チート)を使って月単位かかった場所に一瞬で到達することに代償がない訳がない。

(まさ)しくバグ技(グリッチ)なのだ。

使えばハードウェアに重大なエラーが発生しかねない。

 

 

 

「でも、止まれないし、止まるつもりもない。」

 

 

 

やれる所までとことん、だ。

 

 

 

「アストレア様と団長に起きたのを報告しないとな…」

 

 

 

私は腕に入った“赤い筋”を無視して部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「各ファミリア代表揃ったな。それでは定例の闇派閥(イヴィルス)対策会議を始める…その前に、なんだお前達!連日のように襲撃は絶えず、つい先日には大規模の奇襲さえ許しおって!」

 

 

 

ロイマンの罵声が会議室に響く。相当にご立腹のようだ。

 

 

 

「さっさと害虫を駆逐してえなら、闇派閥も追って、迷宮(ダンジョン)攻略も進めろなんざ無茶な注文を押し付けんじゃねぇ豚が。『遠征』に行った帰りに都市中を回らせやがって…頭の中まで畜生に変わりやがったのか?」

 

 

 

「し、仕方なかろう!男神(ゼウス)女神(ヘラ)が消えた今、都市の内外にオラリオの力を喧伝するのは急務!でなければ…第二、第三の闇派閥を生み出しかねん!ダンジョンの『未到達領域』に辿り着き、都市(オラリオ)の威光を示さなければ世界に余計な混乱が…」

 

 

 

自分(てめえ)の趣味の悪い(イス)が後生大事だと素直に吐きやがれ。その脂ぎった体で権力にしがみつきやがって。」

 

 

 

「アレン、止めよう。話が進まない。僕らが率先していがみ合う理由はないはずだ。」

 

 

 

「その口で俺の名を呼ぶんじゃねぇ、小人族(パルゥム)。虫唾が走る。」

 

 

 

今率先して場を荒らして回ってるのは都市二大派閥の片割れ。フレイヤ・ファミリアのLv.5“アレン”。二つ名は【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】。こちらも相当にご立腹だ。

言葉通りなら疲れてるはずなのだが、他人に噛み付くだけの元気は残っているらしい。

となると、疲れているのは彼の部下か…?

にしても【勇者(ブレイバー)】の言う通り話が進まないな。

 

 

などと考える間に話は進んでいた。

 

 

 

「意思の疎通さえできない眷属の態度、神フレイヤの品性が疑われるな。」

 

 

 

「殺されてぇのか、羽虫。」

 

 

 

「もう既に帰りたい…なんで初っ端から殺気で満ちてるんですか、この会議…」

 

 

 

「ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアの険悪さはいつも通りでございますから、気にするだけ無駄かと〜」

 

 

 

「そもそもなんで派閥会議に副団長(わたし)が駆り出されるんですか…!殴るっ…!絶対にあの主神と団長…殴るっ…!!」

 

 

 

ヘルメス・ファミリアの【万能者(ペルセウス)】…原作でもマジで苦労人だったからな…お疲れ様です。

 

 

 

「ロイマンを庇う訳ではないが、先の襲撃を食い止められなかったのは儂の責任だ。詫びのしようもないわ。そこの娘っ子がいなければ倍は被害が出ておった。」

 

 

 

周囲の視線がこちらに集まる。

猛者(おうじゃ)】、【勇者(ブレイバー)】、【九魔姫(ナイン・ヘル)】、【象神の杖(アンクーシャ)】…現在の秩序側の最大戦力達の視線の集中に私は心の中でため息を吐いた。

 

 

 

「では、話を戻すが…白昼堂々、しかも往来の中心での凶行など、予想出来ていたとしても止められる物ではない。ましてや【殺帝】の仕業ともなれば。フィンや憲兵団(われわれ)が想定していたのは『爆発物』による混乱…ガレス達に不審物に注意するよう伝えたのが仇になってしまった。」

 

 

 

「……先頃の工業区襲撃…そしてそれに伴う『撃鉄装置』の奪取は、爆弾製造のためだった考えていた…違いますか、【勇者(ブレイバー)】。」

 

 

 

口を開いた私にまたも視線が集まるが、二度目だ。もう慣れた。

(おもむろ)に金髪の小人族(パルゥム)の口が開いた。

 

 

 

「いや、君の推測通りだ。」

 

 

 

機構(スイッチ)を取り付ければ恩恵を持たない信者でも作動させられる。それこそ魔石製品を扱うようにな。手軽さ故に十分な脅威になりうる。」

 

 

 

「だからこそ我々も警戒していたのだが、山が外れたか。」

 

 

 

【勇者】、【九魔姫】、【象神の杖】が言葉を繋いだ。

 

 

 

「或いは、まだ切り時ではないと溜め込んでいるのか、だ。」

 

 

 

「で、しょうね。【殺帝】の言動から考えて先日の凶行は“前座”。何事か用意していると見て間違いない、と私は考えています。」

 

 

 

と話を締めた。

 

 

 

「なるほど…理解いたしました。どうせならもっと早く共有して欲しかったのですが。我々も先日の襲撃の後にこの馬鹿(フルルドリス)から聞きまして。」

 

 

 

「君達の内情までは関わっていないが……あくまで予想に過ぎなかったというのが一点、もう一点は警備を厳重にするあまり敵の動きを誘いにくくしたくなかった。」

 

 

 

「勇者様の中ではあの襲撃さえ予定調和であったと?犠牲者の数を算盤(そろばん)で弾いて、小を切り捨てたので?」

 

 

 

「被害の規模までは読めなかった。と言っても言い訳にしか聞こえないだろうが、おかげで敵の本隊を叩く事ができた。」

 

 

 

「大した勇者がいたもんだな。」

 

 

 

ホント…為政者向きで…英雄には不向きな思考形態をしてるよ。【勇者(ブレイバー)】。

 

 

 

「全くだ。常に選択を迫られる今の状況と、それを覆せない自分がつくづく嫌になる。」

 

 

 

 

空気は暗くなったが、この場にはこういう時の特効薬がいるので好きにやらせてもらった。

 

 

 

「ーーはい!この話題ヤメヤメ!私こんな不景気な話題聞きたくないわ!嫌な気持ちになってお菓子をヤケ食いしてしまいそう!」

 

 

 

「アリーゼ・ローヴェル…貴女という人は…」

 

 

 

「だってそうじゃない!みんな都市を守るために最善を尽くしているのに、それを責め合うなんておかしいわ!

 

反省する所はする、いい所は称え合う。子供にだってわかるわ!」

 

 

 

「くっくっく…ハッハッハッ!相変わらず物怖じしない娘よ!しかし、その通りだ!」

 

 

 

「チッ…正論ばかりほざきやがって…」

 

 

 

「反論できないのなら悪態をつくのは控えておけ、彼女の正論こそ今において最も建設的であり、有意義な提案だ。」

 

 

 

ほら、明るくなった…のはいいんだけど…

 

 

 

「清く正しい私の前に第一級冒険者さえもひれ伏したわ!フフーン!さっすが私!!」

 

 

 

確実に過剰投与(オーバードーズ)になるのは勘弁願いたいなぁ…

 

 

 

「団長、頼むからこの場でふざけるのは止めてくれ…」

 

 

 

「ふふ……明るい話は生憎ないが、彼女の言う通り建設的な話をしよう。」

 

 

 

「まず、シャクティ達が制圧した『悪人共の違法市(ダークマーケット)』について情報の共有を…」

 

 

 

踊る会議は終わり、歩を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

「今日までにあった事件、及び伝達事項はこれくらいかな。誰か、他に共有しておきたい情報はあるかい?」

 

 

 

数刻経ち、【勇者】が会議を締めにかかった。

そこで【猛者】…都市最強にして現状唯一のLv.6が口を開く。

 

 

 

「闇派閥側に最低でも一人、手練れがいる。恐らく生粋の戦士。」

 

 

 

「あ、例の超硬金属(アダマンタイト)の壁を突破されたっていうアレね。でも、交戦した訳でも、姿を見た訳でもないんでしょう?」

 

 

 

「確認する必要もないほど離れ業だった。それだけだ。少なくとも闇派閥の幹部共ができる芸当じゃねぇ。」

 

 

 

「精査する情報は少ないだろうが、オッタル。敵の能力(ステイタス)を仮定するならどれほどになる?」

 

 

 

「Lv.6以上…未満は有り得ん。」

 

 

 

「なっ…!【猛者】と同じ…?」

 

 

 

「我々も『倉庫』制圧の際、素性不明の女と接触した。魔導士、或いは魔法剣士だと思われる。

 

直接の被害はなかったものの私を含めた総勢三十人の団員が手玉に取られた。」

 

 

「【ガネーシャ・ファミリア】を一人でだと…どこ所属の魔導士だ…」

 

 

 

過去の強豪共(オシリス・ファミリア)の例もある。第一級冒険者並の戦力を隠し持っていた可能性は捨てきれんのう。」

 

 

 

「後者はともかく前者の戦士が闇派閥に与している可能性は高い。各派閥。独断行動は避けるようにしてくれ。」

 

 

 

各派閥、代表が頷く。

 

 

 

「最後になるが…『本題』に入る。

 

……【ヘルメス・ファミリア】の偵察で闇派閥の新たな拠点が見つかった。」

 

 

 

「廃棄された施設を利用しているようです。これまでと異なりかなりの規模…それも3つ。内部までは探れませんでしたが、一般人を装った見張りの数から言っても相当に『臭う』。恐らくは『本拠地』と言っても過言ではないでしょう。」

 

 

 

「そこで、この3つの拠点を同時に叩く。」

 

 

 

「一つは【アストレア・ファミリア】が行くわ!」

 

 

 

「僕はまだ何も言ってないよ?」

 

 

 

「本拠地に突撃する【ファミリア】を募るんでしょう?二つの都市最大派閥(ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリア)を分けるのは当然として、残り一つは余る!

 

なら一つを受け持つわ!機動力なら負けはしないもの!」

 

 

 

「フィン、我々(ガネーシャ・ファミリア)も【アストレア・ファミリア】と連携する。それなら頭数は十分だ。」

 

 

 

二派閥の長の言葉を受けて【勇者】も了承。

輝夜の指摘した“罠の可能性”は作戦に直接は参加しない【ファミリア】に警戒を依頼することになった。その連絡、指示をギルドに依頼。ロイマンも渋々了承していた。

 

 

 

更に、【ヘルメス・ファミリア】が迅速な連絡を行い。大規模な連携を可能にする。

 

 

 

「さて、察しの通りこれは大規模な『掃討作戦』になる。拠点が発覚した今、放置の選択肢はない。こちらから打って出る。

 

敵に気取られないよう、細心の注意を払ってくれーーここで戦局を決定付ける。」

 

 

 

各派閥が決意を固めた所で、会議は解散となった。

 

 

だが、嫌な予感がする。

 

 

何時だって、絶望は知らぬ間に忍び寄り、こちらの寝首を搔くものだ。

 

 

私は拳を強く握った。

*1
フルルドリス姉様と一緒に教導国家ドラグマから離反した姉様のお供1号

*2
同じくフルルドリス姉様のお供2号





伏線ってムズいですね…

そして発覚した【白骸(アルバスセイント)】のデメリット。
使う度精神を乱され、最終的には…


フィンは今回の一件でルリスの存在を認知しました。狙いを見抜き、歩調を揃えたルリスには高評価です。

次回はこのまま『大抗争』まで行きます。

私の文章力だと寄り道した瞬間筆が折れそうなので、何卒ご容赦ください。

それでは最後に、

どうだったでしょうか?

よろしければ評価・感想よろしくお願いします!
(日本書紀)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。