迷宮都市にて咲く菖蒲   作:にがりって…美味しいよね。

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散る菖蒲(バッドメッセージ)

 

 

 

 

 

物資が搬入されていく。

神エレンーー正しい神名こそ分からなかったが敵の首魁と思われる邪神ーーとの邂逅から一日経ち、夕刻。

 

 

 

ついに『掃討作戦』の日を迎えた。

一日、敵の(カウンター)について考えを巡らせた。

そして、最悪の可能性に、先程気づいた。

 

 

 

その予感を払拭できず、副団長(輝夜)団長(アリーぜ)から【ファミリア】に周知してもらった爆発物の()()()()()()

予想の段階だが、奴らならやりかねない。

そのため【ガネーシャ・ファミリア】にも先程通達した。

そして、【万能者(ペルセウス)】に伝言を頼んだ。じき、他派閥にも伝わるが…

 

 

どうしても作戦開始の方が早い。

己の頭の回転の遅さを呪うが、ここに拘泥しても無為に時間を消費してしまう。

後悔は、全て終わった後で。

 

 

 

「団長、全員配置についた。」

 

 

 

「そう、わかったわ。敵には気づかれてない?」

 

 

 

「現状、そのような気配はない。…逆に、何かあるのではないかと勘繰りたくなるほどだ。」

 

 

 

「そう…でも行くしかない。今日ここで闇派閥(イヴィルス)の拠点を落とす。ルリスの“予想”の件もあるわ。総員、警戒を。」

 

 

 

戦意が、高まっていく。

静かに、闘志が燃える。

 

 

 

 

 

別の拠点でも、同様に時を待っていた。

 

 

 

「オッタル様、アレン様、本当によろしかったのですか?ヘグニ様、へディン様、そしてアルフリッグ様を部隊に加えず…」

 

 

 

「エルフと小人族(パルゥム)の手なんざ要らねぇ。そもそもオッタル(この猪)がいる時点で過剰だ。」

 

 

 

「予備隊の指揮はヘディンに任せる。有事の際は奴の指示に従え。」

 

 

 

「はっ!…ご武運を。」

 

 

 

「予定の時刻になったら喰い破る…止めるんじゃねえぞ。」

 

 

 

「あぁ、殲滅するのみだ。」

 

 

 

二匹の血に飢えた獣もまた、時を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

「フィン、作戦準備は完了した。三拠点の同時制圧まで間もなく…どうした?」

 

 

 

「親指が疼いてる。」

 

 

 

「いつもの勘か?」

 

 

 

危機を知らせる、【勇者(ブレイバー)】の親指。それが、目に見えて痙攣していた。

 

 

 

「あぁ…八年前、『暗黒期』が始まってから、常に疼いていたけど、今日のそれは今までで一番強い。」

 

 

 

「…どうする?」

 

 

 

重傑(エルガルム)】の問いに、【勇者】は毅然として答えた。

 

 

 

 

「行くしかない。先延ばしにしたところで意味は無い。万全の準備を済ませたのなら、後は乗り越えるか、砕け散るか、二つに一つだ。」

 

 

 

決戦の時は近い。

 

 

夕日が段々と、傾いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は来た。

 

 

 

「時間だ。」

 

 

 

「ーーー突入。」

 

 

 

静かな声が、開戦の合図だった。

 

 

 

 

 

『大抗争』開幕

 

 

 

 

 

「時は来た。」そう静かに笑った神は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁ!」

 

 

 

闇派閥の悲鳴がそこかしこから聞こえる。

突入を開始し、既に何人かを捕縛していた。

 

 

 

「施設を制圧するわ!ネーゼ!マリュー!イスカ達を連れて散って!私達本体は奥まで行く!『いのちだいじに』!」

 

 

 

アリーゼの言う、『いのちだいじに』。

これは敵の()()に気をつけることを暗号化したものだ。パッと聞いただけでは作戦を看破したとは気付かれない。

咄嗟に捻り出した有り合わせの策だが…

 

 

 

「一人たりとも逃がすな!全員無力化し、捕縛しろ!」

 

 

 

「通路奥!あとは上!来んぞ!」

 

 

 

ライラの警告を聞いて、注意を向ける。

その瞬間、奇襲を用いた闇派閥と前衛がぶつかる。

 

 

 

アーディさんが中央を、輝夜が右を、リオンが左を薙ぎ払う。

 

 

 

最後のリオンの魔法を見てライラが声を上げる。

 

 

 

「魔道士でもないのに相変わらず馬鹿げた砲撃!敵もあらかた吹っ飛ばしたしこりゃ楽勝だぜーーと言いてぇところだが…」

 

 

 

「あぁ…()()()()()()()()()()。」

 

 

 

象神の杖(アンクーシャ)』…シャクティさんの言う通りだ。ここまで進んだのに脱落者0。いっそ疑わしい。

 

 

 

「やはり罠をこさえているか。敵の拠点なら防衛手段はあって然るべきだが…フルルドリスの予想通りだけは御免こうむる。」

 

 

 

「だとしても作戦続行よ!相手も施設内の多くの人員を失ってる!このまま最後まで畳み掛けるわ!ルリス!どう?」

 

 

アリーゼの言葉を聞きつつ、伸びている闇派閥の腹部をまさぐる。

 

 

 

「アリーゼ。輝夜。シャクティさん。()()()()()。変わらず『いのちだいじに』でお願いします。」

 

 

 

二派閥の合同部隊に動揺が走る。

私の予想を聞いても、信じられない者が多かったのだろう。【アストレア・ファミリア】の面々も半信半疑だったのだから。

 

 

 

「なんて下劣な…!」

 

 

 

「リオン、怒りを抑えて。私はアレを解除して回ります。団長達は奥を抑えて下さい!」

 

 

 

「分かったわ!行きましょう!」

 

 

 

私は奥へ向かう彼女らを横目に、【ガネーシャ・ファミリア】の捕縛隊に加わり作業を開始する。

 

 

 

「これだけの量…一斉に起爆したらこの建物が耐えられない…しかも、闇派閥が信者も含めてこれを装備してると考えれば…」

 

 

 

被害規模は、凄まじいものになる。

 

 

 

しかし、気になる点が一つ。何故追い込まれたにも関わらず、先程のタイミングでこれを使わなかったのか。

 

 

まさか…

 

 

 

「【ガネーシャ・ファミリア】の皆さん、ここをお願いします!敵は狼煙を上げるつもりです!都市全域に合図が波及するよう、恐らくこの建物を爆破してきます!奥で爆発が起きた後は退避の用意を!アストレア・ファミリア(うち)の別働隊にも同様の連絡をお願いします!」

 

 

 

私はそれだけ叫んで奥へ向かった。

無責任だとはわかっている。しかし、納得させるにはこれしかなかった。

ここにいる…いや都市全域の闇派閥は恐らく相打ち前提の死兵。

これに先手を取られた以上、情勢は闇派閥に傾く。

 

 

なら今すべきは後手から捲るための戦力を蓄えつつ、遅滞戦闘に努めること。

 

 

特に、二級冒険者以上の戦力は、一人たりとも失えない…!

 

 

私は全速力で最深部へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「道が開ける!最深部!」

 

 

 

フルルドリスやネーゼ達を後ろに残して私達は通路を駈けた。

そして、アーディの言葉通り、広い場所へ出た。ここが最深部で間違いないだろう。

 

 

 

「よぉ、来たなぁ。」

 

 

 

「ー!【殺帝(アラクニア)】!!」

 

 

 

後方からの声にそちらへ振り向く。積み重なったカーゴの上に佇んでいたのは闇派閥のLv.5。【殺帝】ヴァレッタ・グレーデ。

 

 

一通り私達を見回して、奴は吐き捨てた。

 

 

 

「チッ…フィンがいねぇ…あの(アバズレ)てきとーな情報よこしやがって…つーか、正義の糞共(アストレアの連中)がいるのにあのクソガキもいねぇじゃねぇか。」

 

 

 

不機嫌そうな顔を隠そうともしないが、一転して気味の悪い笑みを浮かべた。

 

 

 

「にしても、ここまで来んのが速すぎんだろうがよぉ〜電光石火どころじゃねぇぞ、ったく。」

 

 

 

「言葉と顔が一致してねーぞ。汚ぇ笑みぐらい消しやがれ。ーー何を隠してやがる。」

 

 

 

ライラの言葉に【殺帝】は口角を上げる。

 

 

 

「さぁなぁ…テメェらをブチ殺すための算段じゃねぇか?」

 

 

 

「ヴァレッタ・グレーテ!施設内は制圧した!兵士も殆どを捕らえている!大人しく投降しろ!」

 

 

 

シャクティの降伏勧告に、ヴァレッタは…

 

 

 

「ヒャハハハハ!その台詞にハイそーしますと答える悪党がいるかよぉ!出ろぉ!てめぇら!」

 

 

 

その言葉の直後、現れた多くの闇派閥。

こちらを包囲するように躍りかかってくる。

 

 

 

「伏兵…!」

 

 

 

「まだこんなに…!」

 

 

 

「来やがれ!遊んでやる!」

 

 

 

乱戦が始まった。

 

 

 

退()け!」

 

 

 

輝夜が一人斬り伏せる。しかし、キリがない。

こちらも似たような状況だ。

 

 

しかも全員が先程までより練度が高く、何より死兵。喋る余裕すらない。

 

 

 

「孤立するんじゃねーぞ!敵も雑魚じゃねぇ!数で押されたら足元をすくわれるぞ!『いのちだいじに』だ!」

 

 

 

ライラの声に心の中で頷くと、また一人、斬り伏せる。

 

 

 

「ははははははっ!やるじゃねぇか!【象神の杖】!それに【紅の正花(スカーレット・ハーネル)*1!」

 

 

 

Lv.5の【殺帝】と渡り合う両派閥の団長。Lvこそ下回るが、技量と連携で互角の戦いをしていた。

 

 

 

その時、視界の端でアーディに迫る少女を見つけた。

闇派閥の装束を纏ってこそいるが、明らかに私達よりも年下だった。

 

 

アーディの目に瞋恚の炎が灯る。

 

 

 

「ナイフを捨てて!戦っちゃダメだ!君みたいな子供に武器を持たせる大人の言うことなんて聞いちゃいけない!」

 

 

 

敵が寄ってきて、悠長にしていられない…!

…では、では…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「アーディ…!その子供は!」

 

 

 

「かみさま…」

 

 

 

少女(正義)少女(無垢)が、手を触れ合わせた。

 

 

 

「おとうさんと、おかあさんに、あわせてください…」

 

 

 

悪に扇動された無垢なる思いが、悲劇を引き起こす。

最早悲鳴に近いその声に、手を振り払えない。

 

 

 

「アーディ!!!」

 

 

 

閃光が、爆音が、灼熱が、弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

 

 

 

辛抱たまらんとばかりに哄笑を続ける【殺帝】。

 

 

 

 

「見てるかァ、死神(タナトス)の糞野郎!テメェが誑かしたガキが冒険者を、道…連れに…」

 

 

 

彼女は悦びを最後まで口にできなかった。

標的(ターゲット)の冒険者は間違いなく死んだ。死んだはずだ。しかし。今も身体が“原型を留めている”。

 

 

炸薬として詰め込んだ『火炎石』の量からして、直撃したなら遺体の痕跡など精々が蒸発し損なった血の痕ぐらいのものだ。そのはずだ。しかし、そうはなっていない。

 

 

土煙が、完全に晴れる。

 

 

そこには、こちらに背を向け、焼けこげた騎士甲冑があった。

 

 

 

「クソガキ…テメェ、あの一瞬で“割り込み”やがったのか!」

 

 

 

近くの地面に刺さる大剣を軸にして『象神の詩(ヴィヤーサ)』を蹴り飛ばし、身を盾にした。

 

 

しかし…

 

 

 

「自分は死んだ!庇った仲間も重傷で!ざまあねぇなぁ!」

 

 

 

焼けこげた鎧は動かず、奥の『象神の詩』も所々骨が折れている。

 

 

その光景にニタリと笑う。

周囲も地獄絵図(いい景色)だ。

 

 

絶叫し、願いを叫びながら冒険者へ突撃し自爆していく花火達。そしてその爆発が奏でる命が終わる音。

 

 

最高の悦楽に少し頬を緩める、が。

 

 

まだだ。あの神サマの企てた惨劇(ショー)はこんなチャチなもんじゃねぇ。

まだまだこれから楽しめる。

 

 

 

「狼煙は上がった!もう止まらねぇ。ーーじゃあな、冒険者共。くたばりやがれ。」

 

 

 

裏口へ歩を進め、後ろに手持ちの火炎石を全てばらまいた。

 

 

大規模な爆発が誘爆を引き起こし、地獄の度合いが増しただろう。唯一の通路も塞いだ。まぁ、全員帰還は間違いなく無理だろうな。

 

 

 

「ヒャハッ!」

 

 

 

歪な笑顔を浮かべる【殺帝】。

その姿が闇へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに、重傷者も多い。全員の帰還は絶望的だ。

しかし、たった一つだけお前は判断を誤ったんだよ。【殺帝(アラクニア)】。

 

 

 

それは…“私の死亡確認をしっかりしなかったことだ”。

 

 

 

 

 

 

 

「シャクティ!ライラ!輝夜!脱出っ!」

 

 

 

「わかってる!だけど…やめろ!リオン!生き埋めになりてぇのか!」

 

 

 

「だって!まだ、あそこにアーディが!アーディがいる!ルリスだって!」

 

 

 

爆炎の向こう。その壁面に磔にされたように押し付けられたアーディ。そして、死んだまま微動だにしないルリス。リオンはその二人の回収を諦められなかった。

 

 

 

全員が葛藤し、目を離した、一瞬。

閃雷が発露した。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「【神罰(パニッシュメント)】。」

 

 

 

そして、残りの精神力(マインド)を全てつぎ込んだその手はアーディを包み込み、姉、シャクティの元へ送り届ける。

 

 

質量を持った【神罰】は雷鳴としての威力を著しく損なう。

それは恐らく、《魔法》として想定されていない形だからこそ。

 

 

 

死んだと思われたが故に届いた、一度限りの救出。

事実、フルルドリスの生存に気づいた闇派閥が一斉に群がった。

 

 

 

 

「走れぇ!!!!」

 

 

 

 

その最期、爆炎の中から振り絞った絶叫が響く。

立ち止まるリオンを、近くにいて、担ぐことが出来た輝夜が無理矢理担いだ。

 

 

 

「ダメだ!そんな!」

 

 

 

止まらない。今走っているのは自分の足ではないのだから。

止まれない。託されたから。これが最も正しい判断だったから。

 

 

 

 

拠点は崩落したものの、脱出は成功した。

【ガネーシャ・ファミリア】

軽傷者多数、重傷者3名、死者、19名。

【アストレア・ファミリア】

軽傷者11名、重傷者0名、死者、1名。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Take1 failed……

 

 

 

continue?

 

 

 

 

 

*1
アリーゼの二つ名





死んだッ!第一部[完]ッ!!

…冗談です なんでもします 許してください。

是非ともアンケートの回答をよろしくお願いします。
文法的におかしいのは見逃してください。ミスではないので。

そして、アーディ生存ルート入りました。
直前までかなり迷ったのですが、生きてもらうことに。
リオンとてぇてぇしてくれや。

ちなみに、ヴァレッタが原作より多くの火炎石を持っていたのはルリスのスピードを制限するためでした。
結果として死因になってるので、ヴァレッタの判断は正しかった訳ですね。


それでは最後に、

どうだったでしょうか?

よろしければ評価・感想よろしくお願いします。
(万葉集)

continue?

  • Yes we are.
  • No I’m not. ◁
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