自己肯定感低めの高2病元ぼっち 作:LSR
僕は部活には入っていない。友人のいない部活動なんて苦行だ。
図書館に行ったり、個人経営の良さげな喫茶店に行ったりしている方が余程いい。
そういう場所で過ごして、思いついたことを書き留めていって、小説のアイデアになれば書く。ああ、これでお金も稼げるなら最高なのに。現実問題、自分の文章はお金を取れるレベルとは思っていない。それでも書きたいのだから仕方がないのだ。書きたくないのに書くのも、書きたいのに書かないのも嫌だ。
そういうスタンスで今日も、気に入っている喫茶店で思い付きを文章にする。そこそこ良いのが書けた気がするから、投稿。
「あ」
「ヒッ」
後ろの席から聞こえた声にびっくりする。何か近かったから。咄嗟に出た声を抑え込みながら見てみると、同じ高校生くらいに見える女性がいた。
「あ、えと」
こちらを見ている。
「何かありましたか」
黙ってないでなにか言ってくれ。
「………ごめんなさい」
「何が」
「スマホ、覗いてしまいました」
「はぁ?」
瞬間的に怒りと不安が頭を支配した。何覗いてんだプライバシーの侵害だぞクソ女が、確実に見られたよな小説を投稿したところと小説サイトのアカウント名とか本当にふざけるなよ謝って済むと思うのかよ。
「ッ、フーー………」
落ち着け。ここは好きな店だ。静かな空気を乱したくはない。まずは質問だ。
「何で覗いたのか、聞いていいですか」
女性は悪人という感じではない。むしろ真面目そうだし、何なら僕と同じタイプ、有り体に言って陰キャの雰囲気を感じる。学園モノで女子にいじめられていそうなタイプ。他人のプライバシーをおいそれと侵害するようには見えない。
「好きな感じの文だったから」
「は、はぁ」
「お手洗いに行くときに目に入って、読みたいと思って」
「ん、んー………」
ド直球の褒め言葉。むず痒いし顔も熱くなる。
「それでついつい見ていたら、知っている作家さんだったので、声が出てしまいました」
「ってことはまさか………」
「読者、です」
参った。嫌悪と歓喜でもうぐちゃぐちゃだ。でもとりあえずこれだけは言わなきゃならない。
「理由はわかりましたけど、他人のスマホ覗くなんてとんでもない行為ですから気をつけてください」
「そのとおりですね。本当にごめんなさい」
殊勝な態度の謝罪までされれば、もう僕は牙を収めざるを得ない。
女性がこちらを見るのをやめた。
僕はとりあえずテーブルの反対側の席に移る。そしてまだ湯気をたてている黒いブレンドコーヒーを飲んで、苦味で頭を落ち着けようとする。
「スゥーー、フーー………」
気まずい。気まずいことこの上ない。あの女が一見さんであればいいが常連だったらまた会うかもしれないじゃないか。とんでもない。この喫茶店に来ている人の顔なんてマスターや店員の人しか覚えてないから常連かどうかなんてわからない。ちくしょうこんなことはならもう少し関係ない人の顔も認識する意識つけとくんだった。最悪この店に来るのをやめないと行けないぞ畜生めが。
結局思考は落ち着かなかった。良かったのはアイデアを形にしたあとだったことと、店を出る前に女がもう一度謝罪をしていったことだった。いや、あとの方は良くなかったかもしれない。怒るに怒れないから。
店を出た僕はただ一言、呟いた。
「勘弁して………」