今回はボーダーに入った後のお話です。
時系列飛びすぎだろって?
すマーン!(デビルマン)
あ、みんな大好き迅さんが出演します
界境防衛機関、ボーダー
異次元からゲートを開いてこっちに攻めてくる奴らを丁重におもてなしする事が目的の組織。
そして俺の職場だ。
1人ぽつんと廊下に足跡を響かせる。
気になって腕の時計を確認してみると、短針は上を指していた。
今日もこの時間か……。
もっと寝かせてくれとボヤきたいのは山々なんだが、あっちの奴らは昼夜関係なしに襲ってくるからな。
それにボーダー隊員は学生が多い。つまるところ深夜のシフトは基本的に大人が入る事が多って事だな。
そんな理由で板についてしまった深夜の防衛任務。だれもいない深夜の廊下をてくてくと歩く。
いつもの代わり映えのない日常だ。
……だが、今日は違った。
「よぉ、ローラン……ぼんち揚げ食う?」
この男が現れたから。
「貰う、ま〜たなんか暗躍してるのか?」
「実力派エリートだからな、毎日走り回って忙しいよ。……そういうおまえは時間あるか?」
「答えの分かりきった質問じゃないか?それは」
「はっはっは、確かにそうだな」
こいつの名前は迅悠一、実力派エリートを自称するS級隊員だ。
S級隊員ってなんだって?ブラックトリガーっていう、超貴重で強力なトリガーを持ってる隊員の事だ。一般隊員と纏めると色々面倒だし人数も少ないからこの組み分けになってる。
更にこの迅って男がヤバいのは、目の前の人間の未来を見ることができるサイドエフェクト……超能力みたいなもんを持ってるって事だな。ほんとに辛いサイドエフェクトだと思う。
だって、あっち側とドンパチやってる中でのこのサイドエフェクトだぞ?勿論死人もでる可能性があるこのボーダーでだ。
つまり常時トロッコ問題を解き続けてるようなもんって訳だな。
全く、副作用とはよく言ったもんだな?なんならもう一歩踏み込んで『呪い』って命名していいと俺は思うね。
「立ち話もなんだ、部屋で聞こうか」
本部のボーダー隊員に貸し出される一室。
その扉を開いて迅を手招きする。
こいつはもっと休んだ方がいいと思うんだが、そうもいかないよなぁ。
何せ自分が休んだら未来が悪い方向に傾くかもしれないんだから。
「おじゃましま〜す……相変わらず物が多いなぁ」
「仕方ないだろ、研究室に置かせて貰えないんだから」
パチンと電気を入れると、部屋の全体像が照らし出される。
迅の感想通り、棚やダンボールでかなり手狭なこの部屋が俺の家だ。
「で、何があるんだ?」
給湯器をセットし、棚を開ける。
1番手前にあるココアの袋を引っ掴んで取り出す。
コーヒーもあるにはあるが、いつ寝てるのかもわからんこいつにコーヒーを振る舞うのは流石に心が痛むからな。
「近々ウチに期待の新人が入ってくるんだ。いいヤツそうなんだが訳ありでね……城戸派と衝突する事になるかもしれない。その時にローランに手を貸して欲しいんだ」
直球に告げられた頼み。
言い方からしてかなり重要度が高いことが伝わってくる。
はぁ……派閥争いなんて面倒事に首を突っ込みたく無かったんだが、いつまでも宙ぶらりんでは居られないって事なんだろうな。
「ふー……わかった、手伝う……おいおい、なんでそんな顔してるんだよ」
正に『苦虫を噛み潰したような顔』だな?
こちらを見つめる瞳からは、さながら自身が罪人でもあるかのような自責の念が見て取れた。
「……今回の衝突で、ローランのブラックトリガーが本部に没収される未来もある。それでも引き受けるのか?」
「ああ、変わらないな……そんな気にするなって」
言い終わった丁度お湯が沸いたので、席をたちココアをつくる。
こいつの頼みはこいつの為じゃない
悩んで悩んで悩みきった末絞り出された、より良い未来への先行投資だ。
こんなに利益の保証された投資もそうないだろ。
カップを持って戻ってみるが、迅の顔は未だ真剣そのものだ。
「ま、俺がこれから何を言うかわかってるだろうが……」
「全部あんたが背負う必要はない、もっと迷惑をかけていいんだぞ」
「全部あんたが背負う必要はない、もっと迷惑をかけていいんだぞ」
言い終わると、お互いに湯気の上がるマグカップを傾けた。
ココアのおかげか、お互いにふっと笑みが零れる。
「そういう事だ、決まった事があったら連絡をくれ」
「ありがとう」
その笑みは、『実力派エリート』の不敵な笑みだった。
ーーなんだかなぁ
こいつが『実力派エリート:迅悠一』じゃなく『迅悠一』になれる日が来ることを願いながら、俺は差し出されたぼんち揚げを口に放り込んだ。
部屋から出ると、しんと静まり返った廊下が迅を迎えた。
その静寂が今が深夜である事をひしひしと感じさせる。
……ローランには迷惑かけたくなかったんだけどな
ただそれが1番確実だったというだけで、派閥争いから真っ先に身を引いた人間をこの衝突に巻き込んでしまった事に、予知で断られない事をわかっていながらあのお願いをした事に、どうしようもない自責の念に駆られる。
全部あんたが背負う必要は無い……なんて言ってくれてるけど、あんたも同じでしょ。それにあんたはおれと違って、一つ残さずずっと背負い続ける。
旧ボーダー時代からの顔なじみ
自分と同じくらい生きにくいサイドエフェクトを持つ彼の姿を思い浮かべながら、玉狛支部への帰路へ着いた。
お礼にぼんち揚をダンボールで送ろうと胸に誓って。
次回、(たぶん)黒鳥争奪戦
デュエルスタンバイ!