ぼっちの兄もまたぼっち   作:差六

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前回のあらすじ
「クソボケ系兄」


第二十三話「情緒小学生三人組」

注文した唐揚げとポテトの匂いでひとりが復活した。

 

「はっ」

「こんな風に好きなものを近づけると、復帰までの時間が短くなるよ」

「なるほど、勉強になります後藤博士」

「うん。喜多さんには期待してるから、よく勉強してね」

「はい!」

「あっ、あの、どど、どうして私を囲んでメモを?」

 

 自分の生態を喜多さんに教えている僕を見て、ひとりが困惑していた。

喜多さんはひとりと学校も学年も同じ、しかもギターは師弟関係だ。

結束バンドの中でも、一番ひとりと接する機会が多い。

今後のためにも、僕が教えられるひとりのことは出来るだけ伝えた方がいい。

 

 蘇ってしばらくの間、ひとりは呆然と僕達の様子を見ていた。

やがて溶ける前のことを思い出すと、再び僕の背中に隠れようとする。

ひとりのためにも、協力してくれた喜多さんのためにも、こんな状況は早く終わらせないと。

その両肩を掴んで、強引に僕の方を向かせた。もちろん目は逸らされる。けど関係ない。

 

「あのねひとり、大好きだよ」

「!?」

「きゃーっ!」

 

 喜多さんが黄色い声をあげた。反応しないようにしたけど、凄いびっくりした。

彼女の方からかつてないほど陽のオーラを、キターンって擬音を感じる。そっとしておこう。

今はひとりだ。唐突な発言に驚いたのか、反射的に僕を見て、目を見開いて固まっている。

 

「あんなに言ってたのに、ひとり抜きで結束バンドの皆と会っててごめんね」

 

 最初は兄として、人としての義務感がほとんどだった。

だけど皆と接していく内に、無意識だけど僕がそうしたいからしていた。

 

「今更他人のことを好きになれるなんて思ってなくて、僕も浮かれちゃってた」

 

 あんな状況、路上ライブの時のような状態じゃなければ、一生気づけなかったと思う。

言い訳や逃げる余裕もなかった。だから素直に自分の気持ちを認められた。

だとしても、好きの数が増えたとしても、元々持ってた好きは何も変わらない。

 

「好きな人は確かに増えたよ。増えたけど、一番好きなのは、一番大切なのはひとりだから」

「きゃーっ!!」

 

 喜多さんはタンバリンとマラカスを鳴らしていた。かなりうるさい。どこから持ってきたの。

興奮し過ぎてひとりみたいなことしてる。人は皆心にひとりを飼っているのかもしれない。

そんなこと今はどうでもいい。照れて意味不明なことを考えてしまっている。冷静に冷静に。

 

「えぁぇぇうぁあ?」

 

 ひとりはもっと重症だった。何語だろう。

でもしょうがない。突然兄に好きとか言われても気持ち悪いと思う。

だけどひとりが何を考えているか分からない以上、僕に出来ることは気持ちを伝えることだけだ。

 

 結構な時間、ひとりは宇宙と交信できそうな謎の声を発していた。

それを黙って眺める僕と喜多さん。怪しい教団みたいだった。

やがてそれも治まると、ちらりと僕を見た。やっと目が合った。

 

「ずっとひとりに隠してて、ごめんなさい」

「……………………わ、私も、ずっと黙ってて、ごめんなさい」

「ううん、全部僕が悪いから」

 

 いや私が、いやいや僕が、と譲らない僕達のことを、喜多さんは笑顔で見守ってくれていた。

 

 

 

「仲直りできてよかったですね、先輩」

「喜多さんのおかげだよ。ありがとう」

「あっ、ありがとうございます、喜多さん」

「いえいえ、どういたしまして。ところで先輩」

 

 僕達のお礼を受け取った喜多さんは笑顔だった。笑ってる、そのはずなのに威圧感がある。

何か怒ってる? 練習しに来たのに兄妹喧嘩に巻き込まれたから、それならとっくに怒ってるはず。

必死に原因を考える僕に、喜多さんは笑みを浮かべたまま質問をぶつける。

 

 

「果し合いって、なんのことですか?」

 

 

 果し合い? 僕も聞きたい。果し合いって何のこと?

心当たりがないから、ひとりに確認を取ろうとする。また目を逸らされた。

今度はさっきまでと違う。あれは気まずくて逸らしている。

その顔で思い出した。以前、喜多さんと会うことを果し合いって表現したことがあった。

 

「ごめんなさい」

 

 今日の僕は謝ってばかりだなって思った。

 

 

 

 喜多さんの怒りは、今度彼女の都合がいい時に、クレープを奢る約束をしたことで鎮まった。

なんでもSNSで評判で、いつも行列のできる大人気店らしい。

喜多さんと出かけることへの抵抗はなくなったけど、僕は今も魔王だ。

彼女の評判が落ちないよう、事件が起こらないよう、また何か対策を考えないと。

 

「そういえば、リョウ先輩と伊地知先輩にはいつ言うんですか?」

 

 喜多さんの言葉に、僕は渋い顔をしてしまった。

今日はもう疲れた。凄い疲れたのに、まだあと二人も打ち明けてない。

よく考えたらバレても大丈夫にはなったけど、絶対に言わなきゃいけないって訳じゃない。

別の要因もあったけど、喜多さん一人に話すのにこの労力。出来るだけ先延ばししたい。

 

「今度言うよ」

「今度っていつですか?」

「……そのうち?」

 

 すっとぼけた反応をする僕に喜多さんは頬を膨らませた。

許してはくれたけど、今も僕の背中に張り付くひとりがボソッと呟いた。

 

「お兄ちゃん、約束」

「うっ」

 

 当然ひとりは覚えていた。そして小さな声だったのに、喜多さんにも聞こえたみたいだ。

斜めになって僕とひとりを見ている。その視線に僕達が耐えられるはずもなかった。

 

「後藤さん、約束って?」

「あっ、皆とライブ終わった後に会うって約束です。破ったら僕のこと好きにしていいよって」

「好きにしていい…………」

 

 音がする。徐々に耳に入る。小さく響くキターンが、繰り返す度に大きくなっていく。

 

「先輩、約束破りましょう!!」

「き、喜多さん!?」

 

 この瞳の輝きはあまりにも危険だ。約束を破れば、どうなるか予想もつかない。

しょうがない。前々から仕込んでおいた布石を使うしかない。

 

「ひとり、確かに僕はライブ後に会うって言ったよ。だけどいつまでに、とは言ってないよ」

「!?」

「うわっ、先輩最低です」

「ふふふ、好きに言っていいよ」

 

 二人分の冷たい視線に虚勢を張る。胸が痛い。それでも僕はなるべく先伸ばしにしたい。

実際にこうして喜多さんに話すまで、ここまで勇気が必要だなんて思わなかった。

二週間分くらいの勇気は使った気がする。今は在庫切れだ。

 

「今日こうやって喜多さんに話すのも結構勇気が必要だったから、少し時間が欲しい」

「……うん、そうだよね。おに」

「後藤さん、ここで甘やかしちゃ駄目よ」

 

 ひとりが納得してくれそうなところで、喜多さんの妨害が入った。

甘やかしちゃ駄目。この言葉で甘やかされる側に立つことになるなんて。

密かに衝撃を受けている僕を放置して、喜多さんはひとりと話していた。

 

「後藤さん、夏休み最終日って空いてる?」

「あっはい。いつでも空けておいてます」

「いつでも……? 先輩も大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

 

 僕の答えを聞いてから、喜多さんは携帯を操作し始めた。

タップが早い。僕達の数倍だ。感心しているとひとりの携帯が着信音を鳴らす。

携帯を取り出し、画面に映ったメッセージを見て、ひとりが目を見開いた。

 

「えっ、き、喜多さん、これ」

 

 画面を指差すひとりの手は、ぷるぷると震えている。

よほど衝撃的なことが書かれていたようだ。僕の興味を察知したひとりが、携帯を渡してくれた。

念のため喜多さんの顔色を窺う。ニコニコと頷かれた。僕も見ていいらしい。

 

『夏休み最終日、結束バンドで江ノ島に行きませんか?』

 

 結束バンドのグループチャットに、この一文が書かれていた。

これ自体はとてもいいこと、嬉しいことだ。

夏休みに皆とどこかへ行きたいな、といつだかひとりは言っていた。

期せずして、その願望は叶いそうだ。だけど、これと僕に何の関係があるんだろう。

 

『いいね! 皆とどこかに行きたいって思ってたんだ!!』

 

 伊地知さんからすぐに返事が来た。彼女は乗り気だ。

既読数からすると、山田さんも見ているはずだけど返事は無い。

喜多さんは山田さんの反応を待っていたけれど、途中で諦めて僕を見て、宣言した。

 

「ここに先輩を連れて行きます」

 

 そんなことをすれば、何も知らない二人がそこで僕を見れば、一体どうなってしまうか。

よくて事情の説明で時間が取られて、予定が台無しになる。

悪くて、悪くては、想像しなくても大体分かる。大惨事だ。

 

「そんなこと言われても、僕はきっと逃げるよ」

 

 喜多さんに嫌われてしまうかもしれないけど、そうすれば何も起こらない。一番無難だ。

僕の堂々とした情けない発言を聞いても、喜多さんは身動ぎ一つしない。

人差し指を立て、出来の悪い生徒に教えるように、優しく語り掛けた。

 

「ふっふっふ、先輩、さっきお願いしたお店、調べてみてください」

 

 言われた通り検索してみる。喜多さんの言っていた通り評判がいい。

ぱっと見レビューサイトの評価も上々で、お店を取り上げたニュースなんかも出てくる。

これがどうしたんだろう。喜多さんの言いたいことが分からない。

彼女の様子を確認すると、得意そうな笑顔でヒントを出してくれた。

 

「ここの住所ってどこでしょうか?」

「…………こ、これは」

「約束、守ってくださいね?」

 

 江ノ島だった。まさか、あの約束をした時からここまで読んで、そんな馬鹿な。

またしても完全敗北を喫した僕の前で、ひとりは喜多さんを畏敬のまなざしで見ていた。

 

 

 

「どう打ち明ければいいと思う?」

 

 喜多さんに完膚なきまでに負けて、タイムリミットが出来た。

先延ばしを決意していた僕は、完全にノープランだ。

だから、人付き合いの女王である喜多さんに相談させてもらうことにした。

 

「伊地知さんは普通に話せば平気だと思うけど、山田さんが心配で」

「リョウ先輩には、ご飯を届けてるんですよね」

「うん。メールで指定された場所と時間に隠れて置く感じ」

「危ない運び屋みたいですね」

「実際何回かお巡りさんに声かけられたよ」

 

 同年代よりも、お巡りさんの方が話した回数は多い。慣れたものだ。

事情を説明して、クーラーボックスの中身を見せたら納得してくれた。

理由は分からないけど何故か、若いのに偉いねと褒めてまでもらえた。

何と勘違いしてたんだろう。山田さんの名誉のためにも確認はしなかった。

 

 喜多さんは乾いた苦笑いを浮かべていた。話の流れで言っちゃったけど、気にしないでほしい。

気を取り直して少し考えた後、喜多さんは一つ提案してくれた。

 

「それじゃあご飯のそばに隠れて、リョウ先輩が来たら飛び出して」

 

『こんにちは、魔王です! 実はひとりの兄です!!』

『う、うわー、ぼっちの兄は魔王だったのかー』

 

「なんていうのはどうですか?」

「結論から言うと、多分山田さんは死ぬ」

「突然の死!?」

 

 山田さんは意外と気が弱い。

僕が飛び出して一回、声をかけてもう一回、兄と名乗って駄目押しで更に一回。

スリーアウトだ。確実に意識を失うと思う。最悪命も逝く。

 

「今までも何回か山田さんに声をかけたことはあるけど、毎回気絶してるから」

「…………あの、本当に先輩と目が合うと、人って気絶するんですか?」

 

 喜多さんは疑わしげだ。そういえば、喜多さんの前で誰かを気絶させたことはなかった。

疑って当然だ。目が合うだけで気絶する。現代社会に生まれたファンタジーだ。

だけど悲しいことにフィクションじゃない。現実だ。僕がこうしてここにいる。

だとしても、じゃあ実践してみようか、なんてする訳にはいかない。

いくら僕でもそのためだけに、そんな暴力じみたことは出来ない。

 

「本当だけど、信じられないのも無理はないよね」

「試してみてもいいですか?」

「いや、流石に見知らぬ人でも生贄にするのはちょっと」

「そうじゃなくて、私にです」

 

 喜多さんは自分を指差していた。一瞬何を言っているのか分からなかった。

 

「私気絶ってしたことないので、一回してみたいです!」

 

 何故かキラキラとした、期待のこもった目をしている。

不思議な好奇心を喜多さんは発揮していた。しないで済むなら一生しない方がいいと思う。

 

 僕の返事も待たず、喜多さんは顔を覗き込んでくる。

廣井さんにやられた時も思ったけど、見つめられるのって緊張する。

落ち着かない。妙な心地がする。ふわふわした、変な浮つき方をする。

恥ずかしくなってつい目を、顔を逸らしてしまう。

 

「あっ、駄目ですよ先輩。目が合わないと、気絶って出来ないですよね」

 

 両手で顔を掴まれて、喜多さんの方へ向けさせられた。確かにそうだけど、無理だと思う。

無意識の内に溜めこんでいる敵意を伝えることで、多分僕は他人を気絶させている。

ただ、今の僕はもう喜多さんへの好意を自覚している。敵意なんて持ってない。

それを伝えれば、いや、この場にはひとりがいる。

この状況にまた何故か震えているけれど、話くらいなら聞ける状態だ。

敵意云々の話は、この子には一生しないつもりだ。だから今は伝えられない。

 

 喜多さんが満足するか、諦めるまで待とう。僕は観念した。

視線を喜多さんに戻す。彼女は目だけじゃなくて、僕の顔全体をじろじろ見まわしていた。

ほーとか、はーとか、感心したような声を漏らしている。目が合うと、にっこり微笑まれた。

この段階でまったく気絶する気配がないのだから、もう諦めてほしかった。

 

 そうやって待っていると、なんだか不思議と悔しくなってきた。

僕がこうして微妙な気持ちになっているのに、喜多さんは妙に楽しそうだ。

推測だけど彼女はもう気絶しようとか思ってない。別のことを目的にしている。

こうなったら僕も対抗して、喜多さんをじろじろ観察しよう。そして恥ずかしがってもらおう。

 

 改めて、まじまじと喜多さんの顔を見つめる。

女の子だなって思った。自分で言うのもなんだけど、馬鹿みたいな感想だ。

 

「喜多さんって女の子だったんだね」

「今までなんだと思ってたんですか!?」

「あっ、そうじゃなくて」

 

 うっかり漏らしてしまった独り言に、今までで一番大きな声を出された。

その喜多さんの目には、しっかりと怒りが燃えているのが分かる。

未だにくっついているひとりの震えが僕にも伝わる。なんとか喜多さんを鎮めないと。

 

 怒らせた女の人をどうすればいいか。

確か父さんが母さんを怒らせたときは、ベタ褒めして宥めていた。

ひとりには通じないから、あまりやったことはない。だけど他に参考に出来るものもない。

 

 問題はどこを褒めるか。僕は嘘が下手で、喜多さんは見抜くのが得意なようだ。

適当なことを言っても、すぐ気づかれて火に油を注ぐだけだろう。

だから大切なのは、本気で僕が凄いな、いいなと思うことを言うことだ。

ぼんやりと見ていたさっきと違って、真剣に喜多さんの顔を観察する。

 

「女の子だった、というか、女の子らしいなって思って」

 

 小さい女の子が想像する、素敵な女の子を具現化すると大体喜多さんになると思う。

お洒落で明るくて、優しくて友達も多い。まさしく理想的って感じだ。

ひとりは方向性が違うから言わないけど、ふたりには喜多さんみたいな子に育ってほしい。

 

 偏見だけど女の子と言えばファッションが好きだ。ここを褒めるのはどうだろう。

服装、喜多さんはお洒落さんだ。いつも違う服を着ている。どれも似合っていた。

きっと流行のものだったりするんだろう。だけど僕はファッション関係に疎い。

説得力がないな。ここはやめとこう。なら別のことを。

今気づいたけどちょっと化粧もしている。ナチュラルメイクというものだろうか。

これは、分からない。いくら僕でも化粧はさっぱり分からない。ここも触れないでおこう。

 

 というか顔を見てるんだから、ここを褒めた方がいいな。

喜多さんは目鼻立ちが整っているから、どこを褒めても嘘にはならない。どこにしよう。

少し悩むけど目、瞳かな。うん、僕が思う一番素敵なところは目だ。

二重で大きい綺麗な瞳。形もそうだけど、そこに映る輝きが僕は好きだ。

いつでもキラキラとしていて、心の底から今を楽しんでいるというのが伝わる。

僕と目が合った時でさえもその光は濁らない。太陽みたいだなって時々思う。

家の外で瞳の中に、恐怖と後悔以外を見せてくれる人はほとんどいない。

この輝きを見るたびに、僕はなんとなく許されたような、救われたような気持ちになる。

 

 顔というと、表情もいい。ころころと変わる、その全てが魅力的だと思う。

いつもの明るい笑顔。優しい時の静かな笑顔。今みたいに怒っている時でさえも。

いつだって生き生きとしていて、こっちまで元気をもらえる。

だから喜多さんといて、喜多さんを見ていて退屈することはない。いつまでも見ていられる。

 

 というわけで、顔について思ったことをそのまま伝えた。下手な嘘や誤魔化しは抜いた。

そして僕の言葉だけだと説得力がなさそうだから、ひとりにも同意を求める。

急に話題を振られてひとりは驚いていたけど、おずおずと同意してくれた。

 

「ね、ひとりもそう思うでしょ」

「う、うん。私も、き、喜多さんは可愛いと思います」

「ひとりは喜多さんのどこが好き?」

「うっうぇ!? え、ええ、えっと、私は」

 

 どうしよう。人のいいところ、好きなところを考えるのって不思議と楽しい。

だからそのままひとりと、喜多さんのいいところ談義をしようと思った。

だけどそれは、他ならない彼女自身に止められてしまった。

 

「……その辺で、もうその辺で、もう、お腹一杯ですっ」

 

 目の前に広げられた手のひらで、視界の大半は埋められている。

微かな隙間から見えた喜多さんは、顔を背け明後日の方向を見ていた。

髪から覗く耳は赤い。照れている、恥ずかしがっているらしい。よし。

一度怒らせてしまったけど、なんだかんだで当初の目的は達成できた。

そして初めて喜多さんに勝てたような気がする。やったね。

 

 勝利の喜びに浸る僕は、ひとりが極めて微妙な目で僕を見ていることに気がつかなかった。

そしてその後、時間をかけて落ち着きを取り戻した喜多さんと、歌の練習を始めた。

途中青春ソングを聞いてひとりがバラバラになったりしたけど、楽しい、身になる一日だった。

 

 そういえば結局、山田さん対策は何も決まらなかった。

だけど僕が打ち明けても、というか僕達のことを知っていても喜多さんは何も変わらなかった。

変わらない態度が、笑顔が、僕に勇気を与えてくれた。

彼女がくれたこの勇気を大切にして、山田さんにも話をしよう。

 

『そろそろ死にます』

 

 携帯に届いた久々のご飯催促メールを見て、僕は改めて決意を固めた。

 

 




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