ぼっちの兄もまたぼっち   作:差六

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前回のあらすじ
「陽キャに勝てた」




第二十四話「王様になってもう十一年」

 山田さんにご飯を届ける時、時間と場所は彼女が決めている。

行きつけのお店だったり、大きめのロッカーだったり、バリエーション豊かだ。

皆が家に来た辺りからしばらくの間、不思議と連絡がなかったけどやっと来た。

今回は下北沢高校、僕達の教室を指定された。

 

 なんでも、今日山田さんは先生に呼び出されたらしい。

前回の登校日が期限の宿題がいくつかあったのだけれど、彼女はその日さぼった。

その後それらをまったく提出せずに、最近までやり過ごしていた。そして雷が落ちた。

さっさと持ってこないと補習を受けさせる、と言われたそうだ。

 

 呼び出された時間はちょうどお昼ごろだ。それに合わせるように僕達もここに来た。

僕達、そう、ひとりも一緒に来てくれている。

理由は教えてくれなかったけど、きっと僕がちゃんと説明できるか心配してくれたからだ。

ひとりが直接説明してくれるとは思ってない。でも一緒にいてくれるだけで僕は頑張れる。

今は自分とは違う高校に来たことで、不法侵入で捕まらないかな、と怯えている。

何かあれば僕が責任を取って説明するから大丈夫。

 

 今日は山田さんに兄妹関係を打ち明けるつもりだ。

そのために二人して、僕達は教室で待ち伏せしている。いやこれかなり怪しいな。

さっき大丈夫って言ったけど、やっぱりこの状況を見られたら捕まるかもしれない。

ひとりには黙っておこう。今変形か変態されると、シャレにならない。

 

 色んな不安を抱えながら待っていると、廊下の方から小さな足音が聞こえた。

徐々に音が大きくなる、近づいてくる。歩幅や速さ、音の大きさからして山田さんだろう。

傍らのひとりに合図して、打ち合わせ通りに隠れた。

 

 それからすぐに、教室の戸がゆっくりと開かれる。物音はそこで止んだ。

何故か山田さんはそのまま中に入ろうとせず、立ち止まっている。

他に誰かが近くにいる訳でもない。教室を見渡しているのかな。何のためだろう。

 

「……ダンボールが二つ?」

 

 訝しげに山田さんが呟く。その声には警戒心が満ちていた。

彼女の言う通り、今教室には彼女の机を挟むようにダンボールが二つ配置されている。

今日持ってきた食事はその机の横に置いたから、回収にはそこまで行く必要がある。

 

「誰か、入ってるの?」

 

 声をかけられるが無視。まだ反応してはいけない。息を殺す。

また山田さんはしばらく立ち止まっていたが、そろそろと机まで歩み寄る。

声と同じく、警戒心の満ちた歩き方だ。猛獣に近づくようだった。

 

 ゆっくり、ゆっくりとした移動。それでも元々そんなに距離もない。

秒針が回りきる前に、山田さんは机の横までたどり着いた。

ほっと息を吐き、安心してクーラーボックスに手を伸ばす。油断している、今だ。

僕は被っていたダンボールを投げ飛ばし、山田さんの前に躍り出た。

 

「こんにちは、魔王です」

「こ、こんにちは、ぼっちです!」

 

 僕からワンテンポ遅れてひとりも飛び出す。

衝撃に目を見開く山田さん、そしてそのまま後ろに倒れていった。

地面に頭をぶつける前に支える。山田さんは白目をむいて気絶していた。

喜多さん発案の作戦、一応試してみたけど予想通り失敗した。

 

「りょ、リョウさん、気絶しちゃった……」

「しちゃったね。この山田さんどうしようか。一旦どこかに寝かせる?」

「えっと、このダンボールはどう?」

「そうだね、崩してその上に寝かせようか。僕がやるから、ちょっと山田さん持ってて」

「わっ、うん」

「重、くはないけど、気を付けてね」

 

 ダンボールを二つとも崩す。山田さんを寝かすには十分な大きさだ。

そしてひとりと一緒に山田さんを慎重に横にした。その時彼女の顔が視界に入る。

白目をむいて泡を吹いた、安らかとは程遠い表情をしていた。

そんな顔を見て、思わずひとりと顔を見合わせてしまった。

 

「やっぱり駄目だったね」

「……というかお兄ちゃん、なんで私もやってるの?」

「ひとりの愛嬌で僕の恐怖が中和されないかなーって」

「あっ愛嬌不足でごめんなさい……」

「ううん、ひとりは十分過ぎるほど可愛いよ。僕の魔王感が過剰なだけだから」

 

 やる前からうっすら、というよりはっきり分かっていたけど失敗した。

あの喜多さん発案の作戦だから、僕達には理解できない何かがあるかもと思った。

そんなことはなかった。予想以上に酷い結果になった。

白目で泡まで吹くなんて。気の毒だから目を直して、泡は拭いておこう。

ついでに念のため、呼吸と脈を確認しておく。どっちもある。生きてはいる。

 

 とりあえず山田さんを安静にさせたけど、この後どうしよう。

物思いにふける僕の腕をひとりが引く。ひとりの方を振り向くけど、僕を見ていなかった。

その視線はダンボールに横たわる山田さんに向けられている。僕もそれに倣う。

そしてすぐに気づく。山田さんの目が開いている。目が覚めている。今までよりずっと早い。

 

 じっと、山田さんは僕とひとりの顔を見比べていた。その途中何度も目が合う。

それでも山田さんは気絶していなかった。ただただ静かに、横になったまま僕達を眺めている。

やがて、ぽつりとつぶやいた。

 

「本当に兄妹なんだね」

 

 平坦な、事実を確認するような、誰に向けて言ったわけでもない呟き。

まさか、また? また僕が話す前に察してるの? 僕隠し事下手すぎじゃない?

この分だと、伊地知さんも既に知っているような気がしてきた。

これまでのことを思うとそっちの方が絶対にいいはず、そのはずなんだけど微妙に釈然としない。

 

 僕が自分と戦っている間に、山田さんは起き上がっていた。

普段教室で見るようなすまし顔だ。さっきまで泡吹いていた人とは思えない。

思えないじゃない。僕のせいなんだから、まずは謝らないと。

 

「山田さん、驚かせてごめんなさい」

「死ぬかと思った。お婆ちゃんが川の向こうで手を振ってた」

「えっ、リョウさんのお婆ちゃんってまだ生きてるんじゃ」

「バリバリ元気」

「知らないお婆ちゃんが手を振ってたの?」

 

 思っていたより元気だ。冗談をとばすような余裕すらある。

そして僕に対しても、特に恐れるようなこともなく普通に話してくれている。

その様子を見て、体から力が抜けるのを感じた。やっぱり緊張して強張っていたみたいだ。

 

「山田さんはもう知ってたみたいだけど、実はひとりの兄です」

「い、妹の後藤ひとりです」

 

 僕達の変な自己紹介を聞いて、山田さんはうんうんと頷いている。

そして親指を立て、無表情なのに伝わるドヤ顔で口を開いた。

 

「知ってた」

 

 だろうね。

 

「ところで、何故あんな真似を?」

「あれは山田さんに打ち明ける作戦を相談したら、喜多さんが提案してくれた」

「郁代め」

 

 山田さんが忌々しそうに呟く。

いくよ? 僕が首を傾げていると、ひとりが耳打ちしてくれた。

喜多さんの下の名前らしい。古風で上品で、いい名前だと思った。

 

「提案したのは喜多さんだけど、やるって決めたのは僕だから。本当にごめんね」

「おぉ、今私は魔王に許しを請われている……」

 

 僕に謝られて、山田さんは妙に感慨を深くしていた。許しを請うって。

 

「お詫びに出来ることがあればするから」

「お詫び……」

 

 お詫びの一言で、山田さんは考え込み始めた。彼女が僕に何を望むかなんて想像もつかない。

何にせよ喜多さんほど予想外だったり、僕の度肝を抜くようなものだったりしなければいいな。

 

「じゃあ、宿題手伝って」

 

 いくらか悩んで山田さんが見せたのは、今日彼女が呼び出された原因のものだ。

驚きの白さ。まったくやってない。これを片手に職員室まで行ったらしい。

とんでもない度胸だった。よく無事にここまで帰ってこれたね。

 

「それくらいなら。ひとりはどうする?」

「えっと、私は」

「ぼっち、帰らないで」

「えっ」

 

 宿題は二年生のもの。ひとりが手伝うのは難しいだろう。

迷うひとりの腕を山田さんが掴んだ。今までにない機敏な動きだった。

目を白黒とさせるひとりに、山田さんが迫る。

 

「二人っきりはまだきつい。だからお願い」

「あっはい。分かりました。」

 

 そういう訳で、三人で山田さんの宿題をすることになった。

何枚かのプリントとテキストを机の上に広げる。本当に全部やってない。

席について始めようとしたとき、大きな音が鳴った。腹の虫だ。

 

「先にご飯食べてからでいい?」

 

 そういうことになった。

 

 

 

 例によって今回も、ご飯は不審なぐらいの量を用意してある。

だから僕とひとりも山田さんと一緒に食べることにした。

元々彼女との話が終わったら、どこかで適当に食べようと思ってたからちょうどよかった。

 

「はぐはぐはぐはぐはぐ」

 

 それにしても山田さんの勢いが凄い。さっきから何も喋らず、ただ無心に食べ進めている。

ここまで夢中になって食べてもらえると、作った側としても気持ちがいい。

僕は自分が食べるのも忘れて、その光景を見守っていた。

するとしばらく経って、自分が見られていることに山田さんが気づいた。

 

「そんなに見られてると食べづらい」

「ごめん。そんなによく食べてもらえると嬉しくて、つい」

 

 山田さんはそう伝える僕の事を、とても疑わしそうな目で見ていた。

そんな目で見るような台詞だったかな。僕から出た、という以外は普通の言葉だと思う。

そして彼女は目だけじゃなくて、ひとりに確認まで取り始めた。

 

「ぼっち、これは喜んでるの?」

「あっはい。す、凄く喜んでます」

「そっか。だったらもっと表情に出してほしい」

「出してるつもりなんだけど、そんなに出てない?」

 

 ひとりと山田さん、二人に大きく頷かれた。山田さんはともかく、ひとりにも。

思わず顔を揉む。僕はそんなに仏頂面だったりするんだろうか。

 

「ひとり、僕の表情って分かりづらい?」

「…………う、うん、家の外だと。あっ私は分かるから、大丈夫だよ」

 

 そう言いながら、ひとりは明後日の方向を見ていた。

念のため、念のために山田さんにも聞いておこう。

 

「山田さん、僕の表情って」

「無」

 

 無らしい。分かりづらいではなく無。仏頂面を超えて能面だ。

普段から気持ちを抑え込んで生活してるから、そうなるのも当然と言えば当然か。

誰にも指摘されたことがないから、気にしたことも無かった。

ひとり曰く家では大丈夫らしい。だけど結束バンドの皆と会うのは外だ。

ちょっとずつでもいいから、前向きな気持ちだけでも表に出せるようにしないと。

 

「前にも聞いたかもしれないけど、これ全部一人で用意してるの?」

 

 僕が密かに決意を固めていると、山田さんから声をかけてくれた。

その間も食べるスピードは変わらない。どれだけ飢えていたんだろう。

僕も食べている途中だったから頷いて返事をすると、山田さんがなんと箸を置いた。

 

「……やっぱり大変?」

 

 聞いたこともない遠慮がちな声だった。

こうして改めて作った人と対面すると、手間が気になったのかもしれない。

 

「最初の方はちょっとね。でももう慣れたから」

 

 夏休みに入ってから大量に作るようになって、初めの頃はかなり時間がかかった。

だけどそれも繰り返している内にコツを掴めた。今は一時間くらいで準備できる。

 

「だから大丈夫。それに僕が好きで山田さんに渡してるから、気にしないで」

 

 そう告げると、安心したように山田さんは再び箸を手に取った。

そのまま食事を再開すると思ったら急に、天啓でも受けたかのように声をあげた。

 

「好きでやってる……はっ、魔王から弁当を貢がれている私は、まさか大魔王……!?」

「ふふふっ、山田さんは面白い冗談を言うね」

 

 確かに、単純な構図にすると、僕が山田さんに貢いでいることになる。

魔王と呼ばれている僕が一方的に差し出している。どう見ても僕が下で山田さんが上だ。

そう考えると、山田さんが冗談交じりで言った大魔王って言葉は満更嘘でもない。

 

「今度から、そう呼ぼうか」

 

 大魔王、中々面白い発想だ。僕としても魔王仲間が出来るのは喜ばしい。

店長さんも魔王だと知った時の安心感と親近感。その味が忘れられない。

山田さんが大魔王になってくれれば、学校が楽しくなるかも。

 

「ね、大魔王様」

「ははーっ、調子に乗りました。お許しください、陛下」

 

 だから半ば本気で提案すると、何故か山田さんに傅かれた。

いつの間にか椅子から降り、床へ直に座り込んでいる。

頭は土下座もかくやというくらい下がっている。どうしてか、また怯えられていた。

まさか怒ってると思われてる? 自分の頬に触れる。まったく動いてない。

冗談を言うような顔をしてなさそうだ。誤解されるのも無理はない。

 

「全然怒ってないよ」

「ぼっち」

「あっはい。だ、大丈夫です。お兄ちゃんが怒ったところ、私は見たことないです」

 

 そこは意識してるからね。とりあえず山田さんを立たせて椅子に座らせた。

あんな恰好されてると落ち着かない。まだ気絶してもらった方がいい。

それよりもさっきの山田さんの言葉に、一つ気になることがあった。

 

「ところで山田さん、陛下って何?」

「魔王は思ってたよりも魔王じゃなかったから」

「新しいあだ名ってこと? それにしても何で陛下?」

 

 ドヤドヤしている顔で頷かれた。陛下、陛下かぁ。魔王じゃないけど、王様だ。

僕はそんなに偉そうな雰囲気でもしているのだろうか。自分じゃ分からない。

 

「私に大魔王の資格は無い。だからこれは貢物じゃなくて、下賜品ということで」

「ご飯なのに仰々しいね。貢いでいるってのは事実だから、それでいいと思うけど」

「私が駄目。それとも殿の方がよかった?」

 

 まだそれなら陛下の方がいい。思わず微妙な反応をしてしまう。

そんな僕とは裏腹に、ひとりは僕があだ名を付けられたことを無邪気に喜んでくれていた。

 

「よかったね、お兄ちゃん」

「……うむ」

「うむ?」

 

 せっかくだから、王様らしく偉そうな返事をしたら、思いっきり首を傾げられた。

今のはなかったことにしておこう。無理にあだ名通りにする必要なんてない。

山田さんは気持ちニヤニヤして僕を見ている。なかったことにしてほしい。

 

 

 

 昼ご飯を食べ終えて一息ついていると、山田さんが口を開いた。

 

「そういえば、虹夏も陛下のこと知ってるの?」

「自信なくなってきたけど、知らないと思う」

「自信ないの?」

「隠し通しているつもりだったのに、喜多さんにも山田さんにも見抜かれてたから」

 

 勇気を出して言ったのに、二人揃って知ってた、なんて言われたら自信だってなくなる。

どうせ僕は隠し事に向いていない。きっと伊地知さんにもどこかで勘づかれている。

少しやさぐれている僕に、山田さんが一つ提案をした。

 

「それなら試してみよう。二人とも、仲良くして」

「な、仲良くですか?」

「うん。仲良さそうな感じを出して」

 

 山田さんからよく分からないお願いをされた。話に脈絡が無い。

仲良さそうな感じを出す。どうすればいいんだろう。

ひとりの方を見ると、これまたよく分からないポーズを取っていた。

これに合わせればいいのかな。合わせても謎の儀式になるだけな気がする。魔王降臨の儀?

動き出さない僕を見て、山田さんは説明してくれた。

 

「写真に撮って送って、虹夏の反応を見る」

 

 もちろん僕の顔は写さないようにするとのこと。

写真と聞いて、ひとりは変なポーズのまま妙な顔をしていた。前衛芸術的だ。

これじゃ写真写りだって悪くなる。僕はひとりの頬に手を伸ばして、優しく揉み始めた。

 

「ほにーはん?」

「僕が言うことじゃないけど、表情が硬いよ」

「ふすふっはいほ」

「我慢してね」

 

 そうやって揉み込んでいると、不満そうなひとりが僕の顔に手を伸ばしてきた。

やり返すつもりらしい。当然の権利だと思ったから、大人しく僕も揉まれた。

しばらく二人して無言でお互いの頬を弄り合っていると、フラッシュが炊かれた。

びっくりしてひとりが手を離したから、僕も触るのを止めた。

 

「今の仲良さそうだった?」

「言ったのは私だけど、あそこまでやるとは思わなかった」

 

 山田さん的にかなり上々な仲の良さだったらしい。それならよかった。

伊地知さんに送る前に、撮った写真を見せてもらう。

もみくちゃになっていたけど、普段のひとりの写真よりずっと可愛い。後でデータをもらおう。

 

『ぼっちとぼっちの兄と遭遇した』

 

 写真とともに、山田さんがメッセージを送った。

一瞬で既読が付いた。緊張する。どんな返事が返ってくるんだろう。

あっ後藤くんだ、みたいなものが来たら、今日までの僕の努力は意味を持たなくなる。

いや、それはそれでやっぱり助かりはするけれど、複雑な気持ち。

 

『なんで教室で遭遇してるの?』

 

 もっともな疑問だった。その後もなんで二人は顔触り合ってるの、と真っ当な疑問が続く。

それらを完全にスルーして、山田さんは僕達に告げた。

 

「多分気付いてないね」

「これで分かるの?」

「私には分かる」

 

 僕からすると、今の伊地知さんのメッセージでは判断がつかない。

だけど山田さんは今日一番得意げな顔をしていた。自信に溢れている。

親友の勘というものだろうか。僕も家族のことなら勘が働くから、その感覚は分かる。

 

 山田さんの感覚を信じると、伊地知さんは僕のことをさっぱり気づいてなさそうだ。

喜多さんとの約束もある。なるべく早く伊地知さんに話をする機会を見つけないといけない。

 

「そうなんだ。じゃあ早く、夏休みが終わるまでに打ち明けないと」

「どうして夏休み中に?」

「あー、それはね」

 

 

 

「それで、夏休み中に言わないといけないんだ」

 

 山田さんが疑問に思っているようだったから、理由を伝えた。

喜多さんとの約束、江ノ島のこと、このままだと何も言わないまま連れてかれること。

ふんふんとそれを聞いた山田さんは、納得したように頷いた。

 

「郁代の唐突な誘いはそういう」

 

 そして再び携帯を弄りだした。

山田さんが携帯を操作してすぐ、ひとりの携帯が震える。メッセージが届いたようだ。

ひとりが僕に見せてくれた画面に映っていたのは、結束バンドのグループだった。

 

『私も行く』

 

 こっちも一瞬で既読が付いた。

付いたと思ったら、喜多さんから無数のスタンプが高速で送られてくる。

恐ろしいまでのはしゃぎようだ。山田さんの参加がそこまで嬉しかったらしい。

 

 そんな喜多さんの微笑ましい反応もまた、山田さんはスルーした。慣れてる。

スタンプ連打に飲み込まれていった、伊地知さんの珍しいね、という一言をじっと見ていた。

その姿勢のまま、彼女は僕に告げる。

 

「虹夏に会う場所は私がセッティングするから、任せて」

「助かるけど、いいの?」

「私にいい考えがある」

 

 そう言った山田さんは、とても悪い顔をしていた。

 

 

 

 こんな感じで山田さんにも無事、元々知ってたみたいだけど、無事に打ち明けられた。

まだ打ち明けていない伊地知さんについても、親友の山田さんが場所を用意してくれる。

帰り際、安心して清々しい気持ちで電車に乗っていた僕は、あることに気が付いた。

 

 あれ、あの人結局宿題やってないな。

 




山田は補習になりました。

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