前回のあらすじ
「後藤兄妹はよく寝たが、星歌さんはその夜うなされていた」
「僕、あまりスターリーには来ないようにしようって思ってました」
「その割に最近よく来てるけどな。一応聞くけど、なんでだ?」
「僕が常連になると、スターリーがラストダンジョンとか呼ばれるかもしれないので」
「なんだそれ、言いたい奴には言わせとけ。それに魔王云々って、ある意味ロックで面白いだろ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます」
今日も今日とて僕はスターリーに来ていた。今皆はスタ練中だ。
とある人に呼び出されて待ちぼうけを食らっていた僕に、店長さんは話しかけてくれていた。
暇だからちょっと付き合えと口にしていたけれど、半分くらいは嘘だろう。
この間のゴミ箱の件はどうかと思ったけど、店長さんは今日も優しかった。
「それによく考えたら店長さんも魔王ですし、ここって元々魔王城ですよね」
「やっぱりお前二度と来るな」
「ごめんなさい、冗談です」
店長さんに頭を小突かれる。廣井さんに向けるものとは威力が違うから、ただのツッコミだ。
じゃれるようなものだ。こんな風に叩かれるなんて、今まで考えたこともなかった。
ちょっと嬉しくなって頭をさする僕を見ながら、彼女はため息交じりに聞いてきた。
「で、廣井からまだ連絡はないの?」
「はい。学校終わったらスターリーに来てねって、メッセージが来てからはまったく」
「あいつ、ひとんち勝手に集合場所にすんなよ」
そう言いながらも店長さんは心配そうに、心配、まったく心配してなさそうだ。
どちらかといえば、いや今舌打ちした、どっちも何もない。完全に忌々しそうにしている。
優しい店長さんにこんな顔をさせるなんて、あの人はどれだけの迷惑をかけてきたんだろう。
そう思いをはせていると、入口が乱暴に開かれる音がした。
「やっほー、きくりちゃんが来たよ~!」
噂をすればなんとやら。連絡ではなくて、本人が直接来た。
入口が開いたことで外から風が流れてくる。それは僕達の元までアルコール臭を運ぶ。
今日も廣井さんはお酒臭い。僕と店長さんは鼻をつまんだ。
何とも言えない目で彼女を見ていると、目が合ってしまった。
元々浮かべていた笑顔をさらに深くして、のしのしふらふら階段を降りて近づいてくる。
無事に目の前まで来たと思ったら、そのまま僕の頭にしがみついてきた。お酒臭い。
「おっ、ちゃんと来てるね、偉いぞ~」
「こんにちは廣井さん。お酒臭いので離れてください」
「えー、やだー」
「これ多分なんかの犯罪だよな」
相変わらず廣井さんは酔っ払いだ。今日も力ずくで引きはがすと危ないだろう。
だから言葉で伝えたけれど応えてくれない。店長さんも呆れながら見るだけだ。助けてくれない。
それどころか、何故か僕達の様子を撮影している。そして何か違うな、と言って携帯をしまった。
証拠写真でも撮っていてくれたのかな。裁判の時にください。
「そんなこと言う子にはね、お仕置だよ! この間の仕返しー!」
「店長さん、どこまでいったら反撃していいと思いますか?」
「一応言っとくと、子供が思ってるよりも酔っ払いはか弱い生き物だぞ」
止めるどころか頭まで撫で始めてきた。廣井さんは妙に楽しそうだ。
この調子だとこのまま放っておけば、どこまでエスカレートするのか分からない。
さっき店長さんの言った通り、何らかの犯罪に発展する可能性もある。
だけど僕が反撃したら死ぬと言外に言われてしまった。どうしよう、どこまで我慢しよう。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと、廣井さん何してるんですか!?」
顔にまで手を伸ばしてきたらどうにかしよう。そう考えていると、救いの手が差し伸べられた。
伊地知さんの声だ。今は廣井さんで何も見えないけど、スタジオから出てきたらしい。
早足で近づいてきて、その勢いのまま廣井さんを引き剥がした。光が目に届く。
急に明るくなったから眩しい。瞬きを繰り返して目を調整する。
普通に辺りが見えるようになった頃、心配そうな伊地知さんが映った。
「後藤くん、大丈夫?」
「ありがとう伊地知さん。なんとか大丈夫」
そうして彼女から安否確認を受けていると、剥がされた廣井さんが不満そうな顔をしていた。
「妹ちゃん乱暴すぎだよー。ちょっとしたスキンシップじゃん、お堅いなー」
「いやいや、あれはちょっとを超えてますよ!」
「でも無抵抗だったでしょ。お姉さんにくっつかれて、君もなんだかんだ嬉しかったよね?」
「いえ、離れてくださいって何回か言いましたよ」
「それってあれでしょ、嫌よ嫌よも好きの内ってやつだよね!」
無敵の理屈だ。山田さんも前そんなことを言っていた。ベーシストの間で流行っているのかな。
僕の何とも言えない気持ちと同様に、伊地知さんも半目で廣井さんを見ていた。疑いの眼差しだ。
僕達二人にそう見られても、廣井さんの根拠不明の自信はまったく揺らいでいなかった。
「いや後藤くんに限って、そんなことないと思いますけど」
「またまたー、私大人のお姉さんだよ? ほらほら、正直な感想言っていいよ?」
そう言ってから、何故か彼女はしなを作った。伊地知さんは気味の悪いものを見る目をした。
正直な感想か。一番に来るのは当然お酒臭かっただけど、それは駄目だろう。
さっきも言ったけど受け取ってもらえなかった。これ以上言っても無駄な気がする。
そもそも廣井さんはどうしてか、僕が喜んでいる、という意見に確固たる自信を持っている。
こうなると下手に否定するよりも、何か肯定的な感想を伝えた方が丸く収まるかもしれない。
例によって僕の嘘やお世辞が通じないだろうから、小さくてもいいから嬉しかったことを話そう。
今ので嬉しかったこと。実は廣井さんの言う通り、僕は抱き着かれて喜んでいた。
やり方はどうであれ、好意を示してもらえるのはとても嬉しい。
僕の感覚だと抱き着くなんて、よっぽど好きじゃなきゃ出来ないと思う。
廣井さんの感覚にもよるけれど、それほど気を許してもらえている証と考えてもいいはず。
だけどこれを言うのはよくないだろう。廣井さんは一応女の人だ。
さっきも考えた通り廣井さんがどう思ってるかは知らないけど、僕が褒めて味を占めたら大変だ。
あんまり誰彼構わず抱き着くようになれば、いつか危ない目に合ってしまうかもしれない。
じゃあ他に何があるだろう。感覚。臭い。アルコール。駄目だ。お酒臭いしか出てこない。
こうなったら逆転の発想だ。お酒臭いからなんとか別の糸口を探そう。
なにかないかな。お酒、臭い、空気、空気? そうだ、僕は解放された時こう思った。
「……空気が美味しい?」
「えっ」
「解放された時の空気が、こう、なんというか美味しかったです」
地下だけど江ノ島の時くらい美味しい。特に、変な臭いがしないところがいい。
正直な感想を伝えると、廣井さんと伊地知さんがずっこけた。
ずっこけたけど、その勢いのまま二人ともすぐに起き上がった。二人とも器用だ。
そして廣井さんは急にお酒を飲みだし、伊地知さんは神妙な顔になっていた。
ずっと黙っていた店長さんも似たような目で僕を見ていた。姉妹だからかそっくりだった。
そんな事情聴取が終わると同時に、ひとり達もスタジオから出てきた。
ちょうど休憩時間か何かになったらしい。ひとりにあんな姿を見られなくてよかった。
三人ともすぐに、僕達のいるところへ近づいてくる。
「あっ、お、お姉さん、こんにちは」
「おーぼっちちゃん! 今日もぼっちって感じだねー!」
「えっ、あっ、はい、今日もぼっちです……」
悪気は無いと信じたいけど、悪口にしか聞こえなかった。
事実、廣井さんを見て明るくなったひとりの顔が、また奈落に逆戻りした。
一瞬何でひとりがそうなったのか、廣井さんは気がつかなかったらしい。
だけどすぐに察して、慌ててひとりに駆け寄っていた。
「……あっ、ごめんね~ぼっちちゃん! あーよしよし、よしよーし」
「あうあぁぁあ」
そう言ってひとりを抱きしめ、念入りに頭を撫でていた。
僕の時より抱き着き方も撫で方も深い。あれは色々と、相当辛いと思う。
助けようかと迷ったけれど、ひとりも廣井さんのことは慕っている。
本当に嫌だったらもう爆発か溶解しているはずだから、そっとしておいた。
ひとしきり撫でて抱きしめて、廣井さんはひとりを解放した。
ぐるぐると目を回しているひとりを見て、なんだか満足そうにしている。
そうして観察している内に何か思いついたようで、そのままひとりに問いかけた。
「ねね、ぼっちちゃん、私に抱き締められたけど嬉しい? 何か感想とかある?」
「えっ………………………………………空気が美味しい、です?」
「分かる。変な臭いがしない、無臭ってところがいいよね」
「うん。あっ、江ノ島の頂上くらい美味しいです」
「そろそろ泣くよ?」
ひとりと意見が合ったことで僕がはしゃいでいる横で、廣井さんが泣きそうになっていた。
そんな彼女に、今まで静観していた山田さんが近づく。珍しくその瞳は輝いていた。
「もしかして、SICKHACKの廣井きくりさんですか?」
「うん、そうだけど」
ここまでの状況なんて何一つ気にしていない。山田さんは今日もマイペースだ。
そしてあまり見ない興奮した状態で、廣井さんに話しかけ続けていた。
「私、ライブよく行ってました」
「えっ」
「泥酔しながらのライブ、最高でした。顔踏んでもらったのもいい思い出です」
「あっ、うん。ありがとう」
山田さんに、ファンに褒められているのに、廣井さんは釈然としない顔をしていた。
らしくない難しそうな顔で、山田さんの称賛に曖昧な相槌を打ち続けている。
何を悩んでいるのかは知らないけれど、大人しくなってくれたからよしとしよう。
この隙に一つ確かめておきたいことがある。
そのために山田さんと廣井さんを放置して、僕は喜多さんに声をかけた。
「喜多さん、ちょっといい?」
「なんですか先輩?」
返事の声色は明るい。笑顔は眩しい。今日も喜多さんは元気なように見える。
だからそのまま、僕は気になることを確認させてもらった。
「今日のひとり、集中出来てた?」
「はい、この間と全然違います! もしかして、先輩何かしました?」
「ううん、少し話しただけ。でもそっか、それならよかった」
添い寝した日の翌朝、照れくさそうなひとりを見て大丈夫だとは思っていた。
思っていたけど、こうして喜多さんから報告を受けると安心感が違う。
彼女は僕が何をしたのか気になっているようだけど、言わないようにしよう。
この年になって兄と一緒に寝たなんて、ひとりも恥ずかしくて友達には知られたくないはず。
そうだ、ひとりがもう心配ないなら、喜多さんにも安心してもらわないと。
「ひとりはもう大丈夫だよ。だから、喜多さんもあんまり気にしないでね」
「…………えっ?」
喜多さんが目を見開き何かを口にしようとした瞬間、ふいに僕の肩が掴まれた。お酒臭い。
それで分かった。廣井さんがいつの間にか、音も無く背後に立っている。
ぎょっとしている喜多さんを気にもせず、そのまま僕にそっと耳打ちしてきた。
「ねぇあの子、この間と反応が違い過ぎない?」
勉強会の時と打って変わって、山田さんからの熱烈な歓迎を受けて混乱したようだ。
前に伊地知さんがしたと思うけど、ちゃんと理解してもらうためにもう一度説明しよう。
「試験勉強が終わったので、音楽の記憶を取り戻したらしいです」
「えぇ……」
山田さんの生態に衝撃を受けて、廣井さんがまたお酒を飲み始めた。
このまま放置しておくと泥酔されて、今日呼び出された理由が分からなくなるかもしれない。
というか既に何もかも忘れている可能性もある。まずは話すだけ話してもらわないと。
「それで今日は、どんな用事があったんですか?」
僕の言葉に、廣井さんは今思い出したとでも言わんばかりの顔をした。
本当に忘れていた。言ってよかった。酔っ払いに呼ばれるだけ呼ばれて終わるところだった。
「あっ、そうそう! この間皆の勉強邪魔しちゃったでしょ。そのお詫びに来たよ!」
「自覚あったんですね」
伊地知さんの鋭いツッコミも気にせず、廣井さんは懐に手を突っ込んだ。
そこから五枚、何かチケットのようなものを取り出し、高く掲げた。
とても自慢げで誇らしそうな、明るい顔をしている。顔は赤い。今日もまだ黄色じゃない。
廣井さんがあれだけ嬉しそうにしている、ということはビール券か何かかな。
「お詫びとして、じゃーん! 私たちのライブのチケット、あげるよ!!」
「わぁ、ありがとうございます。これ、いつ開催ですか?」
「今日!」
「急ですね!?」
ライブのチケットだった。僕も忘れていた。廣井さんはお酒の人じゃなくて、音楽の人だ。
それにしても喜多さんの言う通り急な話だ。あれ、今日? 今日なのに廣井さんここにいるの?
もらったチケットを見る。彼女の言った通り、今夜開催予定だ。ライブ直前って忙しいんじゃ。
「これからライブなのに、今ここにいても大丈夫ですか? 打合せとか、色々」
「……リハーサル、もう始まっちゃってるねー」
「……ライブハウス着いたら、謝りに行きましょうね」
僕達にチケットをプレゼントするために、廣井さんはリハーサルに参加出来なかった。
そういうことにしておこう。酔いとかど忘れとか、そんな訳ないよ、きっと。
「えっと、いくらですか?」
「いいよいいよ! お詫びなのにお金取るって変でしょ?」
「でも、廣井さんからタダでもらうのは申し訳ないですし」
「え゛っ」
普段辛辣な伊地知さんに優しく声を掛けられ、廣井さんは動揺していた。
財布を取り出す伊地知さんと喜多さんを止めることも出来ず、ただ慌てている。
そしてその気持ちをそのまま僕にぶつけてきた。
「ね、ね、私って、そんなに貧乏に見える?」
「事実貧乏ですよね。この間焼肉行った時、お金持ってなかったし」
あの時は驚いた。何を思って僕の事を誘ったのか。今でも理解が追い付かない。
僕がお金を持ってなかったらどうするつもりだったんだろう。
そういえば大槻さんはあの時、廣井さんが金欠でも特に反応していなかった。
あれを思うと廣井さんが万年素寒貧なのは、新宿的には常識なのかもしれない。
「は? お前あの時こいつにたかったのか?」
「…………子供の金で酒を飲む。それもまた、ロックですよね」
「黙れクズ」
しみじみと、大人として最低なことを廣井さんは言っていた。
それを見る店長さんの視線は、氷よりもはるかに冷たい。
振り返って僕を見る。その目は反対に暖かいものに変わっていた。そのまま頭を下げられる。
あの日廣井さんを頼んだことを申し訳なく思っているのだろう。
その姿は山田さんのことで謝る伊地知さんを彷彿とさせた。姉妹だなと思った。
こんなところで血のつながりを感じたくなかった。
「で、他になんかある?」
気を取り直して、腰に手を当てた店長さんがその場の全員を見渡した。
ここでお金の沙汰を下してくれるみたいだ。さすが店長さん、頼りになる。
お金のこと、何かあったかな。記憶を掘り下げるのと同時に、ひとりがおずおずと手を挙げた。
顔は青く、手は震えている。それでも勇気を出して話してくれた。
「え、えっと、路上ライブの日、お兄ちゃんが電車賃、貸してました」
しかも僕の事だった。僕のために頑張ってくれた。お金とかどうでもよくなるくらい嬉しい。
それにしても電車賃か。そういえばそんなこともあった。確か、ライブの日に返すと言っていた。
ライブ前は気にする余裕なんか無かったし、終わった後も大槻さんと廣井さんで手が一杯だった。
今思い返すとお金を返すって言った日に返さずに、そのまままた奢られようとしていたのか。
恐ろしいほど図太い根性だ。何も考えてないのかもしれないけど、ここまで来ると尊敬する。
僕が廣井さんの性根に恐れ入っていると、伊地知さんが小さく声をあげた。
何か思い出したらしい。そして山田さんが目を逸らした。山田さんの借金のことらしい。
「そういえばリョウ、エスカー代は?」
「……それは今度奢るよ」
「あっ、あと、カレー代……」
「………………………………」
「山田さん?」
「ごめんなさい」
山田さんはどこかでひとりにも借金をしていたようだ。そんな気はしてた。
借金を重ねているベーシスト二人を見て、店長さんが深く深く、重いため息を吐いた。
そして床を冷たく指差し、呆れ果てた目で債務者達に告げる。
「おらクズども、ちょっとここに並べ」
こうして店長さんの計らいもあって、めでたく借金は清算された。
廣井さんのライブのために新宿FOLTへ行く。
他人ばかりの、行ったことのない場所へ行く。なんの対策もなしに行けば大惨事になるだろう。
となるとまた何か変装をしないと。今日はどうしよう。どんな変装がいいのかな。
僕が考え始めると同時に、伊地知さんが同じ話題を振ってきた。
「後藤くん今日も変装するんでしょ? この間みたいに、帽子とサングラスにする?」
「あれ喜多さんのだったし、僕も持ってきてないんだよね」
「持ってますよ!」
「えっ」
にこやかに喜多さんは、どこからともなく帽子とサングラスを取り出した。
なんで、どこに、疑問は多く浮かぶけど口に出せない。喜多さんも時々分からない。
だけど彼女はああでもと続け、誤魔化すように苦笑いしてから、それらをまたどこかへしまった。
「夜だとサングラスは危ないですね」
「あっじゃあお兄ちゃん、またカツラと眼鏡にする?」
そう言ってひとりが変装セットを手渡してくれた。
キノコ眼鏡下北マン。今のところ誰も気絶させていない変装だ。
結束バンドの時もなんとかなったし、これが一番無難かもしれない。
「おぉ、魔王ナイトフォーム」
「何だその名前」
そうして皆で僕の変装方法について話し合い始めた。いつも迷惑をかけて申し訳ない。
ただ一人、ぽつんと置いてかれた廣井さんが不思議そうに僕達を見ていた。
「えっと、君たち何してるの?」
「あっ、お兄ちゃんの変装をどうするか決めてます」
「変装? あー、そういえばこの間もそんなことしてたね」
キノコキノコと思い出したように、楽しそうに呟く。
そして突然、僕からカツラと眼鏡を剥ぎ取った。変装が解かれてしまった。
これじゃただの魔王だ。このままだときっと被害者が出る。何をするんだろう。
僕の抗議の視線を感じ取ってなお、廣井さんは笑顔のままだった。
「大丈夫だよー、皆君のことなんて見ないって!」
「いや、でも」
「平気平気、ライブ中は絶対大丈夫! お姉さんたちのこと、信用してね!」
そう言って笑う廣井さんの目には、一点の曇りも無い自信が浮かんでいた。
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