ぼっちの兄もまたぼっち   作:差六

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感想評価、誤字脱字報告、ここすきありがとうございます。

前回のあらすじ
「廣井さんときくりちゃんが大活躍した」

今回アンケートを出してみたので、興味があればお答えください。


第三十七話「文化祭の始まり」

 秀華高校の文化祭が近づいて、僕はある問題に直面していた。

すなわち、どうやって被害者を出さずに文化祭に潜り込めばいいか、という話だ。

思い出したくもない、あの忌々しい女装した日の記憶からして、秀華高校は普通の大きさだ。

あそこの文化祭はとても盛り上がるそうだから、廊下なんかは凄い人混みになるだろう。

そんな中、僕が無策に行けばどうなるかなんて想像の余地もない。明日の朝刊を飾る。

 

 一番の対策は、もちろん行かない、ということだというのは僕も理解している。

ただ、これはこれでリスクがある。次の日のライブがどうなるか、まったく読めなくなる。

ライブについては何があっても行くつもりだから、前日試さなければぶっつけ本番だ。

 

 仮にライブ当日に誰かを気絶させたら最悪だ。そのままライブ全体が中止になる可能性もある。

その点初日に失敗しても、被害者には悪いけど文化祭全体への影響はあまりないはず。

だからこそ試運転と称して、僕は文化祭一日目にもどうにかして参加したいと考えている。

 

 一応既に作戦というか、解決策は思いついている。

だけどこれは僕一人ではどうしようも出来ない。皆の協力がいる。

ライブ直前にお願いなんかして大丈夫なのかな。でも、言ってみないと何も分からない。

だから駄目で元々、とりあえず伊地知さんと山田さんに話してみることにした。

 

「文化祭に行きたい」

 

 昼休み、出し抜けにそう言った僕を、伊地知さんと山田さんは不思議そうに見ていた。

焦り過ぎた、何も伝わっていない。我ながら唐突すぎる、もっと言葉を足さないと。

 

「ひとり達の、秀華高校の文化祭に、なんとかして僕も行きたい」

 

 そこまで言って山田さんは理解したようだ。なるほど、と一言零す。

対照的に伊地知さんはまだ不思議そうだ。行けばいいじゃん、とでも言いたげな顔をしている。

 

「行けばいいじゃん」

 

 実際言われた。咥え箸なんかして凄い適当な表情だ。行儀悪いよ。

僕が何でそんなことを言ったのか、まるで理解出来ていない様子だった。

思わず山田さんと顔を見合わせる。まさか僕達が伊地知さんにツッコむ側に回るなんて。

 

「虹夏、陛下は魔王だよ」

「あー、そういえば」

 

 天気の話でもするぐらい、適当で軽い返事だった。

魔王として重々しく扱われたいとはまったく思ってないけれど、それはそれとして引っかかる。

なんとなく微妙な気持ちになる。伊地知さんを見る目にも同じ気持ちが乗る。

僕の様子が変わっても、相変わらず彼女は適当なままだった。

 

「後藤くんの魔王っぽいところ、最近あんまり見てないし」

「今日も生徒にも先生にも避けられてるけど」

「お姉ちゃんも結構街中で避けられてるよ、特に小さい子とか」

 

 僕が言えた話じゃないけど、店長さんも怖がられるタイプの人だ。

見た目は派手な方だし目つきも悪い。それに口調も荒くて態度は乱暴なところがある。

だけど中身はとても優しくていい人だ。誤解されるのは、なんだかもったいなく感じる。

 

「魔王というよりも、なんだろ」

 

 咥えた箸をぷらぷらとさせながら伊地知さんは考え始めた。危ないしそろそろ注意しようかな。

それはそれとして魔王以外の印象か。鬼か悪魔、もしくは悪鬼とかだろうか。

魔王呼びが定着する前は、そんな呼び方もされていたような気がする。

だけど伊地知さんが思いついたのは、僕の想定から斜め上に飛んだものだった。

 

「そうだ! 大型犬に見える時のが多いかも」

 

 犬。

 

「陛下、大変だよ。アイデンティティが崩壊しかけてる」

「魔王は僕のアイデンティティじゃないよ?」

 

 十数年呼ばれ続けて来たから、魔王って呼ばれ方に変な愛着はある。

あるけれど、たとえ今日から魔王呼ばわりされなくなっても僕は困らない。むしろ助かる。

僕の返事に山田さんは、分かってないとでも言いたげに首を何度も横に振った。

 

「違うよ。陛下のじゃなくて私の」

「は? なんでリョウのが?」

「魔王軍大幹部という私のアイデンティティが、今無くなりかけている」

「それどうでもよくない?」

 

 僕もどうでもいいと思うけど、山田さんは真顔だ。まさか本気で言ってるのかな。

確かめるために顔を覗くと、真剣な眼差しが返ってきた。これは本気だ。

重ねて僕はどうでもいいけど、山田さんが求めるなら応えてあげたい。

 

「私が私であるために、陛下には今すぐ虹夏を驚かせてもらわないと」

「分かった。なんとかしてみる」

「なんだこいつら」

 

 だけど驚かせるといっても、実際どういうことをすればいいんだろう。

大抵の人は目が合うだけで意識が飛ぶほど驚いてくれるから、意識してやったことがない。

絶対に効果は無いだろうけど他に思いつかないし、一応目を合わせてみよう。

もしかしたら今の伊地知さん相手にも、小さじ程度には恐怖を与えられるかもしれない。

 

「……」

「……なに?」

「……」

「……」

「……」

「……あんまり見られると、ちょっと恥ずかしいんだけど」

 

 ずっと見つめていると、少し頬を赤くした伊地知さんに顔を逸らされてしまった。

間違いなく恐怖じゃない、羞恥だ。絶対に違うとは思うけど、山田さんに判定を求めた。

 

「山田さん、これは?」

「ノー魔王」

 

 ノー魔王らしい。ノー魔王ってなんだ? とりあえず失格だということは分かった。

目が合っても見つめても、伊地知さんは恐怖を覚えてくれない。なら僕はどうすればいいのか。

考えよう、何かないかな。考えて考えて、苦し紛れに僕は適当な声を出した。

 

「………………が、がおー?」

「そういうところだよね」

 

 視界の隅で山田が崩れ落ちた。判定不要のノー魔王のようだ。

さようなら魔王軍大幹部山田さん。これからは自分の力で大魔王を目指してほしい。

机に伏せる山田さんを放置して、僕と伊地知さんで文化祭についての話を進めた。

 

「この間の新宿は、確か大丈夫だったよね」

「あの時は特殊な状況だったし、廣井さん達の力もあったから」

「それじゃあ、江ノ島の時みたいに変装すればいいんじゃないの?」

「あれだけだと、僕の魔王感が封じきれないんだ」

「今更だけど魔王感って何?」

 

 僕にも分からない。今日も僕はゴトーンと、元気に魔王をやっている。

十数年解明されていない謎の現象だ。もう解くことは諦めた。

だから別にいいとして、僕の生態について説明を続けよう。

 

「最近分かったんだけど、変装した上で友達といればある程度平気みたい」

「へー、不思議だね。よく分かんないけど、それなら大丈夫でしょ」

「えっ、どうして?」

「ん? だから大丈夫でしょ?」

「???」

「???」

「なんだこいつら」

 

 お互いに不思議そうにする僕達を見て、復活した山田さんが冷静にツッコんだ。

聞いたところ、伊地知さんとしては当然のように僕も一緒に行く予定だったらしい。嬉しい。

そういう訳で、僕の心配は杞憂でしかなかった。

 

 

 

 そして秀華高校文化祭、秀華祭の開催日をとうとう迎えた。

ひとりを送り届けた後、伊地知さんと山田さんとの待ち合わせ場所へ移動する。

合流した二人は、辺りの飾りつけや生徒を楽しそうに眺めていた。

 

「おー、凄い賑やかだね。これぞ文化祭って感じ」

「郁代みたいな子がたくさんいる」

 

 ついこの間あった下北沢高校の文化祭は、言葉を選べば地味だった。

それと比較にならないほどこの秀華祭は華やかだ。空間全てで祭りということを主張している。

入口で受け取ったガイドブックを二人は読んで、どこに行こうかなんて話している。

僕も混ざりたいけど、その前にやらなくてはいけないことがある。そのことを二人に告げた。

 

「まずはひとりを回収しに行こう」

「?」

 

 校舎裏のゴミ捨て場。ジメジメとしていて薄暗く人通りも少ない、というよりも皆無だ。

文化祭の喧騒がどこか遠くに聞こえ、静けさに満ちている。華やかな今日には似合わない空間だ。

そんな場所に、これまた雰囲気にそぐわないメイド服姿の女の子がぼんやりと座っていた。

ひとりだ。予想通りここにいた。座って何やら携帯を弄っている。どう見てもサボりだ。

その姿を見て、普通の注意じゃ足りない気がしてきた。ちょっと悪戯してみよう。

 

「後藤さん、サボりはいけませんよ」

「ぅっうえぇあ!? す、すみません、すみません!!?」

 

 悪い子にそう注意すると、飛び上がって驚かれた。死なないだけ平気な方だ。

ひとりは夢中で何度も頭を下げていたけれど、途中でやっとそれが僕だと気づいたらしい。

頭を止めて瞬きを繰り返しながら、僕の事を見上げた。

 

「お、お兄ちゃん?」

「うん。さっきぶり」

 

 声をかけたのが僕だと分かって、ひとりは安心したように頬を緩めた。

と思ったら今度は少しずつ不満が顔に表れ始めた。さっきのが悪戯半分だったのがバレたようだ。

 

「あっほんとにいた」

「魔王センサーは地獄耳」

「に、虹夏ちゃんにリョウさん!?」

 

 その不満も伊地知さんと山田さんに声をかけられたことでどこかへ消えた。

興味深そうにじろじろと見る二人に、ひとりは慌てふためいている。

そんな三人を見ていると僕の携帯が着信を告げる。喜多さんからだ。電話だから急ぎの用事かな。

出るとすぐ、喜多さんの慌てた声が耳に届く。

 

「もしもし、喜多さん?」

「あっ、後藤先輩! 大変なんです、実は後藤さんがいなくなっちゃって」

「捕まえたよ」

「早っ!? えっ、今どこですか?」

 

 場所を告げると、今行きますの一言と同時に電話が切られた。

そして駆けつけてきた彼女は、集まっていた僕達を見て目を瞬かせていた。

電話をしてから数分も経っていない、彼女も十分早い。

 

「それにしても後藤先輩、よく後藤さんが逃げたって先読み出来ましたね!」

「お兄ちゃんだから」

「というか、よく逃げた先も分かりましたね!」

「お兄ちゃんだから」

「それで全部押し通そうとしてます?」

 

 細かい根拠はたくさんあるけれど、説明していては切りがない。また後日だ。

今重要なのは、逃亡したひとりを保護したということと、これから護送するということ。

再逃亡を防ぐためにも喜多さんに手を繋いでもらい、僕はひとりに促した。

 

「じゃあひとり、そろそろ戻ろうか」

「うっ、うぅ、も、もう少しここにいちゃだめ?」

「駄目。きっとクラスメイトも心配してるよ」

 

 本当に嫌そうだから僕だってもっと時間をあげたい。だけどそれはいけない。

ひとりのことだから、多分トイレか何かを言い訳にして逃亡したはず。

信じて心配されても、サボりだとバレても、どっちも今後の学校生活に差し支えるだろう。

 

 クラスに友達を作るのはもう諦めているけれど、これはまた別の話だ。

平和に穏やかに学校へ行くためにも、与えられた役割は果たすべき。

そんなことを言ってひとりを説得していると、ようやく折れてくれた。

 

 折れてはくれたけど、ひとりの気は重そうだ。

喜多さんに手を引かれながらふらふらとしていて、まるで幽鬼かなにかのようだった。

そんな有様のひとりを見たからか、それとも単純に自分の興味のためか。

伊地知さんがガイドブックを片手に、出し物を指差しながら提案した。

 

「ここ気になるなぁ、ちょっと寄ってもいいかな?」

「……教室に戻る間にあるなら」

 

 伊地知さんの温情を受けて宣言通り、教室に戻るまで僕達は文化祭の出し物を見て回った。

お化け屋敷やらクレープやら射的やら、十分過ぎるほどだ。

ちなみにお化け屋敷については、僕は一歩も入っていない。教室の外でずっと待っていた。

怖いからじゃない。逆だ。僕が怖がらせてキャストが全滅するからだ。制圧してしまう。

 

 こうして皆で文化祭を満喫しているうちに、ひとりの心も回復してきたみたいだ。

ゴミ捨て場にいた時は青白かった顔に少し赤みがついてきた。友達と一緒で楽しいんだろう。

こうして遊んでいればどんどん働く時間が減っていく、というのも大きな理由だろうけど。

このままサボるのはひとりにもよくないから、いい加減クラスまで連行して行った。

 

 

 

 クラスメイトは戻ってきたひとりを暖かく迎えてくれた。

逃亡したひとりを責めるどころか、むしろ体調を心配してくれている。

そのせいで、いやおかげで罪悪感が刺激されて、仕事をするとひとりは自分で言った。

仕事、接客が無理だと思われたのか、ひとりは教室前で看板を持つ宣伝係に任命された。

 

「お、お兄ちゃん、一緒に立って」

 

 なんてお願いもされたけど、そのお願いは聞き入れられない。

近頃父さんのことを言えないぐらい妹達に甘くなっている気がしたからだ。一度引き締めないと。

それにこれはひとりの学校の、ひとりのクラスの出し物だ。僕は部外者、手伝えない。

そもそも僕が一緒に立っても宣伝にならない。増えるのは客じゃなくて死者だ。

 

 そうして一人で宣伝をすることになったひとりは、人混みにやられてまもなく気絶した。

心配だけど目の届くところにいるし、すぐに目が覚めるだろうからそのまま放置している。

ここで裏に控えさせると、これ幸いとこの後仕事を全てやらなくなるだろう。

 

 そんなひとりを横目で見守りつつ、僕は皆と一緒の席に案内されていた。

帽子にサングラスという不審者そのものの僕を見て、当初ひとりのクラスメイトには警戒された。

だけどすぐに喜多さんが色々と話してくれたおかげで、今は多分なんとか溶け込めている、はず。

流石喜多さんだ。何て言ったのか分からないけど、こんなスムーズに入れるとは思わなかった。

 

 喜多さんのおかげで一息つけた。おかげで教室内を、店内を見渡す余裕も出来た。

皆楽しそうで何よりだけど、その中で一つだけ気になる物を発見した。机の上のメニューだ。

書いてある言葉が分からない。日本語のようで日本語じゃない。なんだろうこれ。

 

「喜多さん、このメニュー日本語じゃないよ」

「日本語ですよ?」

「この、ふわぴゅあ、なんとかが?」

「はい、可愛いですよね!」

 

 他にもゆめかわとかやみかわとか意味の分からない言葉がつらつらと並べてある。

料理についてるのだから、何か食材や調理の仕方の名前なのかな。どれも聞いたことがない。

ユニコーンとオムライスってどういう繋がり? あれ卵生なの? 

訳も分からず僕がメニューと格闘していると、山田さんが何か面白いものを見つけたようだ。

 

「おぉ、世紀末的風貌の輩がいる」

「そんな人いるわけ」

 

 山田さんの視線の先、廊下には個性的な格好をした大男二人組が立っていた。

袖の無い学ラン、サングラスに下駄。そしてモヒカンに弁髪。服装も髪型も初めて見た。

伊地知さんは現実逃避でもするように、二度見三度見、四度見までしている。

 

「本当にいた!?」

「ああいう恰好のことを世紀末的風貌って言うの? 不良とかヤンキーとは違うのかな」

「えっと、ファッションだけじゃなくて、どこから説明すればいいか」

 

 ファッションには詳しくないけど、面白いジャンル名もあるんだな、と感心してしまった。

呑気に水を飲んで見学している僕の肩を、伊地知さんは全力で揺らしていた。

 

「じゃなくて! 後藤くん助けに行かなくていいの!?」

「そうですよ! だってあれ、世紀末ですよ!?」

「あの人達まだ何もしてないよ」

 

 確かに威圧的な風貌だけど、それだけだ。暴れまわっている訳でもない。

それに見た目の怪しさについては今日の、というより僕に何かを言う資格はいつも無い。

だからとりあえず静観していると、彼らはひとりに近付き始めた。あと一メートル。

 

「お嬢ちゃん、こんなところで看板持ってるくらいなら、俺らと遊ばなぁい?」

「ほ、ほら先輩、ナンパ、後藤さん思いっきりナンパされてますよ!!」

「本当だ。ひとりに声をかけるなんて見る目あるね」

「感心してる!?」

 

 ひとりはとてもとても可愛いけれど、その魅力は初見の人には分かりづらいところがある。

そこを見抜いたのなら中々だ。でもその距離感はいただけないな。あと三十センチ。

何があってもいいように入口を眺めていると、世紀末の彼らの様子が急に変わった。

ここからは見えないけど、ひとりが何かしたのかな。

 

「なっ、こ、こいつ、俺達のガン飛ばしにビクともしてねぇ!?」

「なんだこの液体は!? く、口から何か出てやがる!?」

「そ、それに、さっきから感じるこの悪寒はいったい、い、いやだ、まだ死にたくない!!」

 

 彼らは何かを恐ろしいものを見た、感じたように怯え切り、謝罪を叫びながら土下座した。

誰も傷つかない平和的解決だ。引き際をわきまえている人達でよかった。

あと一歩ひとりに近付いていたらどうしようかなと思っていた。

 

 縮こまった彼らが大人しく案内されて、僕達の横を通り過ぎる。何度見ても個性的な恰好だ。

思わずまじまじと見てしまう。それを感じたのか、彼らは僕へと視線をぶつけ返してきた。

そんなことをすれば当然だけど目と目が合う。そのまま凍り付いたように固まってしまった。

 

 彼らが動かなくなったことで、案内していた子も困ったように立ち止まる。

こうなったのは間違いなく僕が原因だ。僕が好奇心で彼らを眺め、目が合ってしまったから。

だから今回も僕がなんとかしよう。とりあえず声をかけてみる。救命作業でも声掛けは大切だ。

 

「あの子、僕の妹です」

「えっ」

 

 会話で大事なのは共通の話題。彼らについて分かるのは、世紀末とひとりに興味があること。

世紀末はさっぱりだからひとりのことを話してみた。パッとしないけど反応はもらえた。

今の目的は彼らの気付けだ。このまま何か反応を引き出そう。

 

「さっき、あの子に声をかけていましたね」

「す、すいま」

 

 実際のところ、僕は彼らに悪感情はそんなに持っていない。

彼らはひとりに声をかけていた。それはつまり、ひとりに魅力を見出したとも言える。

いい目をしている。それに考えてみると、ひとりがナンパなんてされたのは初めてかもしれない。

そうなると彼らはある意味記念すべき人達だ。見た目的にも覚えておく価値がある気がする。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「あっな、なら」

「あなた達のことは、よく覚えておきますので」

「……ひぃっ」

 

 そう言うと弾けるように、逃げるように彼らは案内された席に着いた。

まるで何かを忘れるために、一心不乱にメニューを読んでいる。僕のことだろうね。

どこが琴線に触れたのか分からないけど、恐ろしいところがあったんだろう。

 

 どうでもいいか。大切なのは解決したこと。案内の子も怯えながら僕にお礼を言ってくれた。

 

「穏便に解決してよかったね」

 

 そう言って皆の方へ振り返ると、例のごとく伊地知さんと喜多さんに引かれていた。

山田さんだけは何故か嬉しそうに、いいものを見たとでも言いたげに、ほくほくとしていた。

どっちもよく見る、つまりいつも通りの反応だ。もう慣れた。

 

「……後藤くん、やっぱり魔王だよ」

「あれ?」

 

 伊地知さんの中で僕が大型犬から再び魔王にランクアップ、ダウン? したらしい。不思議だ。

 




感想評価お願いします。

次回のあらすじ
「冥土」

後藤兄の名前を出すかどうか

  • 個性を捨てるなんて勿体ない。名無しで。
  • 考えたなら出してみよう。最終回で出す。
  • んなもん自分で考えろスカタン。
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