前回のあらすじ
「ぼっち学第一人者による研究成果」
前回はアンケートにご協力いただきありがとうございました。
最終話で名前が出ることになりました。
僕が犬か魔王か、そんなことはどうでもいい。
こうして席に着いているのに、話すだけで注文もしないのは迷惑になるだろう。
三人とも注文のことなんて忘れているみたいだし、僕からやっておこう。
「ひとりー、注文いいー?」
「はっ。うん、待ってて」
安全の都合上、僕がお願いできるのはひとりだけだ。
そのためわざわざ入り口のあの子に呼びかけると、それで目が覚めたらしい。
持っていた看板をその場に置いて、とことこと僕らの元まで歩いてくる。
「……」
「……」
「……」
ようやく僕に引くのをやめた皆が、何故かその様子を真剣に見ている。
あまりにも熱を感じるものだったから、ひとりはそのまま僕の後ろまで移動した。
そしてしゃがんで僕の背後に隠れながら、顔だけ出して怯えている。
「ぼっちちゃんって、改めて見ると可愛いよね」
「えぇ、とても。……そういえば、後藤さんだけなんだか服が違いますよね」
喜多さんの言う通り、ひとりだけ他の子とは違うデザインのものを着ている。
長袖にロングスカートで全体的に飾り気がない。クラシカルな雰囲気がある。
何度見ても可愛い。ひとりにはこっちの控えめな、大人っぽい清楚な方が似合っていると思う。
僕の感想は置いておいて、一人だけそんな物を着てるから皆も不思議に思ったらしい。
「あっ、さ、サイズが合わなくて、変えてもらいました」
サイズが合わないというのは、実はデザインを変えてもらうための方便に過ぎない。
はっきり言って、最初の服はちょっと露出が多かった。胸元は開いてるしスカートは短い。
普段のジャージ姿から分かるように、ひとりはそういう恰好は苦手だ。
あんな服を着ていれば、ただでさえ苦手な接客が余計に出来なくなるに違いない。
だから一緒に台本を考えて、担当者と話してなんとか今の服にしてもらった。
「……なるほど、サイズ」
「サイズ、ね」
ひとりの言葉を聞いて、喜多さんと伊地知さんの視線の種類が変わったような気がする。
夏休み前の僕であれば、どんなものになったのかきっと判断できなかっただろう。
だけど僕は成長した。二人が抱えている感情も今なら容易に把握できている、と思う。
「いきなり嫉妬なんかしてどうしたの? 急に怖くなってるよ」
「シットシテナイヨ?」
「コワクナイデスヨ?」
違うらしいけど変に片言だ。でもこれ以上触れない。きっとそっちの方がいい。
僕は成長したから分かる。これは藪蛇、地雷だ。何も言わずにそっとしておこう。
二人はそんなだったけど、山田さんの目は一貫していた。お金の目だ。
「今度ぼっちの水着でMVを作ろう」
「山田さん、怒らないからもう一回言ってくれるかな」
「……殺す前に一度話を聞いてほしい」
あんまりふざけたことを言うから、つい耳を疑ってしまった。
恥ずかしがり屋のひとりに水着なんて着させて、その姿を全世界に晒上げる。
そんなことをすれば間違いなくあの子は引きこもりになるだろう。それは許されない。
「今はバンドも動画サイトの再生回数が正義。ここはぼっちにひと肌脱いでもらいたい」
「そういう方向は駄目。後藤家が許しません。NGです」
ひとりは、ギターヒーローは小細工抜きでも百万を超える再生数を誇っている。
というか再生数なんてどうでもいい。妹のそんな恰好をネットになんてあげられない。
もし山田さんが本気で言っているなら、僕は彼女にトラウマを刻まなければいけなくなる。
お互いのためにもどうか冗談であってほしい。そもそも、あえてひとりがやる必要はないと思う。
「それにビジュアル方面で売りたいなら、山田さんが自分でやればいいでしょ」
喜多さんをはじめとして、山田さんが男女問わず人気があることは僕でも知っている。
そんな彼女が水着でもなんでも、とにかくビジュアル方面に走ればいくらでも反響はあるはず。
そう思っての発言だったのだけれど、誰一人としてその意味を理解して無さそうだった。
そこまで分かりにくいことを言ったかな。もっと嚙み砕いてみよう。
「山田さんも美人さんなんだから、自分でやりなよってこと」
そう言うと、同級生二人がありえないものを見る目に変わった。
そんな顔をされるような、そこまで変なことを言ったとは思えない。
代表して伊地知さんが、僕にそのありえないを確認してきた。
「えっそんなまさか、後藤くんにもそういうのって分かるの!?」
「僕はなんなの?」
一応僕にも美醜の感覚くらいはある。そこにどうこう、というのを感じたことが無いだけだ。
そういうのだってきっと、もう少し大人になれば芽生えてくるはず。もう十七歳だけど。
仮にこのままでも、きっと後藤家の血はふたりが繋いでくれる。僕もひとりもそう信じている。
僕が美人さんと言ったからか、山田さんは鼻高々になっていた。
彼女でも容姿を褒められると嬉しくなるらしい。分かりにくいけど少しご機嫌だ。
「ふっ、魔王に見初められた私…………陛下、いつでも一生養ってくれていいよ」
「それはちょっと」
「秒で振られた」
鼻は一瞬で折れた。というか意図せず僕がへし折った。
面白いし高いままでもよかったけれど、彼女の誘いを断ったら一緒に折れていた。
山田さんのことは好きだけど、一生養うとなると友達とは違う関係になってしまう。
「ベーシストは駄目だって、伊地知さんこの間言ってたし」
「おっ後藤くんよく覚えてたね、偉いよー」
「……もしかして、これって犬扱い?」
「犬?」
伊地知さんはギリギリ触れない程度の位置で、僕の頭を撫でるような仕草をしていた。
口にはしないけど、さっき魔王とか言ってたのにこれはどうかと思う。
そして呼んだのに注文もせず遊んでばかりいたから、とうとうひとりがじれてしまった。
「あっ、何か注文してください!」
「ごめんごめん」
ひとりの一声に改めてメニューを確認する。謎の言語付きオムライスしかない。
喜多さん曰く日本語らしいけど、僕にはそうは思えない。意味不明だ。
このままだと頼めないから、これらが何なのかひとりに教えてもらおう。
「ひとり、このゆめ、かわとか、何? どういうオムライスなの?」
「全部普通のオムライス、全部一緒だよ。全部冷食」
メイド服で全部予算を使ってしまい、名前でかさ増ししているだけらしい。
ただ、綺麗にオムライスを作るのって意外と大変だ。それも大量にとなると出来る人は少ない。
衛生面のこともあるし、何もなくても最終的には冷食になっていたと思う。
「あと、この美味しくなる呪文って何? תבקש משאלהとか?」
「なんて?」
「願いを叶えたまえー、みたいな」
「今日魔王アピール激しいね」
メイド喫茶は隠語で、実態は冥途喫茶なのかと一瞬思ってしまった。
僕の馬鹿な勘違いを伊地知さんが訂正しながら教えてくれた。
「そうじゃなくて、おいしくなーれ、みたいなおまじないだよ」
「おいしくなーれ……?」
おまじない自体は分かるけど、あれって小さい子のためにやるものじゃないのかな。
痛いの痛いのとんでけー、とかそういうやつ。今もふたりにはたまにやっている。
ぴんと来てない僕を見て、何かを思いついた伊地知さんはとても悪そうな顔をした。
「それじゃあメイドさん。この人に美味しくなる呪文、教えてあげてくださ~い!」
「えっ」
「お客様は魔王様だよ。早くして」
「楽しんでますね……」
ニヤニヤと笑う伊地知さんと山田さんはとても楽しそうだ。
かくいう僕も、どんなことをしてもらえるのかちょっとわくわくしている。
ひとりは慌てながら、喜多さんは呆れながら、僕達悪い先輩のことを見ていた。
「あっふわふわぴゅあぴゅあみらくるきゅん、オムライス美味しくなれ……へっ」
先輩達に無茶ぶりされて、ひとりなりに頑張っていた。
一生懸命歪な笑顔とハートを作り、なんとかおまじないをしようとしていた。とても可愛い。
なんかべちゃって音がしたし、おまじないより呪い感が強いけど、その努力は評価したい。
なにはともあれ、まずは実食だ。おまじないが本当に効いたか試そう。
とりあえず一口味わって食べる。少し考えてもう二口三口、続けて食べてみる。
「……なるほど、これがおまじないの効果、すごいね」
「何も分かってないですよね?」
「だって味変わってないよ」
何の変哲もない冷食の味だ。際立って美味しくも、不味くも無い普通の味。
僕はそう感じたけれど、対面の山田さんと伊地知さんは極めて微妙な顔をしていた。
「さっきよりパサついてる気がする」
「気のせいだって。味覚も料理も科学だよ」
「夢も希望も無い」
気分や体調によって味覚は変わるけど、それにしたって限度はある。
この一瞬でそこまで変わるのなら、おまじないじゃなくて何か盛られたことを疑った方がいい。
ひとりのおまじない付きオムライスを黙々と食べ進めていると、急に喜多さんがやる気を出した。
「駄目よ後藤さん! それじゃ愛情がちっとも伝わらないわ!!」
「あっはい。す、すみません」
喜多さんはおまじないに一家言あるようだ。師匠かなにかのようにひとりを叱り飛ばしている。
「いい? 今から私が、本当の美味しくなる呪文を見せてあげるね!!」
彼女が立ち上がり片手を上げると、どこからかキターンという音が響き始めた。
同時に未だ光源の分からない光も放たれた。今日も喜多さんは物理法則を無視している。
喜多さんオンステージだ。そうして彼女はノリノリで呪文を唱え始めた。
「ふわふわ~ぴゅあぴゅあ~、みらくるきゅんッ☆ オムライスさんっ、おいしくなぁ~れっ♡」
ひとりと違ってどこまでも明るいものだった。追加した身振り手振りにもキレがある。
何よりも恥じらいが無い。笑顔、おまじない、ポーズ、全てに自信が満ち溢れている。
この感じ、どこかで見たことがあるような。テレビか何かだったかな。
「ケチャップの程よい酸味とソースの甘さが溶け合い、温かな家庭を感じる味に変わったっ!?」
「んまっんまっ」
物思いにふける僕はともかく、二人には呪文が効いたようだ。
さっきまでのしけった顔が嘘のように、オムライスを美味しそうに頬張っている。
喜多さんは僕にもそうなってほしいみたい。期待を全面に出してきらきらと僕を見ている。
それを裏切って申し訳ないけれど、僕には多分あんな反応は出来ないだろう。
だからせめて、おまじないの感想だけでも伝えておこう。ちょうど思い出した。
「喜多さんのおまじない、教育番組のお姉さんみたいだったね」
「予想外の感想!?」
ちなみに味はまったく変わらなかった。料理は科学。
そうしてオムライスを食べ終えて退席するはずだったのに、僕達はまだここにいる。
というか、僕以外は何故かメイド服に着替えて働き出している。
きっかけはひとりのことを心配してくれた、クラスメイトの女の子のお願いだった。
「喜多ちゃん、さっきのすっごく可愛かったから、よければメイドさんやってくれない?」
「もちろん、いいわよ!」
快諾した喜多さんが着替えて。
「先輩達も思い出作りにどうですか?」
そんな風に伊地知さんと山田さんも誘って、二人とも着替えて。
「わぁ、皆さんとってもお似合いです! あのー、お手伝いもお願いしてもいいですか?」
「いいよー」
「いいけど、私は高いよ」
こうして皆手伝いに回ってしまって、僕だけ取り残されてしまった。
僕も何かさせてもらった方が、でもひとりからおねだりされたのに断ったばかりだ。
ここでやってしまうと、私が言っても聞いてくれないのに、と拗ねてしまうかも。
それにそもそも、僕が手伝えることなんてないだろう。きっと何もしないことが一番の手伝いだ。
そうなると、僕は座席的にも魔王的にもさっさと退店すべき。
そう思って席を立つと、にこやかに接客をしていた喜多さんに止められた。
そのまま背中を押されて教室の奥、入口から一番目立つ席に座らされる。
「先輩は、ここに座っててください!」
「僕もう食べ終わってるし、手伝いも出来ないよ?」
「いいからいいから。あっサングラスと帽子外しますね」
止める暇もなく両方とも奪われる。こうなると下手な動きは出来ない。
誰もいない方に視線を移して、ただじっとしているほかない。僕も机とか天井とか見ていよう。
そうして僕が困っていると、隣にひとりが力なく座り込んできた。
「戦力外通告を受けた……」
「よしよし」
結束バンドの三人が着替えたことで人手が余り、休憩していいよと言われたらしい。
言った子に恐らく他意は無い。言葉通り休んでね、という意味しか無いはずだ。
それを説明してもどうにもならないから、いつも通り僕はひとりをただ慰めていた。
やることも無いし、ひとりも話す気分じゃなさそうだから、二人してぼーっとしていた。
目立つ席で何も食べず、注文もせず、ただただ座っているだけだから当然注目もされる。
そんなに見られると鬱陶しいし、ひとりも怯えるから視線を返したい。だけど我慢しないと。
数分ほどそうしてじっとしていると、今度は山田さんが僕達の元へ歩んできた。
ついさっきまでメイド服だったのに、今度は燕尾服に着替えている。執事かな。
服装はともかく、どうして僕がここにいるのか、何か理由を知ってるかもしれない。
「山田さんこれは、僕は何をして、ううん、何をさせられてるの?」
「郁代から説明されてない?」
まったくされていない。そう答えると、山田さんは顎を手に乗せて考え始めた。
恰好が恰好だから絵になる。視界の隅で、ひとりのクラスメイトが黄色い声をあげていた。
彼女達の視線も声も気にせずに、思考をまとめた山田さんが僕の役割を教えてくれた。
「陛下には客寄せパンダになってもらう」
「きゃ、客寄せパンダ?」
僕の代わりにひとりが驚きを口にしてくれた。言葉の意味は分かる。
分かるけど、急に客寄せパンダになってくれ、なんて言われても困惑しか出来ない。
そもそも僕に人を寄せる力は無い。逆なら、遠ざけるのには自信がある。
「僕を見て近づく人はいないと思うけど」
「遠目なら違うよ。陛下は顔がいい。そして喋らなければ貫禄がある」
「喋ると?」
「面白いから私はいいと思う」
褒めてるのか褒めてないのか、山田さんが解説を続けた。
「とにかく、そんな陛下がメイドを従えていれば」
山田さんがそこで溜めた。従えていれば、なんだろう。魔王城にでもなるんだろうか。
「そう、店がロイヤルになる」
「ロイヤル」
意味が分からなくて復唱してしまった。店がロイヤルになるって何。
ひとりに確認しようとしても、首を横にブンブンと振られてしまった。
僕達兄妹にはお店がロイヤルになるなんて概念は無い。意味不明だ。
「ロイヤルになる。つまり、いるだけで店のランクが上がる」
「文化祭の出し物にランクとかあるの?」
「きっとオムライスの値段を五百円から千五百円にしても問題ないくらい」
「冷食にそれは詐欺じゃ」
「メイド喫茶なんてそんなもんだよ。水が無料なだけ良心的」
開き直るように言っていた。そんな阿漕な商売なの?
彼女の言葉を疑って、会話中に失礼だけど軽く検索してみる。本当だった。
メイド喫茶は冥土喫茶だ。こんな恐ろしい業界だとは知らなかった。
「だから陛下は、ここで客寄せパンダ、いや客寄せ魔王として偉そうにしていてほしい」
「客寄せ魔王……?」
「私とぼっちが傍で控えているけど気にしないで」
「えっ、わ、私もですか?」
「今の私は執事だから、メイドも必要だよ」
それで説明が終わったのか、山田さんは空いている席に偉そうに座った。
山田さんも偉そうにするんだ。というか、控えるのに座るんだ。
なんて思いはしたけれど、どうでもいいことだから何も言わないことにした。
「これで店は大儲け、私は座ってるだけでギャラがもらえる」
そう言って山田さんは不敵な笑みを零した。彼女がこうやって笑うってことは失敗するな。
「来ると思う?」
「来ないと思う」
「だよねー」
「うん」
なんてひとりと話してたけど、その後客足は急に加速した。
伊地知さんが大量に外から連れてきたからで、僕がどうこうというのはないと思う。
妙に視線を感じはしたけれど、目立つ席で居座っていればそうもなるだろう。
理由はともかく、そうして増えたお客さんを伊地知さんと喜多さんが中心になって捌く。
ちょっと困ったお客さんがいたら山田さん、酷い時は僕が視線を向ける。ひとりは僕の癒し。
そんな感じでどんどんお店は回転して、気付けばオムライスは完売していた。
「ギャラ、私のギャラはどこ……?」
「もらえる訳ないでしょ。オムライス無料にしてもらっただけありがたく思え!」
山田さんのたくらみも虚しく、当然のごとくギャラなんてなかった。
文化祭を満喫して、明日のためにスターリーへ向かう途中、伊地知さんが急に声をあげた。
あげたと思ったら、どことなく恨めし気に僕をジトっとした目で見ている。
「そういえば、感想聞いてないんだけど」
「感想?」
そんなもの、いつ求められていたっけ。横のひとりは首を傾げるばかり。
喜多さんは、うんうんと頷いている。そして山田さんはなんだか余裕だ。なんのことだろう。
思いつかない僕の様子に、伊地知さんは頬を膨らませて付け足した。
「だから、後藤くんの感想! メイド服の!!」
目まぐるしく状況が動いていたから、何か口を挟む暇もなかった。でもそれは言い訳だ。
おめかしした女の子は何があっても褒めなさい。この間母さんが、真似してふたりも言っていた。
もちろんいくらでも褒めることは出来る。だけど、その前に一つ確認しておかないと。
「どのくらい話してもいい?」
「どのくらいって、何が?」
「感想のこと。あんまり長く話しても困ると思うから」
以前カラオケで喜多さんを褒めた時、帰り道ひとりにとても叱られた。
褒めすぎはよくないこと。言葉を選ぶこと。考えてから喋ること。ひとりに言われたくなかった。
だから前もっての確認だったけど、それもなんだか伊地知さんのお気に召したらしい。
斜めになっていた機嫌が元通り、それ以上によくなっているのを感じた。
「えー、なに後藤くん、そんなに思うところあったのー?」
「うん。似合ってたから、結構話せると思う」
「ふっふっふ、いいよ、好きなだけ話して!」
どんと来い、と伊地知さんは胸を張っている。
好きなだけ。本当にそんなに話していいのかな。わくわくしてきた。
念のためひとりを見ると、少し迷ってから諦めたように頷いた。
ひとりから許可をもらえた。つまりこれは無暗無用な褒めじゃない。
それなら僕も遠慮はいらないだろう。全力で褒めよう。どこから話そうかな。
頭の中で伊地知さんへの誉め言葉を整理していると、喜多さんが急に顔を赤くした。
「……あ゛っ!? い、伊地知先輩、それは止めた方が」
「なんで? 喜多ちゃんは気にならないの?」
「それは気になりますけど。そうじゃなくて、後藤先輩は加減を知らないから」
「加減?」
「えっと、じゃあまずはね」
スターリーへの道すがらずっと伊地知さんを褒め続け、秀華祭一日目は無事に終わった。
楽しい一日だったけど、時間の関係で伊地知さんのことしか話せなかったのは唯一の心残りだ。
「なあ、帰ってからずっと顔赤いけど平気か? 明日本番なんだから早く寝なよ」
「……お姉ちゃん、誉め殺しって実在するんだね」
「えっ何の話?」
「ほんとに死ぬかと思った…………」
「えっ何怖っ」
途中のはエキサイト翻訳なので気にしないでください。
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