ぼっちの兄もまたぼっち   作:差六

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感想、評価、誤字脱字報告ありがとうございます。

おまけです。いつもの半分くらいです。

私には喜多ちゃんが分かりません。



第七話おまけ「めいたんていきたちゃん!」

『虹夏ちゃんが嬉しいけど駄目だって』

 

 私がそうお兄ちゃんにメッセージを送っていると、虹夏ちゃんがじっと私を見ていた。

あっ、そ、そうだ。誰かと一緒にいるのに携帯を弄るのは、

お前と一緒にいるのつまんねーよってサインだって、何かで見た!

た、大変だ。否定しないと、楽しいよーってアピールしないと!!

一生懸命頭の楽しいボックスをひっくり返して、アピール方法を探したけど見つからない。

ウェイしか見つからない。私の楽しいボックス小さすぎる!

 

「ぼっちちゃん、もしかして誰かと連絡してる?」

「うぇ、ウェイ」

「ウェイ!?」

 

 ボックスの底の底までいきそうなところで、虹夏ちゃんがそう口にした。

そう言えば、結束バンドの皆の前で携帯を触っていたことはなかったかもしれない。

いつもそんな余裕なくていっぱいいっぱいだった。

あっ、その前にちゃんと答えないと。

 

「あっはい。お兄ちゃんにいい場所知ってる、って聞いてます」

「あー、あのお兄ちゃんか。ひょっとしてさっきのスターリーも?」

「あっはい。あそこ好きだからどうって」

 

 そっかー、照れるなーと虹夏ちゃんは嬉しそうに笑っていた。

こ、これが一般JKの照れ笑いの仕方! 可愛い! 私みたいに溶けてない!!

今更だけどショックを受けていると、右の方に陽のオーラを感じた。

喜多さんがいた。凄く近くにいた。うぅ、あまりの明るさに溶けそう。

私たちの会話を聞いてたみたいで、興味津々、キターンっと目が輝いている。

 

「後藤さん、お兄さんいるのっ?」

「あっはい。兄と妹が一人ずつ」

「いいなぁ、私一人っ子だから、兄妹って憧れてるの」

 

 お兄ちゃんも妹もいいなぁ、という喜多さんの目はますますキラキラしていく。

凄い。どんどん光量が増していく。眩しい。人はこんなに輝けるんだ。

本物の陽キャは自分から光るんだ。全然知らなかった。今度お兄ちゃんに教えてあげよう。

 

「ね、ね。やっぱり兄妹だから後藤さんにそっくりなの?」

「兄妹だからってそんな似るものでもないよ。ほら、うちもあんまり似てないでしょ」

「いや、虹夏たちはそっくり」

「えー、そうかなぁ」

「似てる。特にアホ毛が」

「ピンポイント!?」

 

 リョウさんも気づくと会話に入ってきていた。

皆がこっちを向いていた。も、もしかして、お兄ちゃんトークを求められてる……!?

そんな、初めてだから何を話せばいいのか分からない。

 

「えっと、顔立ちはそっくりだけど、顔つきは全然違うって言われました」

 

 昔、お祖母ちゃんに言われたことをそのまま言ってみた。

あれはお兄ちゃんと入れ替わって遊んでいた時だったっけ。

混乱して首を吊ろうとしたお祖母ちゃんが。立ち直ってから言ってたなぁ。

だから余計自信がなくなっちゃったんだーって。

あと、ふたりが私たちのアルバムを見て、おねーちゃんがふたりいる、って驚いてた。

そのくらい、昔の私とお兄ちゃんはよく似ていた。

 

「それって何が違うんでしたっけ?」

「顔立ちは顔のつくり、顔つきは表情とかも含むって書いてある」

「確かに、話し方とかぼっちちゃんと全然違ったよ」

 

 リョウさんの解説に、虹夏ちゃんが腕を組んでうんうんと頷いている。

お兄ちゃんは私と違って、人と話しても緊張はさせるけど自分はしない。

あの時も横で聞いてたけど、落ち着いてお話出来ていた。

そんな虹夏ちゃんを見て、また喜多さんが興奮し始めた。

 

「伊地知先輩、会ったことあるんですか!?」

「会ったことはないけど、ぼっちちゃんと初めて会った時に電話で話したよ」

「どんな人でした!?」

 

 なんだか喜多さんの様子がおかしい。

いつも私とは比較してはならないほど明るくテンションが高いけど、今はもっと高い。

そんなに兄妹の話がしたいのかな。

このまま近くにいたら明るさで浄化されてしまうかも。

 

「えっとね、優しそうだったよ」

「それで!」

「喜多ちゃんテンション高いなー。……あぁ、あとね」

 

 いたずらっぽい顔で虹夏ちゃんがこっちを見た。ニヤニヤと、猫のような目をしていた。

い、嫌な予感がする……!

 

「すっごいぼっちちゃんのこと好きだーって感じだったよ」

「なっ」

 

 危険球!!

いやお兄ちゃんが私のこと好きだっていうのは、いくら私でも分かるけど。

お兄ちゃんに聞いても、もちろん大好きだよ、としか返ってこないと思うけど。

人に言われると、なんだかすごく恥ずかしくなってくる!

 

「ぼっち真っ赤」

「可愛いけど大丈夫かなぁ。変形すると写真撮れないよ」

「変形!? 後藤さんって変形するんですか!?」

 

 落ち着こう。落ち着こう私。知ってることを指摘されただけ。

いつものこといつものこと。知ってること知ってること。

 

「電話口だけど、丁寧にぼっちちゃんのこと頼まれちゃった」

「そういうの聞くと、ますますお兄ちゃんお姉ちゃん欲しくなります」

 

 喜多さんが遠くを見始めた。本当にどうしたんだろう。

兄妹話を始めてから、喜多さんの様子がずっと変だ。

それとも私が知らないだけで、陽キャって学校外だと皆こんな感じなのかな。

つ、ついていけない。私レベルじゃ足元にも及ばない……!

 

 遠くを見つめていた喜多さんが、いつの間にかじぃっと私の顔を見つめていた。

な、なんだろう急に。そんなに見られても何も出せない。

このままだと意識が遠くなるから、目を合わせないよう視線を逸らした。

喜多さんは変わらず何かを確かめるように、私を見ながら問いかけてきた。

 

「顔そっくりってことは、入れ替わる遊びとかもしたことあるの?」

「あっはい。小さい頃はよく」

「へー、漫画とかでは見るけど、ほんとに出来るんだ」

「う、運動会とか、合唱コンクールとか、代わりに出てもらったこともあります」

「……ぼっちちゃんって、急に爆弾発言ぶっこんで来るよね」

「そこがぼっちの面白いところ」

 

 出てもらったこともある、というか、小学校の頃はほとんどお願いしてた。

自分でも、マラソン大会をお願いしたのは最悪だと思う。

小学校を卒業するころには、さすがにもう無理がある、と断られるようになったけども。

 

 入れ替わりというと、お兄ちゃんにはこの間は悪いことしちゃった。

いくら風邪で変になってても、この年になって女装して代わりに登校してもらうって。

でも、せっかく行ったんだから、テストはちゃんと点取ってくれてもよかったと思う。

あとなんだか何日か色んな人に凄く見られた。もしかして何かやった?

 

 お兄ちゃんへの感謝と恨み言を思っていると、とある壁が目についた。

一面に大きな木の絵が描かれていて、それを覆うようにツタがあちこちに伸びている。

絵だけど、日の光があたってなんだか本物のような、生命力のようなものを感じた。

 

 思わず見とれていると、周りに誰もいないことに気が付いた。お、置いてかれてる。

へへっ、私存在感ないから。いなくなって気づかれなくてもしょうがないよね。

そういえば中学生の時もそうだった。打ち上げ途中ではぐれても誰も気づかなかった。

結局お兄ちゃんが見つけてくれるまで放流されてたよね。

 

 じゃないじゃない。今昔のこと思い出してどうする!

いい場所を見つけたんだから、虹夏ちゃんに伝えないと。

そこで結束バンドのアー写を撮るんだ! 

 

 先に行ってた虹夏ちゃんたちに声をかけて、そこでアー写が撮影できた。

御見苦しいものを見せてしまったり、承認欲求モンスターに飲まれかけたりした。

でもなんとかなった。ちゃんと撮れた。うへへ。

 

 虹夏ちゃんに分けてもらった写真を見る。顔のにやけが収まらない。

家族以外と写真を撮れて、こんなに嬉しくなるなんて思わなかった。

この写真は部屋に飾ろう。たくさん飾って、この幸せな気持ちをもっと味わいたい。

 

 あっそうだ。これを見たらお兄ちゃんもきっと欲しがる。送ってあげよう。

 

「あっ、この写真、お兄ちゃんに送ってもいいですか?」

「うんいいよー」

 

 皆に許可をもらえたから、お兄ちゃんに写真のデータ送ろうとした。

一件読めていないメッセージがあったから、その返事も一緒に送る。一瞬で既読が付いた。

写真見てくれているみたいだ。喜んでくれるといいな。

 

 無事に撮影が終わった安心感。いい写真が撮れた満足感。お兄ちゃんへの自慢。

色んな気持ちで満たされていた私は、後ろから喜多さんが見ていたことに気付かなかった。

 

「やっぱり」

 

その呟きの意味も、まったく理解できていなかった。

 




「陽キャならこれくらい出来るだろう」
VS
「でも喜多ちゃん中身小学生だし」

私の中でこんな争いがありましたが、今回は前者が勝ちました。
ダークライは陽キャと相性が悪いので不戦敗です。
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