【カオ転三次】お前頭ガイアかよぉ! 作:闇の転生者
不可思議な霧が立ち込める特殊な異界、【マヨナカテレビ】。
とある古神が作り出した歪んだ望みを具現化せし世界。
ペルソナ使いと言う非常に希少な限られた人員しか活動できない異常領域。
そして、今はその霧の大部分が晴れている尋常ではない状態の場所。
――そんな【マヨナカテレビ】に、四人+αの闖入者が現れる。
「おっ!? ……何時にないスッキリとした光景、分かりやすい異常事態だなって」
「この状況、何時シャドウに襲われてもおかしくないですね……」
「ああ、警戒は怠れないな……?」
「あ、やる夫さんは危ないので後ろに下がっててくださいね!」
「……あるぇー?」
そう、我らのやる夫とその仲間達である!
霊感で察知した異常事態に即応し、事態の把握・解決の為に真夜中にも関わらず【マヨナカテレビ】の中に突入したのだ。
これも非常事態に備え、常日頃からパーティで一塊になっていたが為の賜物である。
彼らも相応に霊能案件の経験を積んでいるからこそ、その行動は迅速且つ正確だ。
霊能案件では時間を経る事で状況が致命的に悪化する事も珍しくはない。
放置する事こそ悪手と成り得るのだ。
探索できる人員が殆ど居ない現状もあり、彼らに調査を行わないという選択肢は存在しない。
それでいて自分達の実力を高く見積もっても居ない。
即座に陣形を作って安全を確保し*1周囲の探索、情報収集に乗り出さんとする。
「やぁ、早かったねやる夫さん」
――意識の外から声が掛かったのは、そんな時だった。
確実に周囲は確認していた。自分達以外近辺には何も存在していなかった……筈だ。
だがしかし、その声が掛かると同時に“何故気付けなかったのか”とすら思う程の存在感が彼らのすぐ近くに現れる。
……否。現れる、ではない。
それに気付けなかったのはただ確認漏れとかそんなチャチな物ではなく、純然たる圧倒的な力量差に依る物に他ならない。
戦闘になれば何の抵抗も出来ず全滅するであろう、そんな相手がすぐ近くに――
「いや、神主さんじゃないかお!?なんでこんな所に居るの???」
「仕事から逃げふんげふん。まぁまぁ、ちょっとね☆」
そう、最大最強の仲間ユニットであるショタおじこと神主が現れたのだった――
「え、
「出来ればそこは聞き流して欲しい所なんだけどな……?」
◇
そして、話は転換する。
「で、本当になんで此処に居るのかとか、色々聞きたい事があるんだけどお?」
「それは分かってるって。全部話すとちょーっと長くなるから、話は道すがらにね」
【マヨナカテレビ】の中を進む
神主本人には然程異変は無い。むしろあの【ガイア連合】の長と言う事で他のパーティメンバーが内心で委縮しているくらいだ。
神主はプレッシャーを与えない様に配慮しているのに、である。
だがまぁ、それも致し方ないと言えば致し方ない。
様々な事情で直接的間接的を問わずに【ガイア連合】には多くの恩があるのだ。
何ならこの【マヨナカテレビ】の探索だって【ガイア連合】による多大な支援があってこそ続けられているという側面もある。
実際に組織の一員であるやる夫だって非常に強い敬意と謝意を抱いている。
やる夫以外からすれば雲上人も良い所という相手なのだから。
だからこそ、
聞きたい事は幾らでもある。
だが、まずは……
「やる夫達は試験運用中の警報機の作動と霊感に従って来たんですがお」
「おお、アレ作動したんだ。良かった良かった!」
情報共有のついでに最近開発された霊能アイテムの評価も伝えておく。
ガイア連合で広く使われている警報機能付き【簡易式神】、そのペルソナ系異界対応モデルだ。
それをスタンドアローン化し、異界内部に新たにダンジョン等が出来た際に作動――即ち、被害者の存在を察知出来る画期的な作品だ。
ただ改造【簡易式神】と侮るなかれ。ペルソナ系異界ではそもそも式神が動けない為、実用性のある今回の警報機が出来るまでどれだけの苦労が……と言うのは、今はさておき。
重要なのは、実の所その警報よりも……霊感であった。
その霊感、直感を感じたのはやる夫だけだ。他の仲間は何も特に感じはしなかったらしい。
いつもは余り働かない霊感に急かされる様に【マヨナカテレビ】の中に突入したのだが――
「僕の方は占術の結果とかそういうのあるけど、シキガミからの救援要請があってね」
「……んん?それってもしかして――」
“シキガミからの救援要請”。それが意味する所を想像するのは容易い。
そもそも、神主が動いているという時点でそれは予想できたのかもしれない。
シキガミ……ガイア連合特製の【専用シキガミ】を所持しているのは、それは当然【ガイア連合】に所属する仲間。
つまり転生者に他ならず。
そして、ガイア連合内で顔が広いやる夫にとっては他人事では全くない。
その今回の救援要請の中心人物の名は、
霊感で薄々とは察していたその人。
――天野 光理だった。
◇
天野 光理。
やる夫は交流や相談こそしている物の彼については一応、まぁまぁ知っていると言っても良いだろう。
基本的には
彼の事を簡略に表せばそうなるだろう。
だが、やる夫からすればその表現は
そう、少しだけ。
彼は確かに良識のある良い子である。
仲間と協調し、協力し、社会の、組織の一員として自らの役目を全うする事を是としている。
ただし、それは彼が
つまるところ、彼は個人主義なのだ――極端に。
基本的に善良に真っ当に働く事の方が各々の得になる。理があり利になる。
効率厨の自称の通り、自らの目的の為に合理性を重視する気質であるが故という訳だ。
そういう風に神主や上層部が
彼は積極的に働き、自身の利を最大化している……のは確かだが、その選択に彼自身の好悪や他の主義主張が無いという訳ではなく。
交流が得意では無かったり、騒がしいのは苦手であったり、
むしろそれでなんでやる夫と親しいのかちょっと判断に迷いはするがそれはさておき。
そして、彼の事を語る上で欠かせないのは修羅勢であると言う事。
頑張り屋なのだ。――
技術の習得、知識の蒐集に努め、鍛錬場や
他の転生者も個人差こそあれ行っている事ではあるが、彼の場合その密度が尋常ではない。
休日と言う概念を何処かに置き忘れただけなら勿論他にも複数居るが*3、彼程にしゃかりきに行動しているのは流石に数が少なくなる。
それも、一つの箇所に集中しているのではなくそれらのほぼ全てに手を出しながら、となれば尚更だ。
回復系の霊能があるからと言っても無理は良くない。特に彼程に若い身空ならば余計にだ。
……そんな説教やら忠言は聞いてくれない程度には我が強く、そしてその努力に見合う霊能の実力を持つ子でもある。
うーん、なるほどなるほど。つまりは、だ。
「もしかしなくてもやる夫達だけじゃどうしようもない案件では??」
「(実力的な意味で)そうだよ♪」
で す よ ね ! !
光理君は修羅勢の中では活動量の割にはレベルが低い方だ。
が、それでもそのレベル・実力はやる夫達とは比較にならない程に高い。
そんな彼が今回の緊急事態の中心に居るとなるとちょっとやる夫達には手が負えない可能性が、高い……!
……とは思いつつも。
ペルソナ系異界、それもこの【マヨナカテレビ】はガイア連合でもやる夫の担当する領域だ。
知己である光理君の事でもあるし、霊感の事もある。
実力が足らないからと無視するのはあり得ない事だ。
とりあえず、足を引っ張らない様にはしないといけないと思う。
故に。
「とりあえず、神主さんの方で把握している情報があれば教えて貰えたら嬉しいおね。
無策に突っ込むのは流石に無理だお」
「それは勿論だね。
ハハッ、言いおる。
だけどそれはそれとして、神主が得ていた情報は非常に有益だった。
……今までの予想を割と引っくり返す程度には。
――話の最初は光理君のシキガミからの通報であったらしい。
地方依頼を解決した後、気分転換に出掛けた主の反応をロストした。
至急探索と救援を求む、と。
しかし、この時点で本来ならばかなりおかしな話だ。
何せ、ガイア連合の【専用シキガミ】は割とそんじょそこらの造魔とは一線を画す存在だ。
特に専用シキガミは霊能の才能が極まっている転生者との【専属契約】により出力を増幅させている面も大きい。
基本的に一心同体である専用シキガミが主を
勿論、契約による縁から主である光理君の生存と無事は確認済みではある。が、それはそれとして確かにそれは緊急事態だ。
転生者の危急にガイア連合のトップである神主にも話が伝わり……僅かな逡巡の後に得心し、事態を完璧に把握した。
――「なるほど。ペルソナ使いの彼がペルソナ系異界……場所的に【マヨナカテレビ】へ行ったんだな」、と。
「――って。天野君、ペルソナ使いだったんですか!?」
「そうだね。基本的には、普通の霊能力者として鍛えていた筈なんだけどね」
「あー……そういう事かお」
光理君はやる夫のパーティメンバーとも面識があった為、驚きの声が上がる。
そこそこ親しいと自負しているやる夫とて、他の共通の
だが……それと同時に、何となくではあるが納得できる話だ、とも思った。
そもそもからして、ペルソナ使いと霊能力者を兼業する事自体はあり得ない事では無い。
例えば他の転生者でも富岡氏*4などもそれに当たるし、それ以外のペルソナ使いでも修行で普通に霊能力者として活躍する事も出来るのだとか*5。
霊能力者として鍛える事で降魔していない状態での素の戦闘力を高める事が出来たり、霊能力者としての自身とペルソナとで疑似連撃が可能になったりする大きなメリットはある。
……が、当然ながら相応と言える程のデメリットもある。
まず、ペルソナ使いと霊能力者は同じオカルトでこそある物の、間違いなく別系統の能力だ。
応用が利かないとは言わないが、個別の修行に割かれるリソースが少なくなるのは間違いない。
そんな別の能力を戦闘に使うには複雑な技術を求められ、相当に熟練しなければ双方を使いこなす事は出来ないだろう。
そして何より、そんな義勇氏曰く、ペルソナ使いである自分と霊能力者である自分は先の通り別系統であり……双方の能力を向上させる為の経験値がかなり多く必要になる、との事だ。
戦闘の大部分を担当し推定獲得経験値には大きな差がありながら他の霊能力者の仲間と同レベルだったりする事もあるらしい*6。中々に難しい話だ。
……しかし、そのデメリットを呑み込むのであればこれほど心強い事は無いであろうし、何よりそれは決して不可能な事ではないだろう。
「つまり、【マヨナカテレビ】で活動できる神主さんと同じって事だお……全く知らなかったけども!」
「切り札は最後まで取っておくべきだからね☆」
つまりそれってまだまだ
……まぁ、神主の事だから切り札が無い訳がないとは思ってたのだけども。
ともあれ、メリットを考えれば、光理君がペルソナ使いであれば……そんな選択をするのは、とても彼らしいと納得してしまう。そんな子だよあの子は!
何せ、ペルソナ使いとしての能力は彼にとっても相性が良かっただろうから。
――【瞑想】の霊能資質を持つ光理君には、特に。
「……それも彼は広めてなかったと思うんだけど、やる夫さんって本当に情報通だよね?」
「ちょっと顔が広いだけだお?光理君とも親しくしているし、これくらいは普通だと思うお」
――瞑想。
それは、古今東西あらゆる霊能修行の基礎の基礎だ。当然【星霊神社】での覚醒修行でも行われている。
方法は各々で異なるが、心を落ち着かせて邪念雑念を取り払い、精神を集中、統一して研ぎ澄ますとされる物だ。
“瞑”の字の通り、目を瞑り最も情報量の多い視覚を閉ざし自身の心の内にその意識を集中させるのが一般的だろう。
その一般的とされる物は、霊能における瞑想とそんなに変わりはない。
でありながら、様々な様式の霊能において悉く採用されるのはそれこそ霊能を扱う際に瞑想がそれほどに有用であるからに他ならない。
MAGを知覚し、操作するのが第一歩の霊能力において、身体の五感に感じる感覚も雑念も邪魔になる。
心身をリラックスし、精神をクリアに、それが霊能力を扱う際の理想的な状態と言う物だろう。
勿論、MAGの知覚・操作に慣れれば他の動作行動をしながら術を行使する事なども可能になるだろうが、修練として有用な事は変わりはない。
また、祈祷や信仰など思念精神を研ぎ澄ます事で感情や思いを使って出力の増幅や指向性を持たせる際にも用いられる。
そして、瞑想に長じるとはより強くより深く自らの心の内に潜ると言う事に他ならず。それは即ち自身をこそ見つめる事、自身の客観視でもある。
瞑想の本質を
「それって、
「不知火の反応も尤もだけど、自己との対話に特化し過ぎてるのも良し悪しではあると思うお?」
例えば、彼からちょくちょく愚痴られるぼっち気質であったり、やや考え過ぎるきらいがあったりだ。
ペルソナ使いとしてなら【コミュ】にも影響があるかもしれない。
彼の場合、割と意識して頑張っての現状だと言っていた覚えがあるが……
と、思っていたのだが。
「――で、今回の異変に彼のその素質がちょっと関わっていてね?」
「……うん???」
――情報について話しながら霊感やMAGや神主の先導のまま【マヨナカテレビ】の中を進む事暫くして、その中心に辿り着く。
そこは、随分と離れた位置にあった廃墟となった元デパートだった建物だ。
それも、今となっては面影は少ない。
確かな
【シャドウ】達はやる夫達の近くに来ている者も多く居た筈だが、皆一様に誘われる様にその建物……ダンジョンに吸い込まれる様に入っていく。
間違いなく、あのダンジョンが此度の異変の中心――光理君の居る場所だろう。
明らかに異質なMAGを放ち【シャドウ】を集め、霊感もその意見を強く支持している。
「……やる夫先輩?もしかしなくともあのMAGの気配にちょっと覚えがあるんですけど?」
「…………そういう事も、あると思うお?」
「いや、それは無理があると思うが……」
「まぁ、個人で持ってる分には使うのは自由だからねぇ!」
霊感が強く反応するのも当然だ。
――何せ、かのダンジョンを覆う薄靄からハッキリとやる夫自身の気配がするからだ!!!
光理君?????!
「これは……色々な意味で、放置できない奴過ぎる……!」
「僕的にも、やる夫さんが解決してくれるのが一番丸そうだからね。そんな訳で、よろしく頼むよリーダー」
「いや、
思わず突っ込む――が、神主は苦笑いで首を横に振る。
それを疑問に思っていると、神主は赤く光るダンジョンの入り口に触れ――ようとして、バチッ、と音を立てて弾かれる。
「……ここ、彼の【瞑想】の特性を使っててね。自らの内で完結する、閉鎖的な力。
部外者は干渉不可、そういう【ギミック】なのさ。まぁ、【瞑想】ってそういう物だからね。
そして、その例外は彼が招いた
「……oh」
そう思わずにはいられないがあらゆる意味で退く選択を取れる訳もないし、当然そんなつもりもない。
息を一つ吐き、腹を括り決意を露わに――即ち
ダンジョンに……光理君の心が作った世界に突入するのだった。
【瞑想】:精神を集中させ、研ぎ澄ます事。
心の中の一つの事に集中し、深く静かに落ち着いて考えを巡らす事。
それは心身のリラックスであったり、自己コントロール術であったり、ルーティーンであったり、様々な形態を取る精神安静法……即ち、霊能修行でもあると言える。
そのスタイル・方法は真実無数にあり、究極的には個人個人に合わせた物が良いとされる。
が、それでも各霊能組織には大抵の場合それぞれ合った有用なスタイルが確立されている為、一先ずはその方式で瞑想を行い、修行の助けとすると良いだろう。
女神転生シリーズにおいては攻撃スキル。単体に万能属性のHPMP吸収攻撃を行う。
基本的には【魔人 だいそうじょう】の専用スキルである。
何故上記の様な行いである【瞑想】がこの様な効果になっているかは不明。
なお、ペルソナシリーズにも【だいそうじょう】は登場するが、ペルソナシリーズの【だいそうじょう】は一貫して【瞑想】を使用しない。
不思議不思議。