【カオ転三次】お前頭ガイアかよぉ!   作:闇の転生者

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前回のあらすじ:メガテンエアプ。オフ会に参加する。


二話:★富士山星霊神社覚醒体験オフ会実況スレ(後編)

 様々な思惑を持って、【星霊神社オフ会】へと足を向ける転生者達。

 不安、危機感、期待、楽観、猜疑、願望――だが、きっとそのどれであっても、彼らが、自分達がこの先辿る運命を知る者は居ないだろう。

 

 それは、このオフ会の発起人にして主役である者……彼らからイッチ神主サマナーと呼ばれる者であっても変わりはない。

 ――超越級の実力を持ち、数多の術を修め、幾多の魔を従え、運命を操る占術すら可能である者であっても……変わりはない。

 

「さて……上手く事が運べればいいんだけど」

「…………」

 

 神主と、その仲魔達の感覚は、既にこの星霊神社に近付こうとしている数多の人間――転生者達を完全に捕捉している。

 常であれば星霊神社を覆い隠す巨大な、そして強大な結界に阻まれて迷子になる筈であるが、彼らはその結界をするりと抜けてくる。

 当然、それは神主による采配だ。

 本来なら小悪魔一匹、悪霊一体であろうと立ち入る事の出来ない、日本最大の霊地の結界だ。

 仮にあの中に大悪魔や主神級の悪魔が混ざっていて、万が一この場の地脈へ干渉されてしまう様な事があれば。

 その時は【大破壊】を待たずしてこの世に地獄が顕現する程の大惨事になり得る危険な賭けだ。

 

「ご主人、本当にあいつら使えるのかニャ? 今にゃらまだ間に合うニャよ?」

 

 その賭けの危険さ、そしてリターンを疑問視するのは侍っていた仲魔の一体、魔獣ネコマタだ。

 彼女らの主である神主は控えめに言って最強だ。

 神主自身の実力、そして神主が調伏し従えた仲魔達の力は絶大だ。

 そこらに無数にいる一反木綿の様な悪魔一体が都市を滅ぼせる程の怪異なのだ。

 策も何もなく無造作に放つだけで国一つを焦土にするには余りある暴力と言う物だ。

 だが。

 

「大丈夫――とは断言できないな。未知数な部分も多いし、何処までやる気を引き出せるかは……これから次第だしね」

 

 なら――と言いたそうな猫又を視線のみで制す。

 確かに、リターンは不確定であり、リスクは大きい。

 結界の中に招く事だけではない。

 この場所、そして神主の存在が外部に漏れれば手を出してくる悪魔は急増の一途を辿るだろう。

 また、彼ら転生者を仲間にする為に必要な交流(コミュ)、統制、修行の指導教育――その他にも、暫く、それこそ云年単位で神主のリソースの多くを彼らの為に使う事となるだろう。

 猫又もそれを厭いて忠言して来ているのだろう。

 

 

 だが。それでも……だ。

 

 ――このままじゃジリ貧だからね。

 

 弱音を口に出来ない立場である神主に、そう言外に示されては猫又もそれ以上追及できない。

 

 控えめに言っても最強である筈の神主であっても――手が足りないのだ、力が足りないのだ。

 原因不明の霊地活性化が止まらない。

 神の世を作らんとする海外のメシア教の進撃が止まらない。

 異界よりの悪魔の侵略が止まらない。

 人の心の裏より来る、邪神の企みも見つかった――

 

 この世を滅ぼし得る災いは無数にあり、神主一人では近い将来破綻する事は最早確定している。

 或いは神主を含んだ極少数のみであればそれらの干渉の届かぬ何処へ旅立つ事も出来るかもしれないが……それすら確実と断言する事は出来ない程だ。

 

 とどのつまり、これは先の通りに……賭けであるのだ。博打なのだ。

 転生者達を仲間にして……悪し様に言えば、利用して、殆ど“詰み”の盤面を何とかする為の起死回生の一手なのだ。

 その矢面に立つ事となる神主自身と転生者達はより悲惨な末路を歩む事になるかもしれない。

 ろくに成果も出ないまま抱え落ちになるかもしれない。

 

 地脈と掲示板を通じて転生者達の精査も終えている。

 予め可能な限りの準備は整えた。

 この賭けは吉と出るか、それとも凶と出るか。 

 

「だからこそ、全力を尽くさないとね。第一印象は大切だ。君達もしっかりやってくれよ?」

「『〔勿論です(ニャ)。マスター〕』」

 

 

 

 ――それでも、賽は投げられた。

 

 

 彼ら(転生者達)が境内に辿り着くと同時に歓迎の意と念を込めて行われる術と式によるパフォーマンス。

 非現実的、非日常的過ぎる光景に驚愕する彼ら(転生者達)の前に立つ神主が友好的に笑いかける。

 そこに術的意味はない。だが、神主程の実力者が、己のホームグランドである国最大の霊地で行うその歓迎には真の()()が込められる。

 ――此れより彼等と我等は一蓮托生の同胞である、と。

 契約ではない、言霊ですらない。強制力を極限まで落として、彼らを仲間にする為に。

 彼らの仲間になる為に。

 

 

「ようこそ、日本最大の霊地である富士山、そこに立つ日本最高の神社【星霊(セイレイ)神社】へ」

 

 ――その先の運命は、神主であっても分からない。

 

 

 

 

 

 

 ★富士山星霊神社オフ会実況スレ 

 

 

 

451:名無しの転生者:ID:hkr

はー凄かった!!

 

452:名無しの転生者:ID:tsm

こう、ぱーっと輝いてキラキラが残り続けて、熱くないのに温かいままで

すっげー奴だった!

 

453:名無しの転生者:ID:aru

そろそろ喧騒が落ち着いて来たから言っちゃうけど

 

これガチじゃん……明らかに今の時代に出来る演出じゃないんだよ

 

454:名無しの転生者:ID:mob

ハハッワロス

ワロス……

 

455:名無しの転生者:ID:sna

またまたこんな大人数で騙りとかやめて欲しいですよ~!!

 

456:名無しの転生者:ID:mnm

>>http://×××

大量の式神君乱舞と日中の星空(仮)の動画よ~

 

457:名無しの転生者:ID:msy

CGとかなんじゃ?なんか誰かさんらが変に技術改革してるからワンチャンありそう

 

458:名無しの転生者:ID:bei

ユメカラサメナサーイ

あっここが現実かぁ……

 

459:名無しの転生者:ID:emy

>>456 うーむ……火を扱う職業してる身だが、明らかに火としてあり得ない挙動をしているのは分かる

それ以上は何にも分からん

 

460:名無しの転生者:ID:dal

>>456 画像加工とか痕跡もないっぽい

まぁ動画だしないとは思ってたけど

>>http://×××

これ検証用

 

461:名無しの転生者:ID:sty

そもそもこんな大人数使って騙しする理由もないし

まぁ、現地組だって非現実的だなぁって思ってるんですけどね!

 

462:名無しの転生者:ID:sen

むしろなんでこの短時間に看破できる様な人材がこんな所にゴロゴロしてるんですかね?

 

463:名無しの転生者:ID:hmk

>>462 知らなかったのか?

だって転生者の仲間だもんげ!

 

464:名無しの転生者:ID:ank

もう許(略)

 

465:名無しの転生者:ID:pkm

別に同じ転生者だけどだからといって仲間と言う訳ではないのでは?

ボブは訝しんだ

 

466:名無しの転生者:ID:snb

アイエエエ……マホウ=ジツ!?マホウ=ジツナンデ!?

 

467:名無しのデビルサマナー:ID:hao

オンミョウ=ジツとフウスイ=ジツです。いいね?

 

468:名無しの転生者:ID:snb

アッハイ

 

469:名無しの転生者:ID:gil

>>467 イッチ神主サマナー!イッチ神主サマナーではないか!

色々と説明せよ!本当に色々と!

 

470:名無しの転生者:ID:yro

リアルでイッチの話聞きながら端末ポチポチするのやめよう??

むしろ皆さんマルチタスク達者ですねとか言いたくなるぞ!

 

471:名無しの転生者:ID:hkr

それほどでもない

 

472:名無しの転生者:ID:smr

そ・ん・な・こ・と・よ・り!

イッチ神主サマナーがめっちゃイケショタなんだけど???

アラサーって言ってた筈なんだけどどう見ても10代半ばって感じなんですけど!?

若返りとか不老不死とかそういうのが出来る様にしか見えないんですけど!!??

 

473:名無しの転生者:ID:luk

ガタッ

 

474:名無しの転生者:ID:hmr

ガタッ

 

475:名無しの転生者:ID:app

ガタッ

 

476:名無しのデビルサマナー:ID:hao

>>469 >>472 今から!色々!説明!するから!ちょっと、待ってね??

 

477:名無しの転生者:ID:kkr

サーセン

 

478:名無しの転生者:ID:sir

サーセン

 

479:名無しの転生者:ID:mnm

ちょっと男子ィ~イッチ拗ねちゃったじゃーん

 

480:名無しの転生者:ID:mob

謝っテ!なんかこう良い感じに謝っテ!!

 

481:霊視:ID:kor

いや、それより前に

なんだここ伏魔殿か……??

 

482:名無しの転生者:ID:kuk

傍から見たらリアル霊視ニキが筋モノ過ぎておまいうなんだよなぁ……

 

 

(暫く諸々の説明と実演とそれらのスレでの同時実況が続く)

945:名無しの転生者:ID:ktr

霊視ニキが虚空と戯れてるの怖いよー

あれ明らかに精神やっちゃってるよね?ヤバいよヤバいよ……

 

946:名無しの転生者:ID:ank

あのあの、自衛隊ニキと富豪ニキ達が持ってきた銃だけでもキャパオーバーなのに

あのしょっっぼい式神に余裕で弾かれてかすり傷すら無いんですけど??

>>http://×××

 

947:名無しの転生者:ID:hkr

女神転生シリーズエアプなんだけど、あれって実際どのくらいの強さであれはどのくらいヤバいって事なの?

教えて博士!

 

948:名無しの転生者:ID:dal

>>947 博士ではないけど、基本的にメガテンに出る【妖鬼 シキガミ】はLv4前後の序盤も序盤の雑魚敵で、特に銃に強いとかはない

ない、筈なんだけどな……??

 

949:名無しの転生者:ID:mob

ビーター……ってコト!?

……いや、仮に、もしかして、万に一つこれらが事実ならそれ所じゃないんだが

 

950:名無しの転生者:ID:jjo

触った感触は紙なのに殴ったら鋼鉄より硬いとかちょっと理解できない

物理法則はどうなってんだ物理法則は!

 

951:名無しの転生者:ID:ber

>>951 物理法則はオカルトで死にました……

 

952:名無しの転生者:ID:app

と言うか、さっきの動画と霊視ニキの報告によると軽く100体以上仲魔が居る筈なんだけど

仲魔の使役・ストックの上限もないっぽい?

 

953:名無しの転生者:ID:sna

仲魔ハーレムが出来るって事か……夢が広がるな

使役できる訳ないんだけどな!!見た目に関係なくバケモンじゃん!!!

 

954:名無しの転生者:ID:msu

ここは現実だからゲームとしての制約がないって事だからな

制約がない事によるメリットよりデメリットの方が多いと思うんだけど(小声

 

955:名無しの転生者:ID:mys

主人公補正がない女神転生とかどう考えても死ぬしかない

 

956:名無しの転生者:ID:emy

>>955 それはそう。本当にそう

 

957:名無しの転生者:ID:bei

前世では無かった筈の各国の小競り合いめっちゃ多いしな

もしかして:悪魔達の代理戦争

 

958:名無しの転生者:ID:gin

メガテンのどのストーリーが進んでるかも分からずシナリオの枷もない悪魔が全国で暗躍してるって?

 

959:名無しの転生者:ID:tih

oh……

 

960:名無しの転生者:ID:ank

まままままだ慌てる時間じゃない

人間の力を信じれば悪魔なんて何てことないさ

 

961:名無しの転生者:ID:jjo

いやまぁ、実際このオフ会そういう趣旨だしな

【覚醒】する為の霊力修業体験っていう名目だぞ!

 

962:名無しの転生者:ID:msy

>>961 ハッ

 

963:名無しの転生者:ID:mob

>>961 そういえばそんな話だった気がする

……本当に??

 

964:名無しの転生者:ID:anj

だが待ってほしい

それは俺達に才能があるという前提が無ければ態々富士山まで行って辛い修行を受けるだけに終わるのでは……?

 

965:名無しの転生者:ID:sna

>>961 俺らに才能がある訳ないってはっきり分かんだね

 

966:名無しの転生者:ID:emy

結局イッチ神主サマナーが言ってた転生者が覚醒しやすいの根拠もふわっふわなままだし

誰か少しはそういうのが分かるの他に居ないのかー!

 

967:霊視:ID:kor

>>966 本当に少しだが分かるぞ(多分

>>945 猫又と戯れていただけなんだが!?!?

 

968:名無しの転生者:ID:pkm

>>967 !!

 

969:名無しの転生者:ID:emy

>>967 マジかよ霊視ニキ!

まぁ俺は現地には居ないんですけどね……

 

970:名無しの転生者:ID:dal

仕事しろ定期

 

971:名無しの転生者:ID:mnm

オマエモナー

……で、霊視ニキ、それはマジなの?

現地組だけど、正直に言って本当に多種多様過ぎて、転生者だからって全員が全員才能がある、と言うのは俄かには信じがたいんだけど

 

972:名無しの転生者:ID:ykr

そーだそーだ

前世でも全然優れてなかったし今世だって絶賛ニート中やぞ!

 

973:名無しの転生者:ID:hkr

引きこもりニートに怖い事なんてそんなに無い!

そんな訳で詳しく教えて貰えないでしょうか

 

974:名無しの転生者:ID:app

もしかして霊視って相手の能力とか才能とか適性とかも見れる超凄いチート鑑定的な?

【アナライズ】の類と考えればそりゃ色々分かるのも当然……なのか??

 

975:名無しの転生者:ID:mob

マジかよビーターじゃん!!

霊視ニキのファン辞めないので早く教えろください

 

976:霊視:ID:kor

いや、期待させちまったら悪いが俺自身の霊視では流石にふわっとしか分からなかった

でもここに集まってる転生者達の霊能の才能の平均値が、街中ですれ違う人々の平均を上回ってるのは見た感じの感覚で分かるんだよ

で、神主……あのショタオジの仲魔にも確認したんだが間違いないってよ

 

977:名無しの転生者:ID:ber

!!!

 

978:名無しの転生者:ID:gin

来たか……俺の時代が!

 

979:名無しの転生者:ID:pkm

>>976 マジかよ……マジかよ!!

転生チート始まっちゃう???

 

980:名無しの転生者:ID:mnm

>>976 えっ、本当に!?

 

981:名無しのデビルサマナー:ID:hao

※ただしちゃんと修行して覚醒した場合に限る

こっちでも改めて言うけど、生兵法は本当この界隈だと危険だからやめようね

 

982:名無しの転生者:ID:hkr

イッチ神主だ、囲めー!

いや、やっぱ説明続けて(現地並感

 

983:名無しの転生者:ID:luk

端末に手も触れず説明しながら掲示板やってる……これがオカルトの力か

オカルトの使い方それで合ってる……?

 

984:名無しの転生者:ID:net

念動魔法か電撃魔法どっちかの応用とかでは?

 

985:名無しのデビルサマナー:ID:hao

そんな所だよー

で、改めてこちらにも顔を出した理由なんだけど

色々懸念事項はあったけど特に問題無さそうだから、この掲示板に出入りしている転生者に限定してこのオフ会の後も【覚醒修行】を行っていく事に決めたんだよ

皆頑張って覚醒者になろうね☆

 

986:名無しのデビルサマナー:ID:hao

ただ、ウチの神社で数多の人数が修行を行っていくとなると、人数次第ではあるけど衣食住、その他生活必需品諸々が足りなくなる恐れがあるので……

こちらからもある程度出せはするけど、少しでいいので援助してくれたりなんかするととても有難いかなって

 

987:名無しの転生者:ID:ykr

>>985 うおおおおおおおお!!!!

……おおおおおお???

 

988:名無しの転生者:ID:bei

>>986 正体表したね?

 

989:名無しの転生者:ID:emy

三桁人以上居るからなしゃーない

むしろイッチ一人で覚醒修行面倒見るって方が普通に無理目に思うが……仲魔が居るからそれも問題ではないのか?

 

990:名無しの転生者:ID:mys

なーんだやっぱり胡散臭いカルト宗教じゃないか!

 

991:名無しの転生者:ID:sen

今回のオフ会にだって参加できない遠方民にとっては本当に只のカルトなんだが!?!?

掲示板でも覚醒修行のレクチャーしてくれよぉぉぉお!!

 

992:名無しの転生者:ID:jjo

まぁオカルトなのは紛れもない事実なんだが

 

993:名無しのデビルサマナー:ID:hao

嘘じゃないよ、イッチ神主嘘つかない! 多分

>>991 すまんて

でもお金や資材があれば敷地内に宿舎作るくらいは出来るから……

霊地で有識者の指導下で覚醒しないと本当に、本当に危ないから

 

994:名無しの転生者:ID:gil

そこはオカルトで解決できないのか……仕方ないな

 

995:名無しの転生者:ID:pkm

ところでぇ、現地の説明だと普通の修行だと数ヶ月とか年単位で掛かるかもらしいんだけどぉ

これ、間に合わなかったらただ社会的地位を投げ捨てるだけなのでは??

 

996:名無しの転生者:ID:sir

世は効率化の時代だよ

それは前世の時代だって?知ら管

 

997:名無しの転生者:ID:mnm

普通じゃない(厳しい方の)修行もあるって言ってるでしょお爺ちゃん

 

998:名無しの転生者:ID:yro

オフ会兼覚醒修行の途中参加もOKだって

希望者はオフ会HPの新設欄から行ける(様にする)みたい

 

999:名無しの転生者:ID:anj

もしかしたら文明社会で悠長に修行できるのは今だけかもしれないって?

 

1000:名無しの転生者:ID:msu

お願いだから脅かさないで??

でも、この目でオカルト見ちゃったからなぁ

逃げ続ける方が現実的じゃないよねこれ

 

1001:名無しの転生者:ID:hkr

ヒャァ我慢できねぇ。覚醒修行にのりこめー!

 

1002:名無しの転生者:ID:szh

わぁい^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グ  ツ  グ  ツ   グ   ツ

 

 アレは……マズイ(不味い)

 理性と本能と直感と知識と――とにかく自分の中で警鐘がガンガン鳴っている気がするのが心の底から理解できる。

 逃げろ、この場から逃げろ。少なくともアレからは逃げろと弱気の心が叫び出している。

 思わず後ずさりかける。が、それよりも前に一人の同胞(転生者)が全力疾走でこの場から逃走した時に……察してしまった。

 ()()()()()()()()()()()

 

「先の説明でも言った通り、【覚醒】と言うのは本来人間という種には、特に現代社会で暮らす上では必要ない機能なんだ。だから普通に生活していてはまず間違いなく目覚めない。

ある意味では退化した機能だとも言えるね。だからこそ、環境による負荷(霊地のマグネタイト)適した行動による刺激(覚醒修行)によってその機能を揺り起こし、目覚めさせる必要がある」

 

 そんな地獄を用意した張本人(神主)は素知らぬ顔で説明を続けている。

 確かに先程説明を受けた通りだ。

 そして、そのゆっくりとした修行の方では……【覚醒修行】としての効率はそこまで高くなく、数ヶ月や……場合によっては、数年。

 才能が低い者では、10年経とうと覚醒しない事も珍しくない――と言う事も説明されている。

 【覚醒】とは、ゲーム(女神転生)で言えば何の戦闘力もないモブの状態から、Lv1相当の実力を得るに等しい程度の差があると言う。

 即ち、【覚醒】していないのであれば土俵に上がる事すら出来ず、只蹂躙されるのみ、だ。

 そう説明されて数ヶ月、いわんや数年を修行に費やせと言われて納得できるだろうか。

 出来る訳がない。

 

「勿論、女神転生シリーズであった様に悪魔に襲撃されたり激情を切っ掛けに覚醒するケースも無い訳ではないが、危険性や成功率の観点から言えば当然論外だ。命を懸けて勝率一桁%以下のギャンブルをしたくはないだろう?

また、正しく実力を伸ばしたいなら正しく覚醒するのが一番だと言うのもある。人生観を揺るがす程の衝撃や襲撃による覚醒だとどうしても()()()方向性が偏ってしまうからね」

 

 この場に集まっているのはそんな思いを等しくした同胞達である。

 ……今もその思いを等しくしたままかどうかはさておき、だが。

 

 先程速攻で脱走しようとした人が紙の化物――【式神】に捕獲され、青い顔をしながら連れ戻されてきた。

 “契約”した時点で修行を受けないという選択肢は既に自分達からは失われているのだ。少なくとも、区切りである一日の終わりまでは。

 

「だが……だが、だ。大破壊が、【終末】が直ぐそこまで迫ってきているというのに、そんな悠長な事は出来ない。そうだろう、分かるとも。

ならばこそ、最も分かりやすく、それでいて各々の【霊的素質】を最大限活かした方法――【霊的な生命の危機】を持って覚醒修行として覚醒してもらう!」

 

 それは悪魔に襲撃されるのと何ら変わりはないのでは!?!?

 と言いたいが、どうやら覚醒の主因が【悪魔の素質】×【自身の素質を賭け金とした奇跡的な確率】か、【自身の霊的素質】×【霊的生命の危機による強制覚醒】かの違いがあり、悪魔に襲われるより自分の素質を活かせて更にサポートや安全を確保出来ると言った利点があるらしい。

 なお、【自分の霊的素質】に合った生命の危機でなければ唯々死にかけるだけだ。

 つまりそれって様々な拷問を受けるって事では??

 

 

グ  ツ  グ  ツ   グ   ツ

 

「だから、これから君たちにはバンバン臨死体験をしてもらうから覚悟してね――あ、本当に死なない様に加減だけはするから安心してね!」

 

 安心できない、全く安心できない。

 

 目の前の大鍋に入っている()()を見る。

 

 主となるのはカレー状の黒紫色のどろりと、あるいは火にもかかっていないのにこぽこぽと湯気を放つ液体。

 その中には明らかに危険な雰囲気を漂わせる具がふんだんに入れられている。

 葉っぱに朱色の茸、謎の肉に更に蟲が大量に……って明らかに逆に安心できない要素しかないソレは、最早カレー状と評す事すら拒みたくなる程だ。

 こんなのはカレーへの冒涜だと声を大にして言いたい。

 言いたいのだが……

 

 

「……? ファイトだ、頑張れ!」

「頑張れ、じゃないんだよなぁ……」

「死んだら絶対怨霊になってやるからな、絶対だぞ!」

「その時はしっかり成仏させてあげるから安心してね?」

「本当に、本当に何も安心出来ないんだよなぁ!?」

 

 神主を見る。

 悲壮感と絶望感を纏いながら文句を言う転生者達に朗らかに笑って返答している。

 

 その程度には、神主にとって余裕がある事なのだ。

 ()()()()で問題が起こる筈がない。或いは、仮に何かあっても即座に、そして確実に対処できる程度だと。

 

「…………ふぅ――」

 

 ならば結局は、この修行を志願した時とある意味では何も状況は変わっていない。

 つまり、やるしかないのだ。

 周囲を見れば、既にあのカレーとも言えないモノを食している猛者達も――あ、いやちょっと見たくないな。

 決心が鈍ってしまう。故に、その前に――

 

「南無三、いただきます――¶G※%ΣY*÷A×――!!!」 

 

 

 

 ――この後滅茶苦茶死にかけた(臨死体験した)!!!





天野 光理:一応当作主人公な不登校系中学生。
女神転生エアプ勢。サブカル知識は型月で養った。
山梨県民であり、距離的心情的に身近であった為富士山オフ会に参加。
……してしまったが為にムドオンカレーを食べる羽目に。
なお覚悟して実食したのに適性でなかった上に結局最初の一週間では覚醒できなかった模様。
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