「んなバカな……」
砂地を主体として、所々に岩が設置されたフィールドで、リルとムゥは倒れていた。
「リル、ムゥ戦闘不能!ロックの勝ち!」
俺の目線の先に仁王立ちするロックと呼ばれた少女。
タケシの相棒であるイワーク種の彼女は、不敵に笑った。
ーーーーーーーーーー。
「ようこそチャレンジャー、俺の名前はタケシ、このニビシティでジムリーダーをしている」
オレンジとグレーのジャケットを来た男は、俺が部屋に入るなりそう宣った。
すげー、実機と同じ見た目だ。
「あー、えっと、マサラタウンのカオルです、試合、よろしくお願いします」
「ポケモントレーナーである以上これ以上の会話は不要、早速始めようか」
その言葉を皮切りに、審判の宣誓が始まる。
タケシの使用ポケモンは一体、チャレンジャーは二体、入れ替えは自由。
二対一というのは正直気に食わないが、入れ替えが自由ならムゥの特徴とリルの『あの技』が使える。
「ゆけっ!『ロック』!」
そう言ってタケシが投げたプレミアボールから現れたのは灰色のワンピースに身長よりも長い灰色のポニーテール。
その特徴だけでイワークだとわかる少女が、目の前に現れた。
「行くぞ!『ムゥ』」
『影分身』。
『リフレクター』。
ボールから飛び出したと同時に、ムゥは分身体を幾つも作りながら、鏡のようなエネルギーでできた壁を作り出す。
物理型のポケモンが相手なら、その物理攻撃力を削いでしまえばいい。
この世界のバトルがターン制でなくて良かった。
「ん、なんだ?影分身はわかるが、壁か?どんな技か気になるところだが、ロック!『アイアンテール』でなぎ払え!」
だけどもさすがジムリーダー、そうは問屋が卸さない。
灰色の少女はその長い髪の毛を薙ぎ払うように振り回す。
全ての分身体を破壊した上にムゥに直撃。
そのまま壁に激突する。
「ムゥ!!」
なんだこれ、リフレクターの上から殴ってきた?
壁張ってこの威力かよ。
攻撃種族値ポッポの出す威力じゃねぇだろ。
「ムゥ、まだ行けるな」
「ふひっ、いたた、ふひひ、アレだけの攻撃力なら……」
『あやしいひかり』。
突如、ムゥの赤いペンダントが光だし、辺りを紫色の光が覆う。
「なんだ?」
タケシは何が起きているかわからずロックに指示を出さない。
「ふひ、おにーちゃん、さっきの、けっこー痛かったし、あとはリルに託すよ」
『おきみやげ』。
ムゥから怪しい影が出て、それがロックにまとわりつく。
ロックは薙ぎ払う仕草をするが、これはそういうものでは無い。
ムゥはそのまま力無く倒れた。
「……なんだ、何が起きている?」
補助技を知らないトレーナーにとって、気味が悪いことが起きているのは確かだ。
だがその正体がわからないから、対処できない。
つまり、相手の正体が読めないのはお互い様ってこと、だよな。
「行ってこい、『リル』」
ボールから飛び出したリルは、1つ大きな伸びをする。
本来なら、バトンタッチが欲しかった所、なんだけどな。
ロックはリルを見るや、アイアンテールでリルを攻撃してきた。
が、リルは念力でそれを防ぐ。
「おやおや?さっきまでの威力は、どこにいったのでしょうね?」
フェアリータイプのリルにとって、はがねタイプのアイアンテールは弱点のはずだが、今のロックの攻撃はリルにとって弱点足り得ない。
「なんだ、一体何が起きた!」
「さっきからそれしか言ってないじゃんタケシ、でも答えを教えてやるよ、さっきムゥが倒れた時、『おきみやげ』って技を使ったんだ、自身の体力全てを犠牲にして、相手の攻撃力を削ぐ技だ」
「なんだ、そんな技知らんぞ!」
「だろうな、補助技に目を向けないお前らに、この技の有能さはわからないさ」
そう、ほぼ全てのポケモンが補助技を使えるにも関わらず、世間一般に知られていない。
その理由は、この世界のポケモンバトルが技と技をぶつけ合うだけのパワーゲームだからだ。
だけど、それでもタケシは知っているはずなんだ。
補助技の存在を、そうでなければ、あんな噂が立つはずがないのだから。
「おのれ、ロック!『ロックブラスト』!」
タケシが負けじとロックに指示を出す。
が、ロックは頭を抑えその場にうずくまり始めた。
「どうした!ロック!」
混乱状態。
ムゥがおきみやげをする直前に、あやしいひかりを使用してくれたおかげでロックを混乱状態にすることができた。
そのおかげで少しの時間、余裕ができる。
フィールドを見ると、状況をいち早く察していたリルが目を閉じていた。
『めいそう』
エスパータイプが使う補助技で、自身の特殊攻撃力と特殊防御力を上げる技。
それと同時に。
『影分身』
幾つものリルの残像がフィールドに現れる。
「そろそろ終わらせようか、リル、『アシストパワー』」
指示を出すと、フィールド上が激しい光に包まれた。