伝説のモブウマ娘は失った青春を取り戻したい   作:maple sugar

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レプリケーションが可愛かったので書きました。

気が向いたら続きだします。


機内ではお静かに

 ウマ娘は、走るために生まれて来ると言われている。それは、理屈とかではなく運命なのだ。ウマ娘達には人間のような名前をつけられる例はほとんど無く、そしてその名前にはこの先の運命を左右する何かがあると思っている。なんというかオーラが違うのだ。

 

 例えば、シンボリルドルフやオグリキャップというウマ娘がいる。この名前を授かって何も成し得ずに終わる事などあり得ないというオーラをしていることがわかるだろう。しかし彼女たちの運命が輝かしいものばかりというわけではないその栄光の先に惨酷な運命が待っていることもある。

 

 それは、彼女たちに背負わされた運命なのだ。だが運命というのは変えられるということもまた事実であり、中には出会いや行動が運命の歯車を突き動かし運命を乗り越えることが出来る。

 

 なぜこのようなことが言えるのか疑問に思うことだろう。ほかでもない彼女が体験したことだからだ。本来彼女は特に活躍することもなくオーラをまとったほかのウマ娘たちの影となる存在だったが、突如として日の目を浴びることになってしまった。

 

 ふつうは喜ぶべきことなのだろう。しかし、運命が変わったからと言ってそれが彼女の心から望んだものであるとは一言も言っていない。自分の運命を変えてくれる相手も選ぶべきであるということなのだ。

 

 例を挙げるなら、勝利どころか見せ場すらないレースをして陰で座り込んで泣いているようなモブウマ娘を慰め、担当ウマ娘でもないのにトレーニングの面倒をつきっきりで見たり、事あるごとにそのウマ娘にぴったりのトレーニング方法を思いつき、時々絶対身体能力で敵う筈のないウマ娘顔負けのフィジカルを発揮するような新人トレーナーだ。

 そしてトレーニングしたわけでもないのになぜか足が前よりも早くなっていた時はレッドゾーンだからそれに気づいたらその実力を生かして全力で逃げることをお勧めする。

 

 もれなく自分の運命を狂わされることになるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レプリケーションという名前のウマ娘がいた。ザ・モブウマ娘って感じの名前だ、何しろ私自身がそう証言しているのだから間違いない。

 

 現在私は私の担当トレーナーとともに飛行機に乗り数年ぶりに日本へ帰国しようとしていた。

 

「やっと日本に帰れるよ~。やっぱり海外は旅行に行く分にはいいけどしばらく住むとなると日本が恋しくなるものなんだね」

 

「でも、海外のウマ娘もかなり強かったぞ。本当に海外レースやらなくて後悔してないか?」

 

「まだそんなこと言ってるの? 全然してないよ。私はモブウマ娘だから伝説だとか最強だとか言われるのはもうこりごりなの!」

 

 そう、私はモブウマ娘だ。私の名前は何かを大きなことを成し遂げるための名前ではなく大きなことを成し遂げるウマ娘の踏み台の一部となるウマ娘だったはずだ。

 

 

 

 

 まあちょっとクラシック三冠とシニア三冠とすべての距離の芝G1とダートG1をとったくらいだが……。

 

 

 

 

 うん、自分でもおかしいと思ってる。だって、このトレーナーに出会うまではデビュー戦すらまともに出られないウマ娘だったからだ。

 

 しかし今では現在隣で未だに私を海外レースに出せなかったことを悔やんでいるトレーナーに数年前スカウトされたせいで日本では伝説のウマ娘と呼ばれるようになってしまった。

 

 このトレーナーに出会ってからは不自然なほどにタイムがどんどん早くなり始め、特に休暇中にトレーナーが誰かと出かけるだけで自己ベストタイムが一秒近く縮んでいた時はさすがに恐怖を覚えた。

 

 とにかく私はこのトレーナーに例の秘密結社の如く私の体は原形をとどめないほどに改造されてしまった。当然私はメディアに毎日のように特集され、民衆に人々からは「もうあいつ一人でいいんじゃないかなぁ」とか「G1レースRTA勢」とか好き勝手に言われていた。

 

 そして特に自分でもドン引きするような戦績を上げたことで当時私が期待していたトレセン学園でのウマ娘達との輝かしい青春を送れる可能性はほぼ皆無となってしまった。

 

 友達がいなかったわけではない。トレーナーと出会う前に勝てない自分たちの傷をお互いに舐めあっていた友達がいたのだが、私がG1を勝ち進めるごとに皆私に何も言わずトレセン学園から消えてしまった。

 

 そんな私は今、数年間の海外遠征を終えて日本に帰ろうとしていた。海外遠征といっても建前で別に海外にレースに行ったのではない。

 

 私が日本のトレセン学園にいたころの理事長のご厚意でほとぼりが冷めるまでの間、海外のトレセン学園に留学という形で日本から離れることを提案してもらったというわけだ。

 

 私が去った後の日本のレース業界には様々な変化が起こったらしい。私の後にしばらく出なかった、三冠ウマ娘がようやく現れたとか。どうやら今はそちらの話でもちきりのようだ。

 

 やはり私に表舞台で輝くなんて似合わない。海外に行って改めてそう思った。

 

 

 

 私に必要なものは青春!! 

 

 

 

 そう、日本で謳歌できなかった失われた青春を私への世間の興味が薄れた今、取り戻す時がやってきたのだ! 

 

 日本のトレセン学園に戻ったら何をしようか? そんなことを考えていると日本への到着が間近であることを示すシートベルトのランプが点灯するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行機から降りた私は急いでトイレに逃げ込む。

 

 ウマ娘は皆美しく、可憐に生まれてくるといわれている。しかし私はウマ娘の中で平凡で目立たたない顔つきをしていたのでトレーナーからは今となっては心配ない、仮にばれてしまったとしても人が多いところでばれなければ良いといわれていた。まずは空港を乗り越えてトレセン学園にたどり着ければ大丈夫だと。

 

 そこで私はトイレの個室でウマ娘の象徴である頭の上にある動物のような耳と尻尾を帽子と穴をあけて尻尾を隠せるように細工されたリュックサックを背負い変装することにしていた。

 

 トイレから出てきた私はトレーナーを探す。するとトレーナーは巨大なポスターの前でそこに写っている人物を見つめていた。

 

「見ろよ、ケーション。新しい三冠ウマ娘のミスターシービーだ」

 

 私もポスターにでかでかと写っているウマ娘を見る。このウマ娘は私がいなかったら19年ぶりの三冠ウマ娘だったらしい。

 

私が数年前に出国する頃には私のポスターが張られていた。ミスターシービーのポスターはカメラ写りもよくいかにも三冠ウマ娘といった感じだ。私の時はこんなところにこんな顔の私を張らないでくれと恥ずかしくなり急いで通り過ぎたものだ。

 

 私の時代は終わったのだと改めて思い知らされた。それを求めていたはずなのにいざそれを目の当たりにすると何とも言えない寂しさを感じる。このウマ娘は何を望んで強くなったのだろうか? まさか私のようにトレーナーに勧められるがまま三冠ウマ娘になったわけではあるまい。

 

 私は彼女がうらやましかった。その功績も名声も彼女が望んだものだろうから。

 

 しかし、今の私には関係ない。彼女が私と関わることもないだろう。私は空港を後にしトレセン学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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