構想を纏めることができなかった東方二次創作です。
あとがきは完全に作者の思想なので、何でも許せる方のみどうぞ……

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【御供養投稿】東方日月星(とうほうじつげつしょう)

 地上に全ての生物と死物の祖とでも呼ぶべき存在たちが生まれて間もない頃、つまり神世(かみよ)よりさらに前の時代に【天祖(あまおや)日月(ひつき)】という人の形をした曖昧な存在が生まれた。

 彼は産みの親こそ居なかったものの、日月(ひつき)という名を与えた人物が居た。

 その人物は後に日(ひ)と太陽(たいよう)の民を取りまとめる長(おさ)として月(つき)と太陰(たいいん)の民と敵対することになる一族の祖で、その女性は名を【天祖(あまおや)日核(ひさね)】と言った。

 

 

 

──────────

 

 

 

「御母上様(おははうえさま)」

 

 柔らかく明るい調子の幼い声が、空を眺める女に向かって呼び掛けられる。この独特な呼び掛け方にふっと笑みをこぼしながら、紅色の地に金色(こんじき)や緑色の刺繍(ししゅう)が施された単(ひとえ)を纏うその女、日核(ひさね)が振り返った。

 

「どうしたの?日月(ひつき)」

 

 彼女が振り向いた先には、真っ白な衣の上に青地に銀の刺繍が編み込まれている半纏(はんてん)を羽織る幼い子供……日月(ひつき)が宙(・)に(・)浮(・)か(・)ん(・)で(・)い(・)る(・)。

 

「御母上様(おははうえさま)、其処(そこ)を御退(おど)き差し上げて下さい。草花(くさばな)が可哀想(かわいそう)です」

 

 この何気(なにげ)ない一言にはっとした日核(ひさね)は、思わず自(・)ら(・)も(・)日月(ひつき)と同じように空中に浮上した。そして先ほどまで自分が立っていた場所、そして歩いて来た場所を見てみると、確かに自分が踏んだ花(はな)の茎(くき)が根元(ねもと)から折れ、草(くさ)の根元も萎(しな)びたように潰(つぶ)れてしまっており、正(まさ)しく痛々しいことこの上ない。

 

「ごめんね……気付かなかったわ」

 

 本人は本心から草花の命を案(あん)じ憂(うれ)いているのだろうが、日月(ひつき)よりも遥(はる)かに永(なが)く生きて来た日核(ひさね)にしてみればあまりにも偽善的にして傲慢な態度であった。

 だがその慈悲深く愛情に満ちた純粋無垢な幼心(おさなごころ)は、確かに生類死類を慈(いつく)しむ聲(こえ)として彼女の耳に響(ひび)いている。

 

(…………「禽獣(きんじゅう)、草木(くさき)、花(はな)、虫(むし)、魚(うお)、目に見えぬ物、全てが等しく互いに食い合い奪い合う世界は間違っている。全ての生物が等しく飲まず食わずで生きて、死ぬ世界になれば争いは無くなるのに」…………)

 

 気付けば、日月(ひつき)がつい昨日(きのう)口にしていた言葉(ことば)を心中(しんちゅう)で反芻していた。幼くして食物連鎖(しょくもつれんさ)という生態系の形を理解するならまだしも、その絶対的なシステムと言うべきものを間(・)違(・)い(・)だと断言(だんげん)する日月(ひつき)の思想(しそう)にはある種の感心を禁じ得ない。

 

「確かに気の毒なことをしてしまったわね……」

 

 

 

──────────

 

 

 

 時は流れ数億年後。幻想郷(げんそうきょう)は今まさに、未曾有の危機に陥(おちい)っていた。

 どこを見渡しても草木は根まで枯れ、虫は残らず殺され、鳥獣は骨と皮になるまで干からび、魚は腐って水面に浮く、まさに地獄絵図。この様子だけでも既に人間や妖(あやかし)たちにまで害が及んでいることは想像に難くない。

 だからこそ、幻想郷の均衡を司る彼女らが動いている。

 

「この異変の元凶は貴方ね……こっちを向きなさい」

 

 夕日に向かって物思いに耽(ふけ)る少年の背に向かって、紅白の巫女装束に身を包む少女【博麗(はくれい)霊夢(れいむ)】が声をかけた。

 

「来たか……」

 

 少年は呟きながら振り向き、霊夢(れいむ)の瞳へと視線を合わせて身構えると同時にひゅうと風が吹き、辺りの枯れ草を僅かに揺らした。

 

「ええ。その様子だと……戦(や)る気満々みたいね?」

 

 少年の様子を見た霊夢(れいむ)もまた臨戦姿勢をとる。

 

「成(な)り損(そこ)ないの贋神(にせがみ)に敗(ま)けはしない。すべての生命は……私が滅ぼす」

 

 【天祖(あまおや)日月(ひつき)】が叫ぶと同時に、戦いの火蓋は切られた。




名前:天祖日月(あまおや ひつき)
種族:不明(ヒトの形をした何者でもない存在)
能力:森羅万物の生と死を司る程度の能力
設定
人でもなければ人ならざるものでもなく、妖怪でもなければ妖精でもなく、精霊でもなければ神霊でもなく、鳥獣でもなければ魚蟲でもなく、植物でもなければ菌類でもなく、陰でもなければ陽でもなく、生きてもいなければ死んでもいない完全に謎の存在。地球に生命が誕生して間もない頃に生まれたにも関わらず、何故か人間の姿をしている。
誕生六年頃に義母から日月の名を与えられる。
幼い頃は「生命は至宝」という価値観から生命を奪う生物及び環境的な循環システム、つまり食物連鎖を嫌悪しており、「生命同士が奪い合わなくてもいい理想の世界」の創造を夢見ていたのだが、時代が下って「生と死の循環の常態化」が顕著になると「地上に存在する全ての生命の永久保存」を目的に「全ての生命が不老不死にして不衰不滅、かつ無限に繁殖し続ける世界」へと変貌させるべく行動するようになる。
しかし永い年月をかけて努力を重ねても食物連鎖と生死の循環を止めることができず、さらに月の民が生命そのものを「穢れ」と表し忌み嫌うようになったことに失望し、追い討ちをかけるように「神霊や妖怪への信仰」が人類に普及し始めたことで完全に精神が崩壊した。
以上の超常存在に対する信仰、穢れの考え方に対して「自らの理想と理念を否定された」と感じた事をきっかけに生命への畏敬を捨て去り、現在は「生命の絶滅によって生命同士が奪い合わなくてもいい理想の世界」の創造に躍起になっている。
性格は極めて冷酷かつ傲慢。
・自分の後に生まれた神々を「下等生物中の下等生物」と見下しているが、これは「信仰がなければ存在が成り立たないのであれば、最初から存在するべきではない」という価値観に由来する。
・神道の穢れやキリスト教の原罪を「存在自体が悪という体(てい)にしなければ心を安らげる事ができない愚か者の思想」「命を根本から否定する傲慢な人間の本性」と表している。

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