「ちくしょう!」
データリンクの接続が強制解除され作戦の推移を把握出来ないa2の2人は、通信手段の確保を模索していた。
(いったいどうするんだよ!?涼宮中尉もやられちゃったんだぞ!?このままじゃ全員・・・・・)
「白銀」
「速瀬中尉!どうですか?」
「ダメよ、どうやっても繋がらないわ」
「まさか・・・・司令部も棟内に侵入したBETAに・・・・・!?」
「流石にそれは・・・・いくらなんでも早すぎる。見て、メインシャフト上層の中継器がやられたのよ」
「えっ」
『速瀬水月』が交信有効圏の情報を共有する。
「ここから第五隔壁までは、未だに交信有効圏だけど、それより上はアウトね」
「じゃあ、有線なら繋がるんじゃないですか?」
「そうね、やってみましょう。情報端末塔に有線接続するから、あんたも私の機体に繋いで!」
「了解!」
「!?副指令!通信が回復しました!」
「えっ」
「a2健在です!」
「私が出るわ。・・・・・あんた達何やってたのよ!?遅いじゃない!」
「すみません!どうやら中継器が破壊されたようです。現在有線で繋いでます!」
「先生!a1は!?」
「格納庫は無線も有線もそっち以上のダメージよ。通信からネットワークまで全てダウンしているの」
「!?」
「じゃあ今、どんな状態か全くわからないって事ですか!?」
「えぇ。B29フロア以下のネットワークは死んでるの、辛うじてモニターできているのは、メインシャフト坑内だけ」
「では90番格納庫は・・・・・」
「『ムアコック·レヒテ機関』におびき寄せられて敵がどんどん流入してるはずだから、とんでもない事になっているのだけは確かね。このままでは全てを失ってしまう・・・・・どんな手を使っても良いから、とにかく反応炉を止めるのよ」
「制御室は敵に制圧されています。制御系を戦術機に直結する事は出来ませんか!?」
「設計上無理ね・・・・手っ取り早く反応炉の一部を破壊しなさい!」
「!?」
「今から反応炉の構造データを転送するから、最小限の破壊で・・・・・」
突然『香月夕呼』との通信が途絶する。
「HQ!?応答せよHQ!!くっ、棟内の配線までやられたのか!」
(くそ!BETAめ)
「白銀、『S-11』を使うわよ」
「速瀬中尉!?」
『S-11』
反応炉破壊を名目として戦術核に匹敵する破壊力を持つ爆弾。
自決の際に味方を極力巻き込まず、効果的に反応炉を破壊するために指向性を持たせてあるが、炸薬の配置を変更すれば指向性を無くすこともできる多様性に長けた高性能爆弾である。
「構造データが手元に無い以上、ダメージを最小限になんて上品な事、やってられないわ」
「それは良いとしても、この状況で下手に反応炉を止めたら、90番格納庫に全てのBETAが殺到しますよ!」
(皆が・・・・・『凄乃皇』が・・・・人類の切り札が・・・・・)
「わかってる。手順を説明するわ。・・・・・まず『S-11』を反応炉にセット。メインシャフトの隔壁を直接制御で開放して、BETAを反応炉に誘導する。たんまり入った頃合いに隔壁を閉鎖して、『S-11』を爆破。奴らが餓死するまでの時間を稼ぐ・・・・わかった?」
「ちょっと待ってください!反応炉ブロックの隔壁破られてるじゃないですか?!」
「最終リフトの第1、第4隔壁が、トラブルのおかげで無傷なのよ。それを手動で閉鎖するのよ」
「なるほど・・・・じゃあ90番格納庫は・・・・・『ムアコック·レヒテ機関』の停止はどうするんですか!?通信が使えないのに」
「白銀、あんたが格納庫に戻るのよ」
「えっ!?」
「『ムアコック·レヒテ機関』の停止は、あんたが直接a1とa3に伝達するのよ」
「でも、中尉ひとりでBETAを・・・・・」
「さっき奴らは、お食事に夢中で私達にはおかまいなしだったわね?爆破作業はひとりいれば十分よ!」
「確かにそうですが・・・・・」
「あんたは『ムアコック·レヒテ機関』を止めさせたら、そのまま格納庫で『凄乃皇』を守りなさい」
「・・・・・」
「あーそうそう、あんたの『S-11』は置いていくのよ。爆弾を下した分機体が軽くなれば、お得意の変則機動も更に冴えるでしょ!?」
(まさか中尉・・・・・)
「どうしたのよ?」
「いえ、なんでもありません」
「・・・・白銀」
「はい」
「考え過ぎよ、私がそんなことする訳無い」
「えっ」
「あんたはすぐ顔に出るから、わかりやすいのよ」
「すみません」
「私はBETAとの戦いを・・・・・人類の勝利をこの目に焼き付けるまであっちに行く気無いから」
「中尉・・・・・約束ですよ?」
「はいはい、わかったから、さっさと『S-11』下して行く!これ以上時間を無駄には出来ないわよ!!」
「了解」
激戦続く90番格納庫。
「このぉぉぉぉぉ」
「榊さん!?」
「突っ込み過ぎだよ千鶴さん!」
「よくも、よくも茜を・・・・」
「引きなさい榊少尉!」
「これ以上、あんたたちの好きにはさせない!・・・・私の大切なものを・・・・これ以上あんた達に奪わせない!!・・・・くっ」
弾薬が底を尽き、『65式近接戦闘短刀』で切り込む『榊千鶴』の『不知火』
「うぁ!!」
「珠瀬少尉!榊少尉を援護しなさい!!」
「ですが、榊機に当たってしまいます」
「ぐぅぅぅぅぅ・・・・・あっ!」
迫りくる『要撃級』
(やられる!!)
『榊千鶴』の『不知火』に迫っていた『要撃級』が綺麗に卸される。
「!?」
独特の変則機動の『不知火』が90番格納庫内を跳び回り、BETAを蹂躙する。
「委員長!下がって給弾しろ!」
「白・・・・銀?」
「!?」
「白銀少尉、無事だったのね!?」
「速瀬中尉はどうした!?」
「無事です!中継器がやられたので作戦を伝えに来ました!」
「作戦!?司令部は無事なのか?」
「さっきまでは有線が生きていましたが、今は確認出来ません!これは速瀬中尉の作戦です!」
「速瀬の?」
「伊隅大尉!『ムアコック·レヒテ機関』を止めてください!」
「!?」
「反応炉の隔壁を開放してBETAを出来る限り反応炉におびき寄せて隔壁を再封鎖。『S-11』で反応炉を破壊。速瀬中尉は爆破後、合流します!」
「待て白銀!?破壊だと!?」
「通信が切れる前に司令部から破壊許可が出ています!速瀬中尉は爆破作業中です!」
「事ここに至っては仕方あるまい・・・・・!白銀!a3の指揮下に入り『凄乃皇』を護れ!!伊隅大尉には『ムアコック·レヒテ機関』の作業に専念して頂く。」
「専念?」
「白銀。真壁特尉を見てないか?現在行方不明なんだ」
「えっ」
「『吹雪』の制御権を貴様に託す。すでに一部のBETAが『凄乃皇』に取りついている!頼んだぞ」
「・・・・・了解!?」
「くっ!しまった!?」
「大尉!?」
『凄乃皇・弐型(スサノオ・ニガタ)』が左側に傾く。
「あぁ!『凄乃皇』が!?」
「伊隅大尉無事か!?」
「はい。『ムアコック·レヒテ機関』は停止させました」
「B小隊!『凄乃皇』の援護だ!これ以上奴らを取りつかせるな」
「了解!」
「C小隊はそのまま各小隊を援護。大尉脱出をフォローに入ります」
「風間。すまない」
「テメーらなにやってんだー----」
「風間少尉!伊隅大尉の脱出はどうなっている!?」
「今、配置につきました」
「あぁ・・・風間少尉危ない!!」
「えっ・・・・あっ」
『凄乃皇・弐型(スサノオ・ニガタ)』が崩れ落ちる。それに巻き込まれれる『風間祥子』の『不知火』
「祥子!?」
「風間少尉!伊隅大尉!!応答してください!!!」
「こちら・・・・伊隅。無事だ・・・・風間は?」
「『凄乃皇』の崩落に巻き込まれ、音信不通です」
「なんだと!?」
「伊隅大尉すぐに別の方法で脱出を・・・・」
「私に構わず風間を!バイタルはどうなっている!?」
「生命反応はあります!ただ負傷している模様」
「救助はあとだ!任務に集中しろ!!」
「月詠中尉。BETAが!」
『凄乃皇』に取りついたもの、取りつこうとしたBETA達が、続々とメインシャフトへ向きを変え進んで行く。
「救助をするためにも『凄乃皇』に取りついているBETAを最優先に格納庫のBETAを片付けるぞ!」
「了解!」
時間との戦いが始まろうとしていた。