「こちらa2。a1及びa3応答せよ!a2よりa1及びa3・・・・・90番格納庫の状況を知らせよ!!・・・・・やっぱり応答なしか、起爆ケーブルはここまでが限界だし・・・・・一度格納庫まで行って、戻ってくるしか無さそうね」
爆破作業の準備を概ね完了した『速瀬水月』は仲間からの応答を待っていた。
「・・・・a2-2・・・・・a2-1。a2・・・よ・・・a2-1」
「白銀!?こちらa2-1!聞こえる!?」
「瀬・・・中尉・・・事・・・だった・・・・すね」
「そんなことはどうでもいい!90番格納庫のBETAはどうなった!?」
「90番・・・・庫の敵・・・・応炉に・・・・・・俺・・・・そっちに・・・・・います・・・・」
「こっちに向かっ・・・・報告に来たのか!?上出来よ白銀、流石天才!!」
「・・・・・」
「隔壁閉鎖開始、起爆タイマーセット・・・・・!?」
ピー・・・・ピ・・・・と響くエラー音
「ケーブルの断線は無い。システムチェック・・・・!?これは・・・・・」
(居た!メインシャフトまで戻ってたのか!?)
「速瀬中尉!反応炉の爆破は・・・・・!?」
『速瀬水月』の『不知火』が反転し反応炉へ戻って行く
「速瀬中尉!待ってください!速瀬中尉!!」
「・・・・・」
「クソ!なにが起きてるんだ!?中尉待ってください!!何が起きたんですか!?」
「『S-11』の起爆タイマーが作動しないのよ!その部分だけ綺麗に壊されてる」
「えっ・・・・まさか爆弾って気づかれた!?」
「わからないわ、でもその可能性はあるわ」
「ただ単に、邪魔でどかした拍子に壊れただけかも知れないじゃないですか!?」
「馬鹿!そんな簡単に壊れるモノじゃないわよ!!」
「!!」
「とにかく、喰う以外のことしたBETAがいたのよ!」
「どうするつもりですか!?」
「決まってるじゃない!『S-11』を爆破させるのよ!」
「そんな事わかってます!そのやり方を聞いてるんですよ!!」
反応炉前の隔壁に到着する『白銀武』の『不知火』
「中尉!何やってんですか!?隔壁を開けてください!!」
「ダメよ!あんたは格納庫に戻って『凄乃皇』を守りなさい!」
『不知火』の画面に自決装置作動のアラームが表示される。
「やめてください中尉!」
「馬鹿!早く離れろ!!」
「まだ他に方法があるはずです!自決装置を止めてください!」
「もう・・・・直接起爆しか方法はないのよ」
「諦めないでください!中尉」
「やけくそになってるんじゃないわ!あのBETAが、最小限の手間で『S-11』を無力化したのよ?!」
「えっ」
「『S-11』なんて見たことないはずの佐渡島から来たBETAがそれをやったのよ?!・・・・・考えたくないけど・・・・『S-11』の構造を知ってるかも知れないわ!!」
「そんな馬鹿な!?いったいどうやって?!」
「仕掛けたときには興味すら示さず、機能も正常だった。でも、奴らがエネルギーを補給した直後に、タイマーは2つ共壊されたのよ?!」
「!?」
「BETAは・・・・エネルギーと一緒に、『S-11』の情報を反応炉から得たかも知れない・・・・もし・・・・反応炉がただの動力源じゃなくて、通信装置でもあったとしたら・・・・BETAが集めた情報は、反応炉を通じてやり取りされるんだとしたら・・・・・『オルタナティブ計画』や『凄乃皇』の情報が世界中のハイヴに伝わってしまうのよ?!・・・・その可能性がある以上、時間を無駄には出来ないのよ!!」
「!!」
「遥や神宮司軍曹・・・・柏木・・・・・それだけじゃない。今ここで時間を無駄にして・・・・人類の未来を信じて逝った人達の命が無駄になるなんて・・・・絶対許さない!!」
「速瀬中尉…………」
「・・・・・白銀」
「はい」
「皆が信じた人類の未来は『00ユニット』と凄乃皇にかかってる」
「・・・・・」
「恋人なんだって?」
「えっ」
(なんで速瀬中尉がそのことを!?)
「たまたまあんたと真壁特尉の会話を聞いたのよ。安心してそれ以外知らないし、誰にも言ってないから」
「…………」
「あんたの恋人が生体兵器にされたのか、成らざるおえなかったのかは知らないけど。恋人がそんなになって今の任務をこなすあんたはやっぱ天才よ」
「…………」
「なにより、そんな過酷な状況に追い込まれたあんたの恋人にとってあんたは心の支えよ」
「中尉…………」
「だからあんたはその娘を支えることで堂々と胸張って個人の要求と、大義を両立させればいい」
「中尉!」
「あんたは、あんたにしか出来ない事をやるの!良いわね」
「はいっッ………」
「私も、この状況でやれる限りの事をやるだけよ」
「くっそ…………」
「死力を尽くして任務にあたれ。生ある限り最善を尽くせ。決して犬死するな。」
「ウゥゥ………」
「白銀」
「ハィ」
「私は………隊の教えに反しているかな?」
「いえ!反していませン!!」
「そうか………良かった。」
「速瀬中尉!」
「?!」
「反応炉を…………よろしくお願いします。…………人類の未来は…………任せてください…………ッ!」
「良く言った白銀。…………これでやっと一人前の衛士になったわね」
「ハッ!」
「あんた、結構いい指揮官になると思うわ。私なんかよりずっと………ね。あたしのこと、あんたの部下に誇らしく語ってちょうだい。頼んだわよ」
「は………い!」
「早々にこっち来たら、はっ倒して追い返すからね!」
「はぃ…………」
「さぁ、もう行きなさい。時間を無駄には出来ないわ。伊隅ヴァルキリーズを頼んだわよ。………皆によろしく!」
「速瀬中尉…………お世話になりましたッ!」
「じゃあね」
画面越しに敬礼をした『白銀武』は背を向け90番格納庫に戻る。
「うぉぉぉぉぉぉーーーーチクショーーーチクショーーーーー」
男の雄叫びが虚しくメインシャフトに響いた。
「……………すみません大尉。一足お先に神宮司軍曹に会いに行ってきます。……………遥。一緒に孝之に逢いに行こうね」
反応炉が白い光に包まれた。