12時間。
『伊隅みちる』にとって長い12時間であった。
佐渡島にいたBETAの完全消滅を『甲21号作戦(オペレーション·サドガシマ)』作戦旗艦 最上が確認し、『伊隅みちる』の救助に部隊を派遣。自身が部隊長を務める『A-01』部隊の面々が帰還した戦術機母艦 大隈に足を踏み入れるのにそれだけの時間を要した。
彼女の帰還を待っていた部隊の面々は彼女を確認すると敬礼した。
「大尉。ご無事で」
髪を後ろに結んだ女性が『伊隅みちる』に第一声をかける。『伊隅みちる』も敬礼を返す。
「速瀬。よく他の者達を無事に帰還させた。」
「そんな、大尉の任務に比べれば大したことはありませんよ」
「あれだけ言いを残して戻って来てしまった。すまないが部隊長昇進はお預けだ」
「なに言ってるんですか~『伊隅バルキリーズ』は大尉が隊長を務めてこそ『伊隅バルキリーズ』です。」
「ふっ、そうか。なら貴様らの命再び私が預かろう」
「ハイ!」
真っ直ぐ自身を視る部下の眼差しに、一度覚悟を決めた『伊隅みちる』は再び決意を固めた。
「あの〜大尉。大尉はなにがご存知ですか?あの機動兵器のこと。」
『涼宮 茜』はその場にいる誰もが考えていることを、唯一目の前で目撃した『伊隅みちる』に訊ねた。
「それは私が聞きたいくらいだ。あれからなにか手掛かりはあったのか?」
「現在。最上より国連太平洋艦隊には撤退指令が出されたものの、我々は副司令の指示で日本帝国連合艦隊に随伴し実態の調査をせよとのことです。」
『宗像 美冴』が現状を報告する。
「調査?」
「はい。なんでも帝国連合艦隊がXG-70bの回収及び横浜基地への輸送を協力してくれる手筈になっており、我々『A-01』部隊はXG-70bの横浜基地への輸送警護及び先程の機動兵器の調査をせよと」
「調査………か」
『伊隅みちる』は首を傾げる。あの後忽然と姿を消した未知の存在を1大作戦を決行し終え消耗した部隊に追跡させること。自身の知る上官である『香月 夕呼』が興味こそ抱く出来事ではあったが、不確定要素が多く彼女が遂行する計画『オルタネイティヴⅣ』と関連性の見えないこの件に『オルタネイティヴⅣ』専属部隊である『A-01』を当てたこと。
「・・・・・大尉?」
「・・・・・いや、すまない。副指令の意図を計りかねてな」
「まあ、副指令のお考えがわかる人なんてそうそういませんよ。むしろ副指令の突拍子のない指令なんて、今に始まったことじゃないじゃありませんか。」
「それは、そうなんだがな」
「伊隅大尉。伊隅大尉はいませんか?」
日本帝国の士官が『伊隅みちる』を探していた。
「私が伊隅だが。」
「最上より国連軍の技術士官が伊隅大尉に繋いでほしいと指示を受けお呼びしました」
(副指令が?)
「了解した。案内してくれ」
「こちらです」
「速瀬、少しここを頼む。」
「了解です。大尉」
日本帝国の士官に案内された個室に入る『伊隅みちる』。
「副指令。伊隅です」
「悪いわね呼び出して」
「いえ、詳しい情報を知りたかったのでお呼びしていただき助かります」
「腹括らせておいてとんだ恥かかせたわね」
「再び副司令の下で人類の為に戦う機会を得たのです。大したことではありません」
「そう。ならよかった」
「ところで副司令。指令の件ですが………」
「そう。その件でなんだけど」
「えっ?」
『香月 夕呼』が伝えた指令に『伊隅みちる』はまた驚きを隠せないでいた。