マブラヴ·オルタネイティヴ〜蒼穹の彼方〜   作:naomi

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FILE22 決戦に向けて

時間になりブリーフィングが始まった。

 

「あれ以来こっちも忙しくてね・・・・・今更なんだけど、あの孤立無援の状況の中でよくやってくれたわ。・・・・・ありがとう」

 

『香月夕呼』が開口一番感謝の言葉を伝える。

 

「あんた達のおかげでこの基地は救われた。流石は伊隅の部下達・・・・・速瀬は良い判断をしてくれたわね」

 

「ありがとうございます。そうですね・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「さて、ブリーフィングを始めましょうか。まずはBETAの動向から」

 

スクリーンに地図が浮かび上がる。

 

 

「反応炉の停止に伴って撤退したBETA群は、北西に向かって移動。これを帝都に向かっていた帝国軍増援部隊と仮設防衛ライン守備隊が追撃し、約8割を撃破。その後BETA群は日本海に脱出。舞鶴基地所属の第8艦隊が、照射危険地帯ギリギリまで追撃するも本日19:33にロスト。まぁ、逃げた個体群は当然甲20号目標に向かったんでしょうけどね」

 

(結局取り逃がしてしまったのか・・・・)

 

「報告によると、撃破にカウントされているBETAの中には、移動中に活動停止した個体も多く含まれているそうよ」

 

(それでも、数万のBETAを撃退したんだ。『光線級』がいなかったとはいえ、帝国軍にとっては記録的な勝利に違いない・・・・・それにしてもあのBETA達がそんなに長時間活動していたなんて・・・・・ひとつ選択を間違えていたら、基地はとんでもないことになっていたな・・・・・)

 

「帝国軍の被害状況だけど・・・・・今回の戦いで、2個連隊分の戦術機を失ったそうよ」

 

「!?」

 

一同驚きを隠せないでいた。

 

「弱っていたBETAに200機以上ですか?」

 

(『甲21号作戦』でかなり消耗している上に、更にそんな・・・・・防衛線の守備は大丈夫なのか?)

 

「追撃戦に限って言えば大したことじゃないわ・・・・ここでの話」

 

(ここって・・・・・横浜基地の戦いのことか?)

 

「知らなくて当然よ。中継器が壊されて以降。あんた達は広域データリンクから孤立してたんだから、あんた達が地下で戦っていた頃、多摩川沿いに展開していた帝国軍が、BETAの後続を攻撃してくれていたのよ

 

「えっ」

 

「突然、帝国国防省から通達があってね、支援砲撃の弾頭が底をついた直後、戦術機甲部隊が一気に突撃してね」

 

「そうか、最後の方でBETAの流入が尻つぼみになっていたのは・・・・・」

 

「彼等が死に物狂いで戦って町田からの後続を減らしてくれていたのよ」

 

(それだけの大損害を出して・・・・日本を守る戦力を割いて・・・・・戦ってくれていたのか・・・・・それは殿下の決断なのか?それとも・・・・・)

 

「次に、基地の現状よ・・・・・死者、行方不明者合わせ約4700人負傷者約2600人・・・・・これはあくまで現時点だから今後、もっと増えるはずよ」

 

「この基地にいた半数以上の人間が・・・・・」

 

「基地の駐留国連軍の損害は、支援航空部隊で11機、機械化歩兵部隊は4個中隊壊滅、警備歩兵部隊は3個中隊全滅」

 

(あいつら・・・・・無事だといいんだけど・・・・)

 

「戦術機甲部隊は全て壊滅、戦車などの補助戦力もほぼ全滅・・・・・現時点でもともに動く戦術機は10機も無い、その内程度が良いのは全て斯衛部隊の機体だから、基地の国連軍は壊滅と言った方が早いわね」

 

(あれだけ激しく戦っても、機体に負担をかけてないのか・・・・・月詠中尉・・・・いや斯衛部隊。流石だ)

 

「施設の被害状況は基地稼働率は37%。知っての通り現在総力を上げて復旧作業中よ、幸い地下原子炉が無傷だから復旧作業に必要な電力は確保されている。じゃあ個別の被害状況をざっと話しておくわね。・・・・・まず敵侵攻上にあった演習場は復旧の目途が立たず後回し、演習場地下にある戦術機ハンガーにも被害が及び、稼働率はそれなりに落ちている。第1滑走路は使いものにならない、高価な電磁カタパルトも2基ともスクラップ同然。第2滑走路は復旧可能で市街除去と穴の穴埋め作業中。シャトル打ち上げ施設は無傷で残ったわ。」

 

(物資の搬入とか考えたら、片方だけでも滑走路が残ったのは良かった)

 

「地下は地上に比べて被害が限定的だけど、メインシャフトのダメージが深刻で、大深度地下施設の60%が停電中よ。中央集積場の復旧には半年以上かかるわね、充填封鎖したゲートが10か所以上あるから。反応炉とそれに隣接した研究棟は、爆発の影響で外壁の一部が崩落。ライフラインが寸断中、でも反応炉なんてどれだけのエネルギーを持つか未知数の代物が爆発したのにこの程度のダメージですんでいるのは驚きだわ、流石はハイヴと言ったとこかしら」

 

「・・・・・」

 

「ただ、メインシャフトから反応炉にかけての搬入リフトは完全に埋まってしまっている。掘り起こすのはどれだけ頑張っても1ヶ月以上はかかるわ。その代わりといっちゃなんだけど、90番格納庫はあんた達が死守してくれたおかげで比較的軽微。これも全力で復旧中。これ以外にも、小型種の侵入を許した施設で結構戦闘による損害が出てるわ」

 

(格納庫が無事でも、肝心の『凄乃皇』があんなことになっちゃって…………修理するのにどれくらいの時間がかかるんだろう…………)

 

「これまでの説明でわかると思うけど地上施設の深刻な被害は主に北西から南西エリアに集中してるわ、地下に関して言えば、中央集積場から反応炉に到る、メインシャフト周辺部に集中しているわね。過去のデータに照らし合わせれば、地上地下問わず、施設は根こそぎ破壊されていなければおかしいはず。これが何を意味するか…………」

 

「物量でのみ攻めて来ていたBETAが、今回の侵攻では明確な目標と作戦を以て統率されていた…………ということですね。」

 

「そうよ。流石は伊隅、話しが早いわ」

 

「!?」

 

「その証拠に、地上では二重の陽動を仕掛けて、中央集積場への侵入を成功させているわ。こちらの誘導の結果や極少数を除いて、侵攻後は殆どの個体が反応炉へ真っ直ぐ向かっている。この行動は生存………つまりエネルギーの補給や帰巣本能というだけでは説明がつかない。これを踏まえて、情報部に過去の記録を洗わせた結果、『甲21号作戦』でも類似ケースがあった事が確認された。」

 

(じゃあ、あの時頓挫した『凄乃皇』に向かってきた敵本隊が支援砲撃を避けて地下を通って来たのも………)

 

「『甲21号作戦』と昨日の侵攻を見る限り………BETAは人類の戦略や戦術を研究し、対策を立て更に応用して来ているのよ」

 

「えっ」

 

(やっぱりそうなのか…………)

 

「BETAは人間を生命体と認識していないはずなのに………ですか?」

 

『榊千鶴』が思わず口を開く。

 

「例えばそうね…………台風や洪水は生命体じゃないけど、人間に大きな災害をもたらすわよね?そもそもそれは何であるか、どういう特質やメカニズムを持っているのか知らないと、効果的な対策を講じる事が出来ないわね。極端な例だけどBETAにとって人類はそういう存在なんじゃないかしら」

 

「ここ最近になって初めて、BETAがそういう行動を取り始めた理由を、副司令はどうお考えですか?」

 

「最近って言うのはあくまで人類基準の時間感覚よね?」

 

「はい」

 

「恒星間を移動する異星起源種の時間感覚で30年が長いか短いかは………残念だけど私にはわからないわ」

 

「…………」

 

「でも、その質問をしたくなった気持ちは理解出来る。榊が心配する部分は、国連上層部も懸念している事だから」

 

「!?」

 

「白銀機のレコーダーを解析した結果。速瀬が仕掛けた『S-11』をBETAが解除した事がわかったの」

 

「えっ!?」

 

「有線で遠隔制御された起動タイマーだけを、綺麗に壊したのよ。2つともね」

 

「…………」

 

「交信記録から察するに速瀬はそれが偶然じゃない事を直感したんでしょうね」

 

「…………」

 

「即座に反応炉に引き返して………絶対に止められないように『S-11』を機体に直結したのよ」

 

「…………」

 

「あの娘も、『A-01』部隊の一員として最良の可能性を秘めた未来を選択したのね」

 

「…………」

 

「BETAが人類の戦術や兵器に対して急速に対応し始めているのは、最早疑うべくもない…………そして『XG-70』や人類の戦略情報を持っている個体が生き延びた可能性がある」

 

「えっ!?」

 

「その個体から全ハイヴにその情報が伝わり、ごく短時間のうちに有効な対策を確立され人類の対BETA兵器や戦略も全て無効化されてしまう」

 

「そんなー!?」

 

「これが国連上層部が想定した最悪のケースであり、彼等の懸念…………あんたもそうなんでしょ?榊。」

 

「はい…………」

 

「こっちとしても決してBETAを甘くみていた訳じゃないのよ。『XG-70』がどれ程強力であっても、兵器である以上いつかは無力化される運命にあるのは事実。だからこそ対策を確立する隙を与えないスケジュールを組んで、一気にケリをつけるつもりだったんだけどね。全ての情報が伝わっていると仮定してそれが全ハイヴに伝播するまでの最短は19日後、今となってはその数字もあてにならないけど」

 

「……………」

 

「いずれにせよ、最悪のケースを想定すればこちらとしては1秒でも早く手を打って出る必要がある。こちらの切り札が無力化されるのを、黙ってみている訳にはいかないわ」

 

(そうか………だから予定を繰り上げて『甲20号』を攻略し、伝播を遅らせようということか)

 

「前置きが長くなったけど、ここからが今日の本題【桜花作戦】の概要を説明するわ」

 

(『桜花作戦』………それが『甲20号』攻略作戦の正式名称なのか…………)

 

「本作戦の攻撃目標はオリジナルハイヴ。最優先事項、最深部『あ号標的』の完全破壊」

 

「えっ!?」

 

一同驚愕の人類反攻作戦が今『香月夕呼』の口から語られた。

『桜花作戦』にて『伊隅みちる』、『速瀬水月』、『涼宮遥』の生死は?

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