マブラヴ·オルタネイティヴ〜蒼穹の彼方〜   作:naomi

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FILE27 託されしモノ

「委員長!それに皆・・・・・」

 

会話に割って入った『榊千鶴』の後ろには『彩峰慧』、『鎧衣美琴』、『珠瀬壬姫』が敬礼をして立っていた。

 

敬礼を返す一同。

 

「月詠中尉、私達も御剣と想いは同じです。あの『武御雷』をご貸与頂く事で、少しでも御剣が………戦友達が生き長らえる可能性が高まるなら、大切なものを守り切る可能性が、数%でも高まるのであればその最大限の努力を先送りにはしない。それが我が隊の教えです。」

 

「榊そなた…………」

 

(皆…………同じ事を…………)

 

「例え規則や為来りに反してでも、あの余剰機を使わせていただきたい。身勝手ながら、私はそう考えています」

 

(……………)

 

「月詠中尉は、あの機体は冥夜さんの為に搬入したって言ってたじゃないですか………!」

 

「鎧衣………」

 

「どんな事情があっても、今はそんなことしている場合じゃない」

 

「彩峰………」

 

「お願いします中尉!御剣さんを、『武御雷』に乗せてあげて下さい……!」

 

「珠瀬も…………」

 

「………貴様達もまたこの私に、殿下に対し上申をせよと申すのだな?」

 

「はい」

 

「しかも、大凡まかり通らぬであろう過当な要求に口を添えよと?」

 

「……はい」

 

「随分とまあ、好き勝手言ってくれるな?」

 

「…………」

 

「それは、さておき…………実は、私にも貴様達に頼み事がある」

 

「………なんでしょうか?」

 

「『桜花作戦』の『あ号標的』攻略任務に我が部隊が随伴出来る用ら香月副司令に掛け合って欲しい」

 

「えっ!?」

 

思いもよらぬ頼み事に驚きを隠せない一同。

 

「ご存知だったのですか…………」

 

「やはりな」

 

『月詠真那』は不敵な笑みを魅せる。

 

「先刻、斯衛軍司令部より、作戦協力体制に関しての通達があってな、作戦全体の概要を聞くに、一つ気掛かりだったのがこの基地から出撃するという『あ号標的』攻撃部隊というものでな。その任にあたるのが貴様達なのではないかと………そう懸念していたのだが」

 

「……………」

 

「どうやら正鵠を得ていたようだな」

 

「……………」

 

「カマをかけたことは、すまなかったと詫びる。貴様達と同様。私にも、失いたくはない者………守るべき大切なものがある」

 

(それは、冥夜と殿下…………そして日本の事だろう。だからこそ俺達に随伴するって言い出したんだ。月詠さんが大切にしている全てを守るには………それが唯一の方法だから)

 

「そしてまた貴様達と同様に、それを為すための労力を惜しむつもりもない」

 

「…………」

 

「ましてや『トライデント作戦』なる愚挙は、断じて阻止しなければならないのだ。図らずも我が隊は、作戦期間中の任務として、この基地の南端に構築される帝都防衛線での守備を命じられた。故に国連軍の要請であれば、貴様達に随伴し、直接…………」

 

「なりません!」

 

『御剣冥夜』が言葉を遮る。

 

「それは………断じてなりません。」

 

「御剣?」

 

(どうしてだ冥夜?月詠さん達が随伴すれば、その分の成功率も上がるっていうのに………)

 

「御剣少尉…···…何がならぬと言うか?」

 

『月詠真那』が思わず眉間にシワを寄せる。

 

「この作戦は、国連軍の手で成就しなければならぬのです。」

 

「!?」

 

「特定国家に属する部隊が此度の決着に関わっては…………戦後世界に禍根を残す事になります」

 

(そうか!米国部隊を体裁良く排除するのに、帝国斯衛軍が俺達に随伴すれば、『G元素』の独占疑惑が日本に向くかもしれない……………)

 

「そして、万が一にも作戦が失敗しようものなら…………糾弾の矛先が帝国に向かうやも知れません」

 

「……………」

 

(流石だよ冥夜。お前は本当に…………殿下や日本の事を考えているんだな。それが、お前自身の戦いなんだな)

 

「加えて、『甲21号作戦』に続く先の襲撃事件の結果。帝国軍は著しく損耗しています」

 

「榊?」

 

「戦力の立て直しにはら相当な年月が必要でしょう。そして『桜花作戦』が成功しても、人類がこの大戦に勝利する訳ではありません」

 

「……………」

 

「世界中のハイヴは作戦後も健在であり、地球上での戦いは少なくともあと数年は続く筈です。『トライデント作戦』の発動という事態に到れば、その後の戦局の予想は更に困難です」

 

「…………」

 

「何れの場合であっても、日本には中尉のような方々が必要です。」

 

(委員長、そうか………冥夜が言い辛い事を、代わりに言ってるんだな…………其々の事情で板挟みになった『12.5事件』。あの時冥夜と殿下…………そして月詠中尉の言動は、大なり小なり皆の心に影響を与えたはずだ。そしてそれが切っ掛けになって、本当の意味での立脚点と戦う理由が見つけられたんだと思う。だからこうやって、冥夜の本音を代弁出来るんだ。そして、そうする事で、月詠中尉を安心させようとしているんだな)

 

「月詠中尉。畏れながら中尉には、斯衛の責務を全うされる様、切に望みます」

 

「私の望みは拒み、貴様達の望みは叶えよというのか?」

 

「はっ。」

 

「殆あきれる程の厚顔さよな」

 

「承知しております」

 

「月詠中尉。もし私達の望みを叶える事が、お立場上、不可能なのであれば…………せめて、私達が『武御雷』を無許可で拝借する事を…………どうかお見逃しください

 

「!?」

 

(委員長。すげーよ。言い切った!?)

 

「貴様…………彼の『武御雷』が特別な機体だということは知っていような」

 

「はい。全てを知った上での事です。お咎めは作戦後に頂戴致します」

 

「良い覚悟だな少尉。流石は勇猛な『A-01』部隊で部隊指揮を任されるだけの事はある。では彼の機体が搭乗者を選ぶ事も、当然考慮済みなのであろうな?」

 

「?」

 

「戦術機が………搭乗者を選ぶ!?」

 

「榊………あの『武御雷』には、適格者認証プログラムが存在するのだ」

 

「!?」

 

(そうだ、あの機体は将軍専用機………それ以外の人間が搭乗する事を想定………いや、許されてない!)

 

「でも、管制ユニットを換装すれば…………」

 

「無駄だ。機体側のシステムに直接組み込まれているが故、その程度では認証回避は出来ない」

 

「…………」

 

「榊少尉。鼻息が荒いのは結構だが………勝手に持ち出そうにも、貴様には起動することすら叶わぬぞ?」

 

(襲撃事件の時、殆の余剰機が出撃したのに、あの『武御雷』が使われなかったのはそういう事だったのか)

 

「但し…………この基地に搬入されて以来、登録データが変更された等という話は終ぞ聞いていないがな」

 

「えっ!?」

 

「私が貴様達の謀を見逃すという事は斯衛軍………ひいては殿下に背くに等しい」

 

「……………」

 

「それを為せと言うからには、相応の見返りが無ければ割に合わない…………そうは思わんか?」

 

「中尉、先程申し上げた筈です。戦後の禍根を…………」

 

「それは理解している。別の条件を言おう」

 

「なんでしょうか?」

 

『榊千鶴』が恐る恐る尋ねる。

 

「貴様達に、我が隊の『武御雷』を預かって欲しい」

 

「えっ!?」

 

考えてもない提案に誰もが驚いた。

 

「ボク達に…………」

 

「『武御雷』を………」

 

「…………預ける?」

 

「そうだ。私達の代わりに…………連れて行ってくれ」

 

「でっですが、それでは…………」

 

「搭乗者認証は、彼の機体専用の特別仕様だ。安心するがいい」

 

「いえ、そう言う事ではなく…………」

 

「この条件が呑めないのであれば、話はここまでだ」

 

「っぅ…………月詠……………中尉。」

 

(中尉達の『武御雷』なら『XM3』を搭載している…………つまり皆の管制ユニットを換装しても機体は即対応出来るって事だ!?あの将軍専用機だけなら『XM3』への換装作業も何とかなるはずだ…………)

 

「どうするのだ榊少尉。私は気長な質ではないぞ?」

 

「中尉のお申し出。有り難く受けさせて頂きます!」

 

「よし。では交渉成立だ」

 

「ありがとう御座います。」

 

「対等な交渉だ。感謝される筋合いではない………」

 

(くそ、カッコつけ過ぎですよ月詠中尉)

 

「これで我等は共犯となった。貴様達が作戦を成功させなければ、私は銃殺ものだ」

 

「必ず………必ず成功させて見せます!」

 

「頼むぞ榊少尉。私の機体は貴様に預ける」

 

「はい!」

 

「……………」

 

「御剣少尉。後顧の憂いなく、存分に戦って来るがよい」

 

「はっ!」

 

敬礼を返す一同。

 

「貴様らには、神代達の機体を預ける」

 

「はっ!」

 

「…………武運を祈る」

 

「はっ!」

 

「貴様にしては口数が少なかったな、白銀少尉?」

 

「ウチの部隊を任される者達は代々しっかり者ですから。出る幕なんてないですよ」

 

「ふん。慎ましいことだな」

 

「はっ」

 

「勝って来い………良いな」

 

「はい!」

 

「この件。副司令には貴様からお伝えしろ。言い様は…………任せる」

 

「はっ!」

 

「零式強化装備は国連仕様の新品がある。2〜3人で取りに来い」

 

「ボクが行きます!」

 

「私手伝います!」

 

「私も………」

 

「よし、残りの者は換装作業に戻れら、機体の搬送はこちらで行う。以上だ」

 

「敬礼!」

 

「『A-01』部隊の奮戦を期待する。」

 

『月詠真那』達が作業の為に立ち去る。

 

「羨ましいわ〜『武御雷』」

 

「速瀬中尉!?」

 

「いや〜なんであの『武御雷』がここにあるのかずっと疑問だったのよね。今の話聞いて、御剣が誰かに似てるな〜って思ってた件に納得出来たわ」

 

「見ておられたのですか?」

 

「偶々ね、白銀ったら勢い良く出てったくせに、対して話してないし」

 

「皆が俺の言おうとした事を代弁してくれましたから」

 

「すみません。先任であり上官の速瀬中尉を差し置いて…………」

 

「何言ってんの?あれはあんた達が考え行動した結果。私はそんな事思いつきすらしなかったわ」

 

「速瀬中尉………」

 

「あんた達は自分達の行動を誇りなさい。そんでもってちゃんと機体を返さないとね」

 

「はい!」

 

新たな力を手にした『A-01』部隊。過酷な戦いを想像するに容易い作戦に僅かな光が差し込んだ。

 

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