(こっちには目もくれず、『 Mk.Alles(マークアレス)』に集中してやがる)
無数の触手が『 Mk.Alles(マークアレス)』に襲いかかる。『 Mk.Alles(マークアレス)』は手の甲から伸ばしたブレードとブレードから放たれるビーム兵器、背中のアンカーを駆使して全く寄せ付けない…………その動きには余裕すら見える。
(なりふり構ってられるか!)
「真壁さん!佐渡ヶ島でやった時みたいに『あ号標的』を高出力のビームでやれませんか?!」
「そうしたいが、タメを作る余裕までは無い。…………俺が惹きつけている間に立て直して『凄乃皇·四型』の荷電粒子砲でヤツを撃つんだ!」
「『凄乃皇·四型』はさっきの接触でエネルギーを殆持ってかれたんです!」
「そうか…………」
「…………真壁さん、隙をついて直接『あ号標的』に攻撃出来ませんか?」
「…………やってみる!」
触手を躱しながら一瞬生まれたチャンスにビームを放つ『 Mk.Alles(マークアレス)』。しかし放たれビームは『あ号標的』に届く前に見えない壁に分散されてしまった。
「!?」
「そんな………まさか『ラザフォード場(フィールド)』!?」
(ヤツめ、いつの間に『ラザフォード場(フィールド)』を学習したんだ?!)
「どうすれば…………」
「『凄乃皇·四型』の荷電粒子砲とこの器の力を掛け合わせるんだ。」
「どうやって?」
「今は『凄乃皇·四型』を起動させることに集中しろ」
「………了解!…………霞。『A-04』の状態を教えてくれ!」
「…………脱出艇の皆さんは気を失っていますが無事です。…………純夏さんが自閉状態になっていて『A-04』を起動出来ません」
「なに!?」
「捕まった時のイメージがあふれかえって…………」
「純夏!しっかりしろ純夏!!」
「駄目です。何も応えてくれません!」
(純夏頼む…………人類の未来が掛かってるんだ!このままじゃ…………)
「霞。純夏の状態を詳しく教えてくれ!俺になにか出来る事を…………」
「眩しくて…………なにも見えない…………」
「えっ」
「これは、純夏さんが『00ユニット』になる前と同じ…………」
「嘘…………だろ………」
(まさか、さっきの触手のせいでそこまで戻されちまったのか………!?どうする、このままじゃ全滅しちまう………純夏の状態があの時に戻ったのなら回復には時間がかかる…………)
「霞。純夏に俺の声を直接聞かせる方法は無いか?!」
「…………さっきのような同調状態を再現出来れば…………」
「侵食された時を再現するのか?!そんなこと出来るのか?!」
「完全に同調するには、深層意識まで潜る必要があります。その上でリーディングとプロジェクションを同時にしないと会話は出来ません」
「でもその並列処理は『00ユニット』じゃなきゃ無理なんじゃないのか?!」
「はい、それに私には深く潜る能力はありません。でも私と純夏さんを繋いでいる同調装置を使えば、なんとか出来ると思います。装置の入出力を逆転させ、プロジェクションだけに集中するんです」
(なるほど、純夏がしゃべれる状態じゃないからリーディングを切るわけか)
「でも深層意識下までどうやって?!」
「装置のリミッターを解除して、私の力を機械的に増幅させれば、深く潜れるはずです」
(ブーストをかけるのか………それだって霞と純夏にも相当な負担をかけるはず…………)
「上手く行けば、白銀さんの声を直接純夏さんに聞かせる事が出来ます」
「…………最悪の場合どうなる?」
「純夏さんの深層意識に囚われ二度と意識が戻らないと思います」
「!!……………それでも…………やってもらえるか?!」
「はい」
「ありがとう…………霞ッ」
「私も…………一緒に戦います!」
『社霞』が同調を始める。
「頑張れ…………霞…………。…………純夏、純夏!俺だ!!聞こえるか?!」
「……………」
「目を覚ましてくれ!純夏!!」
「……………」
「今、真壁さんが俺達の為にひとりで戦って時間を作ってくれてるんだ。自分のいるべき世界に帰ることを後回しにしてまで。霞もお前を命懸けで頑張ってくれてる…………!お前も今凄く辛いんだと思う…………せっかく乗り越えた嫌な事、辛い事をほじくり返されたんだと思う…………そんなお前に戦わせるのは凄く辛い。だけどお前しかいない【この世界】を救えるのはお前だけなんだ!お前がこのまま目を覚まさなかったら、俺達は全滅しちまう…………もしそんなことになったら【この世界】はまた終わっちまうんだ!!俺がここで死んだらまた2ヶ月前に戻っちまうんだ!!…………皆が辛い思いをする所なんて俺は…………もう見たくない…………お前が辛い思いをするのをもう一度見るなんて………絶対に嫌なんだ………!!」
「……………」
「頼む純夏、戻って来てくれ!皆の【この世界】を一緒に守ってくれ!!」
「……………」
「……………純夏。もしかしたらお前に話かけるのもこれが最後になっちまうかもしれない…………真壁さんが限界を迎えた時点で俺達は全滅だ。でも、もしこれでお前が目覚めなかったとしても…………それは仕方が無い。別に諦めた訳じゃない。それにもう一度やり直せばなんて………全然思ってないよ。でも…………もしそうなったら俺は…………立ち向かうよ。…………いきなり【因果導体】なんて最悪な存在にされちまったけど…………でもそんな俺にしか出来ないことだから………やるよ。本当は凄く嫌だ、凄く辛いけど…………俺は絶対に逃げないよ。自分だけ不幸だって面して泣き喚いても、誰かのせいにしても………何も変わらない。自分だけが信じてる自分の正しさをいくら人にアピールしても…………何も変わらなかった。まず自分を変えて、現実を受け入れた上でそれを変える努力をしなきゃ…………いつまで経っても同じ事の繰り返しなんだ。」
「……………」
「【因果導体】になって、初めて思い知らされた。そう考えると、この運命に感謝しないといけないのかもな…………だから、今度は必ず…………誰にも辛い思いをさせない………誰も苦しめないで【次のこの世界】を守るんだ。俺のこういう考え方は、理想論なのかも知れない。…………そういうのは幼稚だって、自分でも思ったことがあったよ。だけど、今はそれでもいいって思えるんだ。ただ理想を口にするだけで無くそこに向かって努力して、精一杯行動すれば…………理想論も悪くないと思うぜ」
「……………」
「俺、【次のこの世界】の横浜基地に行ったら、真っ先に地下18階に行って、お前に話しかけるよ。そして1秒でも早く、お前が苦しみから解き放たれるように全力を尽くす!…………速攻でサンタウサギを作って…………シリンダーに下げて、俺を思い出してもらえるようにする!。【次のこの世界】ではもう純夏を苦しめない。絶対だ…………約束する。だけどさ……………【この世界】で残された数分間でも出来る限りの事はしたいんだ。【因果導体】になって学んだことがもうひとつあるからな」
「…………」
「だから…………例え無駄でも…………最後の最後まで諦めないで全力を尽くす…………。【この世界】で生きている人達がそうしてるように!だから…………頼むよ!純夏!!」
ウォーーーーン
「!?」
『凄乃皇·四型』の制御装置が音を奏で始める。
「純夏…………ありがとう。…………なっ!?」
『凄乃皇·四型』の出力が凄まじい勢いで上昇を始めた。