『桜花作戦』終了後。『篁唯依』は国連軍への出向を解かれ、日本帝国斯衛軍装備実験部隊『白き牙(White Fangs)中隊』に復隊。階級も『XFJ計画』での功績が認められ大尉に昇任していた。
多彩な装備試験に勤しんでいたそんなある日。『篁唯依』は公私に渡り世話になっている帝国陸軍大佐で技術廠・第壱開発局部長でもある『巌谷 榮二(いわや えいじ)』に呼ばれ彼の執務室を訪れた。
「失礼します。ご無沙汰しております。巌谷大佐」
「元気そうだな篁………今は大尉だったか?」
「はい」
「どうだ?『オモチャ』の進捗は?」
「はい。現在『EML-99X』は冷却装置が改善され、カムチャツカで計測した出力を維持しつつ、6時間程インターバルはありますが完全分解しての整備をする必要無く連射が可能に。但し小型か及び出力調整といった諸課題には改善の兆しが見えないのが現状です。短期制圧及びハイヴ突入戦といった限定的な運用方法でしか未だその真価を発揮することが出来ないでしょう」
「そうか………整備不要で連射が出来るだけ進歩したと見るべきか、あの試験から3年経ってもまだその段階と見るべきか…………」
「あの高出力を携帯可能にし戦術機の正規装備とするのは、至難の業と言う他ありません」
「…………」
「巌谷大佐?」
「堅い…………堅いぞ唯依ちゃん」
「巌谷大佐!?そのような私的な呼び方は………」
「リラックスして話す為に人祓いしてあるというのにお前さんときたら…………まぁそれが唯依ちゃんらしさでもある訳だが」
「巌谷大佐…………」
「あっちみたいにリラックスして励むのは厳しいか?環境的に?」
「えっ」
「聞いたぞハイネマンから。小隊の奴らに『唯依姫』なんて呼ばせてたそうじゃないか。」
「〜〜〜!?そっそれは小隊のメンバーが勝手に呼んでいただけで私はそのような事を…………」
「アハハハ!わかってるさ。だがそれだけ計画関係者と打ち解けて任務を遂行出来たのだろう?もっと肩の荷を降ろせ。貴様1人が背負うことではないのだから」
「はい…………」
「まぁ普段の帝国軍内の空気感でそのように挑めと言うのもいささか困難な事ではあるな。あの常に張り詰めた緊張感が善くも悪くも帝国軍の良さだしな」
「……………」
「篁唯依大尉。貴官に出向を命ずる」
「!?出向でありますか?」
笑みを浮かべながら話していた『巌谷榮二』は表情を切り替えると『篁唯依』の目をじっと見つめながら本題を切り出す。
「出向先は『佐渡ヶ島』にある国連『G元素』研究機関『Alvis』。」
「『Alvis』…………確か2年前に設立された研究機関でしたよね?」
「そうだ。そこの責任者とはちょっとした縁があってな」
「確か責任者の名前は『香月夕呼』…………元国連軍横浜基地の副司令でしたよね。叔父様はあの方と面識が?」
「面識は無い。情報屋を通じて繋がっているに過ぎない。一筋縄ではいかないオナゴだよ彼女は」
「ハァ………」
「現在『Alvis』では『G元素』研究の1つとして【戦術機での『G元素』運用】を研究しているらしい。『XFJ計画』での貴様の実績を買っての『横浜の雌狐』直々の依頼だ。貴様の技能を見せつけ雌狐の鼻を折ってやれ」
「了解しました。篁唯依大尉、『Alvis』への出向の任拝命致します。」
「うむ。頼むぞ篁大尉」
「ハッ!」
『巌谷榮二』の命を受けた『篁唯依』は数日後、日本帝国領『佐渡ヶ島』にある国連『G元素』研究機関『Alvis』に赴いた。