「お待たせ致しました。香月博士」
再び『香月夕呼』の執務室を訪れた『篁唯依』。そこには一人の少女と部屋の中ながら厚着のコートを纏った男性が『香月夕呼』と共に待っていた。
(あの少女…………誰かに似ているな。そしてこの男性………これまであった人には無い独特な雰囲気を感じる)
「紹介するわ。彼女は『社霞』。私の補佐ととある任務の為にここにいるわ」
(とある任務…………)
「この男性は『真壁一騎』…………『00ユニット』の試作機よ」
「!?」
「その反応………多少は『00ユニット』について知ってるようね」
「噂でしか存じ上げてませんが、香月博士が以前横浜基地で研究されていたのが『00ユニット』なる電磁演算システムで。『00ユニット』は先の『桜花作戦』にて失ったと聞き及んでおりました。まさか試作機があったとは…………」
「その噂は概ね正解ね。実際『00ユニット』はあの作戦で失われたわ。再び作ろうにも計画も終わったから『00ユニット』再開発の予算は恐らく微々たるもの…………よって再開発は不可能ってところよ」
「その試作機の存在を公にはされないのですか?」
「そうね。完成には程遠い状態だし、公にしたところで他の連中には手に余るシロモノだわ。だから今は私の研究に利用してるってところかしら」
「差し支えなければその今の研究をお聞きすることは可能ですか?」
「…………その研究の1つが貴女に依頼している【戦術機での『G元素』運用】よ」
「…………そうでしたね。愚問を失礼致しました。」
「別に気にしないで頂戴。今の研究なんて表現されたら気になるのはもっともだし。…………それでね貴女に見ておいて欲しいデータがあるのよ。社」
「はい」
『社霞』から情報端末を渡される『篁唯依』。
「これは…………!?」
「これはここにいるメンバー以外には極秘のデータよ。勿論さっき会った伊隅達にも」
「このデータのベースは………… 『TST-TYPE97』ですか?」
「さっっすが『XFJ計画』を成功に導いた技術士官!そうよ。この機体は技術的特異点(シンギュラリティ)と言っても過言じゃないわ。」
「技術的特異点(シンギュラリティ)…………」
「この機体はね。元はある衛士の搭乗していた『TST-TYPE97』なんだけど。とある作戦で真壁一騎が搭乗したのよ」
「彼が操縦したのですか?!」
「えぇ…………元の搭乗していた衛士が別の機体に乗り換えた関係で、彼の試験運用も兼ねて自然と彼専用機になったわ」
「……………」
「そしたらなんと!?この『TST-TYPE97』だけOSの学習による進化じゃ説明のつかない性能を発揮し出したのよ」
「それが………このデータですか?」
「そうよ」
「にわかに信じられませんね」
「証拠を見せておきたいんだけどね〜。この機体まだ完成してないのよ」
「完成?機体自体は存在するのでは無いのですか?」
「あるにはあるわ…………ただ、誰の搭乗も受け付けないのよ」
「と言いますと?」
「機体が衛士を喰いそうになったのよ」
その表現を全く理解出来ない『篁唯依』。
「まあ当然そんな反応になるわよね。この項目を見て頂戴」
『香月夕呼』の指定したファイルを開くと見慣れない表現が記述されていた。
「【同化】…………対象と自身を同一化しようとする現象…………なんですか?これ」
「私もよくわかってないのよ。その機体を解析している時に見つけたんだけど、正直訳わかんないわよ。ただね搭乗させようとした衛士を喰うって表現は間違いでは無いはずよ」
別の端末の動画を見る一同。そこには【その機体】を起動すると手足が【緑色の結晶】に包まれる『A-01』の面々が映し出されていた。
「これは…………」
「どう?まさしく機体が衛士を喰おうとしているって表現がピッタリでしょ?」
「はい…………」
「だから【その機体】は只今絶賛隔離封印中。…………でも、【その機体】のスペックを少しでも反映することが出来れば…………」
「BETAとの戦いを更に優位に進めることが出来るでしょうね」
「そういうこと。ただね私には戦術機開発のイロハが無いから。貴女に白羽の矢が立ったって訳」
「成る程…………。内容は概ね理解出来ました」
「なら良かった。3日後には『TST-TYPE97』がこっちに何機か搬入される予定だから早速そのデータを参考に取り掛かって頂戴。機体開発には真壁一騎を同伴させなさい。彼から発生したイレギュラーだからね、何かの役に立つかもしれないし。あと困った事があれば遠慮なく社に言って。」
「わかりました。お気遣い感謝致します」
「じゃあ、よろしく頼むわね」
こうして『篁唯依』は『Alvis』で新型戦術機開発の日々に追われるのであった。