ブリーフィングが終わり、『イーニァ・シェスチィナ』を寝かしつけた『ユウヤ・ブリッジス』は白い結晶に包まれた夜空の下。遠くを眺めていた。
「・・・・・」
「こんな寒空の下でなにをやってるんだ貴様は?」
「・・・・・篁大尉」
「・・・・・貴様、嫌味か?」
「えっ」
「周囲には他の者はいないんだ。その・・・・・そんなに堅苦しくなくていい」
「悪い」
「元気そうだな」
「お前もな唯依」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ありがとう。唯依」
「なんだ突然!?」
「俺達で作り上げた『不知火・弐型』・・・・・日本帝国の次期主力機になったんだな。しっかり日本の次を担う機体としてあの後も『XFJ計画』完遂してくれて、ありがとう」
「いや礼を言うのはこちらだ。貴様のお陰で我が国の戦術機開発は停滞を間逃れ様々な可能性を見出そうとしている、ありがとう。ユウヤ」
「そうか。あの話の後だと果たしてそれが良かったのかなとは思うけどな」
「・・・・・」
「冗談だ、冗談。なんだ日本に戻ってまた『日本人形』に逆戻りか?」
「日本人形!?どっどういう意味だユウヤ!?」
「あっ、いや・・・・ほら俺達が初めて出会った頃。お前『XFJ計画』以外眼中に無い感じだったろ?その一点しか見てない感じがなんか似てたんだよ」
「ユウヤ!貴様私のことをそんな風に・・・・・いや、そんな話はどうでもいいな。あの後どうしていたんだ?」
「ソ連のとある部隊に匿われて『黎明作戦(ザーリャ作戦)』に参加したあと日本に亡命してずっと『煌武院』って武家の家に匿われてたな」
「!?・・・・・悪運の強い奴め」
「そうなのか?」
「日本帝国の全権を担う『政威大将軍』は『五摂家』と呼ばれる『煌武院(こうぶいん)家』・『斑鳩(いかるが)家』・『斉御司(さいおんじ)家』・『九條(くじょう)家』・『崇宰(たかつかさ)家』の中から選出される。そして現在『政威大将軍』の責務を担っておられるのが『煌武院家』の『煌武院 悠陽(こうぶいん ゆうひ)』様なのだ」
「俺達は将軍家に匿われたってことか?」
「そういうことだ」
「それは確かに悪運が強いかもな!…………」
「なにかあったかユウヤ?」
「………悪い、大尉。白銀ってやつの事すげー大切な存在なんだろうな」
「そうなんだろうな」
「何故かな………時期が時期ってのもあるかもしれねーけど。この雪を見てると『クリスカ』を思いだしてな」
「…………ビャーチェノワ少尉はどうしてる?」
「…………幸せそうな笑顔だったよ。」
「そうか……………」
『篁唯依』は瞳を閉じると右拳を自分の胸に当てた。
「唯依…………」
「共に競い合ったものとして、苦難を共に乗り越えた戦友としてせめてもの供養…………のつもりだ」
「ありがとうな。唯依」
「〜〜〜」
思わず赤らめる『篁唯依』。
「心配なら無用だぜ。なにせ5年前の話だ。それに俺の進むべき道は定まってる。…………イーニャを、クリスカにとって自分より大切な存在だったイーニャを守る。それが今の俺の戦いだ。」
「そうか。要らね心配のようだな」
「あぁ」
「もう寝ろ。アラスカ程では無いにしろ、日本の冬も舐めると身体に毒だぞ」
「わかった。おやすみ。唯依」
「おやすみ。ユウヤ」
埋めるべき空白の刻は多くとも、2人にとってはこの僅かなひと刻でその穴を埋められるのであった。