2007 年12 月16日
『榊千鶴』、『ユウヤ·ブリッジス』、『白銀武』の3名は日本帝国斯衛軍第19独立小隊隊長『月詠真那』より招集を受け、『御剣冥夜』の案内のもと、とある場所を訪れていた。
「榊大尉。先の戦い御苦労であった。」
「月詠少佐。ご無沙汰しております」
「…………」
『月詠真那』は2人の男を睨みつける。
「…………」
「お久しぶりです…………月詠少佐」
「白銀少尉…………少しはマシな状態になったようだが…………なかなかの体たらくだな」
「……………」
「些か独断専行が過ぎたのでは無いか?」
「返す言葉もありません。」
「まぁよい。貴様らを呼んだのは他でも無い。貴様らに渡しておきたいモノがあるからここに呼んだ」
「ここは戦術機の格納庫ですか?」
「そうだ榊。この格納庫はとある『五摂家』が専有する格納庫だ」
「…………ってことは受領するのはやっぱり戦術機か」
「確か月詠………少佐。先の『 Mk.Alles(マークアレス)』襲来時に急遽搬入されたとか?」
「…………」
「月詠?」
「あぁ………すまない。実はこの機体の搬出先は…………『Alvis』なのです」
「えっ!?」
「なっなんで!?」
「それはわからない。届けに来たのは『伊隅みちる』と『速瀬水月』だ」
「もしかして余別岳の一件は陽動だったってことか?その届けモノってやつの為の?」
「あっ」
少し喋り過ぎたわね。白銀、あんたにプレゼントを贈っておいたから好きに使いなさい
『香月夕呼』の言葉を思い出す『白銀武』
「まさか…………あの時夕呼先生が言ってたプレゼントか?」
「…………そうだ。白銀へと言っていた」
「!?」
意図の読めない『Alvis』の行動に困惑する4人。
「それがこの機体だ」
『月詠真那』の合図でスポットライトが当たる戦術機。
「これは…………『吹雪』?」
「いやこの機体は…………」
「ここからは、この機体の事情を知る彼女に説明させた方が良くわないか?月詠真那少佐」
声のする方から2人の男女が歩いて来る。
「篁大尉………それに貴方は『巌谷 榮二(いわや えいじ)』大佐?!」
「如何にも帝国陸軍技術廠・第壱開発局部長の『巌谷 榮二(いわや えいじ)』大佐だ。宜しくな。君達が『日本帝国斯衛軍第19独立小隊』と『ブレード小隊』の面々か?」
「『日本帝国斯衛軍第19独立小隊』の『御剣冥夜』大尉であります。」
「ほう………御剣か」
「…………」
「…………すまない。君は?」
「『日本帝国陸軍帝都守備隊第17独立機動小隊『ブレード小隊』』の『榊千鶴』大尉であります」
「同じく、『ユウヤ·ブリッジス』少尉です」
「暫くだな、ブリッジス少尉」
「…………その説は世話になりました」
「巌谷大佐…………ブリッジス少尉と面識が?」
『篁唯依』が驚きの表情での『巌谷 榮二』に尋ねる。
「面識もなにも、ブリッジス少尉が『煌武院家』で匿われるように手引したのは俺だからな。あの娘は元気か?」
「はい。大佐のお陰で」
「そうか。それは良かった。………そして君が」
「白銀武少尉であります」
「君が『桜花の英雄』か…………宜しくな」
「ところで巌谷大佐。何故こちらに?」
「この機体の搬入情報を手引した人物に対してつれないな月詠少佐」
「……………」
「そう睨みなさるな。この機体の事を良く知る篁大尉を連れて来ただけだ」
「失礼致しました。」
「なに、少佐のお考えのように確かに俺はこの件の【部外者】だからな、挨拶も終えたしあとは篁大尉に任せるよ」
『巌谷 榮二』が『篁唯依』に目配せすると、『篁唯依』が説明を始める。
「では、ここからは私が説明させて頂きます。こちらは『TST-TYPE97X0』機体名称『竜騎(りゅうき)』」
「『竜騎』…………」
「この『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』は『TST-TYPE97X1:八鏡(やたかがみ)』及び『TST-TYPE97X2:草薙(くさなぎ)』のベースとなった機体です」
「あの2機のベース!?」
「白銀少尉。貴様は2機の説明の際同席していなかったが、『TST-TYPE97X1:八鏡(やたかがみ)』及び『TST-TYPE97X2:草薙(くさなぎ)』について説明が必要か?」
「篁大尉。それは後程私達が白銀少尉へ説明しますので、『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』の説明をお願い致します。」
「承知しました。この機体はまず他の戦術機とは根本的に違う動力源で動いています。」
「以前説明して頂いた『G・エネプラナ』とは違うのですか?」
「はい。『G・エネプラナ』は『G元素』を用いた動力源に対して、『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』は『コア』と呼ばれる動力源を使用しています」
「『コア』?」
「詳細は現在データベースを解析中だが、わかっているのは『BETA』とは異なる異星起源種の力が大元となっているようだ」
「『BETA』とは異なる異星起源種?」
「情報提供者はこの異星起源種を『フェストゥム』と呼んでいた」
(その情報提供者はきっと…………)
「この『コア』なる動力源は『G・エネプラナ』同様。動力機関格納ブロックに蒸気性の永劫電動回路が形成され、空気中の物質からエネルギーを抽出している。」
「つまりこいつも無制限に動ける訳だ」
「更にこの機体は通常の戦術機とも若干操縦方法が異なる。」
「どういうことですか?」
「この機体は10個の指輪を嵌める『ニーベルング・システム』で搭乗する『思考制御・体感操縦式』を採用している…………簡潔に述べれば機体と衛士が一心同体となり衛士は操縦する事無く、自分のイメージ通りに機体を動かす事が出来るとのことです」
「…………確証が無いのですか?」
「…………私が知る限り、成功した試しが無いのだ。御剣大尉、榊大尉、そして白銀少尉。貴官達は経験しているはずだ」
「!?」
「私達が?」
「あの同化現象を引き起こしたテストか!?」
【同化現象】なる聞き慣れない言葉に周囲は困惑する。
「白銀少尉。なんだその【同化現象】って?」
「【同化】とは対象と自身を同一化しようとする現象…………と以前香月博士から開示されたデータには記述されていた。そうだな白銀少尉?」
「はい。先の余別岳での一件で『 Mk.Alles(マークアレス)』が俺の『94式戦術歩行戦闘機 (TSF-TYPE94):不知火』の頭部を破壊した【緑色の結晶】…………あれが【同化現象】です」
「それをその『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』は搭乗した衛士に行うのか…………」
「それを乗り越えられれば、既存の戦術機とは桁違いのスピードの機動を難なくこなせるようになるはずだ」
「…………そしてこの機体は恐らく2人の人物しか搭乗出来ない」
「俺と…………真壁一騎ですね?」
「…………その通りだ」
「武?」
「あの機体のベースはきっと………俺が乗ってた『TST-TYPE97:吹雪』だ」
「それは本当ですか篁大尉!?」
「そうだ。私が香月博士から聞いた話では、真壁一騎が搭乗したことで技術的特異点(シンギュラリティ)が発生しこの『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』が誕生したそうだ」
「…………」
「次に『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』の装備だが、我々の知る武装として、『87式突撃砲』を両腰部に2門と『65式近接戦闘短刀』を両腕に2本、背面右側の『74式近接戦闘長刀』を一振り。そして背面左側に遠近一体槍兵装『ルガーランス』……………」
「武装はTST-TYPE97X2:草薙(くさなぎ)』って感じか」
「TST-TYPE97X2:草薙(くさなぎ)』が『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』をモデルにしているからな………そしてこの小型突撃砲…………これは『EML-X03改:03型電磁投射砲改 』。速射に特化し携帯化に成功した『EML-X03:03型電磁投射砲 』の改良型のようだ」
「あの一撃をそんな小型サイズにすることに成功したのか………」
「恐らく『 EML-99X:試製99型電磁投射砲 』のような高出力砲では無いにしろ、既存の戦術機なら一撃で装甲を貫通し破壊出来る威力は持ち合わせている」
「あの2機のモデルだけあってこれだけでも凄まじい性能ね」
「そして最大の特徴が『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』は【同化現象】を使用出来る可能性があるということだ」
「!?」
未知の力を使える可能性にその場にいた者達は戦慄を覚えた。