2007年12 月17日
「なぁ、部隊が再編されて早々俺達はどこに連れて行かれるんだ?」
「私にもわからん。大佐に先程からはぐらかされているのでな」
『ブレード小隊』が再編された翌日。『ユウヤ·ブリッジス』と『篁唯依』は『巌谷 榮二』に連れられてとある施設へ向かっていた。
(叔父様はなにかと誤魔化しているようだが、ここは確か…………)
「すまんな。2人とも到着だ」
「ここは…………また格納庫かよ。なんだよ大佐『TST-TYPE97X0:竜騎』以外に俺達に受領する機体があるのか?」
「ブリッジス少尉!口の聞き方に…………」
「気にするな唯依ちゃん。ブリッジスはこれくらいが丁度いい」
「叔父様!?今その呼び方は…………なんだブリッジス!?」
「別に…………」
「〜〜〜」
『篁唯依』の頬が赤くなる。
「アハハハ、すまんすまん。そろそろお見えになるはずだ。気を引き締めておいてくれ」
「?」
2人の疑問を余所に対面から女性が2人歩いて来た。
「あれ…………御剣大尉?」
「馬鹿者!頭を下げろユウヤ!!」
『ユウヤ·ブリッジス』が2人に目をやると深々と頭を下げていた。
「御多忙の中、足をお運び頂き感謝致します。殿下」
「お久しぶりですね。巌谷大佐」
『巌谷 榮二』が殿下と呼んだ女性は優しく微笑んだ。
「その者達が?」
「はい。『XFJ計画』を完遂させた開発責任者と首席開発衛士の2人です」
「お初にお目にかかります殿下。『日本帝国斯衛軍装備実験部隊『白き牙(White Fangs)中隊』大隊長、篁唯依大尉で御座います。訳あって現在『日本帝国陸軍帝都守備隊第17独立機動小隊:ブレード小隊』に出向しております」
「篁大尉。貴女の尽力が日本の戦術機開発に大きな可能性を残しました。大義でありました。」
「ハッ!勿体ない御言葉、僭越至極に御座います。」
「そなたは?」
「『日本帝国陸軍帝都守備隊第17独立機動小隊:ブレード小隊』所属、ユウヤ·ブリッジス少尉です」
「貴様。相変わらず礼儀作法がなってないようだな。ユウヤ·ブリッジス」
眼鏡をかけた女性は『ユウヤ·ブリッジス』を鋭く睨みつける。
「あんたは…………月詠さん。あん時は世話になったな。…………あれ?部隊長の月詠さんは」
「月詠真那は従姉妹だ」
「あー成る程。確か真耶さんだっけ?」
「恩人の顔と名前くらいしっかり覚えておけ愚か者」
『月詠 真耶(つくよみ まや)』溜息をつきながら眼鏡を掛け直す。
「それで貴様はいつまで突っ立っているつもりだ?」
「えっ?」
「殿下の前で棒立ちがあるか馬鹿者!」
「真耶さん。よいのです」
「しかし殿下」
「…………」
「承知致しました」
「さっきから殿下ってまさか…………」
「そうだユウヤ。この御方が『煌武院 悠陽(こうぶいん ゆうひ)』殿下。現在、日本帝国の『政威大将軍』を務められる御方だ」
「お初にお目にかかります。ユウヤ·ブリッジス」
「えっ、いや…………」
(こんな年はもいかない少女が日本の全権を担ってるのか?)
「そなたの尽力で、我が国に新たな可能性の道が開けました。そなたに感謝を」
「いや、俺はただ俺のやるべき事をやっただけなんで………」
「そこは言葉通り素直に受け取っておけ。ブリッジス」
「…………了解」
「殿下。此度は私の申し入れをお聞きくださり、ありがとう御座います。」
『巌谷 榮二』は改めて『煌武院 悠陽』に深々とお辞儀をする。
「顔をお上げてください巌谷大佐。」
『煌武院 悠陽』は笑みを崩さず、『巌谷 榮二』に言葉をかける。
「私達はその時まで預かっていたに過ぎません。」
「預かる?」
『ユウヤ·ブリッジス』と『篁唯依』は2人の意図が汲めず困惑する。
「なんだ2人共、お前達が創り上げた機体を忘れたのか?………機体が泣いてるな」
「えっ…………ウッ!」
『巌谷 榮二』悪戯を思いついたようにはにかむと照明がその正体を曝け出す。
「『XFJ-01:不知火・弐型Phase3』…………」
「…………しかも2号機まで」
「何故ここに…………この2機は廃棄されたのでは?!」
「表向きはそうだ。」
「ちょっと待ってくれ!廃棄ってどういうことだよ!?」
「…………色々と政争を巻き起こした戦術機だからな。あの後帝国軍はあの一件に関わった国々に配慮し『XFJ-01:不知火・弐型Phase3』の廃棄とデータの抹消を決定した」
「…………」
「元々。帝国軍次期主力機として採用する戦術機は『XFJ-01:不知火・弐型Phase2』だったからな問題無く進んでいった」
」
「…………」
「それをブリッジス。貴様と共に裏から手を回しお助けくださったのが…………殿下だ」
「えっ………殿下が?」
「異国で生まれ育ちながらこの国の明日を握る計画を命を徒して担った戦術機と衛士を助けたまでです。無論、巌谷大佐の懇願がなければ成立せしえなかったと思いますが」
「巌谷大佐…………」
「まぁそういうことだ。殿下とは接点があったから『煌武院』家で匿ってもらえたという所だ。………来る作戦には、出来る限り優れた機体とその機体を性能以上に引き出せる衛士が必要だと考え殿下に封印を解く許可を頂き。こうしてここにいるという訳だ」
「……………」
「ユウヤ?」
(またお前に乗れるんだな、相棒!!)
無邪気な子どものように目を輝かせる『ユウヤ·ブリッジス』を見て『篁唯依』もまた見守るように笑みを送った。
「背景があるだけに、そのまま『不知火』を名乗らせる訳にはいかんのでな。こちらで新たな機体名称をつけさせてもらった」
「…………」
「名を『 極光 (きょっこう)』。」
「『極光』…………悪くない」
「それは良かった。一番機をブリッジス少尉が篁大尉は二番機に搭乗するんだ」
「私もですか?」
「斯衛のデータベースに登録された貴様の『TSF-TYPE00 武御雷(たけみかづち)』を極秘の作戦に使う訳にはいかんのでな。それに一度搭乗しているのであろう?慣熟もそれ程時間はかからんだろう」
「…………そうですね。御配慮ありがとう御座います。殿下、巌谷大佐」
「2人とも、宜しくお願い致します。」
『煌武院 悠陽』の願いに敬礼で応える2人。封印されし嘗ての愛機は新たな名を与えられ再び大空へと舞い上がった。