「くそーーー!?」
2007年12 月20日
『新生ブレード小隊』は結成以降。模擬戦に勤しんでいた。
「状況終了。全機一度帰還。10分後ブリーフィングを行う」
「了解」
「どうですか月詠少佐?」
模擬戦をCP(コマンドポスト)で見ていた『月詠真那』に『巌谷榮二』が声をかける。
「慣熟を始めて3日・・・・・思わしくないな」
「・・・・・・」
「3対2の変則模擬戦にも拘わらず、結果はそなたの申し子達が優に勝っている」
「素直には喜べませんな・・・・・しかしあの3人は『桜花作戦』を生き延びた衛士・・・・・それ相応の力はあると思っていましたが・・・・・」
「機体間の性能差が練度を下げている。『XFJ計画』で強化改修に成功した『04式戦術歩行戦闘機 (TSF-Type04):不知火・弐型』とは云えど、依然性能では我らの『TSF-TYPE00:武御雷(たけみかづち)』が上回る。『04式戦術歩行戦闘機TSF-Type04):不知火・弐型』が『TSF-TYPE00:武御雷』の機動制御に追従出来ていない点。『TSF-TYPE00:武御雷』の長所である近接格闘に特化した仕様が『 試01式戦術歩行戦闘機 (XFJ-01):極光 (きょっこう)』のオールラウンド性に分が悪い点…………上げれば切りがないが最大の要因は『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』だ」
「やはりか…………」
「機体と同調しようとすると【同化現象】に襲われ、動かすどころでは無いようだ。辛うじて操縦はしているが【機体そのものに成る】感覚がどうも掴めないらしい」
「【機体そのものに成る】?」
「白銀少尉曰く。そこが既存の戦術機の思考制御と大きく異なるそうだ。既存の戦術機が我々の思考と操縦のクセを強化装備を通して戦術機が学び各々の機体に反映するのに対して、『TST-TYPE97X0:竜騎』は暴論になるが、機体そのものが一種の意思を持っている。その意思が己に介入することを受け入れ、始めて起動出来るそうだ」
「意思を持つ兵器か・・・・・」
「言い当て妙だな。だが聞くところによれば『オルタナティブⅣ』で完成した『00ユニット』は被験者の行動や心理を忠実に再現出来ていたそうだ。それに関わった連中・・・・・『Alvis』の面々は驚くことでもないのであろうな」
「・・・・・なるほどな。それでどうするおつもりで?練度を上げるなら手っ取り早く。せめて『TST-TYPE97X0:竜騎(りゅうき)』以外の機体を統一することを検討するのですか?」
「ならんな。総合戦力を見ても圧倒的に不利な我々が『 試01式戦術歩行戦闘機 (XFJ-01):極光』を外すべきではない。それに対『TST-TYPE97X2:草薙(くさなぎ)』を想定するならば、『TSF-TYPE00:武御雷』の近接格闘能力が生きる。かといえもう一機も『TSF-TYPE00:武御雷』にすると分隊(エレメント)組んだ際の中遠距離支援能力が著しく低下する。兵装の互換性が効く『04式戦術歩行戦闘機 (TSF-Type04):不知火・弐型』は必要だ。それに帝国と斯衛のデータベースに登録されていない機体となると新たに『TSF-TYPE00:武御雷』を新造する必要も出てくる」
「許可は下りないでしょうな」
「そういうことだ。結局のところ白銀少尉が『TST-TYPE97X0:竜騎』を乗りこなすようになるしかないということだ」
「時がかかりそうですな」
「こればかりは致し方あるまい。」
「・・・・・そうも言っていられないのですよ。月詠少佐」
「・・・・・痺れを切らしているのか?」
「えぇ。外だけでなく内もです」
「承知した。善処しよう。巌谷大佐、そろそろブリーフィング故失礼する」
「これは失礼。では頼みます月詠少佐」
『月詠真那』と『巌谷榮二』はCP(コマンドポスト)を離れ、それぞれの方向へと進んで行った。
「くそ、なんなんだよ。俺だってわってるんだよ」
ブリーフィングを終え自室に戻る『白銀武』の表情は優れなかった。
(俺だって早く乗りこなして。純夏を助けに行きたいんだ!当たり前じゃねーか。そもそもこれまでの戦術機とは全く異なる操作方法の機体なんだぞ!?そう簡単にコツなんて掴めるかよ!!)
「くそ・・・・・あの【別のナニか】と一つになる感覚さえ克服出来れば・・・・・」
「武!」
『御剣冥夜』と『榊千鶴』に呼び止められる『白銀武』。
「お疲れ。なんだよ2人揃って」
「うむ。ブリーフィングではあまり3人での意見交換が出来なかったのでな。今日中にやっておきたかったのだ。・・・・・・私の見立てでは操縦については慣れてきたようにみえたのだがどうなのだ?」
「まあ、【俺のイメージした動き】は出来るけど【イメージ通りの動き】には程遠いな」
「どういう意味?」
「なんていうか・・・・・俺がこう動きたいとイメージして動けてはいるけど、【何故こう動きたい】のかって意図まで汲みきれてないのか挙動に連動性が生まれなくて誤差が生じてどんどんズレてくんだよな」
「機体が白銀の動きを流れで汲み取ていないのは確かかもね。『XM3』搭載した『94式戦術歩行戦闘機 (TSF-TYPE94):不知火』の時の方が断然良い動きしているわ」
「あれは俺が【操縦していた】からだろうな。『XM3』は間接制御を通じて学習し俺の動きの最適格を事前に予測して機動のアシストをしていた。だから俺次第でどうにでもなった。でも『TST-TYPE97X0:竜騎』は違う。俺のイメージをダイレクトに表現する分なら全然やれてるんだけど。俺とは違う別の【ナニか】が俺の機体へのイメージの落とし込みを邪魔してる」
「ブリーディングでも言っておったな。なんなのだその【ナニか】とは?」
「わからねぇー。わかったらこんな苦労してないな」
「確かにそうだな」
「くそ、時間もあまりないっていうのに解決の糸口すら掴めてないなんて」
「武…………」
「白銀…………」
「白銀………さん」
「!?」
沈黙の中、新たな小さな声が3人の耳に入る。
「…………霞」
そこに立っていたのは、ウサギのぬいぐるみを力強く握りしめて恐る恐る3人を見上げる『社霞』であった。