(ここは・・・・・どこなんだ・・・・・俺はいったい・・・・・・)
『白銀武』が目を覚ますと、そこには何もない空間が広がっていた。
「真っ暗で…………なんも見えねぇー」
手探りで現状の把握を試みる『白銀武』。しかし見渡す限りの暗闇と地に足のつかない感覚は足掻く『白銀武』の心を折るのには充分な環境であった。
「どうすりゃあいいんだよ…………そういえば霞は!?霞!!おい霞!!!」
自分の声が虚しく響く。
「なにがどうなってんだよ…………」
たける…………武ちゃ…………
「声!?しかもこの声は!どこだ!何処にいる!!」
「武ちゃん!!」
「純夏!!」
目の前にはあの日消滅したはずの最愛の人がそこにいた。自然とお互いの肌が重なり合い、腕は身体を包んでいた。
「ようやくまた会えた。武ちゃん」
「純夏、純夏!純夏!!」
「私はここにいるよ。武ちゃん」
「お前よく無事で」
両者は溢れる涙を気にも止めず互いが今ここにいることを讃えあった。
「……………」
「……………」
一旦距離を取る2人。
「純夏。お前ここがどこだかわかるか?」
「ハッキリとしたことはわからないけど、多分【生と死の狭間】…………かな?」
「なんだよその曖昧な表現」
「だって!この現象はこの世界の理とは違う概念の現象だもん!!」
「えっ!?」
「武ちゃん。一騎さんを同化しようとしたでしょ?」
(そういえばそうだ!俺は一か八かで『 Mk.Alles(マークアレス)』を同化しようとしたんだ!?)
「ここは【同化現象】で同化されたモノが辿り着く場所なんだって。ここでの選択次第ではここにいることも、いなくなることも出来るんだって」
「…………」
「同化されたモノって言っても皆がここに辿り着ける訳じゃないみたいだから…………よかったよ。武ちゃんがここに辿り着けて」
「そうか…………!?霞は?!霞も一緒のはずなんだ?!」
「………霞ちゃんは存在は感じられるけど、何処にいるかがわからないの」
「!?…………とりあえずいなくなった訳じゃないんだな」
「うん」
「よかった」
「…………フフフ。武ちゃんらしいね」
「そうか?」
「そうだよ」
自然と笑顔になる2人。
「一騎さん曰く。ここは【存在と無の地平線】って言うんだって」
「…………わかりにくいな」
「でしょ?!だからわかりやすくなるように伝えたんだよ〜」
「どうやらそうみたいだな!」
再び笑い合う2人。
「アハハハ……………。……………」
「どうした純夏?」
「武ちゃん。あのね…………一騎さんを許してあげて?」
『白銀武』の表情が曇る。
「今なら…………ううん。私の声が届いた時から薄々気がついたんでしょ?」
「……………」
「一騎さんは、私を助けてくれたってこと」
「!?」
『白銀武』の表情は変わらない。ただ『鑑純夏』には確信があった。
「5年前のあの時、存在が消えかけていた私を一騎さんが同化した。・・・・・だから私の意識は一騎さんの中で生き続けることが出来たんだ」
「・・・・・」
「一騎さんも正直上手く行くかはわからなかったんだって。【本来の一騎さんがいる世界】で『フェストゥム』が同化した人間の意思を反映した事例があったからその可能性に賭けたんだって言ってた」
「・・・・・なんでそれを言ってくれなかったんだ?」
「・・・・・・きっと私が自分の意思を取り戻したのが2年前だからだと思う」
「えっ!?」
(2年前って『Alvis』が国連から独立した時・・・・・・俺達がメンバーから外された頃のことなのか!?)
「だから一騎さんは、それまで私の意識が残っている確信が持てなかった。だから黙ってたんだよきっと」
「そう・・・・・なのか」
「だから武ちゃん。一騎さんを許してあげて?」
「・・・・・純夏がこうして生きていたんだ。もうあの人を恨む理由が無い。それに、それを純夏が望むなら俺はそうするよ」
「武ちゃん・・・・・やっぱり武ちゃんは武ちゃんだね」
「意味わかんねーよ」
「アハハハハ」
にこやかに笑う『鑑純夏』の表情が少しして曇り始める。
「どうした純夏?」
「・・・・・・」
「純夏?」
「・・・・・ごめんね。武ちゃん」
「なんだよ突然」
「武ちゃんにお願いがあるの」
「なんだよ、改まって」
「・・・・・」
「なんだ?お願いって」
「・・・・・一騎さんを・・・・・倒して」
「えっ」
掌を返す『鑑純夏』の言葉に、『白銀武』は困惑した。