「純夏のせいで真壁一騎が【因果導体】になったって…………もう訳わかんねーよ!?」
(【因果導体】は接続された並列世界間の因果の相互的やり取りを媒介する存在のことで、接続された並列世界間において、一方の世界の人間はこの因果媒体との物理的並びに精神的距離に比例して、接続されたもう一方の並列世界との因果のやり取りの影響をより強く受ける・・・・・そもそも【因果導体】になったのは俺だ!俺は【元の世界】と【前の世界】そして【この世界】の3つの世界を経験してるんだ。真壁一騎も【因果導体】だなんて・・・・・そもそも夕呼先生曰く真壁一騎は【別の時空】から来た存在なんだろ?今いる【この世界】とは全く異なる世界の人間が【因果導体】になりえるのか・・・・・)
(私がこのことに気が付いたのは・・・・・【ある記憶】が流入したことがキッカケなの)
『白銀武』が思考を巡らせていると、『鑑純夏』は真相を語り始めた。
「【ある記憶】?」
(うん。【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】の私の・・・・・記憶)
「!?」
(そうだよな・・・・・ギリギリの作戦だったけど、他の世界でも『桜花作戦』が成功しててもおかしくないよな)
「どんな記憶なんだ?」
(・・・・・正確には【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】の霞ちゃんの記憶になるのかな?・・・・・その世界の私『桜花作戦』で死んじゃったし)
「なっ!?」
(なんだよ!?・・・・・・それじゃあどのみち純夏は『桜花作戦』では生き残れなかったってことかよ!?)
「でもこの世界での純夏は身体は失ったけど生き残った・・・・・そうか!」
(そうなんだ。【この世界】と【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】の違いが【一騎さんの存在の有無】なの)
「そこで世界が分岐した・・・・・」
(真壁一騎の存在で世界が分岐した・・・・・これが【因果導体】ってことなのか?)
(うん・・・・・でもね、一騎さんは元々は【因果導体】じゃなかったの)
「どういうことだ?」
(【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】ではね、武ちゃんは香月先生と一緒に【因果導体】の原因に辿り着いたの)
「真壁一騎がいない世界で【因果導体】を突き止めた!?どうやって!?」
(・・・・・・)
「純夏?」
(武ちゃんはどうして【元の世界】の記憶や【別の世界】の記憶を持ってると思う?)
「えっ」
(御剣さん達との記憶があると思う?)
「!?」
(あれはね、武ちゃんがこのループ以前に【この世界】で実際に体験したことなの)
「なん・・・・だと、あれは・・・・・別の分岐世界にいる俺が経験した事なんじゃないのか!?」
(ううん。全部武ちゃんが経験した記憶だよ)
「・・・・・そうか!!」
(俺が【この世界】に戻って来た時に泣いていた理由。・・・・・基地で初めて冥夜達にあった時、あいつらの喋り方や呼び方に覚えた違和感・・・・・夕呼先生を説得していた時無性に感じていた悲しみと喪失感・・・・・そして後悔の念・・・・・その理由がようやくわかった・・・・・・俺は冥夜達と本当に・・・・・・付き合っていたんだ!!)
「俺が・・・・あいつらと」
(記憶が結びついたんだね、武ちゃん。)
「ッツ!!」
(だから、武ちゃんはループし続けたの)
「えっ」
(私に辿り着かなかったから)
「!?」
(確かに俺はここまで来るのに横浜基地にあったシリンダーの中の正体が純夏だなんて思わなかった・・・・・いや寧ろこの世界には純夏はいないと思い込んでいたんだ)
(だからループし続けたの、そうさせてたのはシリンダーの中の私が【武ちゃんに会いたい】って独占欲を無意識に拡散させてたからなの)
「!?・・・・・まさか、そうなのか?」
(そうだよ。武ちゃんを【因果導体】にしたのは・・・・・・私なの)
「ッツ!!そんな・・・・馬鹿な!?」
『白銀武』は明かされた真相に愕然としていた。
(武ちゃんの【元の世界】での10月22日)
「!?」
(【元の世界】で突然冥夜が俺の家に来た日か!?)
(どうしてその日が選ばれたのかはわからない。けど【元の世界】の私がその日からやり直したいと後悔している負の感情が私の独占欲と結びついて・・・・・武ちゃんを【この世界】に呼び寄せてしまったの。それが武ちゃんが私に辿り着かない限り死と同時にループさせてたの)
「そうだったのか・・・・・」
(でも【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】では私と武ちゃんが結ばれて、私が死んだことで武ちゃんは【因果導体】から解放されたの。・・・・・原因が消滅したことでそれによって起こった事象はリセットされるから)
「!?・・・・・まさか」
(うん。私が生きている限り武ちゃんは【因果導体】から解放されないの)
「そんな・・・・・そんなのって」
(・・・・・・そしてそれは一騎さんも同じ)
「!?」
(一騎さんが私を同化したことで私は生き延びた。でもそのせいで私を同化した一騎さんは【因果導体】の原因として【一騎さんのいるべき世界】に戻れなくなったの)
「じゃあ。真壁特尉をやらない限り全ては解決しないってことなのかよ!?」
(・・・・・・)
「クソソォォオォ!!!」
『白銀武』の慟哭が『佐渡島』に響く。
「【元の世界】に帰る為にお前と真壁特尉をやって俺だけ戻るなんて・・・・・そんなのありかよ」
(武ちゃん・・・・・・)
「やるんだ。白銀少尉」
「真壁・・・・・さん」
「俺は大丈夫だ。鑑さんによればそうすれば俺も【俺のいるべき世界】に戻れるそうだ」
「!?・・・・・でも結局。純夏は犠牲になるんだろ」
(・・・・・・)
「白銀少尉・・・・・・」
「なんでお前だけが」
(ありがとう武ちゃん。やっぱり武ちゃんは武ちゃんだ)
「純夏・・・・・」
(凄く嬉しいよ。武ちゃんにそんなに想ってもらえて。私は幸せ者だ!・・・・・でも私のせいで武ちゃんが苦しむのは辛いよ)
「・・・・・・」
(じゃあ武ちゃん。約束・・・・・してくれる?)
「・・・・・約束?」
(うん。・・・・・もし【元の世界】に戻れたら、【元の世界】の私を幸せにしてあげて)
「純夏・・・・・」
(他の娘に現を抜かしちゃ駄目だよ?)
「そういうのは、とっくに卒業したよ」
(どうだか~~~アハハハハ!)
「フッ、ハハハハハ!」
久しぶりの他愛のない会話は『白銀武』の決意を固めさせた。
「・・・・・わかった」
(武ちゃん・・・・・)
「約束するよ純夏。【元の世界】の純夏を必ず幸せにする」
(うん)
「・・・・・行きます。真壁さん!」
「あぁ・・・・・・」
(武ちゃん)
「ッツ!?」
(またね)
「あぁ!またな」
一瞬眩い光が佐渡島を包む。その光が消えると濃紺の『全能』の名を持つ機体は、姿を消していた。