「・・・・霞を頼む」
「あぁ・・・・任せておけ」
『TST-TYPE97X0:竜騎』を降りて意識を失った『社霞』を『御剣冥夜』に預けた『白銀武』は『Alvis』の研究施設を目指した。
「武!」
その後ろ姿に不安が過る『御剣冥夜』。
「・・・・・どうした?」
「帰って・・・・・来るのだぞ」
「・・・・・あぁ」
軽く右手を上げると、『白銀武』は1人『Alvis』の研究施設へ入っていった。
前にここにいた記憶を辿り目的の場所まで歩みを進めた『白銀武』。扉が開くとその人は腕を組み、司令室に映る仲間達を眺めていた。
「夕呼・・・・・先生」
「よくここまで来れたわね、白銀」
声をかけられた『香月夕呼』は普段通りの飄々とした面持ちでこちらに身体を向けた。
「ッツ!!」
視界に入った物を見て、『涼宮遥』が2人の間に割って入った。
「・・・・・涼宮、心配無いわ。白銀は撃たない」
「そうかもしれませんけど」
「話してもらえますよね?」
「何について?」
「・・・・・・」
「聞きたいこと山程あるんじゃない?」
「・・・・・・」
「涼宮。ありがと、外してくれる?」
「・・・・・白銀少尉がそれを降ろしたらそうします」
『白銀武』は持っている物をその場に置く。それを確認した『涼宮遥』は司令室を後にした。
「・・・・・私達が鑑純夏の意識に気が付いたのは2年前よ」
「!?本当にそれまで純夏の意識は無かったんですか?」
「それは真壁一騎に聞いたんでしょ?間違いないわよ。彼が私に相談しにきて調べたのはそれからだから。確証を得た私達はこの事を社と鑑そして真壁一騎の中での秘密としたわ」
(【因果導体】のことを伊隅大尉達は知らないってことか!?)
「なんで俺に教えてくれなかったんですか?」
「貴方達2人を【因果導体】から解放するには、【真壁一騎の存在の喪失】が絶対条件になっていた。だから真壁一騎を倒す力が必要となった。そしてその条件にもっとも近しい存在が・・・・・白銀あんただったからよ。あの頃のあんたは真壁一騎と関わるのを避けてたから丁度良かったわ」
「丁度良かったって・・・・・」
「ここへ来るまですら葛藤していたあんたがあの頃この事実を知って果たして目的を達成出来たのかしら?乳臭いガキに戻ってたあの頃のあんたに」
『白銀武』は言い返せなかった。『桜花作戦』の後人類の危機的状況が回避され徐々にではあるがBETAに反撃を始めた世界の中で『白銀武』に限らず『A-01部隊』の面々は【『G元素』の研究】というこれまでの激しい任務から解放された任務が続いていた。そして死から距離を置いた環境で確かに『白銀武』は【元の世界に帰る方法を探す】という目標があるにせよ、どこかその環境に居心地の良さを感じ自然と牙が薄れていた。・・・・・本人にその自覚があった。
「じゃあなんで俺だけじゃなくて冥夜達も辞めさせたんですか?」
「伊隅達と御剣達の違い・・・・・何かわかる?」
「えっ!?」
「あんたを追い出すにあたって、そこでも線引きをしたわ。この計画を成功させる為に」
(大尉と冥夜達との違い?)
「【真壁一騎に対する理解度と彼に対する想い】ってところね」
「どういう意味ですか?」
「まず、あの3人の共通点は何だと思う?」
「…………真壁一騎が【別の世界】の人間だってことを知ってる!?」
「そうよ。そして鑑によれば【この世界以外で『桜花作戦』が成功した世界】での伊隅達はそれぞれ『甲21号作戦』と『横浜基地防衛戦』で戦死しているわ」
「なっ!?」
(確か伊隅大尉達はそれぞれ真壁さんに助けられたと言っていた!?真壁さんが大尉達を救った事でそんな影響があったのか!?)
「…………因みにその世界での『桜花作戦』での生き残りはあんたと社だけだそうよ」
「ッッ!!」
(冥夜達も救ってくれたのか……………)
「それだけにね。【『00ユニット』の試作機】って認識の御剣達と【真壁一騎が別の世界の存在である】事を知ってる伊隅達では。世界を敵に回す覚悟が違うと考えた。だからあんたと一緒に御剣達を『Alvis』からやめさせたわ」
「世界を敵に回す覚悟…………」
「『 Mk.Alles(マークアレス)』って化物じみた機体を秘匿して国連から独立して何処にも属さない正体も目的も不明な組織にするのよ?流石に世界が黙って無いでしょ?案の定そうなったし」
「・・・・・・」
「もうわかったかしら?私がわざわざ『Alvis』を独立させた理由」
「・・・・・・俺達を【元の世界】に帰す為・・・・・・ですか?」
「・・・・・・そうよ」
「!?一騎さんはそれでいいかもしれませんけど!俺は・・・・・俺はこの世界で戦います!!BETAを一匹残らず排除するまで!!!」
「その必要は無いわ」
「先生!!」
「あんた達のお陰で私達は数十年生き延びる猶予が出来た。・・・・・・ここからは【私達】自身の手で明日を・・・・・紡いでいく必要があるわ」
「ですが!!」
「【私達】が決断し明日を定めなければ・・・・・どの道この世界は滅びるわ。あんた達みたいな存在に依存する世界なんて、私はゴメンだし。そんな世界なら私が………滅ぼすわ」
「夕呼先生・・・・・」
「鑑と約束したんでしょ?」
「!?」
「あんたはあんたのすべきことをしなさい。白銀」
「……………はい。ッッ!!」
『白銀武』の身体が発光を始める。
「…………時間のようね」
「時間って!まだ俺は皆に何も!!」
「安心しなさい。原因は消失したから【因果導体】が関わった記憶は消失するわ。あんたが消えても誰もあんたの事を覚えてないから」
「!?」
「けれど、この世界に残った事実はわからない。だからあんた達の成したことが無になることも無いわ」
「そんな…………そんなのって、都合良すぎですよ俺だけ」
「…………」
「この世界を掻き乱すだけ掻き乱して、なんの責任も取らずに消えるなんて」
「掻き乱した結果が世界の救済よ?充分じゃない?」
「ハッ?」
「少なくとも、あんた達がいなければこの世界はBETAに滅ぼされていたわ。それをあんた達が回避してくれた。それ以上に何を求めるのよ?」
「……………」
「人一人が一生で成せる事には限界がある。これ以上を求めるのは自惚れもいいところだわ。………あんたは次の場所で
あんたのすべきことをしなさい。いいわね?」
「夕呼先生!」
「…………ありがとう。あんたは達はこの世界の英雄よ」
「ッッ!!………………」
小声で呟いた感謝の言葉が彼に届いたかは、わからない。しかし最大限の感謝の意を述べた彼女は既に次を見据えていた
「さて…………次はなにしようかしらね〜」
2007年12月25日
『G元素』独立研究機関『Alvis』の日本帝国領『佐渡島』を不当占領から『佐渡島』を奪回する日本帝国呼称『甲27号作戦』…………別名『蒼穹作戦』は『Alvis』の一時的な抵抗はあったものの最終的に武装解除及び降伏という形で終了した。
世界は1つの大きな脅威が消え、再びBETAと対峙することに本腰を入れることとなった。