「…………目覚めるかな」
共に旅路に出ていた相棒の目覚めを感じ取った『春日井甲洋』は、読んでいた書物を閉じると目的の場所へ向かった。
一騎…………一騎…………一騎。
(誰かが俺を呼んでる…………誰だ?)
「……………おはよう一騎。」
ゆっくりと瞳を開ける『真壁一騎』。目の前には『春日井甲洋』が立っていた。周囲を見渡すと【あちらの世界】に行く前に眠りについた山奥だとわかった。
「どれくらい寝てた…………?」
「1ヶ月かな…………規模にしては珍しく時間がかかったね?」
「……………そうだな」
「良い夢でも見れたのか?」
「えっ?」
「随分清々しい顔してるぞ今の一騎。」
「そうか?夢か…………確かに夢を見てたんだと思う。とても小さくて、とても大きくて、とても大切な…………おとぎ話……………かな」
「へぇ〜……………。あの子が喜びそうな話しだね?」
「そうだな」
カラーン
『真壁一騎』が一歩踏み出すとなにかを蹴飛ばした感覚がした。その蹴飛ばしたモノは『春日井甲洋』の足元で止まった。
「なんだこれ?…………木彫りの兎?」
「あっ………………」
「とても丁寧にそれに大切に作られてる。それに変わった兎だな…………衣服を着てる。これは……………サンタクロース?」
「それは…………」
「一騎?どうした」
「俺のだ」
「えっ?」
明らかに彼が手にしそうなモノとは程遠い木彫りの兎人形。だがその人形を強い眼差しで見る『真壁一騎』に『春日井甲洋』は驚いた。
「ある人からもらった。とても大切なモノだ」
「そうか」
(あれは夢じゃなかった…………あの世界は実在して…………あの人達は確かにそこにいたんだ)
「これからどうする一騎?」
「……………」
『真壁一騎』はサンタクロースの衣服を着た兎の木彫り人形を大事に握りしめる。
「…………帰ろうか、俺達の島に」
「えっ!?」
「なんか島の皆に会いたくなってきた」
「甲洋…………」
「その夢の話、彼にしてあげたら?」
「……………」
「どうする一騎?」
「……………帰ろう。俺達の島へ!」
「うん」
自分達の器である『マークアレス』、『アバドン』を目覚めさせる。
(……………力を貸してくれて、ありがとうな)
瞳を閉じて静かに語りかける『真壁一騎』
ありがとう
「!?」
自身の頭を過った感謝の言葉に思わず笑みを浮かべる。
「役に立てたのなら、良かったよ」
「どうした一騎?」
「なんでもない」
「そうか、…………帰ろう俺達の島へ」
「あぁ!」
澄み渡る蒼穹に飛び立つ『マークアレス』と『アバドン』。針路を自分達の還るべき居場所に定め翼を広げ羽ばたいた。