サボりすぎた落第騎士の英雄譚~リメイク~   作:舞耶

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落第騎士と天才騎士Ⅰ

あの後学生寮に戻ったボクたちは、各々の部屋に向かっていた。入学式はまだ数日後なので在学生でもあるボクたちは正直暇を持て余しているところなのだ。さらには在学生もこの春休み期間はほとんど実家に帰っており競い合う相手もいない今の学園じゃ正直退屈すぎる。

ボクの()()()()()()・・・・・ボクよりも上級生の彼女も今は寮にはいない。この学園でイッキ以外に剣を交えて楽しいと思えるのはあの人だけだ。

 

「ただいまー・・・・・って言っても誰もいないんだけどねぇ。」

 

だれも帰ってきていないことを確認して、まずはシャワーでも浴びようかと浴槽の扉を開けようとしたときだった。

 

『いやぁあああああ!ケダモノぉおおおおおお!!!』

 

突如寮内に響き渡る悲鳴。明らかに女性の声それもかなり若い。ボクと同年代か少し年下だろう。しかもこの声の方向からして発生源は・・・・・。

 

「イッキ?何かあったのかな・・・・・。」

 

とりあえず様子を見に行くしかないかと浴槽に向けていた足を玄関に向けて部屋を出る。うちの学園は全寮制であり、全ての学生がA~F棟まである寮に住んでいる。ボク達が住んでいるのはA棟だ。各棟はコの字のような形をしており、その最上階の両端。そこにボクの部屋とイッキの部屋が在籍している。

ボクは部屋を出てすぐ目の前にあるイッキの部屋を見るとそこには守衛さんと何やら揉めているイッキの姿が見えた。

 

「いや、何やってんのさ・・・・・ってあれ?」

 

イッキと守衛さん以外にもう一人、毛布に包まっている女の子が見えた。

――――――視界に入れた瞬間、ボクは即座に寮内の廊下をダッシュし、イッキの部屋へと向かう。こちらに向かってくるボクに向かってギョッとした視線を向けるイッキと守衛さんと女の子。

 

先ほどまでの走り込みや、斬り合いの疲れなんて気にしない。最小最速の動きでものの数秒で部屋に到着する。

守衛さんが何やらこちらに向かって何か言ってきているようだがそんなことは今はどうでもいい。いやむしろ邪魔だ。

今、ボクの意識を支配しているのは目の前にいる彼女だ。

 

炎を体現したかのようなウェーブの掛かった紅蓮の髪に、ボクと同じくして日本人離れした美しい容貌。そこに煌めくルビーの瞳。黒のレースが見事に仕立てられている下着と艶めく肢体を頼りない布で覆い隠す。

まさに絶世の美女と称賛と拍手を浴びせたい女の子。

幼いころに顔を合わせただけで、今日も今朝がたテレビのニュースでその姿を見た。

 

「―――――――――あぁ、うん本当に綺麗になった。」

 

「っちょっ!急になんなの―――――ってもしかして」

 

思い出したかのように彼女の表情が一瞬で変わる。こちらに気づいたのだろう。ボクを見る視線が最初の怪訝な視線から明らかに嫌悪の視線に・・・・・・うん?

 

「あ、あの・・・・・ステラちゃん?えっと、ひ、久しぶり~?元気してった?」

 

何故だろうか、あんなにも可愛くてボクの後ろをトテトテと歩いてきて「兄さま!兄さま!」と天真爛漫な笑顔と殺気を向けてきてくれた彼女がどうしてここまで冷酷無比でまるでゴミを見るような眼でこちらを見ているのだろうか?・・・・・あれ?当時から殺気を向けられてたんじゃもしかしてボクあのころからこんな感じだった!?

 

「―――――――――――――――――――――」

 

「・・・・・あの、えっと、ステラ・ヴァーミリオンさん?」

 

ボクが震えながらその場にしゃがみ彼女を見上げてしまう。いやこの場合は見上げてしまったの方が正しいのだろうか?ボクの身長は男性の中でもそれなりに大きい。過去に測ったときは180は優に超えていた。

そんなボクがこのころの年齢の平均身長よりも若干大きいだけの彼女の近くでしゃがみ、上を向いたということ。

 

ふにゅん

 

何か暖かく、しかし湿っている布の感触がまず最初に伝わりそこからさらに別種の()()の柔らかさがボクの頭に乗っかってくる。ふむこの感触は中々に心地いいものだ。この謎の柔らかさに手を伸ばして、そのまま鷲掴みにしてみる。

 

「―――――――――っ!なんだ、何なんだこの感触はっ!この世のものとは思えない至福の感覚!

気持ちがいいとか、そんなものじゃない!まるで生命の根源に触れているような、極上の感触ッ!?」

 

「ひぅっ!・・・・・こ、この―――――――――」

 

「・・・・・あっ」

 

そこでボクは、先ほどまで掴んでいたモノが何だったのかを知覚した。そして自身が起こした愚かな行為に戦々恐々としてしまう。これはつまり、今まで触っていたのはステラちゃんの胸部・・・・・つまりOPPAIということになる。

確かに、もにゅっとしたものの一部にどこか突起物のようなものもボクの触覚は感じていた。

ステラちゃんの胸部ということであれば、この突起物の正体も容易に想像できてしまう。そしてそこから派生するこれからのボクの未来がこちらも容易に想像できてしまった。

 

「―――――――――っ!」

 

「ちょっと待ったぁ!ステラちゃん!話を聞いてくれぇ!」

 

 

「―――――――――――――――――――――問答無動よっ!こんのっ変態がぁ!」

 

顔を真っ赤にして殴りかかろうとするステラちゃんに制止を掛けようとするが、そんなことはお構いなしにボクの顔面にステラちゃんの右ストレートが振りかぶられた。

 

 

 


 

 

 

「ふむ片や下着姿を見てしまった責任を自分も脱ぐことで相殺しようとしたやつと、片や出合い頭に女の胸を揉んでそのまま殴り飛ばされて意識を失ったやつ。・・・・・貴様ら、新学期早々面倒ごとをやらかしてくれたな?」

 

「いや、オルの件はともかくとして僕のは紳士的でいいアイディアだと思ったんですよ・・・あの時は。今では何でこんなことをしたんだろうと思ってますけど・・・・・・。」

 

あの後彼ら二人は守衛さんに現行犯として連行され、学園長室に連れてこられていた。

その二人の目の前には革製の椅子に踏ん反り返り、机の吸い殻入れには大量の吸い終わった煙草が剣山のように積もり積もっており、呆れたような表情をこちらに向けてくる黒髪ロング巨乳の美人。破軍学園理事長でもある新宮寺黒乃だ。

 

「まぁ黒鉄の言い分はわかった。それで?お前は何か申し開きはあるか?オルフェン・イグニール?

だが何があったとしてもお前がやったことは立派な性犯罪だ。今までの件も含めて纏めて罪に問われて来い。」

 

「アレっ!?僕だけ棘が強すぎませんかっ!?もう少し優しく言ってよぉ黒乃さぁん!」

 

「黙れ、この女の敵。独房にぶち込まれてないだけありがたいと思え。」

 

「独房にぶち込まれるのは確定ですかっ!?」

 

一輝の身長よりも少し高いその身長の頭頂部から流れている少し長めの白髪。さらに目元までかかっている髪の間からは赤眼が覗いている好青年。オルフェン・イグニールはまるで反省の色が見えない飄々とした態度で黒乃の前で呆けている。

 

「貴様・・・積み重なった行為の結果で留年したこと忘れたのか?前教頭の顔面ぶん殴った程度で留年させろと言うものだから過去の不祥事を漁っていたら今度は退学にさせなければならない事態に陥ってこちらがどれだけ苦労したことか・・・・・・。」

 

「いやぁ、その件は本当に助かりましたよぉ~。黒乃さんがどうにかしてくれなかったら、今頃ボク此処にいられなかったんで~、ほんと感謝感謝ですよ~」

 

手で自身の頭を押さえながら、全く申し訳なさそうに黒乃に謝るオルフェン。そしてそれに呆れ顔を見せる黒乃。だがそれを横目に見ていた一輝は、やはり留年の件は自分に黙って色々根回ししてたらしい親友をじっとばつが悪そうに視線を向けている。

 

それもそうだ。彼からしたら自分の留年に付き合わせてしまったのだから、その罪の重さは計り知れない。

 

「ほらやっぱり!色々してたんじゃないかオル!いや、何かやってるとは思ってたけど・・・。

そういうの本当に良かったんだよ?僕のことは別に気にしなくても・・・・・。」

 

「だぁかぁらぁ!別にイッキのためじゃないんだって!ボクがボクのためにやったことなんだから気にしない!気にしない!・・・・・それより?どうだったのイッキ?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら一輝の顔を下から覗き込むオルフェン。頭に?を浮かべながらそれに心当たりのない表情をする一輝。察したように頭を抱える新宮寺の脳内は先ほどから今までの子芝居を起こした元凶であるオルフェンに対しての呆れがピークに達し始めてきていた。

 

「ステラちゃんの下着姿・・・・・見たんでしょ?どうだったのさ~!」

 

「ぶっっっ!!!!!ちょっっっっっっっとオル!?いっ、いっきなり何を言い出すのさっ!?」

 

「ふむふむ、中々に初心な反応するねぇ、黒鉄青年はっ!」

 

「初心も何もないでしょ!?いきなりそんなこと言われたらだらだって驚くよフツー!」

 

ワイワイガヤガヤと、オルフェンと一輝が取っ組み合いを始めるがそんな様子を黙ってみているほど彼女は優しくなかったらしい。新宮寺が一度咳払いをすると、ピタリと動きを止めて壊れたロボットのように顔を向ける。

 

「貴様ら・・・特にイグニール、論点をずらすな。そもそも今回の被害者はお前たちじゃない。

考えてもみろ?着替えていたらいきなり男が侵入し目の前で上半身半裸に、その後の取り調べ中に別の男が現れ感極まった表情で自身の胸を揉みしだいた。同じ女性の身としては同情を禁じ得ないほどの恐怖体験だぞ?」

 

「「・・・・・・ハイ、スミマセンデシタ。」」

 

「謝る相手が違うぞ?大馬鹿ども?」

 

指を鳴らし、「入れ」と一言口にした新宮寺。

その言葉と共に理事長室の扉が開き、件の彼女が現れた。

 

「・・・・・失礼します。」

 

シックな色合いに纏められている破軍学園の制服は、まるで彼女のためだけに仕立てられているかのように思えてくる。そして何よりも目立たせているのはその胸部だ。

これでホントに高校生か?最近の女の子は成長がすごいんだなぁとオルフェンは改めてその姿を見て心の中でガッツポーズを決めた。制服の上からでもわかるその膨らみにそっと添えられているリボンは彼女の魅力をさらに醸し出している。

 

件の彼女――――ステラ・ヴァーミリオンは目元を赤く染めていた。それが意味するものが分からない程オルフェンも一輝も鈍感ではない。

 

「ごめん!ステラさん!信じられないかもしれないんだけど、わざとじゃないんだ!」

 

「あー、いや、えっと・・・・・・。」

 

「オル!こういう時に口篭もってないで!ほら!早く謝るの!」

 

「おわっ!もう、強引だなぁイッキは。そんなんだと女の子に好かれないよ?」

 

おちゃらけているオルフェンの頭を押さえて下げさせる一輝。こうしてみていると同級生というよりも仲のいい兄弟のようにも見える二人だが、今回に関してはその行いを見せた()が悪かった。

 

「・・・・・ちょっといいかしら?」

 

「ヒェ―――――――――」

 

メラメラと燃え上がるようなオーラを放つステラに段々と怯え始めるオルフェン。この男、女性を怒らせることにおいて他の追随を許さないのだ。彼女のその視線はただ一点、自身の胸を無造作に揉んだオルフェンに対しての恨めしい目を向けている。

そんな視線から避けるように一輝の後ろに隠れて様子を見るオルフェン。もうここまでくると惨めで見てられないものある。

 

「・・・・・まぁ、そこの日本男児はまず置いておくわ。そこまで誠心誠意謝ってくれるのならこちらとしてもそれを受け入れないと国の名前に傷がつきますもの。」

 

だけど、と一言おいて再度オルフェンを睨みつけるステラ。

 

「そこの男だけは、絶対に首を刎ねさせてもらうけどいいかしら・・・・・?」

 

「「あ、どうぞどうぞ」」

 

「ちょぉ!?黒乃さんもイッキも即答でボクを売ったぁ!?ってあぶなっ!」

 

ブンッ!といつの間にかその手に握られていた大剣が顔面スレスレに煽られてそれを躱すオルフェン。

彼女の手に握られているソレは、炎を纏い、その熱を周囲にばら撒いている。固有霊装はその伐刀者の魂の塊だ。それがここまで荒立っているというのならそれは彼女自身がオルフェンに対して激情駆り立てられてる証拠なのだろう。

 

それほどまでに、今のステラの魔力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――っ!黒乃さん!エンノイア!」

 

そう叫ぶオルフェンとほぼ同時。流石にここまでの魔力を理事長室という狭い空間で放たれたのに危機感を覚えた黒乃が自身の固有霊装でもある「エンノイア」を展開。「クイックドロウ」による速射でステラの動きを止めたのだ。

そして、一瞬の膠着の瞬間が過ぎ去り部屋に完備されていたスプリンクラーが作動し、人口の雨が部屋に降り注ぎ始めた。

 

「ふぅ・・・・・助かったよ黒乃さん。」

 

「たわけ、あくまで一時的に体を止めただけだ。意識はしっかりとそこにある。ひとまずは謝っておけ。」

 

確かによく見ると、体を動かそうとピクピクと体が動いている。彼女自身の意志が新宮寺の能力に抵抗しているのだろう。

 

新宮寺黒乃。「時間」という因果にも干渉する能力だ。ステラの()()だけを時間停止させ、意識は停止させない。彼女の「Aランク(最高峰)」の魔力あってこそ使用することが出来る文字通りの絶技だ。

それに抵抗して身体をかすかに動かせているステラも、その最高峰に位置するからこそなのだろう。

 

「意識があるのならちょうどいいか。ボクの声は聞こえてるかな?ステラちゃん。」

 

「・・・・・・っ!」

 

オルフェンがステラの頬に手を当てて耳元に口を当てる。ステラが近距離に現れたオルフェンの顔に一瞬動揺してしまい、行動を起こす隙を与えてしまった。

オルフェンはそこで何か呟くと「じゃあ、あとよろしくね。二人とも」とだけ口にして理事長室を出ていった。

 

 

その瞬間、黒乃が時間停止を解いた。

 

再度燃え上がる灼熱の魔力。全然収まってないじゃないか!と心の中で先ほど出ていった親友に文句を呟き、自身も固有霊装を展開しようと魔力を込め始めた。

だが、そんなことは杞憂だったとばかりにステラの魔力はその荒々しさを一転させ、収まっていく。

 

「―――――――――――――――。」

 

「あ、あれ?す、ステラ、さん?」

 

「・・・・・あぁ、ごめんなさい。確かイッキ、って言ったかしら?貴方よく()()()の親友で居られるわね。昔の彼もあんな感じだったから貴方の苦労はよく理解できるわ。」

 

自身の身体を止めていた新宮寺に対して若干恨めしい視線を向けてたが、あの時は止めてもらわなければこの部屋を燃やし尽くしてしまうところだった。冷静になるにはちょうどいいタイミングだったのだろう。

ふーっと一度自身の灰の中にある空気を抜き、新鮮な空気に入れ替える。

 

「理事長センセ。第三演習場ってどこ?」

 

「第三演習場だと?そんなことを聞いてどうする?」

 

「オルさん・・・・・いやあの痴漢魔が最後に出ていくときに言ってたのよ。」

 

 

『久しぶりに剣でも交えようか、文句はそこで受け付けてあげるから

第三演習場で待ってるよ。ステラちゃん』

 

 

「――――――――ってな感じでね。だから聞いたのよ。第三演習場は何処なの?って」

 

「ふむ、そういう事か。全くあの男は・・・・・・。」

 

頭を抱えるが、オルフェンもそれが最善だと思い、そして現在の彼女を落ち着けるにはこの場に自分がいるのは不都合だからこそ退出し、この場を自分と一輝に任せたのだろう。教職としても彼女をここに置いておくことは出来ないことを見越しての行動なのだから余計にたちが悪い。

 

「案内してもいいが、それよりまずは君の、

・・・・・正確には()()()の部屋に関しての話をしたいんだがいいかな?」

 

「「・・・・・・?」」

 

そこでようやく一輝とステラは自分たちが相部屋になるということ。だからこそ今回の事件が起こってしまったということ。そういえばステラも自身に用意された部屋がどこか生活感の漂うものであり、男性の気配が強かったのを今更になって思い出した。

なるほど、だからこそこのイッキと呼ばれた男が閉まっていたはずの扉を開けて着替えをしている自身の目の前に現れたのだろう。ひとまずそれには納得がいった。

 

だが、今のステラにはそんなことは()()()()()()()()()()()()

 

「話は分かったわ。そういうことならこれ以上責めることもしないし、お互い水に流しましょう。

――――――――それで、第三演習場とやらは、どこにあるのかしら?理事長センセ?」

 

この時の新宮寺の心境はというと、正直気が気ではなかった。

 

 

―――――――あの男、今度こそ女に刺されて死ぬんじゃないか?と

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