サボりすぎた落第騎士の英雄譚~リメイク~   作:舞耶

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古巣からの来訪者Ⅱ

・・・・・悲鳴が上がった我が一年一組の教室は騒然としていた。まぁ担任がいきなりシメの挨拶中に血吐き出して倒れたんだからそりゃそうなるよね・・・・・。教室を劈く悲鳴、ドタッと倒れる音。騒然とする教室。まさにパニック映画のお手本みたいな展開だ。

 

「ちょ、ちょっと大丈夫なのユリちゃんっ!?血ぃ噴き出して倒れたんだけど!?」

 

「あーイヤ大丈夫大丈夫。ユリちゃん一日に一リットルは吐血する体質だからね。あれぐらいはいつもの事なんだよ。イッキお願いできるかな?ボクはみんなを落ち着けておくから。」

 

「わかった。こっちは任せて。」

 

イッキがユリちゃんの方に向かったのを確認してボクも席から教壇のほうに降りていく。視線がボクの方に向き始めて別の注目が集まってくる。自分で言うのもなんだが目立つ容姿はしてると思う。少し長めの白髪に、男性からしても高身長に当たる容姿。

正直、注目をこちらに向けることぐらい結構簡単なことなんだよね。

 

「あーみんな、落ち着いて落ち着いて。ユリちゃんって実はいつもはこんな感じの人でさっきは無理して明るくしてただけだから。本当はずっと体調悪い人なんだよね。

今、ボクの親友が保健室に連れてってるから、みんなは落ち着いてその場で待機してて、ね?」

 

手を合わせて、「お願いっ?」と頼んでみるとみんなも徐々に落ち着きを取り戻していった。新入生とはいえ学生騎士。それなりに肝も据わってるようでなによりだ。

とりあえずイッキが来るまでボクも席に戻って寝てようかなぁっと・・・・・。

 

「・・・・・あの、オルフェンさんですよね?」

 

そんな時、男の子にしては中世的な声に話しかけられた。さっきユリちゃんに質問してた生徒なのだろうことはわかったんだけど、妙に聞き覚えがあるんだよなぁ・・・この声。

眠る体制に入っていた身体を無理やり起こして声の主を見つめる。

童顔で、一瞬本当に女の子か?と疑問に思ってしまうほど幼い顔立ちで、その雰囲気は犬っぽく爽やかな好青年って感じだなぁ・・・・・・じゃなくてっっっ!?

 

「宗次郎!?宗次郎じゃないかっ!?うっそ、なんで破軍に居るのっ!?」

 

「あははっ、お変わりがないようで何よりです。オルフェン先輩。」

 

そうして目の前で話しかけてきた青年・・・・・瀬田宗次郎にボクは声を上げる。彼はボクが連盟の保護下に入る前に所属していた場所の後輩とも言える子だ。そして日本で彼の名前を知らない騎士はいないと言えるほど有名な騎士の一人でもある。

 

「お、オルさん・・・・いま「宗次郎」って言った!?それってあの「剣聖舞刀会」を歴代最年少で優勝した今の「剣聖」の名前よねっ!?まさかこんなところにそんな有名人がいたなんて・・・・・っ。」

 

「そうそう。その「剣聖」。えっとステラちゃんが聞いたことある方だと「ソウジロウ=セタ」の方が有名かな?」

 

剣聖舞刀会。それは十年に一度に開催される伐刀者の世界大会の一つで、中国で行われている「闘神リーグ」が殺伐とした裏の世界の代表的な世界大会だとすれば、こちらは表の世界大会。形式としては闘神リーグと同じくバトルロワイヤル方式で北欧の森林で三日三晩戦い続けるというものになっている。

そしてその中には当然、KOKのA級リーグで上位入賞すら為している魔導騎士もいたその大会で世界を轟かせる前代未聞のニュースが響いた。

 

齢十になったばかりの日本人少年が「剣聖舞刀会」に出場し、優勝していった。

 

当時十歳の少年。そしてそのルックスも相まって、「ソウジロウ=セタ」の名前は全世界で(主に彼のファンクラブ会員である女性伐刀者(ブレイザー)の影響で)有名になった。

 

「いやぁ大会の時は相性が良かったんですよ。僕の能力は基本受け身の能力でヴァーミリオンさんやオルフェン先輩みたいに広範囲の薙ぎ払いなんてされたらたまったもんじゃないですからね。」

 

「あ、その口ぶりだともしかして・・・・・例の動画、見てくれた感じ?」

 

「えぇ、やっぱりあの動画はオルフェン先輩が投稿した動画だったんですね。」

 

「動画?・・・・・オルさんまた何かしたの?」

 

不思議そうな顔をしているステラちゃんに懐に入れていた学生手帳の画面を見せる。その画面には先週のボクとステラちゃんの模擬試合の映像だ。映像の中ではちょうど彼女の「天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)」とボクの「月牙天衝」がぶつかり合ってる瞬間だった。

 

「ちょっ!?オルさんっ!?何してんの!っていうかどうやってこんなの録ってたのっ!?」

 

「ん-?いやね。実はステラちゃんが来る前にちょっとだけ時間あったじゃん?その時に黒乃さんにちょぉっと会場の設定端末を拝借してボクの端末に録画データを送る様にシステムに細工を・・・・・。」

 

「それふっつーにハッキングじゃないっ?!」

 

「やだなぁ。褒めても動画の再生数で貰えたお金の一割しか出ないよ?」

 

ちゃっかり金稼ぎしてるし・・・・・とゴミを見るような眼で見てくるステラちゃんと苦笑し「あぁ、やっぱりそういうところも変わってないですね。先輩は・・・。」と呟くソウジを横目に動画に着いたコメントなどに目を通していく。

「ヴァーミリオンの皇女サマは知ってるけど対戦相手だれ?知らんのだけど。」「破軍では結構有名なロクデナシだよ。」「留年してるってマ?」

 

――――――――――なんで情報漏洩してるんですかねぇ。最近の若い子のリテラシーの無さにボクは呆れてしまいそうだよ・・・・・・。

 

ま、お小遣いとか手に入ってるから良いんだけどネ!

 

そうしてそんなことをしている内にイッキが教室に戻って来た。

 

「おっ、おかえりーイッキ。ユリちゃんどうだった?」

 

「うん、今日はもう帰っていいってさ。みんなにも伝えてくるよ。」

 

イッキの言葉と共に教室に居た生徒たちも一斉に帰り支度や新しくできた友人たちと話を華を咲かせている者もいる。ボク達も別に教室にこれ以上いる必要もないためそのまま教室を出ようとした時にイッキの後ろから一人の女生徒が近づいてきた。

・・・・・確かこの子、ボクの模擬試合も見に来てた子だ。新入生だったんだ。

 

「くろがねせーんぱいっ!」

 

「うわっ!」

 

「んなっ!ちょっと何やってんのよっ!?」

 

おぉ~大胆だなぁ。いきなりそのまま後ろから抱き着いた。それに・・・・・

 

「ふむ・・・・・・。推定E、いやGか?」

 

「オルフェン先輩、視線がイヤらしいですよ?」

 

おっと流石付き合いの長いソウジ。バレてしまった。いつもだったらイッキからも「そんな風に女の子を見ちゃだめだよ?」と叱責が来るところではあるんだけど、ステラちゃんと謎の巨乳新入生との板挟みでこっちに意識を向けられてない。

どうやら巨乳新入生の名前は「日下部 加々美」というらしくこの破軍学園で新聞部を作りたいらしくその第一号としてイッキとステラちゃんを取り上げたいらしい。

 

「あれ?そういうのならボクは?ほ、ほら結構動画もバズってるし・・・・・。」

 

「あっ!あなたがイグニール先輩ですね!いやぁ確かにAランクで落第生っていうのも特ダネなのはそうなんですけど、私もまだ他の女性伐刀者を敵に回したくないものですから・・・・・・。」

 

「えっ?もしかしてボクって厄ネタ扱いなの?」

 

なん・・・だと・・・?今明かされる衝撃の新事実。なるほどだから伐刀者の女の子をナンパしようとしても「クズ死ね・・・・・」とか「ゴミ死ね・・・・・・」とか言われるのか。なるほどようやく理解できたぞぅ(納得)

 

「ふっふっふ、で、でもほら!ボクって自分で言うのもなんだけどルックスは良くない?」

 

「確かにルックス()いいですよね。でもイグニール先輩はそれ以外がゴミなのでダメです。」

 

「即答っ!?」

 

魔導騎士という存在は世間においてそこそこ知名度が高い。現に学生騎士の頂点を決める大会でもある「七星剣武祭」は毎年全国中継されている。それにマスコミも実力のある伐刀者に取材を申し込むことも多い。現にステラちゃんはすでに何度か学園を通じて取材を受けている。それらの評判もあり、一部の有名な魔導騎士はそれなりにファンも多い傾向にあるのだが・・・・・・。

 

「どちらかと言えばAランクのステラさんを負かした二人の騎士のうち、一人はFランクの魔導騎士!っていうのがとても記事的には面白くなるんですよ!ネームバリューとしても申し分ないんですっ!それに、私ステラちゃんと先輩の試合見てから先輩のだぁぁぁぁぁいファンなんです!」

 

・・・・・・うん?今この子なんて言ったの?イッキのファン?なんで?

 

「いや待て待て待てっ!?なんでイッキ?!この学園に入って今日で二年目にもなるけど有名になるようなことをした覚えもないFラン魔導騎士だよっ!?ファンになってくれる子ゼロの万年剣術バカだよっ!?」

 

「いやその通りだけど中々に酷い言い草だねオル・・・・・。

でも本当になんで僕のファンなの?オルやステラみたいに動画が出回ってるわけじゃあるまいし・・・・・。」

 

「いやぁ、実はそのまさかなんですよね。これ見てみてください!」

 

向けられたのは一つのタブレット。その画面にはボクが投稿したサイトと同じ場所に投稿されたイッキとステラちゃんの試合の様子だった。話には聞いていたけど結構接戦してるなぁ。イッキはボクがステラちゃんにやったような魔力によるゴリ押し、なんてことは出来ない。

それはイッキ自身が一番よくわかってる。それに彼の異能は魔導騎士なら誰でもできる「身体能力強化」だ。正攻法でステラちゃんを倒すことはほぼ不可能といっても過言じゃない。

 

―――――――――()()()()()、イッキはボクの想定なんて超えて真正面から打ち破った。

 

イッキの伐刀絶技(ノウブルアーツ)「一刀修羅」は自身のリミッターを破壊して、本来手の届くことのない力までに手を掛けて自身の身体能力を数十倍にまで引き上げる彼唯一の力。

天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)」の使用をステラちゃんに踏み切らせて、それすらも乗り越えてイッキがその刃を届かせた。

 

まぁ、今のステラちゃんが敵う相手ではないし、何をどう頑張ってもイッキが勝つと思ってたからこの結果に関しては何も思うことはないんだけど。

 

「まさか、僕との動画まで出回ってたんだ・・・・・知らなかった。」

 

「んー、ボクのところじゃないし、これ特に手も加わってない動画だから撮ったものをそのまま載せたんだろうねぇ。破軍の誰かがネットに流したんだろうね。」

 

そんなことを話していると自然とイッキの方に教室に屯っていた女生徒達も集まってきている。ボクら二人が年上だってこともあって話ずらい空気だったのが加々美ちゃんのおかげ、なのかな?

イッキがこうして女の子に囲まれているのは正直モヤぁっとするところはあるんだけど、去年一年の報われない時間を過ごした親友に対して強くいう気が起きない。

 

イッキには、これからの人生報われてほしいからね。

 

・・・・・・露払いはボクがやっとこうかな?

 

視線にはその人物が感じている、想っていることが込められやすい。正負の感情、喜怒哀楽。会話をしている人物のその瞳を目にしたらある程度「今この人はこう思っているんだな」とわかるだろう?そして戦場や戦いの雰囲気、一部の武芸を収めている人であれば自身に向けられた殺気や気配を感じることも朝飯前だ。

 

ボクらの対角線上の最前席に居座っている五人の男子生徒。これだけ騒がしくしてれば静かに過ごしたい生徒は目障りに映るだろうが、どうやら彼らはそういう人たちとは少し違うようだ。その視線には明確な害意を放っているのを感じる。

 

これはボクってよりもイッキに向けているのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(まぁ、Aランク(最上位)のボクよりもFランク(最低位)のイッキを狙ったところをみると尚更小賢しいなぁと思ってしまうんだけど、そもそもこの場合はこっちに害意を向けてきたこと自体が間違いなんだけど、ね?)」

 

イッキも気づいているようだけど、彼らが手を出してこない限り何もしないのだろう。彼のその人に向ける優しさは本当に素晴らしい美徳だと思う。そんなところに無意識ながらも今話している彼女たちも、そしてステラちゃんも好意的に想えるのだろう。

 

だから、ボクはそんなイッキに対して降り注ぐ害意を振り払う矛でいい。

 

「・・・・・・塞」

 

「「「「「うわっ!ちょっいだだだだだ!?」」」」」

 

矛の形に指を揃えて皆には見えないように彼らに向ける。すると一斉に腕を腰の後ろで縛られるような体制になって倒れ伏した。周りの生徒たちはその姿に驚いてる様子だ。

 

「えっ、なになに?真鍋たち何してんのあれ?」

 

「さぁ?いきなりパントマイムにでも目覚めたんじゃないかな?あっ!そういえばイッキはこの後予定があったんじゃないかな!?彼らの事はボクが聞いておくから、ステラちゃんと一緒に珠雫ちゃんを探しておいで。」

 

「えっ・・・・・まぁ、わかったよ。ステラ行こうか。」

 

「ちょ、ちょっと待ってイッキ!オルさん、また後でね!」

 

はいはーいと手を振りながら、二人と特ダネの匂いを嗅ぎつけた加々美ちゃんもそれを追って出ていく。どうやらイッキには察せられてしまったようだけど視線にはやりすぎないようにね?という意思が込められていた。そうしてイッキたちが教室を出ていくのを見届けると未だに大道芸のようなものを行っている彼らの元に降りていく。ここ破軍学園の教室は大学のような階段状の大教室であり、ボクらが先ほどまで話していたのはその最上段の空間だ。

 

靴音を鳴らしながら階段を降りる。

先ほどの注目を浴びる方法と一緒だ。それに今回は存在感をこうして放ってればいいだけで、この空気を感じた生徒たちは蜘蛛の子が散っていくように教室から出ていく。

その異変を感じた五人の男子生徒もこちらに近づいてくる()()()にようやく気付いたようだ。

 

「・・・・・えーっと、そこの大道芸をしてる生徒諸君、聞こえるかな?」

 

「て、てめぇ、アイツと同じダブりの――――――ひぃ!?」

 

にっこりと笑みを浮かべるボクになぜか知らないけど怯える、確か加々美ちゃんに「真鍋」と言われた生徒がこの子なんだろうが、全くこんないい笑顔を自分に向けてくれる相手に対してそんなに怯えることはないだろうに。

 

「君たち、イッキの方を見てたらしいけど、ボクの親友に何か用があったかな?

今彼は立て込ん出ててねボクでよければその話、聞くけどどうかな?」

 

にっこりと笑みを浮かべ再度そう問いただす。別に何も他意はない。そんな風に彼らには見せながらボクはこうして笑みを浮かべ続ける。

 

 

「ごめんねぇ、うるさくしちゃって。今度からは気を付けるようにボクから言っておくからさ。今回は見逃してくれないかな?これから一年間一緒のクラスメイトなんだしさ。」

 

 

ボクの言葉に五人はコクコクとすごい勢いで頷いてくれた。うん物分かりのいい子は好きだよ。

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