新天地へ
転生者というのは親父によると別世界から生まれ変わってやって来た人間のことらしい。その世界ではこの世界の未来を知ることが出来るんだとか。その知識は膨大で勢力とか能力とかいろいろ分かる。不思議な話だ。
親父は“
それで浦原喜助というすっごい科学者に未来の知識をダシに協力してもらって何か色々やっていたんだと。
それで得た技術で
それ以外にも色々(親父が·······というよりは殆ど浦原さん作らしいが)作っていて便利なのを一つ挙げると汎用霊子利用装置だ。これはちょっと霊子を集めることが出来て足場とか作れる。理屈はよく知らないけど。
そういうのを上手く使うための試練を親父は用意していた。試練総数256個、めっちゃ多い。しかしこなさなければならない。全部終わらせないと僕が外に出れないからだ。親父が開発途中で死んじゃったからそれを作れなかったし未完成の試練もあるんだとか。
6年でその試練も残り一つ。
これまであった試練の内容は霊子の足場を使ったタイムアタックとか霊子で作った盾で一定時間攻撃を受けきれ等様々。
僕自身の霊力や霊子利用能力はかなり低く、汎用霊子利用装置を使わなければならない。
そして他に試練に必要なのは親父が遺した擬似斬魄刀。製法はまるで理解出来なかったが斬魄刀に似たものらしい。
1本1本の能力の幅は狭く威力も低い。しかし無数にある。どうやら僕以外には能力を利用することは出来ない専用のものらしい。
始解ではほとんど能力とは言えないぐらいの出力しかだせなかったり(風を操る能力の場合埃すらまともに動かせない)、卍解は斬魄刀の屈伏なしに利用でき、霊圧の上昇の倍率も低い。
これは本当に斬魄刀か? と思ってしまうほど本物からかけ離れている。本当にぽいだけのようだ。
あと最も重要、親父を殺した『
『滅却師』は死後人間の魂魄が悪霊化した『虚』に対する耐性が無く、『虚』の因子を取り込むと基本死ぬため『虚』殺しの技を磨いてきたが彼らの殺し方は虚の魂魄を種族名通り滅却してしまう。
この世界は『虚』であれ魂魄を循環させて回ってきた為そのやり方は認められなかった。『虚』を浄化し魂魄を回す死神と敵対し敗北する。それからは謎の技術で彼らの本陣の“尸魂界”の影に空間を作って潜んでいる。それが『見えざる帝国』。影を使って様々な事象を監視している。
親父はその影の監視に見つかって殺された。
知ったのは大体これぐらいだ。詳細まで語るとなると時間がいくらあっても足りないので省かせて貰う。
これからの方針はある程度決まっているがとにもかくにもまずは封印解除が先決だ。
「卍解」
声に合わせて辺りの地面に抜き身で突き刺した擬似斬魄刀へと意識が拡がり繋がっていく。
霊圧は跳ね上がり押された大気が薄らと風を起こし始める。
総本数516本もの刀への意識拡張に軽い目眩を起こしながらも全てを従える。
「はあ······取り敢えず第一段階成功」
試練の起動条件は間近での急激な霊圧上昇。つまりは卍解だ。これは昔挑戦した時に全ての擬似刀を卍解状態にしなければ開始出来ないことが判明している。
卍解自体は簡単に発動できるが面倒なのは制御。能力が多いのは便利だが多すぎる。最初の頃は発動と同時に失神していた程だ。
発動する数を絞る練習から始めてちまちま数を増やしていって6年目にしてようやくここまで漕ぎ着けた。
試練時は専用空間に移動する。最終試練は戦闘形式の
ようで広い空間には無数の霊子砲(内蔵されている汎用霊子利用装置で集めた霊子を収束して放つ単純武器)が僕を囲むように鎮座してある。上には·········剣とか何か色々あるが霊力兵器じゃない気がする武器がたくさん。これがさっき言ったし何度も見かけた作りかけの部分とやらだろう。
手紙には『見えざる帝国』に見つかるのはもっと後の予定で本来超絶安全なこの空間で自身で稽古をつけてテストとして試練を受けさせ、みっちり鍛え上げる筈だったがそのための設備がまだ完成していないとか未練が書いてあったが多分これはその一例だろう。というかこれまで含めて搦め手系の迎撃兵器が少なすぎた。
呆然としていると爆音を伴って霊子砲が殺到しているのに気づく。
気を取り直した僕は11本の風属性の刀の力でで全ての刀と自身を空へ打ち上げ回避し雷属性2本の雷撃を適当な砲筒目掛け放つ、が。
煙の中から現れたそれにはほとんど傷がない。
霊子で周りが覆われている。霊子バリアーってことか。
飛んでくる攻撃を風で避けながら次は火属性の9本の能力を組み合わせ巨大な火炎球を叩きつける。
え!?
砲筒達は火炎球へ攻撃を集中させ打ち消した。
無人なのにここまで出来るのか·····! 雷系は着弾が速いが本数的に威力が足りない、炎は遅い、なら。
直接攻撃系2本を手に取りそれに攻撃補助系10本で切断能力を引き上げ、風で高速接近し勢いのまま突き刺す。
刺突は盾を貫きようやく1基撃破する。
そこからはその繰り返し刺して、刺して撃たれては回道系で癒しまた刺す。
脳死脳筋戦法ではあるけど物量に押されているんだから考えるだけジリ貧だ。
疲労は大きく剣を支えに肩で息をしていると空間の端に新たな空間への入り口が現れた。
あれが外への道か? ようやく出てきてくれたか。
今外どこと繋がってるんだ? と顔を出してみると黒い景色が一面を満たす。
これは黒腔? マニュアルに載っていた現世への行き方は········確か霊圧遮断車が要るんだっけ?
霊圧遮断車とは名前の通り霊圧も遮断する機能を持つ車。親父が死んだ日に鍵の空いた地下最下層に鎮座していたものだ。鬼道代行装置という霊圧を込めてボタンを押すと鬼道っぽいのが出る奴があるんだけどこれの中にはそれが何個か内蔵されているらしくてボタンを押したら透明化出来たり、黒腔に道と扉を作って現世に渡れる·······と親父が作ったであろう現世に行こうマニュアルには書いてあった。
100本近くの空間干渉系の刀の力で全ての斬魄刀を何とか押し込めた霊圧遮断車を走らせて現世に到着した。
視界の端から端まで風景がある。広い。
まずは浦原商店へ行って虚化を使えるようにして貰おう今の僕の力では戦いについていけないだろうから。
近くにいた人に訊いてみたところここは空座町付近にあると言われたが指された空座町の位置がかなり遠い、家の周り100個分以上は離れていそうだ。現世は家の周りの何万何億倍とかそういう途方もない広さをしていると読んだ。それからすれば短いのだろうけど僕からすれば十二分だ。本当に車があってよかった。
車に乗る練習も試練にも存在してそれだけでかなりの時間先に進めなかったのであまり良い印象は持っていなかったが今はそれを詫びたくなるほどだ。
考えている内に浦原商店に到着する。
車を適当な場所に停め、店内に入ると見たこともない商品達が出迎えた。
これが駄菓子········美味しいって聞いたし買って帰ろうかな。いやそういえばお金は部屋に置きっぱなしだったような?
「そうッスねぇ~アタシのオススメは······」
「! ··········」
振り替えると見知らぬ内に背後に男が立っていた。下駄に帽子に胡散臭さが擬人化したような顔面。
この特徴は知っている。
「········浦原喜助さん、ですか?」
昔は尸魂界の軍部、護邸十三隊の頂点である隊長に務めていた世界を揺るがす大天災、目的の人だ。
「ええ、そう言うアナタは海渡町サンの息子さんッスね」
「はい。初めまして、親父からお前に虚化は不可欠な上未来知識を伝えてある奴だから話を通しやすいと聞いて来ました」
「妥当ッスね。ついてきてくださいここは駄菓子屋なんで込み入った話は中でしましょう」
前にならって歩いていると浦原さんが声を発する。
「1人で来たということは海渡町サンは」
「はい、死にました。見えざる帝国に見つかったらしいです」
「そうッスか」
表情は見えない。親父と浦原さんの仲は知らないので予想もできない。いや仲を知っていたにしろ予想なんて出来はしない。僕が外に出たのは今が正真正銘初めてだ。親父以外の人と話したのは道を聞いた人と浦原さんの2人だけそんな僕に一体何が分かるというのだろう。
地下には広い平地が広がっていた上の建物と比べたら圧倒的なまでの広さだ。こんなに大きな空洞があるのなら上の床は抜けたりしないのだろうか。いや、そんなことは置いておいて。
「何ですかコレ!!!!????」
一際目立つ巨大な構造物がど真ん中に鎮座している。
後尾には巨大なロケットブースターみたいなのが、先端には巨大な砲身がついている。外側のアーマーは僕の車の外装に似ている。
「おお~良い反応ッスね~」
「これは海渡町サンから頼まれていたあの人用の乗り物ッス」
「ただの乗り物にしては大仰ですね。一体何のためのものなんです?」
「黒膣の展開と透明化による一撃離脱を目的とした強襲型砲台だそうッスよ」
「これはもうアナタのものになりますね」
「これが·······僕の······?」
乗りこなせる気がしない。
「はい。操縦マニュアルは後で渡します」
「それじゃあ次はアナタの一番の目的の虚化を身に付けましょう」
「確か必要なのは滅却師の光の矢と人間の魂魄、虚の魂魄でしたっけ」
「そうッス。どうぞ腕を出して下さい。まずは虚の魂魄を注射します」
懐から注射器を取り出しつつそう言う。
注射。聞いたことはあるが実際体験するのは初めてだ。血の中に異物を流し込むためのものらしいがそれってかなり怖いことだと思う。
渋々と腕を出すと
「注射は初めてッスよね。でも安心して下さい。アタシ、ある診療所の開店に関わった時に痛くない注射の打ち方調べておいたんス」
二度の注射は一瞬で終わった。
本当に痛くなかった。何で? 確かに刺さった筈なのに。
「これで虚化の弊害の魂魄自殺は解消しました。後は平子サン達
「仮面の軍勢··········でも彼らって結界で場所が分からないんじゃ?」
「どうぞ、有昭田サンの結界に用いられている霊子を探知する装置ッス。平子サン達には既に話は通してあるんで結界の近くまで辿り着ければあちらから開けてくれるはずです」
「何から何まで·······本当にありがとうございます」
「いえいえ、アタシも海渡町サンの知識には助けて貰ってるんで構わないッスよ~」
仮面の軍勢を探して空座町を一時間程ぐるぐると探していると
「あ」
ピピピ、ピピピ、と貰った装置が音を鳴らす。方向を示す針は廃屋群を指している。
辺りはもう夜でそこらにはおどろおどろしいけはいが立ち込めている。
辺りに車を置いておいて隠れ家を探していると
「っ!?」
見えない壁に顔をぶつける。
「ここか」
中に入るにはどうすればいいんだろう? 刀で切ってみるか、壁を叩いて来るのを待つか······ん?
突然、眼前の空間に巨大な円形の穴が出現した。中を覗いてみるとそこには大きな建物が1つ。
これは·······入っていい·········ってコト?
扉を開けて入ってみると2階から4階までの床の6割ほどが削れている内部のあちこちに仮面の軍勢が点在してこちらを見ていた。
正面上に立っている帽子を被ったおかっぱ頭の男、平子真子が声を発した。
「お前が喜助の言うとった虚化の制御がしたい言う奴やな」
「そうです。あなたが平子真子さんですよね。でもどうやって分かったんですか?」
入った瞬間からかなり警戒の色は薄かった。浦原さんからの通達はあったにしろ本当にその人物かなんて分かりようが無くないか?
「そりゃあ霊圧でや。もしかして霊圧の探知方法知らへんのか?」
何それ、そんなのデータにないけど!?
「はい」
「難儀な奴やな········まあええわ。同類のよしみや、まとめて教えたる」
気前良いじゃん。文献通り良い人だな。
「ありがとうございます!」
「もう日も暮れとるし特訓は明日からや。他の奴らと顔合わせて明日に備えてしっかり寝とき」
「はい!」
最初の一歩目は順調。この調子で最後まで走りきる事が出来たら良いんだけど。