僕の親父は転生者らしい   作:地底土竜

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未知には未知を

 矢胴丸リサは強制転移の直後に霊圧遮断探知装置を利用し周辺の仮面の軍勢へと近づく途中、空を走るように生成される鉄線とそれが無数に分岐する直前の一点を砕く白い線を見ていた。

 

 砕かれる音は有昭田鉢玄の鬼道が中断される際に聞いた音と同じだったため、原因をそれと判断した。そして近くに居た仮面の軍勢、鉢玄と合流した後に他者が『天挺空羅』を利用した可能性も考慮しつつ確認を取ると予想は的中、鉢玄は転移後も『天挺空羅』を試していてそれを中断されていた。

 その後更に合流した羅武とひよりにこの件を伝えて二手に別れて『天挺空羅』破壊の原因の中核の鉄使いの撃破と片割れの足止めまたは撃破のため行動を開始した。

 

「『天挺空羅』を鉄に変える姿が上からよう見えてたわ」

 

 リサと鉢玄は鉄線の発生源を担当した。未来の知識において鉄を操る滅却師に該当するのは蒼都ただ一人。目的が明確な捜索は早々に終わるがそんな彼女らを待ち受けていたのは瀕死の拳西と白。何とか止めには間に合い今から治療をすれば死なない。そのためには付近にいる蒼都をここから離す必要がある。しかし最大火力の始解併用虚化の一撃ですら守りを破れなかった以上このままではそれを為せない。

 

「それで僕を討ちに来たのか。だけど残念だったね君の攻撃は僕を傷つけられない」

 

 見えざるの帝国の隊員はユーハバッハから敵勢力に関する情報(ダーテン)を受け取っている。それには細かい能力の記載がされている。虚化と始解はこれまでのリサの最大火力であることは割れていた。

 

「今のままやったらな」

 

「何だって········?」

 

 何か隠し球があるのか? だがそんなものは情報には無かった。ハッタリか、それとも········

 

 仮面の軍勢は死神の集団だ。そんな彼らが虚化以外に自らを強化する方法は一つしかない。

 思索を巡らせた頃、リサは既に口火を切っていた。

 

 

 

 

「卍解」

 

 

 

「怠象壊鉄漿蜻蛉」

 

 

 

 

 

 始解で出現していた特殊な穂の槍から垂直に二対の刃が生える。

 

 そして、隣り合った二枚の刃が音を立てて重なり一対の翼の様になった時、

 

「なッ────────」

 

 衝撃が顎を殴り抜けた。

 

 鉄と鉄がぶつかり合う重低音が響き蒼都の体が彼方へ飛ぶ。

 

「鉢玄、拳西と白頼むわ」

 

「はいデス」

 

 短いやり取りのあとリサは蒼都が飛んでいった方向へ向かった。

 

 

 

 

「くっ······」

 

 ズキリと痛む胸を押さえず立ち上がる。しかしそんな蒼都の胸には一見傷は無い、先の攻撃は静血脈を掛け続けていたため傷にはなり得なかった。原因は更に前の白と拳西の攻撃、治療が出来た訳では無かったのだ。

 

 彼の完聖体の力は手で触れた物を鉄に変換する力、そしてそれらを自身の体含めて自在に操ることが出来る。それを使って血管や体表の傷を殆ど繋がった様な状態で固定した。しかし治ってはいないので痛みはそのまま。

 

 何が起こった······? 

 

 身を起こし向かってくるリサを見据えながら先の異常を考察する。

 

 攻撃を認識出来なかった·········アキュトロンの様な瞬間移動で接近されたのか? ··········だとしたらわざと受けて即座に斬り返す。

 

 リサは彼女の持つ槍の間合いでは必ず蒼都を捉えられない離れた位置で止まり槍を振り上げる。

 それに備えて蒼都も鉤爪を構える。

 

「!」

 

 槍が振り下ろされるとその途中でリサの姿が目の前に現れ攻撃が直撃する。

 それに合わせて鉤爪を振るうが、

 

 ────消えた·····!? 何処に! 

 

 鉤爪は空を裂く。瞬間移動を警戒し周囲を探るがリサがいたのは攻撃を放つ前に立っていた、寸分違わず同じ場所に。

 

 余裕のつもりか·····? ──────ッ! 

 

 思考を待たず更なる連撃、その全てで同じ様に攻撃を受け、鉤爪は空を裂き、同じ位置に戻る。

 

 不味いな。

 

 傷から血が流れ始めている。自身の身体の鋼鉄化に霊子を通すことで爆発的な硬度を手に入れているが幾度も積み重なった槍による衝撃は鉄を細かく歪めた。繋げたかのように形を整えた血管達は歪みによって血を溢したのだ。血管は繊細で雑に変形させれば自分で自分を殺しかねないため、今また整形し直すことは不可能だった。

 

 だけど動きは読めてきた。攻撃の振りを見れば避けられる。

 

 リサの転移位置は常に真正面だった。そして戻る位置も同じ、だからこそ蒼都は回避から戻る位置への遠距離攻撃を敢行しようとしていた。

 

 そしてやって来た一撃を回避し滅却師の通常射撃技の神聖滅矢以上の威力を誇る技を放つ。

 

蛇勁爪(シェジンツァオ)!!!!」

 

 握られた両手を上下に手の平側を合わせて放たれた光線は転移から戻ったリサへと直進する。

 

「!?」

 

 しかし光線は曲がった、まるでリサを避けるように弧を書いて。

 

 蛇勁爪を······曲げたのか·····!? ·····近づくものの軌道を曲げる力なら僕の力は意味を為さない······! 

 

 思考する間も血は流れ続ける体と思考が時間と共に鈍化していく。蒼都が戦うことの出来る時間はもう殆ど残っていなかった。

 

 逸らされて一撃を貰えば怯んだ隙に連撃を喰らうだろう、接近は愚策だ。離れればあの転移攻撃を使うだろうあれを続けるなら僕の完聖体よりも卍解による消耗が上回る筈だ。それまで意識を持たせるしかない。

 

「破道の六十三『雷吼炮』」

 

 卍解ではなく鬼道による左手からの攻撃。標的は蒼都とは違い地面。

 

 視界を遮る気か────! 

 

 その真意を理解する。視界を遮られれば攻撃を避けられなくなる、だからで雷を消し去らなければならない。

 最速で蛇勁爪を放てばあの雷を跡形も無く消し去れるがリサは空いた右腕で槍を構えている。

 既に詰んでいた。

 

「くそッ」

 

 それが分かってしまっても止まれる訳がなかった。

 

「蛇勁────―」

 

 しかし行動は虚しく順当に槍の穂先が胸を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 息吐く暇もない十連撃が蒼都を打ち、遂に動かなくなった。リサはそれに向けて停止装置を振り下ろすが、

 

 

 

「“お前の行動に異議がある”」

 

 

 

 自分に突き刺していた。

 

「何────」

 

 疑問を口にするより早く頭を何処からか飛来した神聖滅矢が打ち据えた。

 

 倒れる蒼都の付近に新たな星十字騎士団が降り立つ。金と紫に染まった髪を持つ男、該当するのは一人しかいないベレニケ・ガブリエリ。聖文字は“Q”の『異議(ザ・クエスチョン)』。

 

「酷い様じゃないか蒼都」

 

 気絶している蒼都に話し掛ける彼の向こうで倒れるリサが身じろぐ。頭に受けたが矢の出力は抑えられていたようで生きてはいたが頭蓋を激しく揺らされ立つこともままなっていなかった。

 

「おや、まだ意識があるのか。凄かったろうさっきの一撃。音が視えればあんな芸当が出来るのさ」

 

「戦う気なのは結構だけど今回は見逃してあげるよ。お前達は面白い存在だし、態々更木剣八から乗り換えたんだ。見合うように活躍してくれないと」

 

「僕の計画の為にもね」

 

 そう言って立ち去った。

 

 

 

 蒼都の撃破により通信鬼道の中断から解放された。その後リサも復活し遠方で治療中のハッチにそれを伝え『天挺空羅』を発動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『天挺空羅』や!」

 

「成功したんだ!」

 

 殺されてから何時もの如く赤ちゃんに蹴飛ばされて復活した僕は平子さんと合流し、未来における滅却師との戦いでの一般隊子以外の数少ない死者の護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國の元へと急いでいた。

 卍解を奪う星章化と用意された偽物のユーハバッハに消耗させられたことにより未来で彼は死んだが卍解を奪われなければ勝利出来たと考えられる程に彼の卍解は圧倒的に強い。

 

 侵影薬は既に浦原さんが開発しており貰ってきた。殆どは霊圧遮断車に置いていて残りの少しは非常用に仮面の軍勢それぞれに分配されている。それを届けようとしていた。

 

 これなら何とかなりそう·······良かったぁ······

 

 少し安堵していると上空から爆発音がし熱風が全身を包んだ。

 同時に何かが地面に激突する。

 

「あれは·····」

 

 地に伏すのは氷の翼が生えた白髪の少年、護廷十三隊十番隊隊長日番谷冬獅郎だった。

 

「てめえらは────」

 

「オイオイ、数が増えたと思って見てみりゃ仮面の軍勢じゃねえか。丁度、氷の隊長サンじゃもの足りねえと思ってたとこだぜ。纏めて相手にしてやるから掛かってこいよ」

 

 付近の屋根上から完聖体のニワトリの様に赤く逆立った髪の滅却師、バズビーが日番谷の疑念の言葉を遮り宣言した。

 

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