僕の親父は転生者らしい   作:地底土竜

2 / 14
仮面の軍勢での日常と未来の知識

 スーパーひよりウォーカー。動かすことで霊力を損耗させることで相手の霊力量を測るための装置だ。

 

 3日続けることが出来れば虚化の修行を始められるようだ。それに僕は1日で倒れてしまった。流石に低すぎるとのことで基礎からしっかり伸ばしていくことに決定した。

 

 それからもう一月。

 

「てぇい!!」

 

 駆け、右腕を全力で振り抜く。しかし直撃したはずの相手は微動だにしていない。

 

 ここは仮面の軍勢の根城の地下にある巨大な空間。

 

 日々僕が訓練を重ねる場所だ。

 

 斬拳走鬼の適性を調べたところ斬と拳以外にはほぼほぼ適性が無かった事が判明したので今はその2つと、戦闘における状況判断の仕方等々、初歩の初歩から学んでいる。

 

「拳への霊力の集中が甘ぇ! 全く響かねぇぞ!」

 

 相手の白髪の男は六車拳西。浦原喜助や平子真子、愛川羅武、鳳橋楼十郎等と同じく元護廷十三隊隊長であり、仮面の軍勢の一員。

 

 僕に訓練を施す人は日替わり交代制で今日は彼が当番のようだ。

 短気な人だがこと訓練においては仮面の軍勢で彼以上の人はいないだろう。

 何しろ真面目だ。それに僕に適性のある斬と拳を得意とする人でもある。

 

「はい!」

 

 今行われているのは拳の訓練の初歩。

 

 拳から腕、連なる全ての筋肉に霊力を通し、振り抜く速度と拳の硬度を上げ叩きつける。

 

 僕は霊力を利用する行動の全てが下手なので、これだけでもかなり難しくて難航している。

 

「瞳、今日はお前とハッチが買い出しの当番だったろ」

 

「そうですね」

 

「一旦区切るから行ってこい。昼飯を食い終わったら続きだ」

 

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 10分程歩き辺りの民家が増え住宅街といえるあたりまで来た頃

 

「どうデス? 今の生活は」

 

 桃色の髪をした巨漢、さっきハッチと呼ばれていた男、有昭田鉢玄はそう切り出した。

 

「う~ん、そうですね。楽しいですよ。1人の時は虚化以外はもうこれで頭打ちかなと思っていたのにまだ先があることが分かったので」

 

「それに1人でもなくなりましたし」

 

「そうデスか。それは良かったデス」

 

「ええ、本当に」

 

 他の人と共にいられることは楽しいことだったのだ。親父がいなくなって以来、忘れていた感覚を思い出させてくれた。

 

「そういえば、皆さんって食費はバイトで稼いでいるんですか?」

 

「そうデスネ」

 

「バイトって確か僕みたいな歳じゃ、まだ出来ないんでしたっけ?」

 

「ええ、少なくともあと5年は必要かと」

 

「そうですか·······」

 

 何か他に出来ること無いかな? 家にあったお金は現世じゃ認識さえされなかったし、借りばかりを作っているから申し訳なくなってくる。

 

 空座町の商店街が見えてくる。

 

 ここまで来ると人の往来も流石に多く杖をついて歩くおじいさんからよく目立つオレンジ色の髪をした子供まで多種多様な人達がごった返して·········オレンジ色の髪? 

 

 もう一度人混みをよく見ると·······

 

 いた! あれ·······もしかして黒崎一護じゃない? 見たところ6歳ぐらいだけどあの髪色は二人もいないよな。

 

 となると横にいる母親らしき人が黒崎真咲か。

 

 親父作の年表によると今は見えざる帝国の王ユーハバッハによる混血、並びに虚混じりの滅却師の力を奪う聖別(アウスヴェーレン)の三年前になっている。

 

 本来の未来では、その日にあの人や石田雨竜という滅却師の母親片桐叶は死んでしまう。まあ親父がそこら辺の話はもう浦原さんに通してあるからそんなことは起こらないだろう。

 

 僕としては少し羨ましくもあるが悲しみが少ないのは良いことだ。

 

 それにあの黒崎一護という少年は親父の文献にも散々書かれていた通り戦いに向かない子らしい。

 

 だってあんなに優しい顔をしているのだから。

 

「どうかしましたか?」

 

「え? いや何でもありませんよ。お弁当屋もうすぐですよね? さっさと行っちゃいましょうよ」

 

 僕は一体どれだけ硬直していたんだろう。有昭田さんいい人だし、まあ気にしないでくれるか! 

 

「はい」

 

 よし、思った通り本当に気にしないでくれたぞ······

 

 いや····未来知識の話は何時かしないといけないんだった。隠す意味無かったな。

 今日のお昼ご飯の時に皆の前で言おう。信じて貰えるかな········

 

 

 

 

 

 

 

 

 ご飯って美味しいな。この唐揚げって言うのは特に絶品·····霊体は食事を絶対採らなければならない訳じゃなかったし、そもそも俺の家ご飯置いてなかったし知らなかった。

 

 一旦それは置いておくとして·······始めるか。

 

「あの、皆さん」

 

「どうしたんや瞳。弁当に髪でも入っとったんか?」

 

 え!? 何それ弁当ってそんなことがあり得るの!? 聞こうか? いや····主題を忘れるな。

 

「いや、僕の父親の話をしようと思いまして。自己紹介の時に親父が死んだこと。殺したのが滅却師であること。僕が滅却師と戦うために天敵の虚の力を得ようとしたことは話しましたけど。それ以外にもっと重要なことをまだ話していませんでした」

 

「重要なこと?」

 

「はい、世界を左右するぐらい重要です」

 

「えらい規模が大きくなりおったな」

 

「僕の父親は未来の知識を持っているんです」

 

「未来の知識ぃ?」

 

「俄には信じられねぇな」

 

 それはそうだ。というか僕も実は信じきれている訳じゃない。

 

「でしょうね。だから僕が絶対に知らないことを今から何個か言い当てて行きます」

 

 これはこちら側の確認も兼ねている。合っていて欲しい。でないと前提が成り立たなくて詰む。

 

「まず、平子さんから」

 

「始解は『逆撫』、能力は相手の感覚の反転。卍解は『逆様邪八方塞(さかしまよこしまはっぽうふさがり)』、能力は敵味方の認識の逆転······どうです?」

 

「············当たりや」

 

 おお、平子さん超絶驚いてる。

 

 それはそうだ。始解、特に卍解は隊長の切り札で本当に少数の死神しかしらない。あの何故か霊王や霊王宮での色々を知っている藍染惣右介ですら始解の確証なしの予測しか出来なかった程だ。

 死神でさえない僕にそれを当てられると凄く驚くだろう。

 

「次は六車さん」

 

「始解は『断地風』、太刀筋を炸裂させる。卍解は『鐵拳断風(てっけんたちかぜ)』、始解の炸裂の力を集中させることで無限の炸裂を生み出す」

 

「·····当たってやがる」

 

「次は鳳橋さん」

 

「始解は『金沙羅』、斬魄刀を鞭状に変化させ追尾型の攻撃や爆発等を用いた広域の攻撃が可能。卍解は『金沙羅舞踏団』、まやかしの旋律で相手を魅了しそこでの幻を現実のものとする」

 

「うん、当たってるね」

 

「一先ずこんなところですね。どうでしょう、少しは信じて貰えましたか?」

 

「そこまで言い当てられて信じへんかったら嘘やろ。まだ本題あるんやろ? 続き話してみ」

 

 よーし、これだけ合ってるなら多分霊王の情報も合ってるか! 

 

「了解です。その前に少々長くなりますがその未来の知識から得た本題··········というより頼み事ですけど、その前提から」

 

「僕の目的は見えざる帝国の打倒ですがそこの王ユーハバッハも藍染惣右介も霊王宮への侵攻を目的としています」

 

 霊王宮とは尸魂界の中心の瀞霊廷の直上にある場所を指す。尸魂界の王とされる霊王がいてそれを守護する王属特務の零番隊がそこで活動している。

 

「藍染は······霊王宮目指しとったんか!?」

 

「はい、皆さん仮面の軍勢が虚化させられた魂魄消失事件はそのための一因でした」

 

 藍染は昔、死神の虚化の研究を行っていた。死神を虚化させると魂魄が耐えられずに死ぬ、これを魂魄自殺と言うが研究の過程で多くの尸魂界の人々が死んだ。

 平子真子達、仮面の軍勢も虚化をした上で死んでいないのは浦原喜助のおかげだ。

 

「あれらの実験を繰り返して自分が死神を超越し、霊王に成り代わろうとしたんです」

 

「霊王なぁ·····藍染はそれになって何をするつもりなんや? 流魂街(ルコンがい)やら死神やらあいつは尸魂界に生きてる人達を殺し続けた。それやのに尸魂界の王になるっちゅうんはおかしな話やないか?」

 

「尤もな質問ですね。それの話をするには霊王について詳しく話さなければなりません」

 

「霊王というのは世界に区切りがなかった頃、虚が一方的に魂魄を喰らうだけだった時代に生まれてで今の三界を創った人です。死神の力に加え滅却師、あと本人独自の能力もあったようで正しく最強の存在でした」

 

「尸魂界の王どころか世界の中核じゃねえか!?」

 

「その通りです。それで三界が出来た当初に霊王のその力と世界の維持への反抗の可能性を恐れた四大貴族の一つ綱彌代によって全身を解体され今では世界を維持するための装置となっています」

 

「なん····やって······?」

 

 僕は世界の腐敗に興味は無いけど、彼らからすれば元々の職場がそういうことを土台に成り立っていると知れば驚きも一入だろう。

 

「藍染惣右介はそれに反発して自分が世界の中核に成り代わろうとしたしユーハバッハは三界を破壊しようとしています。ユーハバッハと藍染惣右介どちらかだけでも相当な脅威です」

 

「特にユーハバッハは尸魂界の影の空間に隠れていてその方法はまだ解明されていません。だから滅却師との戦場は必ず霊王宮直下の瀞霊艇となるでしょうから藍染惣右介を放置してユーハバッハと戦えばその後に藍染が仕掛ける形になるでしょう」

 

「待てよ、てことは滅却師の見えざる帝国ってのは瀞霊艇の真下に潜んでやがるのか?」

 

「そうですね。しかも世界の様々な影から外を視ることも出来ます。尸魂界の情報は筒抜けです。現世はあまり注視していないようなので現世の滅却師に関わりさえしなければこちらを視てくることは無いでしょうが·····」

 

「それは不味いね。死神達は気付いていないんだろう?」

 

「そうですね。未来での一度目の邂逅では手酷くやられたそうですよ。でもユーハバッハの方の侵攻は普通にしてればあと12年は掛かります。彼等はユーハバッハの力の復活を待っているので」

 

「藍染の方は根城は割れててまだ戦力は整っていません。狙うならまずそっち。でもその藍染勢力ですら恐ろしい程に強力です」

 

「根城は一体どこにあるんや?」

 

「虚圏にある巨大な城、『虚夜宮(ラスノーチェス)』です。でも平子さんの単身突撃の卍解は通じない可能性が高いと思います。藍染の始解、鏡花水月は五感の支配による相手の視界の改竄です。ある条件を満たせば前動作無しで相手を嵌められます。そして、平子さんや仮面の軍勢の皆さんはその条件を満たしている」

 

「発動位置そのものをズラされて発動範囲から外れられるっちゅうことか」

 

「で、何なんや条件って?」

 

「藍染が入隊した時に始解のお披露目会やってませんでしたか? あれです」

 

「本性を現す前でも、あいつあんな派手なこと進んでする奴ちゃうかったけどそういう訳やったんか」

 

「ここまで前提です。それで頼みたいことっていうのは僕も藍染との戦いに参戦したいっていうのと見えざる帝国との戦いに手を貸して欲しいということです············どうでしょう手を貸してくれますか?」

 

 虚化の習得、それはとても重要なことではあるけれどここに来た最も大きな理由は実はこれだ。僕は弱い、あまりにも。浦原の協力が得られたとしても隊長レベルの敵が26人もいる。しかし天敵の虚の力を持った隊長格レベルの人達が8人も集まれば·······! 勝機はある! 

 

「藍染との戦いに混ざるのは構へんけど·········そうやなあ、滅却師ん話は死神とのいざこざやから首突っ込むのは嫌やけど瞳のこともあるし、三界崩されるいうことやったら他人事や無くなるわ」

 

「世界が無くなっちまったらジャンプもなくなる。それだけでも理由としちゃ十分すぎるぜ」

 

「そうだね。僕もまだこの世界に満ちるアートを探しきれていないのにそんなことされちゃたまらないよ」

 

 他の皆もどうやら同意してくれているようだ。

 

「ま、そういう訳や手伝ったるわ」

 

「ありがとうございます!!」

 

 よっしゃあ!!! 

 

「藍染との戦いに関しては僕には鏡花水月効かないので少しは役に立てるかと思います!」

 

 親父によるとそうらしい。そもそも僕は対ユーハバッハ用に改造された魂魄らしいが藍染との戦いも想定していたのだろうか? 

 

「え、お前鏡花水月効かへんの? 何でや??」

 

「理屈は分かりませんけど親父からそう聞きました! 精神干渉系全般に耐性があるらしいんでお昼食べ終わったら下で平子さんの逆撫使って検証してみません!? 僕試したこと無かったんですよね!!」

 

「お、おう。ええで」

 

「何だか彼いつにも増してテンションが高いね」

 

「隠し事を吐き出せたからスッキリしたんだろ。あいつまだ若ぇし重かったんだろ」

 

 いやーなんか凄いいい気分だ。あとはひたすら訓練するのみ! 頑張るぞー! 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。