僕の親父は転生者らしい   作:地底土竜

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失敗

 虚の仮面を剥ぎ進化して辿り着いた存在、破面。彼らの頂点十刃の番号は1から10と振られているが実は違う。本当は0から9。そしてその第0十刃は10番のヤミー・リヤルゴ。

 破面になると虚は死神に近づき虚成分を押し込めた斬魄刀も出現するが刀剣解放という技を行使すれば刀と融合し虚の力を回帰させ更なる力を引き出す。

 ヤミーはその時、10の1が消えて第0十刃となるのだ。能力は怒れば強くなる。

 

 単純だけど恐ろしいなこれは。親父の情報以上だ。

 

 映画とかで見る怪獣のようだった。最初は10m程だった身長も今では虚夜宮を抜き去る程になり力も増し続けていた。

 

 相手も相手だけどね·······

 

 対するのは第4十刃ウルキオラ・シファー。彼は理由は分からないが二段階の刀剣解放が出来る。一段階目では白かった全身も二段階目になると胴と顔を残して真っ黒になるので悪魔感が増している。

 二人は虚閃やら雷霆の槍やらをぶつけて殴り合っていてそこら中クレーターまみれだ。一撃が打ち合わされる度に虚圏そのものが揺れている気さえした。

 

 しかし、戦いの終わりは近そうだ。ヤミーの右腕は千切れ飛んでいるしウルキオラは五体満足ではあるが何度かの直撃の都度に四肢が捥げていた。実際、二人の攻撃規模も落ちている。

 

 それに対して、少し離れた位置で行われているスタークとバラガンの戦いは余り変容は無い·········まあ消耗はあるだろうけど。

 バラガンは老いを司る。万物を老いさせ殺す力。恐ろしすぎる能力内容だが単純に出力的な限界がある。スタークには無限装弾虚閃(セロ・メトラジェッタ)という物量的には相当な攻撃手段を持っておりさっきから双方が双方の攻撃を相殺して状況は停滞中だ。

 

 天蓋下は第5十刃ノイトラ・ジルガと刀剣解放の使えない第3十刃ティア・ハリベルが戦っている。他は何とか誰も死なずに気絶してるようだ。良かった。

 

 下の状況が良い感じになったのも浦原さんのお陰なとこあるなぁ。機動砲台コックピットにセットされていた武器、虚専用スタンガン。浦原さんに聞いたとこ親父の武器らしい。親父は霊力ゼロだから虚と遭遇した時は霊子レーダーで感知、スタンガンで動きを止めて汎用霊子利用装置を利用したブラスターで止めをさすという戦い方をしていたらしい。

 

 虚夜宮の道中の虚は軒並みこれで動きを止めれたので侵入もスムーズだったし超消耗した破面を気絶させるのを安定させられた。

 

 考えている内に僕は天蓋の下に降りていた。消耗した二人を倒すためだ。

 霊圧の真上に立ち移動直前に解除していた虚化を再開する。そして身体強化の斬魄刀を利用し出力を上げる。虚化をしなければ身体を最大強化しようとすればこっちの体が自壊するので併用は必須だ。

 

 全力で踏み込み響転、付近に近づき急所を外して突き刺す。

 

「テメッ!?」

 

「なッ!?」

 

「ごめんね」

 

 二人の驚いた声を聞きながらスタンガンを重ねて浴びせて虚化を解く。

 

 倒れる二人から流れる血をじっと見下ろしていると突然悪寒に襲われる。

 

 死んでないよな? ·········霊圧も消えてないし消えそうにないし·····大丈夫か。

 

 親父が死んでから復讐を誓ったあの日の僕は外に出たことさえない何も知らない子供だったのだと実感してしまう。

 あの頃は親父以外の様々な死が物語の外を出ていなかった。だから親父の死の要因全てを殺してやろうと誓うことが出来た。でも仮面の軍勢の皆やバイトで出会った人達、店の店員さんとか昔とは比べることの出来ないくらい沢山の人と出会った。そして今では他者の命に途方もない重みを感じている。

 

 こんな調子で僕は滅却師に復讐を行えるのか。剣を躊躇いなく振り下ろせるのか? そんなことして良いのか? そんな思考が頭をぐるぐると巡る。

 

 いや、待て今は作戦中だ。しっかりしろ! こんなことウダウダ考えてる場合じゃない! 

 

 頭をブンブンと横に振って冷静を取り戻す。

 

 ·······あれ? 天蓋上の他の十刃の霊圧が落ちてる······? 

 

 皆が虚化している霊圧を感じる。ヤミーもウルキオラもバラガンもスタークも霊圧がめちゃ落ちてる。

 多分ヤミーかウルキオラのどっちかが倒れたとこで平子さんが卍解を解除して全員で虚化して仕掛けて何とかしたんだろう。僕が下に行ってたから邪魔にならないように鬼道による通信をしてこなかったのだろう。

 

 急いで飛び上がり、天蓋の上で平子さんに話し掛ける。

 

「上の十刃倒せたんですね」

 

「そうや、ええ調子やけど油断せんと気ィ引き締めときや。本番はこれからや」

 

「はい!」

 

 機動砲台に乗り込み透明化し待機していると

 

「!」

 

 霊圧遮断装置観測レーダーに感があった。同時に巨大な三つの霊圧が真下に現れる。

 

「来たか······!」

 

 虚夜宮の広い砂を歩き進む三人、藍染惣右介、市丸ギン、東仙要が天蓋に空いた穴から肉眼で確認出来る。

 真っ先に下に降りたのは平子さん。

 

「久し振りやなァ、藍染。ちょっと遅かったんちゃうか? お前んとこの虚もう全部倒してもうたわ」

 

 三日月のように笑みを深めた平子さんは藍染に向けて真っ先に口火を切る。

 

「どうやらそのようだ。しかも、ただの一人も殺してはいない」

 

「ホンマや、十刃も破面葬討部隊(エクセキアス)も危ないところやけど確かに生きとるわ。器用やわァ」

 

 話の外で呑気な喋りをしているのは市丸ギン。感情がまるで読めない。未来の知識には藍染を裏切る男と書いてあったけど本当なのかな。そんな感じ全然しないけど。いや·······気づかれちゃダメなのかそういうのって。

 

「まるで、最初から私の戦力を知っていたようだ」

 

 そうこれはそれぐらいじゃなきゃ出来ない芸当だ。流石に分かるか。こいつは今の段階でどこまで悟っているんだろう。でも未来の知識なんて分かる訳ないよね? 

 

「そこんとこは企業秘密や。言えへんわァ」

 

「ほんなら始めようや、俺らの雪辱を、お前の悪巧みを打ち砕く戦いっちゅうんを·······なァ!!」

 

 ダンッ! と勢い良く踏み込み藍染へ斬りかかる。東仙と市丸は動き出そうとするが

 

「キミ達の相手は」

 

「俺達だぜ!」

 

 二人に向かって黄金の鞭と巨大な棍棒が振り掛かる。

 それを回避した二人へ上空から風の斬撃と虚閃が降り注ぎ藍染から引き離されていく。

 

「これでサシやな」

 

 声と共に眼前を掻き毟る動作を行い仮面を出現させる。

 

「虚の仮面か」

 

「そうや、この100年で大分と上手なったんやで。更に、や」

 

「倒れろ」

 

「逆撫」

 

 平子の持つ斬魄刀の形が変化する。刀身に等間隔の穴が空き、柄の後ろに巨大な輪が接続されているような姿だ。

 

「!」

 

 藍染が驚いたような表情をした。匂いを発し嗅がせることで相手の感覚を逆さまにする逆撫の能力にかかったのだろう。

 

「どうや? 逆さまの世界は。歓迎するで」

 

「これでお前はどこまでが本当でどっからが逆さまかずーっと考え続けんとあかん。俺がどこまで逆さまに出来るんかもしらんと、なァ」

 

 平子さんは瞬歩を用いて攻撃を仕掛ける、がその先に藍染はいない。着地するその少し後ろだ。

 

 逆撫は確かに直撃しているが既に鏡花水月も発動しているのか。だけどこっちにも策がある。

 

 有昭田さんの鬼道、目の連動は付け焼き刃で情報共有の方とは併用出来ない。しかし通信の方で僕の視界を言葉で伝えれば不完全までも鏡花水月に対応は出来る。僕しか鏡花水月を貫通できない都合上一人が限界だが。

 

 平子さん·····! 後ろです! 

 

 と送ると平子さんは思い切り後ろへと斬撃を繰り出す。

 

「ほう」

 

「お前の斬魄刀への対策は真っ先に考えとるわ」

 

 そこからはしばらく両者一歩も譲らない一進一退の攻防が続いたが。

 

「君の鏡花水月対策は他者の思考を必要としているようだ」

 

「私の移動への反応が一瞬遅れている」

 

「その一瞬が致命的やって言いたいんか?」

 

「ああ、もっとも既に────」

 

 背後を取られている指示ももう間に合わない。

 

 今だ! 黒腔起動! 

 

 藍染の体を囲むように黒い空間への扉が出現する。

 

「致命的なんはお前の方やったな、藍染」

 

 一転攻勢ってヤツだ! 後は黒腔を閉じれば·······

 

 閉口用のボタンを押す······が

 

 閉じれない!? 何でだよ!? 

 

 信じられないという気持ちのままボタンを連打する、しかし現実は裏腹に機動砲台は何の反応も返さず沈黙するのみ。

 

「何が起こって」

 

「何やっとるんや瞳! 黒腔を閉じんと──」

 

 平子さんの怒号が聞こえなくなる程に眼前の藍染の行動に驚愕させられる。

 

 藍染は何かを唱えていたのだ。

 

「外接詠唱·······!?」

 

 そうとしか呼べない光景だった。

 そもそも浦原さんが造り僕が操作している擬似鬼道というものは鬼道の詠唱部分を特殊な機構で代用して簡単に発動できるようにしたもの。

 藍染が唱えているのはその代用された詠唱を基に改良された鬼道、しかも基になった鬼道と同じ詠唱を丸々使って造られたタイプ。だから足りてない詠唱を藍染が加えるだけで鬼道の才能が無い僕は操作権限を失い、奴が鬼道を操作するなんて事態になっている。

 

 

 

 

 

 ガシッと機動砲台のフレームを掴む音がする。

 

 

 

 

 

「あ────」

 

 スーッと全身が冷え込む。そして確信させられる。

 

 逃げ、れない。

 

「君か。仮面の軍勢に知恵を与えたのは」

 

 藍染は悠然と、そして確信めいた表情で僕に語り掛けてくる。

 

「瞳を離せ藍染!」

 

 平子さんは虚空に向かって攻撃を仕掛けている。鏡花水月の術中だ。

 

「鏡花水月か·····! 瞳! どこにおるんや!」

 

「ひ、平子さん! 僕は────」

 

 言葉と情報共有の回線に居場所を伝えるが

 

「君が一体何者なのか、聞かせてもらうとしよう」

 

 既に遅く機動砲台ごと黒腔内に引き吊り込まれた。

 

 

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