僕の親父は転生者らしい   作:地底土竜

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この章は今回で最後です。次の章を書く前に次はこれまでに登場したオリジナルアイテムの今出せる分までの解説を投稿します。


再生

「あ、君はあの時の」

 

 虚化を手に入れたあの日に内なる虚を倒してくれた赤ちゃんの沢山いた内の一人が目の前に立っている。

 

「あの時は呆気に取られてて言えなかったけどありがとね。君達がいてくれなかったら僕、内なる虚に潰されて殺されてたかもしれない」

 

 言うと同時に疑問も抱く。どうしてこの赤ちゃん達は僕の精神世界に存在しているのか。

 

「たい!」

 

 考えているとベチッと赤ちゃんに頭を踏まれる。

 

「うわっ!? 何々? もしかして怒ってるの·······? 何で?」

 

 赤ちゃんの動きは止まらない。更に踏んでくる。流石に痛いので躱して起き上がり距離を取る。

 

「え? え? 僕何かした? 何かしたなら謝るよ!?」

 

「ばぶばぶば、たぁ~い!」

 

「ごめん、何て?」

 

 感情の籠り方から何か言おうとしてるのは分かるけど理解できない·········! 

 

「たぁ······」

 

 あ、ため息吐いた。

 

「いや、ホントに理解できなくてごめんね」

 

 何故か申し訳ない気持ちに包まれて気落ちしていると赤ちゃんは突如全力でこっちへ走り出した。

 

「へ?」

 

「たやぁ!!」

 

「ゴッブァ!!???」

 

 鳩尾に飛び蹴りが突き刺さる。

 

 勢いのまま倒れ込もうとするが地面と接触しない。全身を浮遊感が包み続けている。地面との衝突に備えて閉じていた目を開けてみると

 

 赤ちゃんが上にいた。

 

 しかも、見下ろされているどころじゃない! 赤ちゃんの姿が単行本位の大きさにまで縮んでる! ってことは僕もしかして? 

 

「落ちてるぅぅぅぅ!!!!!」

 

 しばらく絶叫していると意識が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぇ?」

 

 再び意識が戻るとそこはさっきとは対称的に全面真っ黒な場所だった。

 

 ここは黒腔······? あ、そうか僕って藍染に殺されて·····でも生きてるってことは成功したんだ、再生の力。

 

 親父からのこの斬魄刀についての説明は読んだが回道系の斬魄刀には小さく注釈がされていた。その注釈にはこの回道系ならお前だけなら完全に死んでも治せると書いてあったのだ。

 しかし、回道にそこまでの回復力があると書かれていた文献を見たこと無かったし仮面の軍勢の皆に聞いても有り得ないと返されて僕も半信半疑な所があったが成功した。

 

 やっぱり親父は僕を騙してなんか無いじゃないか。

 

 機動砲台を呼び寄せて乗る。

 

 どっちに向かえば良いんだっけ? 確か作戦が失敗したら即撤退だったかな。今の時間はいつだろう? 僕が死んでたのがどれぐらいか分からないけど······藍染が居ないってことは虚圏には戻ったんだろうしもう撤退してるか。

 

 というか僕が復活できるっていう確証があったならもっと楽に戦えたかもな。機動砲台による黒腔展開さえなければ分断もされなかったろうし鏡花水月の効かない僕が指示を出して戦えば皆のサポートも得られたし、死なないならゾンビアタックも出来るし。

 

 ·········負け惜しみだな、もう作戦は完全に失敗したのに。

 僕のせいだ。藍染に黒腔の制御を乗っ取られた時に冷静を欠きすぎていた。それにその後も失敗を取り返せずに無様に負けた。

 

 平子さん達の復讐の絶好のチャンスをふいにしてしまった。

 こんな様で良くもまあ協力させて欲しいなんて言えたものだ。その上僕の復讐を手伝って欲しいなんて。ただ足を引っ張っただけじゃないか。

 

 こっちの存在は見えざる帝国には見られていたのだろうし藍染にはこちらの手札が割れている。これじゃ未来の知識を無駄にして仮面の軍勢を警戒させただけだ。

 

 これから、どうすれば良いんだろう。

 

 まずは······皆の所に帰ろう。

 

 目覚めてからじわじわと絶望的状況を思い出し地獄のような気分になりながら空座町へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮面の軍勢の拠点に到着し機動砲台から降りて中に入ると僕は真っ先に口を開いて、

 

「作戦、失敗させてごめんなさい」

 

 頭を下げる。

 

 せめて謝りたい。言っても状況は好転しないけど言わないと死にたくなりそうだ。

 

「頭上げや」

 

 頭を上げる僕を迎えたのは怒りを一編も浮かべていない彼らだった。

 

 むしろ何か呆れてる········? 

 

「何で謝っとんねん、作戦が失敗したんはお前のせいちゃうやろ」

 

「黒腔乗っ取るとか予想しろっちゅうほうが無茶や」

 

「それに俺らは俺らで瞳を拐う藍染を阻止出来んかったし藍染の勢力を倒し損ねた。変わらんわ」

 

「平子さん········でも皆にこの戦いの切っ掛けを与えたのは僕です。僕の復讐のために未来にある安全を放棄させたんです。なのに何も出来て無い·····!」

 

 僕が居なければ、ここに来なければここまでの危険なんてやって来なかった。黒崎一護君が未来に全てを解決しただろう。

 僕は自分の復讐のために皆の力を利用しようと接触しそれを崩した。加えて今まで僕が皆にしてきたことは未来の知識を教えただけ。その知識は親父のもので僕のものじゃない。対して仮面の軍勢の皆は僕を強くしてくれてそれで見えざるの帝国との戦いでの協力を了承してくれた。僕は皆に沢山の恩がある。なのに報いるどころか失敗の原因になるなんて······! 

 

「何や、そないなコトで悩んどったんか」

 

「確かに、切っ掛け与えたんはそりゃお前やけどなァ」

 

「お前が安全を捨てさせたんやない、俺らが捨てる決断を下してお前に協力することに決めたんや、気にせんでええ」

 

「でも······でも、僕は」

 

 それだけじゃない、今回の戦いを通して感じたことだが僕の復讐心は揺らいでいる。親父の死から時間が経ちすぎていたからなのか、現世にやってきて色々な人と出会ってしまったからなのか滅却師への殺意を殺すことに感じる恐怖が上回っている。僕は怒りを忘れてしまったのかもしれない·······そんなこと今更言えない。それに──────

 

「ふんっ!」

 

「あ」

 

「ヴェア!????」

 

 俯いていた僕の頭に激しい衝撃が走る。衝撃に撥ね飛ばされ身体は勢い良く壁に激突する。

 

「ウジウジウジウジとお前は一体何を気にしとんねん!」

 

 蹴ったのは猿柿さん。イライラオーラを全身から撒き散らして仁王立ちしていた。

 

「な、何やっとんねんひよ里!?」

 

「こいつがあんまりにも煮えきらへんから蹴飛ばしてもうたわ。そんで何でや? 何がそんなに納得出来へんのや、言うてみィ!」

 

「······いや、納得とかそういうんじゃなくて·······」

 

「じゃなくて何やねん」

 

「·········」

 

「そういえば順番やったら今日はウチがお前を鍛える日、やったな。下降りィ、そのなよなよした根性叩き直したるわ」

 

 そう言ってズカズカと足音を鳴らしながら降りていく猿柿さんを見送る。

 

 そうだ本当に情けない。怖い、自分から復讐が消えていると感じるのが、返し切れない恩に目を向けるのが、僕が弱いのが。

 こんな根性の僕に怒るのは当たり前だ······

 

 立って猿柿さんの後を追う。

 

「何や、行くんか」

 

「はい」

 

「そうか·······」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たんか、来ぉへんモンかと思っとったわ」

 

「勿論来ますよ。折角鍛えてくれるんですから」

 

「ま、何でもええわ。行くで」

 

 言葉の直後、猿柿さんは高速で接近し一太刀を振るう。

 

「くっ!」

 

 鞘から抜き放った二振りでなんとか受け止めるが相手は勢いをつけて突撃していた。そして僕と猿柿さんの間にはほとんど身長差が無い。当然僕は押し飛ばされる。

 続く追撃を何とか耐えるがこのままじゃ持たない。

 

「遅い! こんな攻撃、前までのお前やったら難なく受けきれてたやろ!」

 

 遂に地面に叩きつけられる。

 

「もっかい訊くわ、納得じゃないって何や。納得は出来とるっちゅうことか?」

 

「図星かいな」

 

「分かるんですか。何も喋って無いのに?」

 

 図星は図星だけど何で分かったの僕何も行ってないよ? 

 

「顔に出まくっとるやんけ······そうやったわ、お前は気づいとらへんのやったな」

 

「え?」

 

 お前はって何? 皆は知ってるの???? 

 

「そんなコトはどうでもええわ! 納得出来とるんやったらホンマにお前は何に悩んどんねん!」

 

 更に剣と剣が再びぶつかる。状況は変わらず劣勢。

 

「作戦の前から変わりすぎやろ! ウチからかうぐらい生意気やったお前が何をどうしたらこんな揺らぐんや!? 藍染か!? 藍染のせいなんか!?」

 

 身体を動かし続けて重ねた疲労が判断を、思考を鈍化させていく。そのせいで口を滑らせる。

 

「揺らいでるのは! 僕の······復讐心です! 藍染のせいなんかじゃ、無いです!」

 

「復讐心!?」

 

「あ!?」

 

 ヤッバ!? 

 

 自分の失言に気を取られて相手の攻撃の防御を怠ったが何とか直撃する前に猿柿さんが剣を止め「突然止まんなや! 危ないやろ」と怒りながら距離を取る。僕の謝罪を聞き届けた後にため息を一つ吐いてからまた話を続ける。

 

「復讐心が揺らいどる······それがお前がウジウジしとった理由か」

 

「·········はい」

 

 流石にもう隠せないか。と察し諦めるつつ次の質問に備える。

 

「何で作戦の後なんや? 悩む間なんて何時でもあったやろ」

 

「初めて敵と戦って気づいたんです。僕は殺すのが怖い、きっと親父の仇の滅却師さえ殺すことが出来ないって」

 

 口に出すとより一層、復讐心の薄れを感じるようでとても嫌な気分だ。

 

「殺すのが嫌やから復讐心が揺らいどる? 何でや?」

 

 心底疑問といった風体で首を傾げている。

 

「だって、僕の復讐心が死を厭う気持ちに負けたんですよ? 親父に対する感謝が大きいんならそんなこと無い筈でしょ·····!?」

 

 その態度に不満を持ってつい語気を強めてしまう。

 

「いや、両立出来るやろ」

 

 何でも無いことのように猿柿さんは語る。そんな堂々たる姿を見て僕は困惑する。

 

「え?? 何でですか?」

 

 そんなわけ無い。それなら天秤に掛けるまでもなく殺せる決断が出来て然るべき筈だ。

 

「復讐て別に殺すことだけが復讐ちゃうやろ。それになお前の父ちゃんへの感謝っちゅう奴は薄れてないで」

 

 僕が反論しようと言葉を紡ぐより先に更に言葉を続ける。

 

「さっき、顔に出やすいって話ししたやろ。お前はこっちに来てから今までお前の父ちゃんの話を沢山してきた、そん時の顔見てたから断言出来るわ」

 

 僕の知らない僕の話を復唱されて皆からは僕はどう見られているんだろうと疑問に思う。そういえばそういうことはあまり気にしたことが無かった。この話を聞く限りもしかしたら僕は想像とは全然見られ方をされているんじゃないか? 

 

「そう、ですか」

 

 でも、それなら良かった。猿柿さんは悪質な嘘は吐かない人だ。それは断言出来ること。僕は親父のこと、ちゃんと心に刻めていた。

 

 霧が晴れたような気分だ。

 

 にしても僕の疑問に僕が答える形になったな。また機会があったら皆に僕の印象を聞いてみよう先の未来の暗雲も晴らしてくれるかもしれないし。

 

「マシな顔になったわ。じゃ、次の作戦会議しに戻るで」

 

「次って·······あ、尸魂界侵入」

 

「何や·····まさか忘れとったんか!? 重症すぎやろ!」

 

「あはは·····ごめんなさい」

 

 ここまでの失敗は想定していなかったとはいえ失敗用のスペアプランは一応作ってあったのだ。こっちの戦力は少ないならば皆纏めて4つ巴にしちゃおうの案だ。

 

 晴れた霧に次の目標はハッキリクッキリ後は会議と実践あるのみ。

 

「よーっし! 会議行きましょう!」

 

「いや、突然元気になりすぎやろ!?」

 

 待ってろ滅却師! 僕の復讐を見せてやる! 




次章『尸魂界争乱篇』
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