僕の親父は転生者らしい   作:地底土竜

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未来の因縁と未知の領域

 時間は少し巻き戻り滅却師出現直後、仮面の軍勢が集結している地点。

 

「“天挺空羅”が中断されマシタ·······!」

 

「どないなっとんねん! 滅却師はもう出てきたっちゅうんか!?」

 

 鉄の割れるような音に破壊された鬼道、あり得ない滅却師の出現タイミング。全員がその異常事態に混乱していた。

 

「姿は無く、霊圧も無い。これはこれは堅牢だね。だけど“音”は誤魔化せていないみたいだ」

 

「!」

 

 声と同時に全員が始解状態に移行、拳西は“断地風”を振るい風の斬撃を声の主へ放つ。

 

「いい反応だ。尤も────―」

 

「“神の歩み(グリマニエル)”」

 

 至近の真後ろに音もなく完聖体状態のロバート・アキュトロンが銃を構えた状態で立っておりトリガーを引いた。

 

「僕に注意を向けた段階で事は既に終わっているけどね」

 

 銃口から放たれたのは散弾。一面を覆うほどの弾の全てを咄嗟に避けることは出来ず幾つか直撃する。しかし痛みは無い。当たったのは弾というより青い絵の具の様な何かだった。

 

 だが、ただそれだけで終わる筈が無い。青は光を放ち形を変えていく。変化した後の形は足跡。

 

「何やねん!? どない────」

 

 青が極限まで輝きを放ったとき全員の姿がその場から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおっ!? ············ちっ、あの野郎」

 

 光と青が消えた時には視界に映る建物群はその様相を変えず瀞霊廷内部。しかし周辺に待機させていた霊圧遮断車は無い。瞬時に転移させられたことを理解した拳西は周囲を把握しようとするがそれよりも早く声が投げ掛けられる。

 

「君は確か仮面の軍勢の六車拳西だったね」

 

「ッ!?」

 

 後ろからの声に即座に飛び退き断地風を振るう。先とは違い確かに直撃するが一撃が起こした砂塵の中には無傷の男が立っており構わず言葉を続けながら突っ込で来る。

 

「転移か、ガブリエリは成功したんだね」

 

「てめえ········」

 

 こいつは確か·····蒼都(ツァン・トゥ)って名前の野郎だったか。

 

 瞳の語った特徴のフードとフラットシューズ、鉤爪と顔の傷全てが当てはまっている。攻撃が通じなかった原因は彼の聖文字“鋼鉄(ジ・アイアン)”による硬化だろう。

 

 瞬時に仮面を付け蒼都の一撃を往なしてから始まった戦闘は拮抗している。聖文字の影響で攻撃は通りづらいが元々双方が体術を極めている所に虚化による身体強化分拳西が密かに機動力で上回っている。

 

「あ、拳西いたー! 白~虚閃キーック!!」

 

 間に場違いな声が割ってはいる。声の主は久南白、彼女が転移した位置は屋根の上で周りに聖十字騎士団も居なかった。そして霊圧遮断探知装置で近くの味方を探したところ拳西に行き着いたのだ。

 

 放たれた白の虚閃を拮抗した戦闘の内にいた蒼都は避けきれず直撃する。

 

「ぐぁっ!?」

 

 直撃し吹き飛ぶ蒼都にすかさず追撃に断地風を五度叩き込む。これには“鋼鉄”でも受けきれなかったようで胴体に深い切り傷ができ、血が地を濡らしていた。

 

 そんな彼の遠方上空、別の滅却師が死神と交戦している姿が見える。その滅却師の特徴には見覚えがあった。マスク・ド・マスキュリン、元々滅却師との戦いに備えて対応すべき順位が決められていたがその内でも上位に位置していた男だ。何故なら能力により際限なく強くなり続ける。元々能力について理解していれば対応は出来るがそうで無いなら手が付けられなくなる。見たところ応対しているのは仮面の軍勢ではなく隊長、明らかに不味い状況だった。

 

 聖十字騎士団は殺せばユーハバッハの糧となる。そのため死なずに気絶させ続ける必要がある。虚用スタンガンのようにこれに対しても専用武装が製造されていた。海渡町瞳は停止装置と呼ぶそれは虚用スタンガン開発のために使われたこともある組成解析装置を更に改良した瞬時に相手の状態を解析する装置と虚の因子と光の矢を流し込み体内の虚因子濃度を調整する装置を合体させたものだ。

 

 滅却師は虚への抗体を持たず虚化という事象が起こらず死ぬ存在だが中でも聖十字騎士団は第六十刃グリムジョーに心臓を穿たれても喋る余裕を見せていた者がいたり、星章化という技術で死神から奪った卍解を侵影薬という薬で一瞬虚化させた時も卍解と肉体の接地点は一部崩壊しその部位に傷が付いた(例を挙げると本編で侵影薬を喰らった際、蒼都が奪った大紅蓮氷輪丸で出現する氷の片翼だけが崩れ背中のその位置から血が吹き出した)が全ての崩壊まではタイムラグがあったり一応少しなら耐える事が出来るようでそれでも弱点ではあるから虚因子をちょっと注いで光の矢で消すことを繰り返せばある程度深いダメージを負った滅却師なら気絶に追い込めるのだ。

 

 拳西はそれを蒼都に喰らわせると白もマスキュリンに気が付いたようで大声を出す。

 

「あー!」

 

 白は優先対応順位を高い奴を倒せば目立てるランキングと勘違いしているので真っ先に飛んでいく。

 

「待ちやがれ!」

 

 それに拳西が追随して現在に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!? 貴様らは浦原喜助の·······! 何を────」

 

 拳西達を見た砕蜂は過去を思い出し怒号を上げようとするが真横から飛来した神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)がそれを中断する。

 

「マスキュリン、お前の興味がそっち行ったなら俺がコイツ倒して良いか?」

 

「構わんぞ! ワガハイはこの悪党共の減らず口を叩き潰すのに忙しいからな!」

 

「ってな訳だ。掛かってこいよ、隊長とあとそこの副隊長?」

 

「貴様······!」

 

 双方二対一で状況は確定し仕切り直された戦闘がまた始まる。

 

「白~虚閃スラ~ッシュ!!!」

 

 先手を仕掛けたのは白、虚空にチョップをするとその場に三日月型の虚閃が現れマスキュリンに飛んでいく。

 

 しかし直撃コースにいたマスキュリンの姿が消え、

 

「スター・タブルパンチ!!」

 

 二人に神速のパンチを直撃させた。

 

 遠方吹き飛ばされた二人の内、拳西の方にマスキュリンは超距離の跳躍からの膝での飛び蹴りを喰らわせようとするが何とか回避。

 

 しかし受けた一撃のダメージは大きくそもそも動きを認識することが出来なかった。

 

「む、外したか」

 

 くそ······ッ既に力も速さも俺を上回ってやがる······! 

 

「次でトドメを刺してやろう!」

 

 なら、攻撃の起こりを見切るしかねえ·····! 

 

「スター·····」

 

 攻撃の踏み込みが始まった瞬間に“鐵拳断風”の刀身を地面に叩き付ける。すると地面に効果の無限の衝撃で叩き込まれ自分の足場ごとマスキュリンの足場が消滅する。思い切り踏み込んでいた地面が無くなったマスキュリンはその場で転倒してしまう。

 

「ぬおおォォォ!???」

 

 隙だらけになったマスキュリンの脇腹に無限の衝撃を喰らわせる。

 

「ごああァァ!!?」

 

 最初は背を上に倒れていたマスキュリンの体は痛みで浮き上がりすかさず鳩尾に一撃を叩き込む。それで前のめりになった顔面に渾身のアッパーカット。

 

 力も速度も上の相手に出来ることは何もさせずに叩き潰すこと。その実践は成功した。

 

「片割れはどうなってやがる?」

 

 ジェイムズを探し拳西は移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 一方シャズ・ドミノは砕蜂と大前田に圧倒的優位を持って立ち回っていた。

 

「てめえらの始解も何もかも俺の静血装には無力だぜ?」

 

 滅却師の内の特に純血が発現しやすい力、“血装(ブルート)”。それには二つの種類がありその名も“動血装(ブルート・アルテエリ)”“静血装(ブルート・ヴェーネ)”前者は攻撃力を底上げし後者は防御力を上げる。“静血装”は大半の隊長の始解を無傷で受け切る程の性能を有している。

 

「縛道の三十『嘴突三閃(しとつさんせん)』」

 

「無駄だぜ。そんな柔なモンは簡単にバラせちまう」

 

「なッ!?」

 

 出現した黄色い三つの牙は砕け周辺の空に光球として変換される。シャズ・ドミノの今の聖文字は“ϛ”だが元々“V”の“生存能力”だった。今もその能力自体は変わっておらず負ったダメージを周辺からかき集めた霊子で癒す。そのかき集める能力だけを作用させ劣化“聖隷”のようにし縛道を分解した。

 

 今、ドミノはジェイムズを小脇に抱えながら空に霊子の足場を作り立ち、砕蜂達が上がって来ようとしたらその為に作る霊子の足場を分解することで遠距離攻撃しかそもそも届かない状況にしており鬼道ぐらいしか通じないがそれすら分解される。

 

「卍解」

 

雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)!!」

 

 隊長最後の切り札である卍解、特に砕蜂は射撃タイプで巨大な金色のミサイルを相手に放つので距離がある相手にも大火力を叩き込める卍解だった。

 

「漸くかよ。遅ぇなあ」

 

 ドミノが懐から小さな鉄の円盤を取り出すと卍解が砕け吸い寄せられていく。

 

「何!?」

 

 そして全てが内に収められる。

 

「卍解を······奪ったのか······!?」

 

 驚愕する砕蜂を無視して飛び去ろうとしていた所に拳西が到着する。

 ジェイムズを確認した瞬間飛びかかるが霊子の足場を分解され地に落ちる。

 

「まさか、ミスターを!」

 

「まさかやられやがったのかマスキュリン。最初は圧倒してるように見えたが気のせいだったか?」

 

「ま、どうでも良いか。ほら送ってやれよ『声援』ってヤツ。お前が叫べば何処にいても発動するんだろ?」

 

「ヘェイ! 助けに来てくだサイ! スーパースター!」

 

 遠くに光の柱が立ち上る。移動を始めたそれは建物を物ともせず通り道全てを蹴散らしながら拳西目掛けて接近し一瞬で到着、拳西を上空へ蹴り上げた。そのマスキュリンの姿は大きく変わっておりマスクは黒に赤いライン、上裸で黒の短パンとグローブを着用している。

 

「マスキュリン、ジェイムズ返すぜ」

 

「む、そうだったな。感謝する」

 

「気にすんな、俺は行くぜ」

 

 ジェイムズを放り投げ何処かへ走り去るドミノを見送り拳西へ向けてマスキュリンは飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして遥か上空、一撃を受けた拳西は一瞬の意識の断裂から立ち直りマスキュリンを待ち構える。

 

 すると空気が震える音が聞こえる。

 

「!?」

 

 脳内の警鐘が鳴り響いた拳西は咄嗟にナックル状の刀身二つを衝突させ、衝撃で後ろに飛ぶ。

 

 そうするとさっき体があった位置に竜巻が通過する。これはマスキュリンのあまりの速さに姿が認識出来ずに起こした風の揺らめきを竜巻と誤認したのだ。それ程までにマスキュリンと拳西の力の差は歴然だった。

 

 そして、

 

「ぐっ·····!」

 

 避けきれてはいなかった。両腕に無数の切り傷が発生している。掠めただけでもダメージになり得たのだ。

 

「運が良かったな! 悪党よ! しかし次はないぞ!」

 

 そこから続く認識を越えた連撃を技前にわざわざ言う技名から起こりを何とか察してギリギリの所で直撃を避け続ける。

 

 体はズタズタになり続けもう血塗れだ。

 

「真の力を解放したワガハイの前には無様に逃げ惑うしか出来ぬだろう! しかし、終わりだ悪党よ!」

 

 言葉の後、力を溜める動作をすると蒼い光のマントと頭の後ろに星形の光が出現し拳西の上空で空に巨大な星を高速で描くとその中心で止まる。

 

「この蒼い神の意向こそ正義の証! この姿と共に放たれるワガハイの必殺技により貴様を滅却してやろう!」

 

「スター・フラッシュ········」

 

 技の発動直前、拳西は先と同じく無限の衝撃を利用した移動を行いマスキュリンの真上に飛び射程圏外に逃れつつカウンターを決めようとするが、

 

「逃がさん!」

 

 直ぐ様全身を回転させ拳西へ向き直る。

 

「スーパー・ノヴァ!!!」

 

「舐めてんじゃねえ!!」

 

 マスキュリンの顎を蹴る。ダメージを目的にする訳じゃない、相手を蹴って空中にある自分の体をズラしたのだ。

 

 必殺技の光が虚空を捉えた隙に両腕で殴り付ける。しかしまるで堪えていない。

 

「最早貴様の攻撃など埃に劣る! しかし、ワガハイの必殺技をよくも──────なんだとォォ!??」

 

「おおおおオォォォォォ!!!!!!!!!!!」

 

 拳西は虚化していた。

 本来虚化のための内在闘争と卍解による負荷の両方に対応することは出来ない。しかし、瞳からの未来での強敵達について聞いた一部の仮面の軍勢は死に物狂いの特訓の末、最大一秒間の卍解虚化を可能にしてみせたのだ。

 

「ゴッおあァァァァァァ!!!!??????」

 

 二つの力を束ねた一撃の威力はマスキュリンの身体強度を上回り全身に炸裂する。

 全身が内から弾けるような痛みに絶叫していたマスキュリンはやがて気を失い、

 

「ふっ飛べぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 地面へと叩き落とされる。

 

 超上空から降り注いだマスキュリンは巨大なクレーターを作って気絶していた。

 

「こいつ······まだ生きてやがるのか。頑丈な野郎だ」

 

 地面まで降りてきた拳西はマスキュリンに毒づきつつ停止装置を突き刺す。

 

 卍解を解き何処かへ飛ばされた白を探そうとした拳西の足元に何かが落ちてくる。

 

 それは傷だらけの白だった。

 

 そして更に周辺に人影が降り立つ。

 蒼都だ。既に倒した筈の敵だった。

 

「てめえは」

 

「ああ、本当に危ない所だった。完聖体を発動させなければね」

 

 そう言う彼の背中には歯車のような翼があった。完聖体を発動するとそれぞれに特徴的な霊子の翼が出現する。

 全身傷だらけで動くのも苦痛な程の体を何とか動かし“断地風”を振るう。通じないのは分かっているが振るわない訳にはいかなかった。

 

 それを蒼都は握り砕いた。バキンと鉄を砕くような音と共に。

 それに驚くより先に鉤爪の斬撃が拳西を切り裂き倒れる。

 

「彼女は君の大切な存在だろう? 共に生きたものは共に死すべし。僕の流儀でね。並んで死んで貰うよ」

 

 そして最後の一撃を振り下ろそうとした時、

 

「その変な流儀のおかげでこっちの仲間は死なずにすむわ、ボケ」

 

 後ろからの斬撃を勘で聖文字と静血装を合わせて防ぐ。

 

「仮面の軍勢、矢胴丸リサか」

 

 仮面と一撃の威力の高い始解、“鋼鉄”だけならダメージを負っていただろう。

 

「仕留めるつもりで斬ったんやけどな·······お前やろ、通信鬼道潰して回ってた奴は」

 

「··········」

 

 横槍に次ぐ横槍、戦線は混迷を極めていた。

 

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