中堅冒険者たちの英雄譚   作:きのこのこのこ元気な子

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大樹都市『メリンディガル』
あの日を思い出してみて


 明日を求め、今を求め、未来を求め。

 自ら死地へとダイブする狂人たち、昔の冒険者の認識が()()だった。

 数十年前は各地に数人いればよかった方ではあったが、ここ数年はその真逆。

 今では冒険者は、金と名誉を求め彷徨う夢見る者たち、なんて扱いだ。

 

 何故そうなったか、と言われると解説に数時間必要なため省かせてもらう。

 端的に言えば世界の中心に生えてしまったもののせい、と言うべきか。

 ともかく、冒険者ってのは死ぬ可能性のある宝クジみたいな? そんな感じ。

 

 って、言うのがこの世界の『設定』。

 なに言ってるかわかんねーと思うが、俺も生まれて数年が経つまで状況すら把握できなかったのだ。

 結論から言うと、俺は転生した。

 

 前世は日本の社会人、ブラックでもホワイトでもない平凡な会社に勤めて、気づいたら死んでいた男だ。

 そして今世ではなんとその前世で死ぬほどハマっていたゲームの世界に転生していた。

 時代もちょうど、原作の数年前ぐらいに。

 

 なんか目が覚めたら赤ん坊で、あぶあぶしてたら知らん名前で呼ばれて。

 あー、転生したんだなぁ、ってのをぼんやり考えていたのは覚えている。

 数年してからゲームの世界に転生した、ってはっきり認識して発狂したんだが。

 

 それで俺は転生してから考えた。

 働きたくねぇ、と。

 特にこれと言って大きな理由もなかったが、何かしら挙げるとすれば働きたくない、と無気力になったわけだ。

 

 運が良いことに俺が転生したのは、ゲーム内でも言及されるようなお貴族様の三男で家に次ぐ立場にはない。

 なんなら家族仲は良好で、次男は腑抜けて姉と妹は毎日を苛烈に生きている。

 つまり家には大量に金があるし、立場的にも出番的にも原作との関わりはゼロ。

 なら長男に擦り寄ってニートするのありじゃね? と考えたわけだ。

 

 その希望も成人してから粉砕されたのだが、ちなみに前世と同じで成人は二十歳を指す。

 で、成人してから、って話だったが、ある日親父に呼び出された。

 親父ってのは我が家の当主で、ご先祖様の時からめちゃくちゃ偉いらしい。

 何をしたのかはよく知らんが。

 

「エレオ。働く気は無いのか」

 

 エレオってのは今世での俺の名前だ。

 変な名前付ける親じゃなくてよかったと思ってる。

 

「ないけど」

「……即答だな」

「親父殿──俺ァ、兄貴たちのように天才なわけじゃねぇ。妹からもバカにされてる。そんな奴が表に出てみりゃ一家の恥だ」

「なにを言うか、私の息子であるお前を恥じなどと、誰が言わせるか」

「そりゃ……それは……」

 

 それ言われるとなんも言えなくなるからやめてほしい。

 

「と、言うわけでだ」

 

 ここで雲行きが怪しくなってくる。

 俺はなんとなくやな予感がしていた。

 

「エレオ、家を出ろ」

「は?」

 

 我ながら素っ頓狂な声が出たものだと思う。

 が、出てしまうのも無理はないだろう。

 あの発言から家を出ろだ、流石の俺も驚きは隠せない。

 

「お前には大樹都市『メリンディガル』へ行ってもらう」

「ちょ、はぁっ!?」

「……冒険者になるのだ。エレオ」

 

 冒険者、死ぬ確率が一番高い職業……職業かな、多分職業。

 もし上手くいけば人生安泰、だが少しでもミスれば死が待つ。

 まさにギャンブルのような職業だ。

 

 前世でやってたゲーム内で、冒険者がどんなのは嫌という程思い知っている。

 一つミスればモンスターの罠によって死亡。

 戦闘でのミスで死亡。

 その他諸々色んな死因が詰められた地獄。

 そこに行けと、親父殿は仰ったわけだが。

 

「殺す気か!?」

 

 色々と言いたいことが出てきて最初に出た言葉がそれだった。

 それに対して、色褪せた金色の髭を触りながら親父殿は驚いたような顔をしていた。

 

「まさか! エレオ、お前の才能は何よりもこの私が知っている。それを発揮できる場所がそこだ、と言うだけだ」

「才能発揮する前に死ぬよ!? 俺!!」

「その時はその時だな」

 

 とまぁ、こんな感じで。

 今世の我が家のスタンスが流れ乗ってだったと言うのもあり、俺はその日に家を追い出されたのだった。

 追い出されたって割には家族総出で見送られたのだが。

 兄は何故か泣いていた。

 

 

 ▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「──で、俺はこっちに来たわけ」

 

 それから五年後、冒険者となった俺は五人の仲間とともに、冒険者と言う安定しない仕事をする毎日を送っていた。

 今はちょうど仕事終わりの酒場で、丸机を囲いながら、お互いの出自について話そうってことになったところだ。

 出会って数年経つのに、話していないのもどうかと思うが、話の流れ的にそうなった。

 当然ながら転生云々は省いてる。

 誰も信じないしな、あんなの。

 

「そんで? そっからいつアタシと会ったの」

 

 俺の話を聞き終えて最初に声を出したのは、対面に座る色濃い赤髪を持つうさ耳の少女、ヴィレットだった。

 少女とは言ったがそれは外見だけで、中身は俺と同い年。

 ぱっと見、身長が140ぐらいしかない上に童顔なのだからそう見えるのも仕方がない。

 

 こいつは俺が冒険者となって初めて組んだ相手でもある。

 なんだかんだで付き合いは長い。

 

「一週間後」

「ほーん。一週間後ねぇ……」

 

 そう言うと顔が真っ赤なヴィレットは、しゃっくりをして天井を見つめた。

 完全に酔いが回っててやばそうだ。

 また吐かれるのは嫌なんだが。

 

「そうか。それは大変だった……と、言うべきか?」

 

 次に声をあげたのは、俺の右斜め前に座るトカゲのような外見を持つ男だった。

 名前はネックス、人間とは違った種族であり、いわゆるリザードマンってやつだった。

 まぁこの世界じゃ、種族と言うより『先祖返り』として扱われるのだが。

 ヴィレットも同様だ。

 

「まぁ、家族が家族だからな。大変だとも言い難いだろうよ」

「ふむ、そんなものか?」

「妹なんか、冒険者になるとか五歳の頃から言い出す始末だ。どうぞどうぞと言ってやりたい……とは言えんな。大切な家族なのは間違いねぇし」

 

 俺は手に持ったジョッキを勢いよく傾け、残っていた酒を一気に飲み込む。

 酔いが回ってきたのか少し視界が揺れているが、日常に比べたらモーマンタイである。

 

「あ、あの! エレオさん! 故郷の話もっと聞きたいです!」

 

 ネックスの次は俺の右隣に座る猫耳少女、ミリアだった。

 彼女は未成年なので手に持っているのは、オレンジジュースの入ったジョッキだ。

 

「故郷、ねぇ。要塞都市『ヴィンガーデン』、か……まぁ、いいとこだよ。海に面してるし。少なくとも魚は美味い」

「お魚さん! 食べたいです!」

 

 目を輝かせてオレンジジュースを一気飲み、そして小さくゲップしてから顔を赤らめた。

 俺はそれに笑って話を続ける。

 

「魚料理なら出してくれっだろ、ここでも」

「あそこに比べたら、こっちの魚料理なんて食べれたもんじゃないわね。最高だもの、あそこの魚料理は」

 

 そこから話を続けたのは左斜め前に座った銀髪女、アニカだった。

 彼女は俺の幼馴染であり、色々あって疎遠になっていたが、こっちで再開して同じパーティをやっている。

 実は彼女もある種族の『先祖返り』だったりする。

 

「そりゃどうも。つってもお前……食いに来たことあったっけ?」

「何度も行ったわよ! 貴方が誘ったんじゃない!」

「あー……そうだっけかぁ? ……そういや、そんなこともあったな」

 

 そう言えばそうだ、魚料理の美味さを周囲にも理解して欲しくて誘ったんだっけな。

 感激してたのを今思い出した。

 しょっちゅう海戦してるのに綺麗すぎるからな、あそこの海は。

 

「あれって、何であんなに美味しいかったのかしら……」

「要塞七不思議ってとこだな!!」

 

 と、割って入ってきた最後の仲間が俺の左隣でジョッキを傾ける茶髪の男、レジークだ。

 なんだかんだでこいつの付き合いも長い。

 出会ってから大体、八年になるだろうか。

 

 そんなこと考えながら、俺は酔いが回った頭で会話を続けようとする。

 

「おめぇ、いつ来たっけな……うちに……」

「二年生の夏休みだな!」

「……そういや、そうだったような、気が、すんなぁ……」

 

 まずい、眠くなってきた。

 流石に十五杯目でやめておくべきだったか。

 会話が頭に入ってこない。

 

「……」

「おい? エリオー? あ、こりゃダメだな。意識手放す一歩手前だ」

「ヴィレットさんも寝てますしね。そろそろ帰りますか?」

「そうだな、それがいい」

 

 何言ってるのかさっぱりわからん。

 取り敢えずクソ眠い。

 後のことはみんなに任せるとして、俺は、眠ることにしよう。

 

 なんて薄らボケた頭で考えながら俺は意識を手放して行く。

 また明日から死と隣り合わせになることを知って。




【情報1】
エレオ
金髪碧眼の176cmの身長を持つ(外見だけは)イケメン。
やり込んだゲームの世界に転生してきた男で、知識はそれなりにある。
が、二度目の人生を送り始めたことでニート生活を望んでしまい、(建前上は)家から追い出され、巨体な都市で冒険者を始めることとなった。
主な武器は槍を使用し、中衛からの支援と攻撃を主な行動とする。
ちなみに仲間はこいつが全員集めた。
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