死灰を纏う旅人 作:灰の旅路
海軍基地にて、賞金首とその海賊船を引き渡して金を受け取ったクラウンは、そのまま小舟に乗って当てもなく進んでいた。
クラウンは悪魔の実の能力者だ、アシュアシュの実を食べた灰人間。
身体を灰に変えたり地面などを灰に変える事が出来る。
そして副次効果として炎や熱などに耐性を持ち、出す灰によっては能力者にとって弱点である海水を防ぐ事も可能だ。
更に擬似的な爆発やメラメラのような炎を出す事もできる。
灰でありながら様々な事に応用が効く為、クラウン本人も食べて損はなかったと思っている。
しかし、能力者としての技量は高い方ではあるもののかかっている懸賞金は600万ベリーと少ない。
クラウンは海軍に対して何かしたという訳でもなく、市民に危害を加えても居ない、それに海賊旗すら掲げていない。
しかしそれでも悪魔の実の能力者であり、不定期とは言え海賊団丸々一つを一人で制圧出来るほどの脅威ではあるので、一応かけられているのである。
そのままのんびりと小舟を進ませていたクラウンは、目線の先に町がある有人島らしき島を見つける。
旅する身ではあるので、興味本位で上陸する事にした。
まず、島に上陸したクラウンは浜辺をぐるりと見る。
人が誰も居なければ、小屋がある訳でもない。
しかし上陸する前には人口物は島にあったので、人は居るだろうと考えたクラウンは小舟を盗まれないように浜へ上げて、能力を使用する。
砂浜の一部が灰色になり、盛り上がる。
盛り上がった灰はのっぺりとした人の形になると、小舟の側に立つ。
これはクラウンがよく使う『
そのまま小舟を
道はある程度舗装されているものの、デコボコであり石が目立つ。
そんな道に溜息を吐きつつも、クラウンは街を目指して歩き続けた。
歩いてしばらくして、町らしき門が見えて来た。
門の両脇に門番が居る事はなく、どうやら完全フリーなようだ。
そのまま町に入れば、活気溢れる人の声があちらこちらから聞こえて来る。
クラウンはそんな町を見て回りながら買い食いをしていた。
買い食いを終えて帰ろうと思ったその時、ふと町の裏路地が何となく気になった。
クラウンはそのまま裏路地へと入る。
路地裏は少し暗く、ただ真っ直ぐとした一本道だった。
そのまま奥へと進んだクラウンは、行き止まりに佇む店に辿り着く。
店の前には恰幅の良い男が何やら店のドアを弄っていた。
男は振り返ると、クラウンを怪訝な目で見つめる
「んん?見ねえ顔だな、どうやってココが分かった?」
「何となく気になったので来ただけだ」
「つー事は、てめぇ…奴隷の店と知らずに来た訳か…ここを海軍に知られたくねぇからな…おい」
そう言うと店の中から体格の良い大男が二人現れる。
「てめぇの選択肢は二つだ。黙って帰るか、それか客として奴隷を買うかだ」
そう言いながらも、大男二人は拳を握って威圧している。
「なら、奴隷を見せてくれ。そろそろ人手が欲しかったんだ」
町の裏路地とは言え、争い事を起こすのは面倒な事になると思ったクラウンは、気にはなったので奴隷を見る事にした
「そうかよ、んじゃあアンタさんは今から客だ。店に来い」
そう言って恰幅の良い男と大男達は先に店へと入る。
クラウンも続けて店に入った。
◆
店の中は劣悪とは言えないにしても、少し汚れが目立っており、奴隷の入れられた檻が奥に8つだけある簡素なものだった。
「あいにくだがアンタに売ってやれる奴隷は二つしかねぇ、残りは全部先約が居るんでな」
そう言って、大男二人に檻を持って来させる。
クラウンの前に、二つの檻が置かれた。
片方はガリガリに痩せ細った少女だ。青白い肌に正気の薄い目をしてただ横になっている。
その隣の檻には震えながら座っている少女がいた、少し痩せているもののガリガリと言えるほどでもないが、その目は泣きじゃくったのか赤くなっており少し腫れていた。
「この二人は口減しに売られた奴らでな、片方は見ての通り殆ど瀕死だ。もう片方はつい先日売られてな、買い手が居ないから見せているだけだ」
その二人を見て、クラウンは問いかけた。
「仮に二人を買うとしたら幾らだ?」
「あぁ?片方ならまだ分かるが両方だと?…まぁ俺は売れれば問題ねぇからいいけどな…こっちなら元気で見た目もいいから150万、もう片方は…こんなんじゃ買い手も付かねぇし、需要なんてねぇからな。処分するにも費用がかかるからタダでくれてやるよ」
「この二人を買う事にする」
クラウンはそう言って札束を男に投げ渡す
札束をキャッチした男はペラペラと枚数を確認する。
「まいど」
「それとそっちの痩せ細った方に飯を食わせたい、ここに食料はあるか?」
「あぁ?んなもん外の露店なりで買えばいいだろ?第一、うちの食料は奴隷用だ。そもそもこの痩せ細ったのも、飯を与えても食わなかったからだしな」
「…そうか、なら暫く置いてもらって良いか?露店で買ってくる」
「……まぁ、金を払ってくれて厄介なやつも引き取ってくれたからな、それくらいは許してやるよ…ちゃんと戻って来いよ?」
「ああ…」
そうして店を出たクラウンは、露店でスープや粥などの胃に優しい物を購入して再び戻って来た。
そのまま檻を開き、痩せ細った少女にスプーンで粥を掬い口に流し入れる
「少しづつでいい、食え」
「う…ぅ…」
吐き出そうとしているのか、苦しい顔をしている。
「吐き出すな、食え」
クラウンは口を指で塞ぎ、無理やり胃の中に入れさせる。
そんな行為を、暫く続けた。
結局、粥の一杯で限界が来たのか、少し血色の良くなった少女はすやすやと寝息を立てて眠った。
「……やり方はあんまり良くねぇが…よく食わせたな…俺じゃ口に入れても端から零してたぞ…」
「…老人の介護のようなものと思えばな」
「…そうかよ、さぁ、帰った帰った!これ以上アンタをうちの店に居座らせる義理も何もねぇからな」
「そうだな」
クラウンは少女二人を器用に抱っこして店を出る。
「……あの顔、どっかで見たが…誰だ?」
店主である男は、クラウンが誰なのか終始分からなかった。
◆
そのまま裏路地から飛び越えて月歩で浜に戻ったクラウンは、
「……ひ、ぅ…」
「…zzZ」
片方は寝たままだが、もう片方は怯えたままだ。
クラウンは怯える少女に目線を合わせるようにしゃがんで喋りかけた。
「安心しろ、お前を襲う気もない。ただこの小舟を見守る人員が欲しかっただけだ」
そう言ってクラウンは少女の頭を雑に撫でた。
最初は驚くも、少女も危害を加えられないと分かったのか暫くすれば撫でられるがままになった。
「…オーダーメイドとは言え、四人程度は入れる設計にして正解だったな」
そう呟いたクラウンは二人の少女を小舟に備え付けてある古屋に入れさせる。
「さて、出るか」
機械に手を翳して起動させれば、小舟はゆっくりと動き出す。
そのまま、クラウンはまた大海原へと進み始めた。