死灰を纏う旅人 作:灰の旅路
そのままグイグイ来るガイラをやんわり押しのけて、クラウンはダツラの家に入る。
家の中は大穴が空いており、綺麗な景色がよく見える。
「はー…また直さなきゃならねぇ…」
そんな光景を見ながら頭を抱えるダツラを見ながら、クラウンは客用であると思われるソファに二人を降ろす。
「なー、にーちゃん答えてくれよー!」
しつこく聞いてくるガイラを見て若干イラッとしたクラウンは、その頭を掴む
「い、いだだだ!?なんでぇ!?」
「しつこく聞くからだ。こっちは遭難してる上にこれから話があるんだよ、お前の個人的な質問に答えられる余裕はない」
そう言って離すとガイラは頭を抱えて蹲る。
「ったく、元気なのはいいけどなぁ…少しは母さんを見習って…」
「かーちゃんの話はすんなよ!!」
ダツラのその物言いに怒声を上げて立ち上がったガイラは、大砲を引いて玄関へ行く
「…かーちゃんはもう居ないんだ。その躾の仕方、変えてくれよ」
そう言って出て行った。
それを見ながら、クラウンは話があるまで座って待っていた。
「…いやぁ、すまねぇな。坊主…見苦しいもんを見せちまってよ」
「いえいえ、それぞれの事情ってのがありますから」
その言葉を聞いて、ダツラは椅子にどかっと座る
「…俺の妻が海賊にやられちまってからアイツは…船大工の修行の合間に武器…特に大砲を作るようになっちまった…。情けねぇもんだ…父親だってのに愛する妻は守れずに、娘さえまともな教育も出来ねぇ…」
そう言って顔を伏せたダツラはすぐに顔を上げてクラウンに問いかけた。
「そんじゃあ、こんな空気の中で悪いが…坊主達の話を聞かせてくれ」
「分かりました、まずこの島に流れ着くまでなんですが…」
◆
大砲を引きながら、ガイラはいつもの場所を目指す。
そこはこの島で一番海に近く、そして高い崖だった。
大砲を水平線に向けながら、ガイラは双眼鏡で水平線の彼方を見る。
「さて、今日の海は……っと…何もない…かな?」
そのまま辺りを双眼鏡で見ていたガイラは船を見つける。
「あ、そこそこ大きい船だ……おかしい、何隻も居るなんて不自然…」
双眼鏡を変えてガイラはもう一度その船を見る。
「んー…?」
その船の旗を確認しようと目を凝らしながら見たガイラは
「…うそ」
その『海賊旗』を見て双眼鏡を落とす。
「……っ!」
即座に弾を込めて、大砲をその船へ向ける。
「沈め、沈んでしまえ!海賊はみんな、海の藻屑になればいいっ!」
そうして大砲から弾は放たれた。
◆
船の上で蠍のような形の鞭を持ちながら男は笑っていた。
「くくく、我が『大蠍海賊団』も船員が増えた事だ。丁度よく船大工どもの島がある…強奪のついでに船を奪うとしよう!」
『うぉぉぉぉ!!』
男の乗る船とその後ろの船から男達の雄叫びがあがる。
「船長!砲撃です!」
「砲撃だぁ?我が『黒蠍号』に大砲など無意味!鋼鉄の装甲は砕けんぞ!」
グハハハと笑う男は部下に問いかけた。
「それで?方角は?撃ったヤツは?分かるだろうなぁ?」
「へい!目的の島の崖付近、小娘が撃ったみてぇです」
「くくくく…つまりは宣戦布告って事だなぁ…!野郎ども!上陸したら全て奪え!男は殺せ!女は縛って好きにしろ!」
『うぉぉぉ!!!』
「グハハハ!威勢のいい女は嫌いじゃねぇ…待っとけよ、その顔をすぐに恐怖で染めてやる…!」
男はそう言って鞭を軽く振るった。