あとおい   作:心折

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魔法使いが殴り込むの好き


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話が違うやんけ。

 

そう思った。

 

鍛え上げられた四肢はしなやかに振るわれ、1本の木立が切り払われた。

 

……しんくうは?

 

 

「『あっ』」

 

「せ、精が出るな」

 

「『これは違いますよ?』」

 

「いやいや、見てたし」

 

「『いや、都合よくそこいらでカモネギが居合いを練習しているだけです』」

 

「そっかー」

 

 

誠に嘘である。その瞬間に発された雰囲気に空気は震え、湖面は揺れていた。

お陰様でここら一帯のポケモン達は逃げ出してしまった。

 

 

「『ご主人』」

 

「なに?」

 

「『私、強くなりました』」

 

「そうだね、君エスパータイプなのにかくとうわざ使えるよね」

 

「『はどうだん使えるようになりました』」

 

「うん、意味わかんないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は進化した。

 

家に来て2年、寝食を共にし、ゆっくりとした時間を過ごしてきた。

しかしそんな毎日はやっぱりというか、刺激がなかったらしく。

 

 

「『たいくつ』」

 

 

と言うようになった。

それ見た事かと、ボールの中に引きこもっていたいと宣っていた割には自由を求めているではないか。

 

しかしそう言ってくれるのは少し嬉しく、使いもしない貯金を下ろしてテレビを買った。

テレビ線を繋いで、電源を入れればそこからずっと釘付けになっていた。

 

そこでたまたまやっていたポケモンバトルの映像を見てから、ずっとソワソワとして落ち着かない様子だった。

 

その後何故かしきりに出かけるようになり、何故か怪我をして帰ってくることが多くなった。

 

ある日彼は出かけて2日帰らないことがあった。

どうかしたのだろうかと、散歩がてら探しに行ったりしたのだが、全く見当たらなかった。

 

仮にほかのトレーナーに捕まったのなら良いが、どこかで倒れられてたら困ると、それはくまなく探したが見つからなかった。

 

しかし、方々を歩き回ってくたびれながら仕方なく家に帰ると、軒先に縮こまったポケモンが居た。

 

探していた子に似てはいるが、背丈が随分違う気がする。うずくまっているのに既に彼と同じ大きさにある。

 

 

「どうした、大丈夫?」

 

「『わっ』」

 

「ありゃ、驚かせたか」

 

「『いえ』」

 

 

髪から覗く深紅の瞳にはどこか見覚えがあった。そして同じくして、ポケモンには進化なるものがあったなと。

 

 

「お前、のれんか」

 

「『は、はい』」

 

 

本日足を四方八方へ巡らせ探していた相手がそこにいた。

進化前は髪が両目を隠すように下がっていたため、それになぞらえた名前をつけたのだ。『のれん』と。

 

しかし目の前にいるのは両目があらわになって、見違えるようにスラリとした手足が伸びている。

 

 

「進化したのか」

 

「『えっと、はい』」

 

「……お前なんかいつもと違くない?」

 

「『なっ?!失礼です!』」

 

「いや、いつもの憎まれ口はどうしたよ」

 

「『オ、ァ……』」

 

 

顔を真っ赤にしてまたうずくまってしまった。

いつもなら帰るなり「『メシ』」と言い放ち、外に出る際には「『5ふんでかえれ』」とまで言ってのけるような横柄っぷりだったのに、目の前のポケモンは一体どうしたって言うんだ。

 

 

「進化したら性格も変わるのか」

 

「『いや、その、テレパシーをさらに上手にできるようになったと言いますか』」

 

「ああ、今までのは語彙のキャパシティを超えたテレパシーを送れなかったからそう聞こえただけってことかな」

 

「『そんな感じ……です』」

 

 

確かにポケモンも成長するし、言葉だってそれに伴ってもおかしくない。

顔を赤くして恥ずかしがるのも、今までの横柄ぶりを振り返るような第三者視点を持つことが出来たからだろう。

とすると、彼はもしかすると普通に実直で誠実なポケモンなのだろうと思えた。

 

 

「まぁ、何となく理解したよ。しかしいい加減図鑑を買おうかな。未だに君のことを全く知らないもんね」

 

「『では仮でもお名前をください』」

 

 

確かに今は前髪が短く、『のれん』と呼ぶにはふさわしくない相貌だ。では、どう言った名前にしようか。

 

翡翠色の髪に、少女のような出で立ち。

 

かっぱ?いやさすがにないな。おかっぱ?これもないな。

 

 

「花子で」

 

「『はぁ、ソースは』」

 

「トイレの」

 

「『ッ』」

 

 

私はきりもみしながら空を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことがあって早幾月、何故かかくとうタイプの技を習得し始めた彼を見て戦慄する。

早朝に日課のように出かけて、帰ってくるときは代謝が良いのか湯気を立てながら我が家のドアを叩く。

 

そそくさとシャワー室へ向かうのは見慣れた光景だ。

 

いつも湖のほとりで鍛錬を積んでいるらしい。

釣りに行くとムクドリ(にしては大きすぎる)たちが不満げに私をつつくのでそれなりの被害があるのだろう。

そういえば最近全く魚が釣れない。

 

今だって、自分がどれくらいできるのか試す場が欲しいとずっと頼まれているのだ。

はどうだんアピールなんていらない。

 

エスパー技使えるようになって近所のガキとキャッキャしてろ。

 

見ろ、あの娘怖がって出てこねぇもん。

 

そりゃね、少女然としたポケモンの四肢の肉付きを見たらね、仕上がってるものね。

 

だから最近、知り合いのジムリーダーに連絡をとって、力試しさせてやってくれとお願いをした。相手は『君がポケモンを?そんな日が来るなんてねぇ』とどこか喜色に富んだ声でOKを出してくれた。

ショウタくんには感謝だ。

 

 

「強くなったアピールは散々貰った」

 

「『では』」

 

「明後日、ジムに行こう」

 

「『はいっ』」

 

 

それは嬉しそうにはにかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ぼちぼち進めてぱぱっと締めたい
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