異世界で生きたくて   作:自堕落無力

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四十三話

 

 『ブシン祭』の本戦二回戦、最初に行われたアンネローゼとの試合に勝利したシドはアンネローゼと別れ、クレアたちが待つ特別席へと移動する。

 

 因みにベアトリクスもアイリスの計らいにより、特別席で観戦する事になった。

 

 そうして、特別席へと入れば……。

 

「お初にお目にかかります、クラウス国王陛下。そして、ラファエロ王……」

 

 特別席には決勝が行われるのもあって、試合を観戦に来ていたミドガルの国王で赤い短髪に国王としての威厳に満ちた顔つきの男、クラウス・ミドガルと来賓として来ているオリアナ王国のラファエロも居た。

 

 ラファエロの隣には彼を傀儡にしていたドエム・ケツハットも居るがシドによって、操り人形にされているので問題は無い。

 

 もっともブシン祭が終わった後は色々とラファエロ王と話合いやらドエムをどう操るかなどやることはたくさんあったりするが……。

 

「うむ……先程の試合、見せてもらった。若く才気に溢れた君のような逸材が我が国に居る事を嬉しく思う。娘たちからも話は聞いているが、仲良くしてもらっているようだな」

 

 クラウスは国王として振る舞いながらも最後の方は何か察しているようで父親としての態度で睨みつけてきた。

 

「いえいえ、世話になっているのは此方の方ですよ。陛下」

 

「ふふふ、シド殿には私の娘も世話になっているようで嬉しいよ。どうか、これからもよろしく頼む」

 

「光栄なお言葉です。よろしくされたいのは此方の方ですけどね」

 

 ラファエロ王に応じながら、一礼してクレアたちの方へと向かう。

 

 

「もう、あんたに女性との交流に何か言うのは疲れたわ。只、出来る限り程々にしなさいよね。後、勝利おめでとう。流石ね」

 

「相変わらず、貴方の実力は本当、底が見えないわ。」

 

「大変、素晴らしかったです。シド君」

 

「はい、とっても格好良かったです」

 

「シドは強いね」

 

 席に座るとクレアにアレクシア、ローズにシェリー、ベアトリクスらが声をかけてきた。

 

「皆、ありがとう」

 

 そうして、アイリスとツギーデ・マッケンジーの試合が行われ、一瞬であり、アイリスの一撃でツギーデ・マッケンジーは切り伏せられて負けた。

 

 そうして、決勝はシドとアイリスの試合になる事が決まり、昼に行われる事が決まり、万全な状態で戦えるよう長めに時間が取られた、そうしてシドもアイリスも準備に入り……。

 

 

 

 

 

 

『ブシン祭』本戦、決勝がいよいよ始まる。

 

 観客はこの国の王女であり、優勝経験もあってこの国最強と称しているアイリス・ミドガルとそして、先ほどまでの試合で凄まじい実力を見せつけてきたシド・カゲノーと二人の試合がどのようなものになるか期待しており、興奮していた。

 

 そうして、そんな盛り上がりに盛り上がっている空気の中……。

 

「シドさん。貴方と戦える今日、この日は私にとって幸運です……女神の試練で貴方の戦いを見た時からずっと戦いたいと思っていましたから。最初から全力全霊で挑ませてもらいます」

 

 試合の舞台へと上がりながら、アイリスはシドに向かって言い、剣を抜き構える。

 

「そう言ってもらえて光栄です、アイリス王女。そして、その挑戦受けて立ちましょう」

 

 

 シドも剣を抜き、構えながらアイリスに返答した。

 

 

 

 そうして……。

 

「アイリス・ミドガル対シド・カゲノー!! 試合開始!!」

 

 審判が決勝の開始を告げると……。

 

「はあああああっ!!」

 

 全力全霊で挑むと告げた通り、アイリスは激しく尋常ならざる魔力を練り上げ、凝縮したそれを纏いながら剣を振り上げ、シドへと疾走する。

 

 魔力の量に制御能力、どちらもアイリスは魔剣士として並外れており、魔剣士の世界でも最上位に入れるほどの逸材であった。

 

「しっ!!」

 

 自身に向かって疾走し、壮絶なる剣閃を振り下ろしてきたアイリスに対し、シドは剣に練り上げた魔力を込めながら、空間を穿つ程の威力を有した刺突を放つ。

 

「うっ!?」

 

 アイリスの剣に刺突を炸裂させた瞬間に凝縮した魔力を解放と同時に干渉する事でアイリスの剣だけを消滅させると一度、自分の剣を引きながら、そのままアイリスの首へと突き付けた。

 

「……完敗です。まさか、これ程までに遠いとは」

 

 そうして、敗北を理解したアイリスが降参を告げ、勝敗が決まった事で観客は歓声を上げた。

 

 すると……。

 

「シド、私とも戦ってくれる? 折角だから、戦いたい」

 

「え……はい?」

 

 剣を納めたシドに対し、舞台へと歩いてきたベアトリクスが挑戦をし、それにシドは混乱したのであった……。

 

 


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