一人の男が荒野を歩く。風で土煙がまいあがる広大な荒野を歩いている。真紅の髪がまいあがる砂をかぶり泥だらけにもなっている。
「……まずいな。ここどこだ?」
……男のつぶやき。自分がどこにいるのか把握できていないらしい。
男の名前はディバル・クリムゾン。後にこことは異なる世界で紅蓮魔神と言われ恐れられる存在だが、今の彼は旧神に魔神として転生させられて二百年ほどたつが、魔神としてはまだまだ若く力はあっても完全に使いこなせておらず、あまり驚異的な存在ではない。
そんな彼がこの世界へ来たのは一週間ほど前になる。この世界へきたのは彼が持つ能力いよるものでやってきたが、人里から大分離れていたようで現在この荒野をさまよい歩いている。二百年近くの間、彼がやっていたのは戦いで死なぬようにするための修行である。能力だけで強くなるのはずるいと感じた彼は戦闘技術の向上のためのものばかりだった。幸い魔神の身体能力は何も修行してない状態でも普通の人間より圧倒的に高いので、多少無茶な修行でも大丈夫だった。魔神とゆう存在自体が反則的なものと当初は考えたがこの力が無いと生き抜くことも難しいと考えた。だが、旅の知識は万全ではなかった。旅をするためにある程度の知識があれば星の位置を確認したりなどして進む方向を決められたりするのだが……
「……思いっきり失敗したな。気ままに進むんじゃなかった」
と、まっすぐに旅していたわけでもなく、歩けばどこかつくだろうとかなりのんきな考えでの旅だった。もともと旅の理由も見聞を広げるや武者修行のようなものであり明確な目的があるわけでもない。まずこの旅自体も旧神による強制的に行くように言われたためであり、ディバル自身は嫌々でしているものだ。だが、もう少しちゃんと考えてればなあと、少し後悔しているようだった。
「まずいな、全然食事とか摂ってないから倒れそう。てかもう無理……」
そういって倒れる。いくら人外の力を得たといえどこの時点ではまだそこまでの存在ではない。もっと年月と過酷な修行をすれば平気だったかもしれんが今言っても仕方ないだろう。
「あれ? 誰か倒れてる?」
意識が朦朧とし、周りが認識しづらいディバルの耳に女性の声が聞こえた。
「大丈夫ですか? しっかりして!」
女性が駆け寄り声をかける。そこでディバルの意識は限界を迎えた。
目をさます。一番初めに見えたのは、所々ヒビがはいった年代を感じさせる天井だ。
「知らない天井だ」
ある意味お約束な台詞を言ったディバルは起き上がり周りをみる。どこかの民家だろうか、天井と同じように壁にも所々にヒビがあり、家具らしきものも少なく生活に必要なもののみといった物ばかりで、それもかなり古いもので何かあればすぐに壊れてしまいそうな物ばかりである。
「あ、気がついたんだね。よかった。思ったより大丈夫みたいだね」
女性の声が聞こえる。意識を失う直前で聞こえてきた女性の声だ。その姿を確認する。その女性は、かわいらしい顔で少々赤みがかった桃色にも見える髪をし、服は少々ボロボロだが女性の上品な雰囲気があり、女性の美しさを損なわせていない。
「…………」
ディバルはその女性の美しさに声が出ず、見つめていた。だが、どこかで見た顔だなと思った。
「えっと、どうしたのかな?私の顔になにかついてたかな?」
「……あ、えっとすまん。あなたが俺を助けてくれたんだよね? ありがとう助かったよ」
やっと我に返り、いまは考えるよりちゃんと礼をすべきと思い、ディバルは礼をのべた。
「気にしなくていいよ。困ったときはお互い様なんだから」
女性はそう笑ってこたえる。そのひとつひとつのしぐさはやはり品があり、周りが古くボロボロの物ばかりなのに何故か違和感を感じさせなかった。
「あ。自己紹介がまだだったね。私は劉備、字は玄徳。よろしくね」
「あ、これはご丁寧に。俺は……って、え?」
「?」
名前を聞きディバルは固まってしまう。劉備はどうしたのだろうと不思議そうな顔をしている。だが、しょうがないだろう。
(・・・恋姫無双の劉備だったのか。そういえばそれらしい顔だよな)
ディバルは人であったことの記憶は思い出せないが、知識は忘れてはいない。そして、自分がいるこの世界が恋姫無双の世界であることを理解したのだ。
「えっと。どうしたの?」
「あ、すまん。俺はディバル・クリムゾン。ここから大分離れた国から旅してきたものだよ」
我に返り自己紹介をする。
「やっぱり、異国の人だったんだ。でも、しっかりと話せるんだね?」
「アハハ、まあちょっとね」
実は、旧神による自動翻訳魔法がかけられているのだがそんな事を話せるわけもなく笑って誤魔化した。
「それよりも、お腹すいてるんだよね?駆け寄って運ぼうとしたときすごいお腹の音がしたよ?もうすぐ食事ができるから少し待っててね」
「あ、いやそこまでは」
ディバルは遠慮する。彼の知識とこの家の状態を見ればあまり裕福なものではなく、食事ひとつでも大変なものだろう。
「駄目だよそんなことを言っちゃ。無理したら体こわすよ? 空腹で倒れちゃったんでしょ? 遠慮しないで食べていってね」
と、半ば無理矢理に近いがディバルの世話をやいていく。この家の状態を見るに明日の食料も大丈夫かあやしいというのに。
(ああ、そういえば沢山の人のため、って想いで動いていた人だったっけ)
曖昧ながらもどういった人物かを思い出しながらディバルはついにおれる。
「ごめんね。あんなこと言いながら、あんまり量はないんだけど」
「いや、充分だよ」
そう言い食事を取っている。確かにあまり量も無く、食材も品のいいものとはいえないが久方ぶりの食事で十分満足だった。
その後、食事を終えた後、劉備がいくらかの質問をしていく。
「どうしてあんなところで倒れちゃったの?」
「いやあ、何日も道に迷ってそのまま行倒れてしまって」
「なんでこの国に?今この国は治安がすごく悪いのにわざわざここに旅してくるなんて」
「この国に来たのはまあ、偶然でして。旅の理由も……見聞を広めるといったもので」
ディバルの曖昧な答えにも真剣に聞いている劉備を見て、彼は心が少し痛んだが、本当の事を話すわけにもいかなかった。
「……ねえ、その旅は急がないといけないものなのかな?」
「いや。そうじゃないけど」
「そうなんだ」
劉備は何かを考えているのか、あごに指を当てている。そして、何かを思いついたのかディバルを見やりニコッと笑う。それを見てディバルは顔を少し赤くする。
「じゃあさ、しばらくはここで暮さない?私こう見えても名門塾に通っていたからさ、旅に必要な知識とかも教えてあげられるよ?」
「え?」
そう、提案してきた。
「い、いや流石にここで暮らすのは……」
ディバルとしては女性の家に見知らぬ男を……つまり自分のことを言っているのだが……住まわせるのは無用心ではないかと思ったのだが……
「でも、聞いてる限りじゃこの国のお金も無いんでしょ? どうやって宿に泊まるつもりなの?」
「うっ……」
そう、ディバルはこの国の通貨ももっていないのだ。
「それに、こんな無茶な旅をする人をほっといたらなにするかわかんないよ。だからそれを監視するためにもここで暮しなさい」
「あれ? 命令形? ……と、とにかくだな……」
「暮らしなさい」
「………はい」
最後はすごまれおれるしかなかったディバルであった。
ディバルはこの国の現状を聞いていた。知識のほうはかなり曖昧に近いため話を聞きてらし合わせて思い出そうとしていた。それに違和感などもあったのだ。
(たしか、この時点では劉備はすでに関羽と張飛と共に旅に出ていたはずだよな。それになんか性格も微妙にちがうし)
劉備の見た目は十八歳の少女に見える。知識通りなら後の姉妹たちと共に多くの人を救うためにと旅立っているはずである。
「……さっきも言ったけど、今この国は治安が悪いの。役人の腐敗で沢山の人が苦しめられているんだ。その中には盗賊とかに身を墜としちゃう人もいるんだ。それで今は黄巾党ってい大きな組織が暴れているんだよ。官軍も手がつけられなくて、それぞれの有力諸侯が鎮圧したり、義勇軍を募集したりしているの」
国の腐敗、有力諸侯の活躍、義勇軍などは知識とあまり変わらないようだ。しかし、劉備は顔をふせ次の言葉を言うのをためらっているようだ。
「……実はね、私も義勇軍に参加しようと思ったんだけど、沢山の人たちに、甘すぎな私では邪魔で足手まといなだけって言われちゃってね。……旅かなにかでここに寄った会った武芸者の人たちにも弱いのに何お言ってる、って怒られちゃった。…………自分でも弱くて甘い考えだなって、そう思うしね」
「……怒られた?」
ディバルは違和感を感じながらも先を聞くことにする。
「………うん。すごく髪のきれいな女性やまだ小さいのにすごく力持ちな女の子をつれた人にね」
それを聞き、内心驚く。
「私ね、すべての人が笑って暮せる世の中にしたいと思っていたんだけど、塾に通っていた頃から沢山の人に偽善で実現不可能なことだって言われて馬鹿にされてね。見返そうと思って頑張っても認めてもらえなくて泣いちゃったこともあったかな。あはは」
笑うように言うが声が少し震えている。泣くのを堪えているのかもしれない。
「……私のこの理想……願いは、間違っているのかなって、思って」
「…………」
ディバルはその話を聞きある考えが浮かぶ。
(……転生者か! 話を聞いてる限り、大分改変しているようだな。それもアンチ蜀……いや、この場合はアンチ劉備か)
自身がどのような人間だったか思い出せないが、ネット小説を転生前はそれなりに読みあさっていた記憶は一応ある。そういった小説も読んだことがあるが、彼自身はあまり共感を覚えず逆に少しイラついた記憶がある。この世界にいる転生者は彼があまり好感を感じないタイプらしい。
「ごめんね。変に話し込んじゃって。私自身も無理なんだなって考えたし。やだな~、こんな暗い話をしちゃって」
劉備は謝罪し笑って言うが、まだ声は震えているし、目も潤んでいた。これを見るにずっと昔から言われてきたことだったのかもしれない。これを見てディバルは黙っていられなかった。
「……これは、俺の考えだけど……あなたが言ってることは間違ってないと思うよ」
「………え?」
ディバルは彼自身が思ったことを口にしていく。多くの転生者に否定されきた劉備にできるだけのおもいを伝える。
「……劉備さん……あなたの理想は……少なくともその願いは間違ってない。俺はそう思うよ」
「でも………」
「あなたは無理だと思ってても、それを願って動こうとしている。そういう人はそういない。それに……」
「……それに?」
「……少なくとも、それが届かないとわかってても、それを目指して少しでも多くの人がと行動すれば間違いじゃないとおもうよ。その願いの実現のために、より良い政策を……と考えていけば少なくとも悪いことじゃないと思う」
ディバルはそういった。確かに届かぬとわかっていても、やはり一番の理想は女性が言ってることだろう。叶わぬとしてもそれを目標とし頑張っていけば、それは間違いとは言い切れないだろう。転生者たちに色々と言われても彼女の優しさは曇らなかった。それどころかそれをばねに原作以上に頑張っているのだ。
「…………ありがとう」
小さく、だがはっきりした声で劉備は感謝をのべる。涙を流しながらもうれしそうに微笑んで。
「ねえ……お礼代わりっていうのもおかしいかもしれないけど、私の真名を聞いてもらえるかな?」
「………え?」
ディバルは驚く。それはそうだろう、一応知識としても知っているが、劉備から異国の人間であるあから真名という習慣があると教えてもらったのだ。真名がどれほど大切かも知っているのだ。
「い、いやさすがに今日会ったばかりの男に真名を教えるのはどうかと……」
「気にしなくてもいいよ。私があなたに知っていてほしいと思ったんだから。……それにね、いままで誰もあなたみたいに励ましてくれた人もいなかったんだ。だからすごく嬉しくて」
それを聞くとディバルは何も言えなくなった。おそらく転生者の介入によって劉備は今まで独りで過ごしてきたのだろう。なにかしらのつながりにうえているのやも知れない。
「……わかった。俺には真名なんてないからそこはわかってくれよ」
「うん! それじゃあ改めて……私の真名は桃香といいます。よろしくね」
「あ、はい。よ、よろしく」
満面の笑みを浮かべる桃香の顔を見てディバルは照れくさいのかさらに顔を赤くしてしまう。こうして二人の最初の一日は終わった。
ディバルが桃香の家ですごしてはや一週間ほどたった。今現在、二人は近くの小さな町で桃香の作ったわらじを売っている。せめてなにかの手伝いぐらいはとディバルが荷物持ちや会計などを手伝っている。一応わらじ作りも手伝おうとしたのだが、道具作成系の能力を持つディバルですら驚くほどの長持ちしそうなわらじを桃香が作ってしまい逆に邪魔になるかも知れぬと思い大量の藁などを運ぶなどの力仕事を引き受けることにした。そうして大量に出来たわらじを町まで来て売っているのだ。桃香のわらじは評判がいいのか沢山あったわらじはあっという間に売れてしまう。こうして、何度か町でわらじ売りをしているのだが……
「今日もずいぶんと売れたな」
「それでもあんまりお金にはならないんだけどね」
そう、確かに大量に売れてはいるものの、わらじ一つ一つの価格はそこまで高くなく、さらには場所代や次のわらじを作るための藁の購入などで結局手元に残るのはそこまで多くなく、食料なども不作や賊などで物価が高くなり最終的にはお金もほとんどなくなってしまうのだ。貧乏暇なしとはこの事だろうか。
「……質はいいんだからもう少し値段をあげたらどうだ?」
「だめだよ。今の値段はそこまで高くないけど安くも無いんだから。ここで値上げすると誰も買わなくなっちゃうよ」
「ままならないな……」
そんな商売の話をし家に帰る途中、町の広場が随分とにぎやかだ。なにやら一箇所に集まり話し込んでいるようだ。何事か気になりディバルと桃香は広場へと向かう。
「何かあったんですか?」
桃香が近くの人に尋ねる。
「なんでもこの近くにも黄巾党の奴らが現れて大暴れしているらしくてね。義勇軍の募集の立札がたてられたんだ」
「義勇軍……」
「桃香……」
二人は話を聞き終えた後、家へと帰っていった。
家に着き僅かな食事を終え二人は義勇軍募集についてのはなしをした。
「なあ桃香。やはり桃香は多くの人のためにと義勇軍に参加したいんじゃないのか?」
「……そうなんだけど」
桃香としては義勇軍に参加して世のために戦いたいという想いがある。しかし、今まで転生者たちにより否定され続けてきた彼女は参加することにもためらってしまっていた。ディバルにより励まされても長い間言われてきたことなのだ、そう簡単に決意は決まらないだろう。
「……それに、私あんまり戦いに自信が無いから」
桃香はそう言う。確かに恋姫での彼女は魅力あふれる人物ではあるが、そこまで優秀とは言いづらいものではある。だが……
「じゃあ、どれほどのものか確認しようか。幸い俺は長い間修行をしていたからな。それなりに武術には自信があるよ」
そう言うとディバルはどこからか木刀を二本取り出した。
「……どっからだしたの?」
「アハハ、秘密。それよりもやるかい?」
ディバルの能力により取り出された物だがそれを誤魔化す。そして桃香は少し考え
「……うん。それじゃ胸を借りるつもりでやらせてもらうね」
「おう」
承諾し表へ出る。幸い今日は早めにわらじが売り切れ帰ってこれたため、太陽はまだ沈みきっていない。そして二人は距離をとり木刀を構える。
(……やっぱりか。構えに無駄が無く隙も無いな)
ディバルは桃香の構えを見てそう思った。
(色々馬鹿にされてきて見返そうと努力したと言ってたしな。これぐらいあたりまえか)
桃香が通っていた塾では学問も教えていたが、護身術としていくらかの武術も教えていた。そして彼女は最初に語っていたように多くの者たちを見返そうと努力してきた。その中には武術も含まれている。転生者や本当の意味での武人には一歩劣るやもしれないがそこらの賊はもちろん、訓練をつんだ官軍の一般兵にも負けはしないだろう。
(それになにより……)
「ハァッ!」
ディバルは踏み込み早速攻め込んでみる。全力ではないもののその速さは並みの将兵を上回るものでおそらくその斬撃もとても重いものだろう。だが……
「っ!」
桃香はそれを受け流し反撃さえもしてきた。ディバルはその反撃を防ぎ今度は連続での攻撃を浴びせるも……
「ヤアッ!」
「っと! これもか!」
それをも防ぎきった。反撃こそ無かったものの桃香は距離をとりディバルの攻撃に備えている。ディバルは油断無く構えるものの、内心は驚きと喜びで満ちていた。
(やはりか! 桃香の戦い方はいわば”護り”に特化したものか!)
そう桃香は自身に武の才がそこまで無いことを知っていた。そのため武術の修行においては相手の隙を見出し反撃するためにただひたすら防御の修行を続けていたのだ。それは塾に通わなくなった後でも続けていた。そして今の彼女の守りの剣は有力な武将でも突破するのは難しいものとなった。だが……
(……その一方、攻撃はそこまで脅威じゃないか)
そう、確かに桃香の護りは強固なものだが逆に攻撃は並みの兵には容易く届くが、有力武将にはかすり傷ひとつつけられるかあやしいものだった。桃香の優しすぎる性格を考えたなら難しい話かもしれない。この攻撃だけでも充分戦場では通用するものであり、むしろここまで出来るようになっただけでもたいしたものだろう。
(基本もしっかりしているし、俺がさっきから放っている気迫にも動じない。充分だろう)
ディバルは構えを解き木刀を下ろす。
「もういいよ桃香」
そして桃香も構えを解く。大分気を張っていたのだろう。肩が上下に大きく動いている。
「ど、どうだったかな?」
「充分戦場でも通用するものだと思うよ。防御重視だけど悪く無かったよ。まあ、攻撃の方は並より上って所かな?」
思ったことを素直に話す。ここで変に褒めてばかりではなく、攻撃についての課題を話す。変におだてて調子付くと肝心なときにへまをしてしまうかもしれないので注意しているのだ。
「あ~やっぱりそこ? わかってはいたんだけどね。なかなかうまくいかないな~」
桃香も攻撃については自覚しているらしい。困った顔をし、どうしたらいいか悩んでいるようだ。
「・・・確か桃香は私塾に通っていたんだよね?」
ディバルは桃香に質問した。
「ん? そうだけど?」
「そこでどんな事を学んでいたんだ?」
「え? ん~一応は文字や計算とか哲学的なことかな? あ、後一応政治や兵法なんかも学んだよ」
「それじゃあ、軍師みたいなことも出来るのか?」
「いや~流石にそこまでじゃないよ。それの真似事みたいなことは出来るけどそれを本職としてる人にはかなわないよ」
まったく出来ないわけではないようだ。それにディバルはここ何日かのわらじ売りのとき桃香が商売をするときに、市場の責任者と交渉し出来うる限り場所代を何とか安くしたり、商売の時でも客に対してもうまく接客し多くのわらじを売っていたのを思い出し、交渉力もなかなかのものだと思われる。
(兵としてではなく、将として動けばかなり優秀なんじゃないか?)
「えと、どうしたの?そんな考え込んだりして?」
「あ、すまん。少しな……」
そしてディバルは思ったことを口にする。
「……桃香、いまの桃香の実力なら充分だ。確かにこうした手合わせと実際の戦場とはかってが違うかもしれないが、義勇軍に参加しても問題ないと思う」
「……でも」
桃香は不安そうに言う。まだ決心がつかないようだ。
「周りから言われたからじゃなくてさ、桃香自身がどうしたいかが重要だと思うよ。」
「私自身が……」
「まあ、すぐに決めないといけないというわけじゃないし、もう少し考えて決めるといいよ」
「………うん」
「さて、日も暮れてきたしそろそろ家の中に入ろう」
ディバルの言うとおり、夕焼け色だった空はすっかり暗くなり星が輝いていた。二人は家の中へ戻っていった。
その日の夜、桃香は自分がどうすればいいのか考えていた。
(…………私自身がどうしたいか……か)
今まで多くの者たちに自分の努力、想い、理想などを否定され続けてきた彼女にとって本当にそれを望んでいいのか悩んでいたのだ。ディバルに認めてもらえたからといって、そう簡単に決められないものだろう。
(……まだ、なんとも言えないな)
結局、桃香はこの日のうちに決められることはできなかった。
だが、彼女の意思とは関係なく時代は動き出していた。
ある日、また多くのわらじを作り町で売っていた桃香とディバル。わらじを売って少ししたとき突如それは知らされた。
「た、大変だー!! こ、黄巾賊の奴らがこっちに向かって進軍しているそうだぞ!!」
これを聞き民衆は慌てはじめ、町は混乱の渦に落ちた。
「そんな! ……黄巾賊が?」
「大丈夫か桃香?」
桃香は顔色をなくし、ディバルは彼女を心配し倒れそうな桃香の肩を支える。……しばらくして町の衛兵が混乱を鎮める。そして町長が出てきて官軍の応援は早くても二日以上かかることを伝え、黄巾賊と戦い町を守るため兵を募集する。
「お、俺は戦うぞ! ここは俺たちの町だ! 黄巾賊の奴らなんかに好きさせるか!」
「お、俺もだ!」
こうして次々と戦うことを決意していく。
「……ねえ、ディバルさん」
「……わかってる。参加するんだろ?」
「うん。……少なくとも今戦わないと、この町の人たちが殺されちゃうから。……私も戦う。」
桃香は戦うことを決意した。今は町を守らなければ目の前の人さえも助けられないと覚悟を決める。
「あんまり気負わなくてもいい。俺も戦うから」
「え!? で、でもディバルさんは!」
「このまま桃香をほっとけないって。それに町の人だって見捨てるなんてしたくないしな」
ディバルは笑って桃香に言う。自身も戦うのだと。
「……わかった。でも、ディバルさんは目的もあるみたいだし無理だけはしないで」
「それはこっちのせりふだな桃香。お前のほうが無理するだろう?」
「む~そんなこと無いよ」
「ハハ……まあ今は町長のところへ行こう。桃香、一応兵法も学んでいたんだろ? 今はそういう人がほしいだろうからな」
「え? で、でも私のはほとんど真似事みたいなものだよ?」
「それでも全くの素人がやるよりもいいよ」
話し合いの結果、二人は町長の元へと向かう。そして町長たちとも話し合い桃香が指揮を執ることとなった。
「な、なんかとんとん拍子で話が進んでいっちゃてるんだけど」
「今はどう戦うか考えよう桃香」
ディバルがそう言い、桃香も作戦を考えることにする。今現在こちらに進軍している黄巾賊は偵察によると約二千人ほど、対しこちらは八百人ほどである。かなりの人数が参加してくれたが倍以上の兵力差である。この町はこういった賊に対しての柵や門などがあるがこの人数差では不安が残る。さらに、相手はある程度の場慣れもしているであろうが、こちらは剣や槍を持つのも初めてな者も多い。今は訓練を受けた者に基本的なことを教わっているが大変厳しいものだろう。どうしたものかと考えていると。
「お、おい君! 待ってくれ!今は会議中なんだよ!」
「話は俺たちが聞いておくからここは……」
「どいてもらう。私は指揮官と話したいんだ」
なにやら外が騒がしい。ディバルが騒ぎを見に出る。
「どうしたんだ? 随分と騒がしい」
「む。あなたが指揮官か?」
「!」
ディバルはその騒ぎの原因たる人物を見て驚く。その人物は青みがかった髪にしろくどこか柔らかな服を着、どこか猫を彷彿とさせるかのような雰囲気を纏った美少女がいた。
「どうかなさったか?」
「あ、すまん。俺はディバル。異国から来た旅人だ。指揮官ではないが、あなたは?」
「私は”常山の昇り竜”趙子龍。黄巾賊撃退のため策の進言を願いここへきた」
(やはり趙雲か。ここにいることに驚きだが、今は助かるな)
恋姫無双のキャラクターの一人、趙雲子龍だ。だがよく考えれば今現在は公孫賛の下にいたはずだが何故かこのような小さな町にいるためディバルが驚いたのだ。しかし今はこの場においては一騎当千の豪傑がおり、さらに策まで持ってきたと言うのだ。これほど心強いものはないだろう。
「……わかった。あなたの武勇も聞いたこともある。あなたの策を言ってみてくれ」
「フフ、話がわかるな。それに私のことも知っているとは。それに見たところあなたもなかなかの腕前のようだ」
「……あの常山の昇り竜にそこまで言ってもらえるとは光栄だな。……まあ、中へ」
そう少しばかり会話し会議場へと案内する。そこで趙雲がなのると会議にいた者たちがざわめく。やはりその武勇は多くの者に知れ渡っていたのだろう。そして、趙雲が策をのべるが、彼女の言葉に町長と兵長が反論した。
「あ、あなたが一人で黄巾賊の軍勢に突っ込んで場をかき乱すだと!?」
「ふ、ふざけとるのか!? 腕におぼえがあろうとも二千の兵に一人で向かうなど! いくらなんでも無謀だ!!」
町長とこの町の警備兵長が非難する。だが、このような反応をしても仕方があるまい。なんせ趙雲が一人で突っ込んで黄巾賊と戦うというのだ。普通なら正気の沙汰ではないだろう。
「無謀ではないと思いますがな。向こうは多少戦いに心得があると言っても所詮は烏合の衆。本当の一騎当千の豪傑ならたかが二千の兵に遅れはとりませぬな」
趙雲はこう主張する。確かに相手は元は農民などの素人だ。いくら戦い慣れしていても訓練も何もしていないし学も無い烏合の衆やもしれない。武勇に富んだものと戦えばそこまで恐ろしくは無いかもしれない。だが、それでも数が違いすぎる。いくら一騎当千の英雄でも人間であることにかわりはない。多少はひるんでもすぐに数の暴力により飲み込まれてしまうだろう。
(……そういえば、こういうことを言ったことがあったな)
ディバルはかつて人であったときの知識を思い出していた。確かに趙雲は猪武者ではないが、少々突撃思考なところがあったような気がする。そのことをもう少し早く思い出していれば大事にはならなかっただろう。ディバルはふと先ほどから何かを考えている桃香に気づく。なにか策を思いついたのだろうか。
「劉備殿。この者になんとか言ってやってくれぬか? われわれの意見を聞こうともしない」
兵長が桃香に趙雲の説得を頼む。指揮官としてなんとか止めてほしいというものだろう。だが、桃香の答えは予想外のものだった。
「趙雲さん。一人でどれだけ戦い続けることができますか? 正直に答えてください」
と、あろうことかそんな事を聞いてきたのだ。これにはディバルを含めた会議に参加している全員が驚く。しかし、趙雲は少し驚くもクスッと笑いまじめな顔をして話す。
「先ほどはああ言いましたが、正直のところ四半刻ももちません。その半分ほどかと」
「そうですか。……ではディバルさん。あなたならどれだけ戦えますか?」
「お、俺もやろうとしたらそれぐらいか」
桃香は今度は固まっていたディバルに質問する。突然の問いにディバルはあわてるもこたえる。
「……では、二人で戦えばどれだけ戦えますか?」
桃香は次にそう質問する。周りはいまだ固まったままだ。
「えと、見たところ趙雲殿の実力はかなりのものに思えるから、ちゃんと協力できればうまくいけば半刻、余裕をみて四半刻ぐらいは戦い続けられる」
「私も同じ意見ですな。ディバル殿の実力は私の目測では同じぐらいですが、少々そこが伺えない所もありますので確かなものではありませんが」
「!?」
(甘く見ていたか? 俺の能力にわずかだが感づいているのか?)
ディバルは趙雲に自分が能力を隠しているのを感づいることに驚く。
「わかりました。……ではお二人にお願いしたいことがあります。……正直、こんな策を執りたくありませんが、覚悟を決めてもらいます。……私も含めて」
そういうと桃香は固まっていた者たちも呼び考えた策を話す。話を聞き趙雲以外の者が再び驚きの声をあげる。
「へへへ、見えてきたぜ」
頭に黄色い布を巻きつけた男たち―――黄巾賊が町が見えるところまで迫ってきた。この軍勢には元から山賊である者たちなどが参加しており、黄巾賊の中でも醜悪なものがおおい。この軍をまとめる程遠志は略奪の算段を考えていた。
(くくく、ここであの町を制圧して手柄を立てて出世してやるぜ。天公ちゃんの親衛隊の幹部になるんだ!)
程遠志は出世し天公将軍の親衛隊になりたいようだ。………一部気になるところもあったが気にしない方がいいだろう。そしてその副将の鄧茂の方はと言うと。
(へへ、早く酒を浴びるほど飲んで女と寝てえなあ)
賊らしい下種なことを考えていた。だがこのまま行けばそうなるであろうことはここにいる黄巾賊の者たちは確信していた。官軍が来るのも時間がかかることもわかっていたのだ。そうして進軍を続けているとこちらに向かってくる二つの影が見えた。
「なんだありゃ?」
程遠志はそれを見て疑問を口に出すも軍はそのまま進んでいく。このままいけばすぐによく見えるだろう。だんだん互いに近づいていき、それは二人の人影に見えた。そして……
「われは”常山の昇り竜”趙子龍! 外道共覚悟せよ!」
「町の皆が逃げ切るまで相手をしてもらうぞ」
二人の男女がむかって来た。
「な、何ぃ!?」
「た、たった二人だけで突っ込んできやがった!?」
黄巾賊が浮き足立つ。それはそうだろう他の黄巾賊の軍と比べると自分たちは少ないほうではあるがそれでも二千を超える人数がいるのだ。それにたった二人で来るなど信じられないのだ。女性のほうは男ならのどがなってしまうほどの美女で槍を構えて突っ込んでくる。男のほうは何も持っていないにも関わらず、こちらもまたまっすぐに自分たちにむかってくる。
「くそが、なめてんのか?」
「女のほうは生け捕りにして、男はぶっ殺せ!」
黄巾賊は二人に襲い掛かるも・・・
「痴れものがぁ!」
「ギャヒッ!?」 「ぷぎゅっ!??」
女性―――趙雲に襲い掛かった者たちは瞬く間に彼女の持つ槍・龍牙が賊たちを蹴散らしていく。周りがその出来事に驚いている間も彼女はすばやく動き回り賊たちの命を刈り取っていく。そして男のほう、つまりディバルの方はと言うと……
「ギギャァァッ!?」 「ひでぶ!」
「な!? どっから出したんだ!? あんなでかい得物ォッ!?」
ディバルはどこからか巨大な剣を取り出しそれを振り回し近くの賊を片付けている。……その剣は細長いがしっかりとしたつくりで、そうそう折れることは無いだろう。そして物が物なだけに賊たちは肉片になっていく。その光景をみて黄巾賊たちは恐怖で震える。最初は無手だったものが突如どこからか巨大な武器を取り出し信じられぬような怪力で振り回し、次々に黄巾賊を斃していくのだ。恐怖しないわけが無い。
「武器も持たずむかうと言ったときは何を考えてるのかと思ったが、そのような芸当が出来るとは驚きですな。ぜひともその種を教えてもらいたいな」
「それは、秘密……だっと!」
そう軽口を言い合いながら二人は黄巾賊を屠っていく。あたり一面はばらばらとなった黄巾賊たちの死骸がちりばり、血によって真っ赤に染まっている。それを見ていたほかの黄巾賊たちの中には恐怖し逃げまどう者がでるほどである。
「落ち着きやがれ手前等!!」
程遠志が混乱していた黄巾賊たちを一喝する。すると恐怖で逃げようとしていた者の一部が我に返った。程遠志は意外にも賊たちをまとめる力があった。
「どんなに化け物じみた力を持っていようとも相手は二人だ! 数はこっちが圧倒しているだろうが! 落ち着いて相手を囲むようにして嬲り殺せ!」
数に物をいわせるように指示し趙雲とディバルを囲ませる。だが……
「あの女いただき!」
「な!? 何勝手なことやってんだ鄧茂!」
……まったく話を聞いていなかった鄧茂が躍り出てくる。欲に目がくらんだのだろうか?
「たく、随分な下種が出てきたな! 俺が変わりにあいつと戦おうか趙雲?」
「いや、かまわない。相手は私を指名しているようだ。それにあのような下劣な輩は私が始末をつけたい」
ディバルが変わりに戦うか趙雲に聞くが、彼女は鄧茂の下劣さに怒りを覚えたようだ。自分で始末すると槍を鄧茂に構える。
「ヒャッハ~!!」
……どこぞの世紀末なモヒカンを連想させる雄たけびをあげて趙雲に襲い掛かる鄧茂。しかし……
「遅い!」
「あべし!?」
あっさりと彼女の突きをくらい絶命する。
「敵将、この趙子龍が討ち取ったぞ!」
趙雲はそう声たからかに宣言する。すると再び黄巾賊たちは動揺する。
「そんな!?」 「鄧茂様が!」 「こ、このままじゃ・・・」
またしても恐怖で弱腰になっていく。
「くそ! 鄧茂のアホが!」
鄧茂の独断行動により味方の士気がだだ下がりになり程遠志が毒づく。トップ2が討ち死にしたのは戦力が減る以上に痛いものだった。鄧茂は頭は悪いがそれなりの実力があったのだが、こうも簡単に斃されてしまうと相手に恐怖しまともに戦えなくなってしまったのだ。毒づいても仕方が無いだろう。そしていまだ二人は暴れ続けており、このままでは甚大な被害がでてしまう。
「大分暴れたな。そろそろ時間だ。退くぞ趙雲!」
「了解した」
「む? 退いていくだと?いったい……! そうか、そういうことか」
四半刻ほど暴れ続けていた二人が突然退いていく。程遠志は疑問に感じるもすぐにあることに気づく。
「何名かの者は奴らを追え! 奴らが逃げる場所を確認できるだけでもかまわん。とにかく見失うな! 残りのものは俺と共に町に向かうぞ!おそらく町の奴らが逃げるための時間稼ぎだ! 町には誰もいないはずだ!」
程遠志はそう指示し三十名ほどの者に二人を追跡させる。
(男のほうが最初に逃げ切るまでなんて言ってたはず。町の奴らがどこにいるかを確かめる。こいつらの士気を回復させすぐに追撃し俺たちをコケにしたことを後悔させてやる。……士気を回復させるにもまずは町を調べなきゃな。この短い時間じゃ持ち出せるものも限られるはずだ。)
程遠志はそう考え残った部隊を引き連れて町へとむかう。ディバルと趙雲が引っ掻き回して黄巾賊の数が大分減ったが、それでもざっと見ただけでも千五百人はまだいるだろうか。残り全員に冷静さを取り戻させ追撃すればあの二人がいたとしても勝てるはずだ。
「程遠志様、もうすぐ着きます。」
そうして門が開いたままの町の中に入ろうとすると……
「今だ! かかれ!」
突如、物陰や家の中などに隠れていた町の住民……志願兵たちがあらわれ黄巾賊たちに襲い掛かる。
「ヒェゲッ!??」 「なんダバァッ!?」
完全に気が緩んでいたのだろう。不意をつかれ黄巾賊たちは次々と殺されていく。
「手前らなんかに俺たちの町を渡してたまるか!」
「ひぃ!?」
黄巾賊たちは先ほど趙雲たちと戦いその恐ろしさから開放されたかと思いきや、ここで奇襲をかけられ再び死の恐怖を思い出し大混乱となり対処できなくなった。
「お助けえ!!?」
まるで阿鼻叫喚の地獄絵図のようであるが、ある意味適切であるやも知れない。元は生活苦で参加したりした農民なども多いが彼らは多くの人たちを殺し、略奪し、苦しめてきたのだ。鬼と化した民衆に罰を与えられてると考え見れば当然とも思える。
そして趙雲たちを追撃していたものたちも、二人が森の近くに来たとき、ここにもいくらかの伏兵がおり奇襲をうけ全滅する。
「町まで戻り残りの賊どもも討ち滅ぼすぞ!」
趙雲が指揮を執り町へと戻る。ディバルも急いで戻ろうと走る。
(まったく、とんでもない策を考え付くもんだな桃香は)
桃香の策は簡単なもので、最初にディバルに町の住民が逃げるための時間稼ぎであると相手に思い込ませ、油断しきったところを奇襲をかけ混乱させ撃退するというものだ。
ここでの時間稼ぎの本当の目的は、この町から少し離れた森のところへ伏兵を配置させるためのものだ。簡単に説明しているがかなり危ないものである。趙雲とディバルの力を完全に信頼しなければこんな奇策は実行できない。危険が大きすぎる。
だが桃香はディバルと趙雲を信じあえてこの策を執る。時間もあまり無くほかにいい策が思いつかなかったというのもあるが、なんとも大胆である。
だが実際は予想以上策が成功した。ディバルと趙雲が自分たちが想像してたよりも賊が弱くさらに敵将が愚行したおかげだろう。黄巾賊の数を大幅にけずり、さらには戦意さえもずたぼろにしたのだ。事実、黄巾賊たちはほぼ一方的に討たれている。
「く、くそ。なんでこんなことに……」
程遠志が苦言をいうがもうどうしようもない。だが……
「一人、二人で戦わないでください。必ず三人で戦い確実に敵を倒しまわりを警戒してください」
桃色の髪をした女性が指揮をとっている。桃香が周りの兵に指示しているところだ。
「指揮官か? ならあいつを討ってこの状況を打開するしかねえ!」
程遠志は桃香を討つため襲い掛かるも……
「っ!」
「何い!?」
完全に不意を突いたと思ったのにその攻撃は美しい装飾が施された剣―――靖王伝家によって防がれていた。そして……
「やあっ!」
「たわば!?」
桃香の反撃で程遠志の首は落ちた。
「程遠志様!?」 「も、もうだめだ!!?」 「ひぃぃ!? さ、さっきの二人までもが!??」
大将が戦死し、それどころか先ほど自分たちを恐怖のどん底に落とした二人がこちらにへと向かってきているのも見え黄巾賊たちの戦意は完全に砕かれる。
程なくして残っていた黄巾賊たちは、逃げ出すものも仲間を呼ばせぬよう一人残らず討ち滅ぼされた。町の住人にもいくらかの死傷者は出ているが、奇跡的に少なくい。こうして桃香の初の戦は大勝利で幕が閉じた。……だが桃香の顔はどこか憂いに満ちていた。
現在、町では黄巾賊の撃退に成功し、住人たちは喜びで祭り状態となっている。死傷者の数も少なかったためかなり浮かれている。
「いやはや、なかなか盛り上がっておりますな。」
趙雲は町の防衛における要として活躍したため住民たちに酒を勧められたり、お礼を言われたり、老人などからは是非自分の孫と見合いをしてもらえないかなどの話まで出たほどで、つい先ほどその輪から何とか抜け出し、桃香とディバルが飲んでるところまで非難してきた。桃香とディバルも先ほど揉みくちゃにされていたが、疲れたからと言いその場から抜け出し、群集から離れたところでそれを眺める形で飲んでいた。
「仕方がないよ。戦いが終わるまで皆負けるのを覚悟していたんだから」
「それが被害を最小限で勝利できたんだからな。その反動でここまで盛り上がっているわけだしな」
桃香とディバルは苦笑して言う。確かに二倍以上の軍勢で、こちらは戦いの経験がない者も多かったがそれを、それを奇策を用いたとはいえ奇跡的な勝利が出来たのだ。絶望からわずかな希望をてにでき喜ばないわけがないだろう。そう、普通は喜ばないわけがないのだが……
「それにしては劉備殿はあまり嬉しそうな顔をしておられませんな」
「………」
趙雲が指摘したとおり、桃香派はあまり嬉しそうな顔をしておらず、逆に悲しそうな顔さえもしていた。
「それを言うためにこちらに来たのか?」
ディバルが視線を少しきびしくし趙雲に問いかける。彼としては桃香が何を悲しんでいるかなんとなくだが察したためだ。そのことを言って桃香を傷つけようなら彼としては黙るつもりはない。
「ディバルさん、少し落ち着いて。ね?」
桃香がディバルをいさめるように言う。
「趙雲さんは私たちと何か話したいのかな?」
桃香が今度は趙雲へと向き、問いかける。趙雲は静かにうなずくと二人と正面から向き合えるようにすわり話しはじめる。
「先ほど申したとおり、あなたはこの戦いで勝利したにもかかわらず、どこか憂いを帯びた顔をしていました。何がそんなに悲しいのですか?」
趙雲は桃香にそう問う。死者も少なく町の被害もほとんどないこの状況でなぜ喜べないのか気になり質問してきた。おそらく自分とはなにか違うものを桃香が見ているのだと思ったからかもしれない。そして、桃香はゆっくりとその質問に答える。
「確かに戦いで勝利し町を守ることが出来ました。しかし、死者が出て、遺族が影で泣いているのを見れば素直に喜ぶことが出来ませんでした」
趙雲は桃香のその話を聞きすこしむっとする。武人である彼女は、戦場へ出て死ぬ覚悟もしている。確かにこの戦いで死んだものは武人ではなく戦いとは縁のない者たちではあるが、彼らも町を守るため命を落とす覚悟で挑んでいた。その覚悟を侮辱しているのか、と思ったのが……
「本当は、あの黄巾賊の人たちだって元々は普通に暮していた人たちだったのに。……生活が苦しくてあんなことをしてしまう、今の世の中が悲しいんです。……あの人たちも本来は守られるべき民だったと思うと……」
それを聞き趙雲は黙ってしまう。桃香が町の人間が死んだことだけを悲しんでるのではなく、黄巾賊のことに対しても悲しんでいるとわかり驚いた。
「……あの賊たちのことも考えて心が痛いのですか?」
「……確かにあの人たちは悪いことを沢山してしまった。その罪を罰せないといけないのはわかっています。しかし、政治が悪く、それに耐えられず賊となったと思えば私は悲しいんです」
桃香は今にも泣きそうな顔をし話す。
「今回の策にしたって、かなりの大博打でした。趙雲さんとディバルさんがいてくれなければ成功しなかったでしょうし、被害も酷いものとなったでしょう。もっといい策もおもいつけませんでしたし……」
ディバルはそんな苦しそうに話す桃香を心配そうに見つめる。
「……私にもっと力があれば……知恵があればと思うと」
これはもう、桃香の独白に近いだろう。それでもディバルはもちろん、趙雲も黙って話を聞く。
「………いつか多くの人が幸せで暮せるような……あ」
桃香は随分熱をこめて話しており、今我に返りはなしこんでしまったと気づく。
「ご、ごめんね? こんな変なことを話して。ディバルさんにはこれで二回目だし……」
桃香は謝罪する。
「……劉備殿少しいいでしょうか?」
「はい? なんでしょう?」
趙雲がまじめな顔をし、桃香とむきあう。桃香も真剣に趙雲の話を聞こうとする。
「……劉備殿、正直あなたが言ってることはある意味では正しく美しいものです。しかし……」
ディバルは趙雲が何を言うのか察したのか止めに入ろうとするも、桃香に服の袖をつかまれ止められる。
「それは理想論です。……あなたの言うことは現実を知らぬ子供が意見を言うのと同じことです。……あなたはお優しい方みたいだが、それは同時にとても甘い考えでもある」
桃香はそれをしっかりと聞き、ディバルは怒りたいところを桃香に止まるよう注意を受けているため、何とか我慢しているがいつ爆発し、暴れてもおかしくないほど顔を真っ赤にしている。
「ですが……」
「え?」
趙雲は桃香に対し、頭をたれ片膝をつく。
「しかし、この趙子龍、あなたのようなお方を探しておりました」
「ちょ、趙雲さん?」
桃香は驚き慌て、ディバルはこと変化についていけないのか唖然としてそれを眺めている。
「星です」
「え?」
「星とおよびください。どうか私にもあなたの理想実現のための手伝いをさせてください。」
それは臣下の礼、趙雲は桃香を主として懇願する。その光景はとても美しいものだった。
「ま、まってください。あなたのようなすごい人に仕えてもらえるようなものではないです。……ただのわらじ売りでしかないのにそのようなこと……」
「いいえ、劉備様。あなたのようなお方に仕えたいのです。例えあなたが貧しい身分のものでもかまいません。それに、あなたはこんな所でわらじ売りで終わる人物とも思えません。」
「……趙雲さん」
趙雲のその真剣なまなざしに桃香は何も言えなくなり、そして
「……わかりました。いまだ何の地位もありませんが、そんな私でよければ。」
「では!」
「私の真名は桃香といいます。これからどうかよろしくお願いしますね。星さん」
桃香はそう言うと微笑んで星に手を差し出し、星はその手をにぎり深く礼をする。ここに主従の関係はなった。
「……あ~、すまんがいいか?」
ディバルはこんな美しい場の雰囲気を壊したくはなかったが、勇気を出して話しかける。
「ああ、すまん。別にないがしろにするつもりはなかったのだが……あなたにも私の真名を……」
「ああ、別にいいよ。俺はこの国の人間じゃないから真名なんてないし。……桃香はそう呼んでほしいと言われたから言ってるが……」
「なら私もかまわない。あなたも桃香様を支える者の一人なのだろう? なら私とは同僚となるんだから真名でもかまわないよ」
べつにディバルは桃香に忠誠を誓ってるわけではない。それに
「俺はいずれこの国を離れ旅立つつもりなんだが?」
「ですが、桃香様に恩義を感じでおいででしょう? それにあなたは……」
趙雲はなにかを感じたのか含んだ笑いをし、ディバルを見る。
「……まあ、桃香には世話になってるし、ここでどっかへいくほど人でなしじゃないしな。桃香の夢に付き合うよ」
ディバルはため息を吐き、やれやれといった感じでこたえる。
「え~と、ディバルさん。いいの? 私に付き合う必要はないんだよ?」
「気にするな。ここで桃香を見捨てるなんてしたくないから。それに前にも言ったけど、急ぎの旅でもないんだし。最後まで付き合ったってかまわないよ」
ディバルは笑いながら桃香にそう答える。それに彼としては、この世界にも転生者がいるかも知れないと分かってしまった以上、ほっとくのは気が引けるのだ。
「ふむ、では改めてよろしくお願いしますぞ。ディバル殿」
「こちらこそよろしく頼むよ。星」
ディバルと趙雲……改め星は握手する。
「といっても、何の力も無いからやっぱり不安なんだけどね」
そう桃香が言うと、ディバルは苦笑する。桃香の言うとおり今の彼女たちには軍隊や官位といったものもないため如何すればいいかわからないだろう。桃香は確かに私塾にて、様々な事を学んだが、それでもこの状況で何が出来るとは思えない。
「まあ、そう難しく考えても仕方がありません。今日はもう遅いですし、明日考えましょう」
星はそう笑いながら提案する。確かに気づけば日が沈み、騒いでいた町の住人たちもそれぞれの家へと戻っていく。いつの間にか大分話し込んでいたようだ。
「あ! そういえば星さんはどこか宿を借りているの?」
桃香は星がどこで泊まるのか聞く。
「む……そういえばここへ着いたときには、すでに黄巾賊たちを撃退するための準備をしている状態でしたから、どこに泊まるか決められてなかったですな。まあ、野宿しても問題ないですしな」
星は今思い出したといった感じでそんなことをのんきに言う。夜も深く、宿などどこも寝静まって部屋を借りることも出来ないだろに。さらに、暖かくなってきたとはいえ、夜になればまだ冷える時期で野宿などすれば、体調を崩しかねない。
「じゃあ、私の家に来ませんか?」
「よろしいのですか?」
「うん。ディバルさんもいるけど、結構広いからね。………けっこうなボロ家だけどね」
桃香はそう笑いながらも提案する。彼女は真名を預けあった星に野宿などさせたくないと家に泊まるようその後も話していき、星も断る理由もないため承諾し、ディバルも居候の身だからとくに言うこともないといい、星は桃香の家に泊まることとなった。
そしてその日の夜。
桃香の家で三人は今後どうするか話し合いをしていた。そして星は旅をしてる間に得た情報などを話しそれらを元に堂、行動すべきか話しあっている。
「今現在、この幽洲における黄巾賊の活動はそこまでではありますが、後のことや出来うる限りの戦力を確保したいのと、遠征へと向かい出来うる限りの手柄をたてるため、現太守は義勇軍を募集していると思われます。ですので、ここで義勇軍を結成し、太守殿の元へ向かわれても……」
「下手したら使い捨てのための兵……最前線辺りにでも飛ばされかねないな」
星は言いにくそうにするがディバルはきっぱりとそれが事実だと言う。桃香と星も苦笑する。
「でも驚きだな~。あの白珪ちゃんがそんなことを考えてるかもしれないなんて」
「? 桃香様、白珪殿のことを知っておいでですのか?」
桃香の発言に星は公孫賛と知り合いなのか問う。曲がりなりにも太守である人物をちゃん付けで呼ぶのだ。普通なら恐れ多いと太守様や星がいうような殿をつけるものだ。
「うん。同じ塾で一緒に勉強したなかだよ。もっとも、そこまで仲良くなれなかったんだけどね」
桃香がそう少し苦笑しはなす。ディバルは誰にも気づかれなかったが、眉を少しつりあげた。
「ほう、同じ塾での……」
「そうだよ。当時の白珪ちゃんはとても優秀で盧植先生も近年稀に見る才の持ち主って褒めていたんだよ」
桃香はそう笑顔で話す。そこまで仲がよくなかったと言っても周りのことを出来うるかぎり見ていたのらしい。
「最初は色々よくしてくれたんだけれど……白珪ちゃんと昔から仲が良いっていう厳綱っていう人と一緒になって色んな事を言われちゃったんだけど、あれは私のことを思っての言葉と思うしね。……政治についての勉学だけではやっていけないぞ、って言ってくれたりしたんだよ」
桃香はそう言うが、ディバルも星も複雑な表情である。
(……おそらく、その厳綱という人物が転生者だろうな。おかげで桃香は親友が出来ずに寂しい塾通いとなったわけか……)
ディバルは転生者の存在を知っているのと、自身の知識により厳綱が転生者の一人であると推測する。本来なら桃香と公孫賛は真名を呼び合うほどの仲となるはずなのに、転生者一人で大きくずれてしまっている事を気にしながらも、今はどう行動するかを考えることにする。
「ふむ………私はここへ立ち寄る前に一度、公孫賛殿のところに一時期働いていたことがあるのですが……桃香様はそのように感じたかもしれませんが、私はそう思いませんでしたな」
「え? そうなの? どう思ったの?」
星は何か言いづらそうであるが、桃香はいったい何なのか星にたずねる。
「何と言いますか……厳綱という者と恋仲らしいのですが……二人はほとんど共に行動しているらしく、あくまで客将としておとずれていた私の前でも平然と、その……」
「あ~、言わなくてもいい。その反応でなんとなく分かった」
星が話そうとするも、やはり話しづらそうにしているがディバルは一部分の話を聞き何なのか大体分かった。
「ようは、お客様がいるのに職務中ほとんどバカップルやってたんだな?」
「? ディバルさん、バカップルって?」
「バカはそのまんまで、カップルってのは俺の知ってる異国語で恋人って意味だ。つまり所かまわずイチャラブやってるって意味で使われたりするんだ。……で、そのバカ二人、太守と側近だっつうのに、他所者の星がいるところでも平気でそんな姿を見せてたってあたりか?」
「……ええ、その通りです。普通、恋仲であったとしても公私の切り替えをするものなのに、関係なしにその態度で職務も大分溜め込んでいるようです」
星のその言葉に桃香は目を大きく見開き、口をポカンと開けてしまっている。桃香の知る公孫賛と星の話す公孫賛の話があまりにも違いすぎて驚いているようだ。
「……さらには、公孫賛殿は厳綱殿の意見ばかり聞き、他の臣下の話も聞かぬらしく、民から寄せられる陳情なども目を通しておりません。そのため、民や臣下の不満がかなり募っているようです」
「公私はしっかり分けろよ……」
「・・・あの真面目な白珪ちゃんが・・・・・・・」
ディバルはあきれ果てる。桃香は驚きで、それ以上の言葉が出ないといった感じで、絶句する。
「恋は人を変えるってとこかな?」
「まあ、その恋した人物もかなり問題ですが………」
ディバルの言葉に、星はさらに話を続ける。
「実は、その厳綱殿はかなりの好色家でして、私にたいしても口説きにかかってきまして……」
星の言葉には、抑えてはいるのだろうが、かなりの怒気がこめられており、どれだけ怒っているか桃香たちにも伝わる。
(……随分と分かりやすい転生者だな。欲望に一直線かよ。自重しろってんだ)
星の言葉にディバルは厳綱に対し内心あきれ果てる。公孫賛という女性がいながら他の女性にもちょっかいを出しているのだ。呆れもするだろう。
「……まあ、何にしても、公孫賛のところに行くのは危険って事だな。……桃香、色々と思うところはあるだろうが今はこれからどうするかを話し合おう。な?」
ディバルは桃香がかなり動揺しているのを見て、話を変えようと桃香に話しかけた。
「……うん、そうだね。ごめんね、取り乱したりしちゃって」
「いえ、かつての友人が変貌したと聞けば、そのようになるのも至極当然のことです。桃香様が気を病むことではございませんよ」
桃香の言葉に星は気にしないように言う。彼女の性格からすればそれは難しいと思われるが、とりあえずは落ち着いたようだ。
「桃香様、私に提案したいことがございます」
「? 何か考えがあるのですか?」
星が改まり、桃香に何か案を言おうとする。
「はい……現在、青州には黄巾賊の動きが活発で、青州の太守、
星の言葉に桃香は考える。後々のことを考えれば青州へと向かうのが良いのは分かるが、幽州は自身のふるさとだ。そこを離れ、異なる地で戦うことに何か思うことがあるらしい。
「桃香・・・…おそらくお前は幽州のことが気になっているんだろうが、そう難しく考える必要は無いと思うよ」
「でも……」
桃香が悩んでいるのを察したディバルが助言を言うが、それでも踏ん切りがつかないらしい。
「桃香様、失礼ながらも私もディバル殿と同じ意見です」
「星さん?」
星が再び桃香に進言する。
「桃香様、あなたの最大の魅力はその優しさです。しかし、時には非情になり考えねば間違った選択をしてしまいます」
「…………」
星のその言葉は厳しいながらもどこか優しさにあふれており、桃香は静かに彼女の話を聴いていく。
「桃香様、あなたは自身の故郷であるこの幽州について不安があるようですが、完全に腑抜けてしまっているとはいえ公孫賛殿の軍は錬度も高く、例え黄巾賊の本隊が攻めてこようともそう易々と敗北することはございません。それに、貴女の願いは多くの人が笑って暮せる世の中を作りたいと願うなら、この幽州の地に留まっていては叶いはしません。ここで立ち上がり、その志をもってして行動しなければならないのです! すいません、少々熱くなりすぎたようです」
星のその言葉に桃香は涙を流し、彼女の手をとる。突然の出来事に星は驚き困惑する。
「そんなことないよ。星さん、あなたがそのことを言ってくれなければ、私は今の現状に満足しながら何もせずに暮していたかもしれません」
桃香のその言葉にディバルは自身は桃香に対して、厳しい事を余り言わずにいた自身を恥じる。桃香のことを想うなら、時には星のように厳しい言葉を贈らねばならなかったのに、と内心反省する。
「桃香様……」
桃香のその言葉に感動したのか、星は目を潤ませる。今の桃香の姿は、彼女にとっての理想の主君に見えたのかもしれない。
「星さん、ディバルさん。私、決めました。義勇軍を募集し、多くの人たちを助けるために戦います!ですから、」こんな迷ってばかりで至らない私ですが、どうか力を貸してください!」
桃香のその言葉を聞き、星もディバルも笑いうなずく。
「桃香様、人は誰しも悩み迷いながら生きているものなのです。それを恥じる必要などないではないですか。……それに、私のこの槍はすでに、桃香様に捧げると決めているのです。遠慮なく我が力を存分に使ってください」
「ああ、そうだぜ桃香。星の言うとおりだ。遠慮することなんてない。俺たちを頼ってくれ」
「星さん、ディバルさん! ……ありがとうございます!!」
彼女たちはこうして絆を深めていった。
そして、夜が明ける。桃香たちは、近くの桃の木が美しい花が咲き誇っている場所へとやって来ていた。桃香たちは持ってきたささやかな料理と酒を敷物の上に乗せ誓いを立てる。
「天地神明に誓う! ここにいる劉備! 趙雲! ディバルの三名は、この天下に生きる人々のためにその力を振るうことを誓う!」
桃香の声が響く。それはどこまでも響き渡るかのようである。
「我ら三名! 姓と生まれし国は違えども! 兄弟姉妹がように力を合わせ助け合い、多くの力なく犯される民衆を救わん!」
星も桃香に続き宣言する。
「同年、同月、同日に生まれることはなくとも、願わくば同年、同月、同日に死せんことを願わん!」
ディバルも続き宣言する。
「「「乾杯!!」」」
ここに戦う覚悟と、仲間と兄弟姉妹のように助け合うことを誓った。
本来のものとは違うものの、ここに……桃園の誓いがなされた。
彼女たちは進むこととなる。茨がごときその道を……
頭の中では大まかな話は出来ているのですが、うまく文章に出来なくて苦戦しぱっなしです。
次の更新は何時に出来るか不安です。