あと前回より文章量が少なくなっておりますがご了承ください。
「……さて、これからの行動だが」
「うん、まずは町へといって、義勇軍への参加を呼びかけるんだよね?」
「はい、昨日の桃香様の活躍で多くの者が参加すること間違いないかと思います」
ディバルの言葉に桃香が続き、星が肯定する。これから町へと向かい、義勇軍結成のために呼びかけを行うのだ。昨日の桃香の活躍で今まで参加をためらっていた者も参加してくるのではないかと、星が提案したのだ。ディバルもその意見に賛成し、町へと向かおうとしていたのだが早速つまずくこととなる。
「といっても…………お金どうしようか?」
「「………………あ」」
基本的なことを忘れていた。意外と抜けているらしい。
「ま、まあ何とかするさ。参加者や町の住人に幾らかの寄付をお願いしたりして……」
「そ、そうですな。最悪、町長などから昨日の報酬という形でいくらかを……」
「………ダメだ。私がしっかりしないと……」
ディバルと星の意外なうっかりを、しっかり管理しなければと桃香は決意した。胃に穴が開かないか心配である。
とりあえず、資金等は二人の意見を採用するしかなかったので町長に相談することとなった。
そんなこんなで桃香達は町へとつく。すると、かなりの数の町の住人が桃香達を出迎えてきた。
「良く来たね劉備ちゃん。ささ、こっちへきなさいな」 「ほら、連れのお二人も」
「え? え?」 「な、なんだなんだ?」 「むむ?」
桃香達は民衆にあれよあれよという間に、町の広場につれてこられた。そしてそこにいたのは、五百名近くの武装した集団と多くの馬、そして町長とそれなりに良い服を着た商人らしき人物がいた。
「町長さん! それにそちらは町一番の大商人の張世平さん!」
桃香が町長と商人―――張世平に声をかける。
「劉備ちゃん……義勇軍に参加するんだろ?」
「え? 町長さん、どこからそれを?」
「いやなに、実は昨日の宴の途中で主役である君たち三人が隅のほうへ行っただろ? お礼の言葉を述べようと近くまで行ったんだが、君たちの話が聞こえてね……」
町長の言葉に桃香は最初驚くが、その理由も説明した。
「それを聞いてね……私ができることといえばこうやって町の皆を集めて義勇軍に参加しないか聞いて回るくらいしかできなくてね。何とか五百人ほど集まってくれたよ」
町長はそう微笑みながら話す。
「で、でもみんなの装備や馬は……」
「それは、私が用意させてもらったんだよ」
「張世平さん……」
桃香の疑問に張世平が答えた。ここにいる者たちの武装と馬は彼が用意したのだ。確かにこの町一番の商人たる彼なら用意できるであろう。だが
「……お話のところ申し訳ありませんが一つ質問よろしいでしょうか?」
「ん? なんだね?」
ディバルが質問する。
「はっ……商人とは利により動くと言われております……なぜここまでのことを?」
ディバルの疑問は尤もだろう。ここまでのことをできる人物ではあろうが、何の徳にもならないはずだ。商人という者は利益が無ければ動かないのが常だ。しかし
「それは私が根っからの商人だからでございましょう」
「む?」
「商人は人の顔色を見ると言います。私は劉備殿のことを幼い頃から知っております。今までのことを思えばいつかこの日が来ることは分かっておりました。……ただ、塾に通うようになったときから劉備殿は元気をなくしてゆき心配し、それに追い討ちをかけるかのように旅の武芸者らに罵詈雑言を浴びせられ、昔のような元気な姿を見なくなってしまいました」
ディバルはもちろん、桃香と星もその話を黙って聞いていく。
「………ですが!そこにおられるディバル殿と出会い少しずつ元気を取り戻し、そして趙雲殿とともに戦う事で、劉備殿は立ち上がることを決意しました。……そして、あなた方なら必ずや成功すると確信したからこそ、これに投資するのです」
張世平は熱く語り始める。昔から桃香を知り、彼女の才覚を見抜いていたらしくそれが開花しようとしている桃香に感動しているようだ。
「もう一つ、兵を挙げるなら……少々言い方は悪いですが今のこの時期が絶好の機会でしょう。……武人には武道、聖者には文道があり、そして商人には利道がございます。……私は劉備殿のやあなた方二人なら必ずや名を上げ功を成すと確信しました。ここに用意した物はそんなあなた方に投資すのでございます。……たとえ何十年でも構いません。功を成した挙げたとき、多少の利子をつけてお返しいただければそれでよいのです」
張世平の言葉にディバルは何も言えないでいた。いや、むしろ感動し涙がこぼれるのではないかと思うほど胸が熱くなるのを感じていた。
(桃香が頑張っているのを分かってくれている人がこんなにいたんだ!! ああ、まるで自分のことのように嬉しく思う)
桃香が多くの者に否定され続けていたが、また同時にこのように応援している者がいたことにディバルは感動する。
「張世平さん、ありがとうございます。必ずや功を成し、このお借りするお金をお返しいたします!!」
桃香も張世平の言葉に嬉しく感じていたのだろう。少し涙がこぼれていた。自身の努力を認めてくれている者が他にもいてくれたことに感動したのだろう。
「劉備ちゃん、悪いんだけどこっちに来てくれないかね?」
「あ、町長の奥さん!」
「ああそうでした。劉備殿申し訳ないが妻のところまで行ってきてもらえないかな?そこで劉備ちゃんに渡したいものがあるんだ。妻が用意したものなんだよ」
「そんな! ここまでしてもらったのにまだ・・・」
桃香はまだ自分に渡すものがあるといわれ遠慮しようとするが
「桃香様、ここは受け取るのがよろしいかと。奥方殿もそれを望んでいるようですので」
「桃香、その謙虚さは美徳だけれど送り物は受け取るほうが相手も喜ぶものなんだよ」
星とディバルが桃香にそう話す。
「あ……あ、あはは、そうだね受け取らないと逆に失礼だったよね。……ごめんね」
「気にしなくてもいいよ。大事なのはそれに気づけることなんだから」
桃香の謝罪にディバルは笑って気にしないよう返す。
「じゃあ、こっちへいらっしゃいな」
「は、はい」
桃香は町長婦人に連れられていく。ディバルと星は今の間に義勇兵の装備の確認や、馬の数、食料や資金が幾らあるかなどを聞いていく。さらに、簡易ではあるものの軍機を定め、自分たちが青州へと向かうことを伝えていく。そして少しして桃香が戻ってきた。
「こ、これは!」
「なんと……」
「ディバルさん? 星さん?」
戻ってきた桃香の姿は原作と同じものであった。知っていたはずなのにディバルは桃香の美しさが何倍にもなったのではないかと思ってしまうほど似合っていた。星もそんな桃香の姿に感嘆の声を出し、桃香は少し赤い顔をしていた。
「え~と、ディバルさんどうかな? 私どこかおかしくない?」
「い、いやおかしくなんて無いよ。むしろ凄く似合っているよ」
「そ、そう? えへへ、ありがとう」
桃香はディバルに自分の格好がおかしくないか聞き、ディバルは顔を赤らめ似合っていると答え、桃香もその言葉に照れたのか顔が少々赤くなっている。
「ふふふ、微笑ましい光景ですな」
星は微笑みながら二人の様子を見守っていた。
「町長さん、町長の奥さん、張世平さん……行ってきます」
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
「頑張るんだよ劉備ちゃん」
「御武運をお祈りしておりますぞ」
桃香は張世平が用意していた馬にまたがり別れの言葉をいい町長たちに見送られていく。町の大通りを進んでいくと町の住民たちが桃香に声援を送っていた。それだけ桃香が町の人たちに好かれていたのだろう。桃香はそれに笑顔で答え進んでいく。町の住民の列は門前まであり、桃香達義勇軍が見えなくなるまで声援を送り続けていた。
桃香達は青州へと着き太主
そこに
「伝令! 黄巾賊が現れました!」
黄巾賊襲撃の報がやってくる。
「何だと!? 奴らもついにきおったか!
「承知しました」
そして、龔景は黄巾賊討伐のために部下である鄒靖に黄巾賊の迎撃に向かうよう指示を出した。
「太守様、私たちも黄巾賊討伐へとお供させてください」
そして桃香も自分たちも共に戦いたいと進言する。龔景は桃香の言葉に感激し手柄を立てるよう激励する。そして鄒靖将軍と共に黄巾賊討伐へと向かうこととなった。
そして黄巾賊の迎撃のため、彼らの進行するであろう山の下の場所に陣を張り会議を始める。黄巾賊の数は偵察に出た兵の報告によると一万の兵とのことであり、約半分の戦力でどう撃退するか話し合っていた。
「さて、いくら烏合の衆といえど二倍近くの戦力をいかな方法を持って殲滅するか」
鄒靖はできるだけ兵の被害を抑えるためにどうやって戦うべきか頭を悩ませていた。彼もまた自分の主君である龔景と同じように部下や民のことを思う人物である。義勇軍の参加があるとはいえその戦力差はおおよその数ではあるが四千五百の差だ。中々に厳しい戦いになるであろう。
「将軍、少しよろしいでしょうか?」
「む?どうしたのかな劉備殿?」
と、そんな中桃香が声を上げる。鄒靖は何かを桃香へ問う。
「はい、簡易的なものではありますが計を立てたいのです」
「ほう、何かいい策が?」
「はい、まず兵を三つの部隊に分けます」
桃香は考え付いた策を説明していく。
「まず第一の部隊はこちらから打って出て黄巾賊と戦います。ですがある程度戦った後この付近にまで撤退します。そして第二の部隊がこの山の森に隠れ追撃してきた黄巾賊をに奇襲をかけます。彼らは戦慣れしているとはいえ元は農民が多い、奇襲を受ければ混乱し隊列が乱れてまともに戦うことも難しくなると思います」
「ふむ、なるほどな……だが奴らとて馬鹿ではない。すぐさま退き体勢を立て直すやもしれん」
「そこで第三の部隊も奇襲をかけるのです。この部隊にはここから少しはなれ第二の部隊が奇襲に成功し敵が撤退を始めようとしたとき後ろから攻めてもらうのです」
「ほう」
「逃げようとしているところに、その逃げ道に我らが現れれば黄巾賊の部隊は戦意を大きくくじかれるはずです。後は包囲し殲滅すれば被害も少なくなるかと思います。ただ完全に殲滅するのではなく包囲網の中に一つだけ包囲がゆるいところを作りあえて敵の逃走経路を作るのもいいかもしれません」
「む? 何故かね?」
「彼らは必ずや他の黄巾賊の仲間に助けを求めるはずです。その逃げていく者を追えば必ず黄巾賊の拠点へとたどりつけると思います。この青州の黄巾賊の拠点がなかなか見つからないと聞いたことがありましたのでこれをもって黄巾賊の拠点を見つけようと思ったしだいです。……さすがにすぐさまその拠点を攻めることは難しいでしょうが、後の戦いで役に立つと思います」
「ほほう、なるほどなるほど」
(ふむ、町の防衛戦で大勝利を挙げたというのことはある)
桃香の策を聞き鄒靖はただひたすら感心していた。この黄巾賊の撃退の戦いだけでなく、彼らの拠点まで見つけようという策に彼は桃香を内心高く評価する。
「よし、ではその方法でやろう」
「意見を聞き入れてくださりありがとうございます」
そして鄒靖は桃香の策を採用し早速準備に取り掛かる。そして三つの部隊へと分けられ第一の部隊を桃香と鄒靖が指揮をし敵を誘き寄せるため出陣し、第二の部隊を星が指揮し森に隠れすぐさま弓放てるよう備えさせる。そして第三の部隊をディバルが引き連れそこから少し離れた森の中に部隊と隠れ息を潜める。先頭準備万端だ。
そして、桃香と鄒靖は黄巾賊の部隊を見つけ戦闘が始まった。この部隊を指揮するは猛将・馬元義である。彼は正規軍に混じって明らかに自分たちと同じ農民出の者が混じっているのに気づきなめてかかっていた。
「へへへ、こんな槍を持ったこともねえような奴らをも使わないといけねえとはな。官軍も大分切羽詰ってきやがったみてえだな」
馬元義が余裕の笑みを浮かべる。勝利を早くも確信したようだ。だがその余裕に裏づけされたかごとく彼の強さは決して馬鹿にできたものではない。一度自身が持つ槍を振るえば五、六人の官軍の首が飛ぶ。このようなこと腐敗しきった官軍の正規の将ではできる者は少ないだろう。後に語られるような一騎当千の将のような強さほどは無いが間違いなく強敵だ。
そして戦いは数の違いもあり桃香たちが不利となっていた。無理もあるまい、なんせこの第一の部隊には尤も多くの人数がいるといえど三千の兵しかいないのだ。対し馬元義が率いる黄巾賊の数はおよそ一万である。約七千の兵力差があるのだ。
「そろそろかな……将軍!!」
「うむ! ……ひけっ!!!」
そして桃香と鄒靖は退却を始める。
「ふん、逃がしはせん!それ追え追え!!皆殺しにしてやれ!」
退く官軍を見て馬元義は追撃する。黄巾賊たちは桃香たちを追いかける。そして、第二の部隊が潜む山近くにやってきた。
「きたか……弓隊構え」
星の指示で隠れていた兵たちは弓を構える。そして……
「射てっ!!」
「「「「「ぎゃああ!?」」」」」
星の号令とともに矢が放たれた。矢はまるで雨のごとく黄巾賊に降り注ぎ次々と黄巾賊を射殺していく。
「し、しまった! 謀られたか!! ひ、引けいっ!!」
「今です! 引き返し反撃してください!!」
「それっ! 今度こそ本気で戦うのだ!」
馬元義は自分たちがまんまと罠にはめられたことをさとる。だが解きすでに遅し。桃香と鄒靖は兵たちに反転し戦うよう指示を出す。さっきまで撤退していた部隊は瞬く間に向きを変え黄巾賊へと攻撃する。
「くぅっ! おのれぇ……なんとしても引き返し体勢を立て直すのだ!!」
「ば、馬元義様! 後方からも官軍が!!!」
「な、何ぃ!?」
撤退しようとしていたところに、逃げ道を塞ぐかのようにディバルが引き連れる第三の部隊が現れ黄巾賊へと襲い掛かる。
「覚悟しろ貴様ら!!」
「ひぃ!? 助けてくれ!?!」 「死にたくねえよぉ!!」 「うわぁ!!」
逃げ道を断たれ逃げ惑う黄巾賊。哀れにも見えるその姿だがディバルは賊に情けをかけるつもりなど毛頭ない。
「いままで暴虐の限りを尽くし、罪なく力なき者を食い物としてきた者がここで逃げ出すとは何事か。今まで好き勝手し悪逆非道を尽くした貴様らに生きる価値も慈悲をかける余地なし! ここでくたばりやがれ!」
「ひぎゃあっ!??」 「ばわっ!?」 「あろ!!」
ディバルは斬馬刀を振り回し黄巾賊の命を刈り取っていく。それは本当に花などの養分を吸い取る雑草を刈り取るかのように賊どもを肉片へと変えていく。さらに
「げけ?!」
「……」
ディバルは一人の黄巾賊の頭を鷲掴みにする。
「け……けびょっ!!?」
「ひっ! ひいぃぃ!? に、人間の頭を握りつぶしやがった!!?」 「化け物だあぁぁぁ!!??」
無表情のまま賊をそのまま握りつぶしたのだ。その残虐な殺され方をみてさらに混乱が広がる。ディバルは再び斬馬刀を振り回し黄巾賊の屍の海を築いていく。その姿はまさに鬼のごとき武勇である。
「ぐ・・くそぉ・・・」
馬元義は怒りを顔に表す。数はこちらが上であったはずなのに大敗してしまったからだ。このまま逃げ帰れば自分の首が危ない。彼は何とか指揮官の首を討ち取ろうとするも・・・
「見つけたぞ。貴様が指揮官か」
声をかけられた。振り向くとそこには返り血で真っ赤な姿と化したディバルのがいた。馬元義はもうどうしようもないと悟ったのか、槍をディバルに向け突撃する。蜂の一矢がごとく命がけの突きだったらしいが・・・
「うおぉぉぉ!!」
「死ねい外道が!!」
「はかばが!?」
あっさりとディバルの斬馬刀に首をその槍ごと斬りおとされた。それはあまりにもあっけなく情けない最後だった。
「敵将討ち取ったぞ!!」
「馬元義様!?」 「そんな……」 「にげろぉ!?」
指揮官を失った黄巾賊は逃げ惑い、その多くが殺されていく。そして一部の者が包囲網の薄いところから逃げ出した。
「では指示したとおり、逃げ出した黄巾賊をできるだけ気づかれぬよう追跡してください。彼らの拠点が分かり次第すぐにもどってきてください」
「承知!」
「では、皆さんはのこった者たちを打ち倒してください!」
「「「「「はっ!!」」」」」
そして桃香は逃走した賊を追跡するように指示を出し、今ここにいる黄巾賊を殲滅するようにも指示を出した。
まもなくして黄巾賊は殲滅させられた。桃香の第二陣もまた勝利で終わった。
青州城へと戻ってきた桃香たちを太守龔景快く迎え入れた。
「鄒靖ただいま帰還いたしました」
「同じく劉備帰還いたしました」
「おう二人ともごくろうであったな。特に劉備殿、そなたの活躍は鄒靖が送ってきた伝令から聞き及んでいるぞ。そなたのおかげで次なる戦いで黄巾賊どもと決戦をむかえられようぞ」
龔景は劉備の策のおかげで頭を悩ませていた黄巾賊たちの寝床を知ることができ大変機嫌がいいようだ。奇襲をかければ少ない戦力でも勝利することができるであろう。
「さあさあ、祝勝会を開こうと思っている。英気を養ってくれ」
龔景は労いのための宴会を開けようというが
「申し訳ありません太守様。私たちは次の戦場へ向かおうと思っているのでございます」
「む? もう次の戦へ向かおうというのか?」
「はい。これから広宗へと参りたいと思っております。昔私塾で私に文学などを教えていただいた廬植先生が官軍として五万の兵を指揮し黄巾賊と戦っていると聞きました。かつての恩を返すため私もそこへはせ参じ先生の手助けをしたいと思っているのです」
「む、そうか……うむわかった。あなた方は正規の軍ではなく有志により集まった義勇軍。どんな行動をとろうと私たちにそれを止める権利は無い。……だが、戦の疲れもあるであろう、今日はここで休みなさい」
「ありがとうございます」
桃香たち義勇軍は龔景の計らいで休養をとることとなった。その日は龔景の命で祝勝会が開かれ、桃香たちはつかの間の休息をとる。
「盛り上がってるな」
「うむ、ここの役人も人のいい者ばかりで私たちも気が楽だな」
ディバルと星は宴会の中でそんな話をしていた。自分たちのような官位のない者が手柄を上げるとそれをよく思わぬ輩も多いのだ。そのためある程度このような宴でも気を張っていたのだ。だが、なるほど評判どおり人ができた人物が多いらしく最低限の警戒だけし、宴を純粋に楽しむことができていた。
「ディバルさん、星さん今日はごくろうさま。今日は大活躍だったね」
そして二人に桃香が声をかける。
「ありがとう桃香。だが一番の功労者はあの策を立案した桃香だろう?」
「ええ、桃香様の策があればこその大勝利。我らなどよりもすごい功績です」
「えへへ、ありがとう」
ディバルも星もそう言って桃香をたたえる。桃香も少し照れ、顔を少し赤くする。その後、宴が終わり就寝時間まで三人で談笑していた。
そして次の日。桃香たち義勇軍は、廬植率いる五万の官軍の手助けに向かうため出発のしようとしていた。そこに太守龔景と、ともに戦った鄒靖が桃香たちの見送りに来ていた。いくら戦果をあげたとはいえ官位のない彼女たちを高官がこのように見送りにくるのは異例だろう。周りの者たちも驚いている。
「劉備殿、気をつけてな」
「ありがとうございます太守様。……ですが申し訳ありません。本当は黄巾賊の拠点攻撃までいたらよいのでしょうが」
「ははは、気にしないでください。確かにあなたがいれば心強いですがここまでの情報があれば今の戦力でも充分に戦えますよ。それに今廬植殿が戦っている黄巾賊の本隊です。そちらのほうが苦戦しておいででしょうから優先すべきことは間違っていないでしょう。手強い相手ですので気をつけなされ」
龔景と桃香が話す。桃香としては申し訳ないと感じているが、龔景は気にしないように言う。それどころか、これから向かう広宗にいる黄巾賊本隊と戦うこととなるのに心配しているくらいだ。
「劉備殿、御健闘お祈りいたします」
「将軍、ありがとうございます。将軍も御元気で」
鄒靖との別けれもすみ、桃香は義勇軍と向き合う。
「これから我ら義勇軍は広宗へと向かいます。全員出発!!」
桃香の号令の元で義勇軍は隊列を整え出発した。
「本当に立派な若者であったな。私の下で働いてほしいくらいじゃ」
「ええ、本当に立派な若者でしたな」
桃香を見送る龔景と鄒靖はそんな話をしていた。桃香たちの行動は少しずつではあるが認められてきていた。
はたして、次なる戦場―――広宗ではどのような戦いがまっているのであろうか。
補足
鄒靖
三国志演義において劉備と幾度か共に戦った官軍の将。作中においては腐敗した将といった者ではなく劉備に対しても好意的だった。もともと幽州にいたという描写があるが、演義での幽州太守・劉焉の部下というわけではなく、どこからか派遣されてきた将といったものらしい。
龔景
青州の太守。黄巾賊に城を囲まれ絶対絶命のなかに、劉備と鄒靖の援軍により危機を脱した人物。救出に来た劉備たちに礼を言い、宴など開きもてなそうともした人格者。劉備を自身の家来にしたいと考えるほど彼のことを高く評価していた模様。
劉焉
三国志ファンの劉焉どこ?という疑問に答えるためにここに説明させてもらう。
演義における幽州太守。彼もまた劉備と好意的な人物。恋姫無双において幽州の太守は公孫賛となっているため存在が消された人物。本作でも心苦しいがいなかったことにさせてもらった。理由としてはやはり公孫賛が幽州太守となっているためである。