さて桃香達は目的の地、広宗へとたどりついた。桃香は廬植に取り次いでほしいと官軍の一人に頼んだ。現在、廬植は黄巾賊本隊と戦っている最中である。今は次の戦いのための軍議の最中である。
「失礼いたします。廬植将軍、劉備玄徳と名乗る娘がお会いしたいと訪ねております」
「今は忙しい。後にしてくれんか」
廬植は近くの町の使いか何かだろうと思いそうかえす。
「しかし、約五百の義勇軍を引き連れた中々立派な若者で、それにあの趙子龍と、異国の武人を武将として従えております」
「む? ではどこかの将が訪ねて参ったのか? ……まて、劉備玄徳と言ったか?」
「はい」
「なるほど……では、あの娘か。昔、私塾を開いていた時に通っていた少女だな。確かに今では年頃の若者となっていたな」
廬植は自身の記憶をたどり、昔の教え子の一人であった桃香を思い浮かべた。
「うむ、わかった。ここに通しなさい」
「はっ」
指示を受け使いは桃香たちのところへ戻り、廬植のもとへと案内された。
「おお、やはり劉備ちゃんおっと、もうちゃん付けはよしたほうが良かったかな。なんにせよ久しぶりだな劉玄徳」
「お久しぶりです廬植先生。それとちゃん付けでもかまいませんよ。私にとっては先生は何時までも先生であるのと同じように、先生にとっても私は一人の生徒なのですから」
「いやいや、立派な若者となった者に、やはりちゃん付けはできんよ。……しかし、立派に成長してくれたものよ。……あの頃はお前さんを助けることがでず、そのまま塾を閉め、官軍の将となったが、君のことが一番の心残りであったことも事実。助けてあげれず、すまんかったな」
廬植は桃香が塾内で、苛めに近いことをされているのに気がついてはいたが、ここで下手に口出しなどをすると、「よくも、先生に告げ口しやがったな」や「大人に頼ってんじゃねえ」というようなことが起こり苛めが悪化することを理解していたため、「人として、恥ずかしくない行動をとりなさい」といったことしか言えず、桃香の当時の現状を改善することができなかったのである。
そして、廬植の噂が都にまで届いたのか、帝の使者から官軍として働いてほしい、といわれたのである。これはとても名誉なことではあったのだが廬植としては、桃香をはじめ、多くの生徒のことなどが心配であったが、帝の命に逆らうわけにもいかず、塾を閉めたのである。
「そんな、気にしないでください先生。昔は確かに色々とありましたが、今では今ここにいる二人のような友ができているのですから。それにあの時の教えがって、ここまでこれたのです」
しかし、桃香は気にしないように言う。事実彼女は塾に通っていた当時は苦痛を感じることも多かったが、その時の廬植の教えなどでむしろ売りの時でも交渉や、計算などができるとし(当時は計算ができたり、字が読めるだけでも賢い方であるとされていた)、町のものからも頼りにされたこともあった。それに、廬植が教えていた兵法も役に立ち、町の防衛や青州での戦でも活躍できた。
「……そうか、それを聞いただけども心の荷おりたようだ」
廬植は桃香の、世辞ではないその言葉に安堵する。
「・・・おっとと、いかんいかん。昔を懐かしむ時では無いな。……して、劉備よ。わしを訪ねてきたわけは何じゃ?」
廬植は気を取り直して、桃香がここにやってきた理由を尋ねた。
「はっ、今の乱れた世の中に苦しむ人々を助けたく義勇軍を結成いたしました。ここにいる五百の兵と共に、先生のお役にたてればと馳せ参じたしだいでございます」
「おお……そうか。劉備よ、よくぞ申してくれたぞ。このような荒れてしまったの時代に、お前さんのような、昔のほんの僅かな恩を頼りに訪ねてきてくれるとは……そういう人物に教え子が一人だけでも育ってくれたことを誇りに思うぞ」
廬植は、本当に嬉しそうに桃香の言葉に喜ぶ。確かに、教え子が立派に育ち、損得では無く昔の繋がりを大切にしてくれる人物になってくれれば嬉しいだろう。
「劉備よ。お前さんの好意、ありがたく受け取らせてもらう。国を思い、民を思う想いは官軍だのなんだの関係ない。共に国賊どもを打ち倒そうぞ」
「はい!……それと、二人のことを紹介させてください。私の右後ろにいるのが趙雲子龍、世に常山の昇り竜と知られている豪傑です」
「趙子龍と申します。以後お見知りおきを」
桃香の紹介が終わると星は少し前へとで、拱手をする。
「うむ。貴公がかの昇り竜か。噂はわしも聞き及んでおる。期待しているぞ」
廬植は星のことを知っており、その武勇に期待する。
「そしてこちらが異国からの旅人で、今は私たちの手伝いをしてくれているディバル・クリムゾンという者で、此方も趙子龍のも引けをとらないほどの豪傑です」
「ディバルといいます。お見知りおきを」
ディバルも一歩前へとで、拱手する。
「うむ、よろしくな。……しかし劉備よ、これほどの仲間に出会えて本当に良かったな」
「はい!」
「うむうむ……しかし、劉備はここまで立派になってくれたというに、公孫賛のやつときたら……」
「?あの、伯珪ちゃんが何か?」
廬植の苦虫を潰したような顔に公孫賛の名前がで、桃香は何かとたずねる。
「うむ……実はな、今はこうして何とか持ちこたえてはいるが、此方の軍は五万に対し、黄巾賊どもは約十五万の戦力を有しておる」
廬植の指揮の下、何とか三倍近くの兵力差があるものの持ちこたえてはいるが、余りにもその数が違いすぎる。このままでは押し切られてしまうだろう。
「そこで、わしは何とか公孫賛の下へ救援要請の使者を送ったのだ。青州のほうは本拠が中々見つけられず、奇襲なども多くとても余裕がなさそうであったので送らなかったが……」
昔の好といううもの多少はあるだろうが、廬植は何とか助けを求めて使者を出したのだ。しかし
「だが、返事が来たのは使者を出してから一ヶ月以上たってからのきたのだ」
確かに、この時代の連絡方法はこのように使者などを出し、手紙を送るといったものが主流である。返事が多少遅くても仕方がない。しかし、いくらなんでも一ヶ月はかかりすぎだ。
「さらに、その返事も『今、幽州の黄巾賊にてがかかりっきりのため、援軍は遅れない』といったものだったのだ。幽州の事情など全く知らないと思っていたのだ公孫賛のやつは」
幽州にも黄巾賊が暴れてはいるものの、他のところに比べるといっては悪いがたいしたこと無い者ばかりだ。桃香の初陣である、町の防衛のように何処からとも無く現れて被害を出すものの、幽州の官軍を派遣するだけですぐに決着がつくような戦ばかりだ。少しくらいでも援軍は出せるはずなのだ。
「伯珪ちゃん……」
桃香は一度、星から公孫賛の今の状態を聞いたことはあったが、まさか恩師の救援要請を無碍に扱うようなことをするとまでは思っていなかったらしく、ショックを受けていた。
「確かに公孫賛は優秀だった。だが、人として大切なものを見失ってしまったようだ。教え子にそのことをしっかりと教えてやれず残念だ」
廬植は残念そうにそう呟いた。
「先生……」
「まあ、ともかくだ。劉備よお前さんの力頼りにしておるぞ」
「はい!」
こうして桃香たち義勇軍は廬植率いる五万の官軍と共に黄巾賊と戦うこととなった。そして流石は黄巾賊の本隊は強く、廬植の指揮や桃香たちの頑張りがあっても状況は膠着したままだった。そしてそんた状態が一ヶ月近く続いた。
「ホイホイ」「あ~らよっとの」「どっこいしょ~」
ある夜、一旦戦から陣へと戻ると官軍たちは酒を飲み、酔いに酔っていた。この一ヶ月のほぼ毎日、官軍たちは陣へと戻ればこのように酒を飲み、宴会気分でいた。確かにずっと戦場にいれば気がおかしくなるやも知れず、このようにどこかでいきぬきが必要でもあるのだが、官軍たちのは余りにも腑抜けていた。これでは勝てる戦も勝てぬだろう。まして、向こうは自分たちの三倍の兵力差があるというのにである。今持ちこたえているのもひとえに廬植の手腕があってこそである。
「……むこうは何か楽しそうだな」「………だな」
桃香率いる義勇軍の面々はそんな楽しそうに宴会をしている官軍をぼんやりと眺めている者が出始めた。この会話をしているのは警備当番の者たちである。
「おいっ、そんなところで何をしている。ちゃんと持ち場に戻って警戒せんか。もしものことがあるやも知れんのだぞ」
「「す、すいません」」
ディバルは警邏の兵を注意し持ち場へと戻らせた。そしてディバルは官軍方へと目をやる。
「…………」
「あっはっはっはっ」「ホレ、飲め飲め」「ホ~イホイ」
官軍たちはそんなことも露知らず、酒などを楽しんでいた。
「酒を飲むな言わんが、これでは此方にも悪い影響が出かねんな」
ディバルはこんな夜遅くまで騒ぐ官軍にため息を吐く。実は部下たちから官軍がこうも騒ぐものだからなかなか寝ることができない、といった話も出てきたのだ。睡眠不足も問題だが、このままでは官軍のダレきった空気が義勇軍にまで広がりかねないとかなり深刻に悩んでいた。
「……一度、桃香と相談しなきゃならんな」
そう言うとディバルは桃香の下へと向かう。桃香は最近、策や情報の整理などで遅くまで起きていることが多かった。余り無理をさせないようにディバルが桃香を無理矢理寝かしつけることも多く、今日もまだおきていると思い軍議用の天幕へと向かう。そして案の定天幕にはまだ明かりがついていた。
「桃香、ちょっと話したいことがあるんだが、今いいか?」
「ディバルさん? うんわかった。入ってきていいよ」
桃香はディバルに天幕の中へと入ってもいいと返事をし、ディバルは天幕の中へと入っていった。
「む?」
するとそこには星の姿もあった。
「星、お前も来ていたのか」
「うむ、少々思うところがあってな」
「そうか」
ディバルは星が自分と同じことを思い桃香に会いに来たと理解する。
「ディバルさん、あなたが言いたいことは分かります。今の状況についてだよね?つい先ほど星さんが来てそのことについて話し合っていたところで、ちょうどディバルさんも呼んで話したほうが言いと考えていたところだったんだよ」
桃香はディバルがここに来た理由を言い当てた。星が先に来て少し話しており、ディバルも交えて相談しようとしていたところだった。
「そうか……なら話は早いな。先ほど部下たちが官軍のほうを羨ましげに見ていたこともあってな、そろそろ不味いのではないかと相談しようと思って来たんだ。最近は寝不足の者も増えてきたな」
「そうですか。寝不足のほうとかは聞いていたけど」
「ふむ、部下たちの精神上にもよくないと思っていたが、すでに影響が出始めていたか」
ディバルの報告に桃香と星は少々顔を険しくする。いつかはこんな問題が出るやも知れないと思っていたらしい。
「桃香、余りこういうことを言いたくはないが、何時までもここにいればあの官軍のだらけきった空気が移りかねない。いっそのこと別の地へと移るべきではないかと思っているんだが……」
ディバルはこの広宗から別の場所へと移動すべきではないかと提案するが
「ディバルさんが言いたいことはわかります。でも、私の方から先生の手伝いを申し出てたのに今ここで立ち去ることはできないよ」
「確かに、今ここで立ち去ってしまえば、廬植殿の加勢にきたのに意味のない行為になり、それどころか恩知らずなとまわりから見られかねませんな」
「……やっぱそうか。分かっちゃいるんだがな。どうしたもんか」
ディバルは桃香と星の答えはある程度予測したものらしくため息を吐く。彼とてそういった風評は意外と大事なのは知っている。だがそればかり気にしても状況は好転しない。さてどうしたものかと考えようとした時。
「劉備、まだおきているか? 少し話があるのだが、入っても良いか?」
天幕の外から声がした。廬植の声だ。
「は、はい。どうぞ」
「うむ。ほう、趙雲とディバルも一緒か。ちょうど良かった」
「あの先生、話とは?」
「うむ、じつはおりいって頼みがあってな」
「なんでしょう?」
「じつはな……」
廬植の話によれば、この地は山が多く黄巾賊は守りに集中しているため非常に攻めづらく、無理して攻撃すれば被害も甚大なものとなるため長期戦に持ち込まなくてはならない状態である。
「そこでだ、頴川の黄巾賊を破ればこの地の黄巾賊も退路を断たれることを恐れて逃げ出すことは間違いない。私をはじめ、ここにいる将は帝の命をうけここにいるため、援軍を派遣するのは難しい。そこで……」
「なるほど。私兵である私たち義勇軍が向かい官軍の援護をすればよいのですね?」
「その通りじゃ。頴川で指揮を取っている朱儁将軍の援護を頼みたいのだ」
廬植は少し微笑むかのような顔で桃香に援軍に向かうよう頼む。桃香は少し考え
「わかりました。では明日の夜明けごろに出発いたします」
「すまんが頼んだぞ劉備よ」
次なる戦場・頴川へと向かうことが決定した。桃香としても廬植への恩返しをしたいというのも確かなのだが、ディバルの報告を考えると何時までもここにいれば大志を胸に抱き集まった義勇軍たちがダレきってしまいかねない。およそ五百の部下を指揮するものとしてはそのようなことにはさせたくない。
もしかしたら廬植は官軍の腑抜けた態度に義勇軍にも影響が出始めてしまったのを察し依頼しているのやも知れない。余りにも都合がいいときに来たため桃香をはじめここにいたものはそう思った。
翌朝、桃香達は朱儁将軍のもとへ援軍として頴川へと出発した。
頴川郡、そこは見渡す限り一面の原野や湖や沼の多い土地だった。
頴川についた桃香たちは早速官軍の陣へとやってきた。だが……
「……曹の旗?」
そこに立っていた旗は曹の字が書かれていた。
「どういうことだ? ここは朱儁将軍が指揮を執っていたんじゃなかったのか?」
ディバルの疑問どおり、頴川は朱儁が指揮を執っていたはずなのだ。それにこの曹の旗。ディバルは自身の知識と照らし合わせ、いまここで指揮を執っている人物が誰か予想する。
「どういうことなんだろう? 先生の言っていたとおり来たはずなんだけど。どこかで間違えちゃったのかな?」
「その可能性は低いと思いますが・・・」
桃香の疑問に星がそう答える。すると、官軍の陣営から誰かがやってきた。その者は黒い長い髪に美しい装飾が成された薙刀を携え、幾名かの部下を引き連れていた。
「止まれ! 貴様らは何処の者か!!」
おそらくは近くまで来た自分たち義勇軍が何者か調べるために来たのであろう。なにせ、武器などは持っているが、質は悪いものも多く、鎧なども官軍がつけているような出来のいいものではない。下手をしたらそこらの賊に間違えられかねないやも知れない。だが、義勇軍にも義勇軍の旗があり、明らかに黄巾賊の掲げる”蒼天已死 黃天當立 歲在 甲子 天下大吉”のもとは違う。それなのにこの高圧的な態度。義勇軍の者何名かはムッとした顔をする。
「お待ちを。この部隊の指揮官は私です」
桃香は余り事を荒立てないように丁寧な口調で名乗り出る。
「貴様が指揮か……ん? 貴女は確か……」
「あ! あなたは!」
桃香の顔を見て偵察に来た女性は首をかしげ、桃香は何処かで会ったのか覚えているらしく驚きの声を上げる。
「!?」
そしてディバルは女性の顔を見て驚愕する。
「た、確か関羽さん?」
「思い出した。確か貴女は以前立ち寄った村の劉備殿でしたな」
以前、桃香の住んでいた村に立ち寄った時に会ったのだという。
驚くものの、桃香は盧植渡されていた手紙を渡す。関羽はそれを受け取るとここで待つように伝えた後陣へと戻った。
「……桃香、あの関羽という者とは、あの時話した?」
「…………うん」
ディバルは桃香に確認をし桃香もそれを肯定する。
「? 一体何の話ですかな?」
星は桃香たちが何の話をしているのか訪ねる。
「うん、ディバルさんが来る少し前の話なんだけど……」」
桃香はディバルに話したことを星にも伝える。話を聞き星は顔をしかめる。自分の仕える主がそのように侮辱されればいい気はしないだろう。
「桃香、そういえばあの時は聞かなかったが、その二人を従えていた人物とは一体?」
「うん?それは……」
桃香がディバルの質問に答えようとしたその時。
「おい、お前たち。ご主人様たちが会ってくださるそうだ。ついて来い」
関羽が桃香たちを呼びに来た。話の途中だったが、一旦中断し関羽について行く。そして桃香、それに星とディバルがここの指揮官に会いにいく。
そして、その天幕に入ると……
「よく来たわね。あなたが劉備ね」
数名の男女がおり、その中でも一際威圧感を放つ少女が声をかける。
「私が今この穎川での指揮を執っている、曹操猛徳よ」
「「「!?」」
その名を聞き桃香たちは驚愕する。曹操といえば武芸や政治あかるく、さらには文化・芸術などにも秀でて、そのカリスマ性で彼女を慕う者も多く、まさに完璧超人とういうべき人物である。桃香たちもその噂は聞いており、目の前の少女がその曹操であると聞いて驚きを隠せない。だが、この頴川で指揮を執っているのは朱儁将軍のはずである。その疑問に答えるかのように曹操が答える。
「朱儁将軍は不正を行っていたため失脚し、そのかわりに私が帝の命を受け、この頴川で指揮を執ることとなったのよ」
「不正? ですか?」
「ええ。それにそこまでの能力も無かったみたいだしね」
桃香は知らぬことだが朱儁は都の勅使に賄賂を送らなかったため、失脚した。彼の能力自身は高くは無いが低くは無いため曹操の言葉は少々違うが、否定する人物もいないためそのまま話が進む。
「それで、あなたたちには一応私の指揮下に入ってもらうことになるわ。ここの指揮官は私だしね」
「わかりました」
「ああそれと貴女の後ろに控えている者を紹介してほしいのだけれど」
曹操は桃香の後ろにいる星とディバルに興味を持ったようだ。
「あ、すいません。えっとこちらはかの常山の昇り竜として名高い趙雲さんです」
「趙子龍と申します」
「へえ……貴女が」
曹操は星を興味深そうに見る。少々目つきが怖いようにも思える。
「そしてこちらが……」
「異国からきたディバル・クリムゾンだ」
ディバルは桃香をさえぎる形で自己紹介する。その顔は少し嫌そうな表情にも見える。
「へえ、そう・・・・・」
「………」
曹操はディバルに対しても少し興味深そうに見る。ディバルは露骨にも嫌そうな顔をしたが、曹操は気にしなかったようである。
「…………」
よくよく見れば曹操の近くにいる青年もディバルを見ているが、こちらはなにやら警戒しているようである。
「それでは、私たちはどうすればよろしいでしょうか? 私の部隊は数は多くありませんので微力でしかないと思いますが」
桃香は自分たちの兵力の少なさを告げる。現在桃香たち率いる義勇軍の数はおよそ五百ほど。義勇軍としてはこれでも多いほうなのだが、やはり正規軍などと比べると小数であることには違いない。盧植の手紙には並みの将兵を上回る能力があるため必ずや力になると書かれている。だが、やはりかずが少なすぎるであろう。与えられる役割も余り良いものではないと思っていたが
「そうね、それじゃあ悪いんだけど最前線で戦ってもらおうかしら」
「最前線……ですか?」
たかだか五百ほどの兵力しかない自分たちを最前線に出す。これの意味することは
「………」
「がんばって手柄を立てなさい劉備。期待しているわよ」
「わかり……ました」
桃香は自分たちが生きた囮、または捨石のものだと理解したが、ここで反論する力も無いためその命を了承したが、その顔は何か考えているようだった。
桃香達が前線へ向かうため天幕を後にすると、曹操に一人の青年が話しかける。
「いいのか華琳?アイツら下手をしたらこちらの思惑をこえた行動を……」
「いいのよ一刀。それならそれで面白そうだしね」
「………」
曹操の真名を呼ぶこの青年は、北郷一刀。本来原作主人公であるが、転生者である。彼は神の特典により、驚くべき身体能力と剣術を手に入れた。さらにその知識を用いて、この外史に来た時、何とか桃香と出会う前の関羽たちと出会い自分の仲間にした。そして彼は魏√のため曹操の部下となることを決め
る。桃香達とであったのは曹操の下へ向かう途中である。
「ふふふ、楽しみね。甘い考えを持った貴女がこれを乗り越えることが出来るのかしら?」
そして曹操は一刀の影響を受けたのか、彼女の性格も原作と変わっているようだ。
果たして、桃香たちは、転生者たちにより大きく変わったこの世界の今の状況を乗り越えられるのだろうか?
盧植
身長195cmと当時(今もだが)としてはかなりの高身長であったらしい。
演義では黄巾の乱討伐の将軍として登場。かつての教え子で義勇軍を率いる劉備と再会し、劉備が「先生」と呼んで尊敬している様子が描写されている。一時は宦官に陥れられ囚人として捕らえられるが、後に朝臣として復帰し、董卓の専横に反対し引退する。なお、結局劉備たちとは再会することは無かった模様。
朱儁
幼い頃に父を亡くしたため母親思いの人物で、余り財に執着せず、義にも熱い人物だったらしい。が、上洛するにあたり、金が不足したため、母の財産をこっそり持ち出し、母には責められたこともあるが、後により多くの利益となると母に語った。
演義では黄巾の乱と董卓の乱で少し名が出たくらいというものだが、実際には董卓と意見が食い違うことが多いものの、董卓が手元におきたい思うほどの人物であったらしい。
が、一部の演義では無能司令官や腐った役人といった描写をされてしまう。演義では世渡りが下手らしく、失脚してしまったらしい。